一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

復活!金曜サロン(後編)

2011-09-28 00:04:09 | LPSA金曜サロン
スペシャルゲスト氏が、S夫人に二枚落ちの定跡を教えている。LPSA金曜サロンではお馴染みの光景だったが、LPSA芝浦サロンでは初めてである。
スペシャルゲスト氏の、
「これは以前、教えたはずですけどねえ」
のフレーズが聞こえる。
「なつかしい!!」
私は思わず叫ぶ。S夫人の物覚えの悪さも、読みのトロさも、以前のままだ。
私は、
「Sさん、いつも局面が新鮮に見えていいですよねえ。うちのオフクロなんかも、テレビの旅行番組を観てると、以前自分が行ったことがあるのに、ここ行ったことない、とか言うんですよ」
と口走る。するとS夫人が、まっ、と不満をもらした。
「お、大沢さんちょっと、それは言いすぎですよ」
と、スペシャルゲスト氏が苦笑しながら、S夫人の代弁をした。
4局目はFuj氏と。Fuj氏は三段で指しているが段位以上の実力者で、今年の社団戦は9戦全勝。勝負強いところを見せている。
将棋は先番Fuj氏の▲2六歩で始まった。以下お互い飛車先の歩を突き合い、Fuj氏は▲2四歩から▲2八飛と深く引く。Fuj氏の序盤は独特で、▲7六歩△3四歩▲2六歩△8四歩▲6六歩△3二金▲5八金右、となった出だしもある。
本局は、後手の私がひねり飛車にした。中盤、△3六歩▲同歩△同飛にFuj氏は▲3五歩と退路を封鎖したが、構わず△同角が強手。▲3五同銀なら△5六飛と金を取り、攻めが繋がるという読みだ。
Fuj氏、やむない▲3七歩に、私は△2六飛と飛車交換を強要。以下敵陣に飛車を打ちこみ、この将棋はもらったと思った。
しかしそこから私は例のことを思い出してしまい、指し手がヨレヨレになってしまう。疑問手を連発し、無念の逆転負けとなった。
感想戦でも私は上の空。もう、しゃべる気力がないのだ。本当に、どうしようもない。これではFuj氏にも失礼で、申し訳ないことをした。
S夫妻が帰るようだ。S夫人が私に、じゃ! とわざわざ言いに来た。
S夫人、さっきの私の言葉におかんむりだったようだ。温厚なS夫人を怒らせるとは、私もどうかしている。ちょっと口がすぎました。申し訳ありませんでした…。
5局目に入る。いつもの芝浦サロンでは考えられない局数だ。もちろん「多い」のだ。言うまでもないが、こんなに将棋を指せるのも、多くの会員が来ているからだ。再び書くが、これが中井効果、そしてスペシャルゲスト効果である。
現行の芝浦サロンのシステムでは、指導対局を終えた会員は、すぐ帰ってしまう。彼らをどうやってサロンに留まらせるか。ここがLPSAの思案のしどころであろう。
Hon氏と対局。こちらが漠然と構えていたら、Hon氏に雁木から▲4五歩△同歩▲3七桂と攻められ、数手後に受けがなくなったので愕然とした。
傍らに石橋幸緒女流四段が来て、Hon氏に
「ね? 破壊力抜群でしょ?」
と言った。この攻めは、石橋女流四段の直伝だったようだ。
私もさすがに敗戦を覚悟したが、実戦はHon氏に一失があり、私の勝ち。これで全5局、有利な将棋は負けて、不利な将棋は勝った。p。
このあとは、スペシャルゲスト氏とO氏による、大盤解説となる。これも金曜サロンの名物企画だった。
題材は先日行われた、マイナビ女子オープン・中井広恵女流六段と貞升南女流1級との一戦。本来なら中井女流六段が解説するところだが、中井女流六段はまだ指導中だ。
将棋は、女流棋士には珍しい、角換わり。O氏は相居飛車の定跡に精通しており、LPSA女流棋士より形に明るい。腕に覚えのあるスペシャルゲスト氏も、O氏の意見を参考にしながら指し手を進める、という按配だった。
中盤、中井女流六段の▲2六角がやや疑問だったが、対して貞升女流1級が△2二角と打った手がそれに輪をかけた悪手で、そこから中井女流六段の指せる岐れになったようだ。結果も中井女流六段の快勝。
この将棋を見る限り中井女流六段、マイナビ女子オープンでは、かなりの快進撃が期待できそうだ。

午後8時もすぎ、1日限りの「金曜サロン」は終了。約1年ぶりに駒込の雰囲気が味わえて、本当に楽しかった。
放課後はみんなと食事会。今回はちょっぴり豪華に、居酒屋に繰り出した。個室が充てがわれ、参加者と席順は以下のとおりとなった。

入口
Fuj Tod Kaz Kun
   テーブル    Hon
SP 中井 W 一公 

今夜は中井女流六段を正面から拝めなかったのが、残念だった。
人間、自分の幸福は分からないものである。なくなってから、初めて気づく。言い換えれば、いまあるものが大切か否か確かめるには、もしこれがなくなったら…と考えてみればよい。
なくなってからでは、もう遅いのだ。
さて、きょうの席でも私の嘆き節が響きわたったのだが、読者ももう、飽きたろう。
私もいささか、書くのが疲れた。
まあそれはともかく、スペシャルゲストを交えての談笑は、楽しかった。あのころはこんな楽しい思いを、毎週していたのだ。いまでは夢の話である。
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復活!金曜サロン(前編)

2011-09-27 00:35:10 | LPSA金曜サロン
16日(金)のLPSA芝浦サロンは、中井広恵女流六段(天河)の担当だった。代表理事を退いて久しい中井女流六段の芝浦登板は何回かあるが、いずれも私はお邪魔していない。例えばこの12日も「LPSAマンデーレッスンS」のゲスト講師だったが、私が受けなかったため、対局は叶わなかった。
最近は中井女流六段に恋愛相談ばかりしているので、きょうこそ将棋の指導対局を受けたい。なかんずく今回は、かつてLPSA金曜サロンの顔だった某氏が、スペシャルゲストの手合い係として復活する、との噂があった。1年ぶりに、金曜サロンの雰囲気を味わえるのか? 私の胸は、久しぶりに高鳴ったのだった。
きょうは午後3時で仕事を上げ、芝浦に向かう。入室すると、中井女流六段のハツラツとした姿とともに、多くの会員の姿があった。中井女流六段は6面指し。S夫妻は、久しぶりの夫婦揃いぶみだった。やはり「中井効果」は大きい。
ただ、手合い係は大庭美夏女流1級だった。スペシャルゲストは、どこへ行ったのか。
まず、大庭女流1級から、島井咲緒里女流初段の直筆扇子をいただく。芝浦サロンポイントカード・100ポイントの賞品だ。しかし島井女流初段が結婚してしまったいまは、喜びも半分である。それを知るのがあと1ヶ月早かったら、別の女流棋士を所望していたのにと思う。
中井女流六段の指導はまだ空きがないので、一般対局を行う。まずはKus氏との角落ち戦。Kus氏は最近、二段に昇段したそうだ。LPSAの昇段規定は厳しいので、この昇段は誇っていい。上手角落ちは厳しいが、これがLPSAサロン流。手合いは下手が自由に決められるのだ。
将棋は、Kus氏の猛攻を受け大苦戦。▲2六桂▲6一竜、△3二玉の局面で、下手が▲1四香と打ったのが好手。やむない△同香に▲同桂△1三銀▲1一角△3一金(△1四銀は▲2二金で寄り)と進む。
ここで下手が▲2二金と詰ましにいったのがマズかった。△2二同金▲同桂成△同銀▲同角成△同玉▲3一銀△3三玉は、上手の玉が逃れてしまった。
こんなに慌てずとも、真綿で首の指し方をしていれば、上手は指しようがなかった。
下手に緩めてもらった一局。
時間はたっぷりあるので、中井女流六段とはまだ指さない。
2局目はTod氏と。あまり約束を守らないTod氏、きょうここへ来るのは怪しかったが、しっかり来た。彼に対する評価を改めなければならない。
手合いは私の二枚落ち。前回は同じ手合いで私の快勝だったが、今回はTod氏が力を出した。私の△5五歩~△5四金に正面から迎え討ち、飛車角を切っての猛攻に、私もタジタジ。さすがに敗局を覚悟した。
▲6三と、△7三桂△8三玉の局面で、下手が▲7三とと桂を取ったのが敗着。△同玉で上手玉が広くなってしまった。▲7三とでは▲7二金と張りつかれていたら、次の▲7三とが厳しく、上手が負けだった。▲6三とのような攻め駒は、タネ駒として活用したほうがよい。
これで2連勝。私は心身ともズタズタの状態なのに、勝負は勝ってしまう。ここが将棋の難しくもおもしろいところだ。
スペシャルゲスト氏が、W氏とともに入室した。遅い昼食を摂っていたらしい。手合い係をしないのは残念だが、これで役者は揃った。金曜サロンの復活である。
一休みしていると、Tod氏がパチパチやりながら、▲9八香、▲9九玉、▲8九桂、▲8七銀、▲7七銀、▲8八金、と並べ始めた。
「…お、おぉいTodさん!! 何を並べてるんだよ!!」
「えっ? …あっ!!」
「オレの前で穴熊を並べるなんて、何のイヤミだよ!!」
「ご、ごめん、つい…」
まったく、なんだコイツは! 油断も隙もありゃしない。
すっかり気分を害して、3局目、いよいよ中井女流六段に教えてもらう。
思えば半月前、ここであのひとに、最後の将棋を教わったのだ。あのときの苦痛がよみがえる。
「サイン勝負で、お願いします」
私は内心の動揺を隠して、懐かしいフレーズを述べる。
対局開始。私の三間飛車に、中井女流六段は居飛車。「穴熊は指せないし…」とつぶやき、天守閣四枚美濃に囲った。
くっ…ここでもか。しかし、指しづらくなった。本当に将棋が、指しづらくなった。穴熊も棒銀も、これから事あるごとに出てくる。そのたびに心をかき乱されていては、体がもたない。
中井女流六段は無理攻めに出る。これは私が咎め、角桂交換の駒得になった。
しかし私が頑張れたのは、そこまでだった。ちょっと、将棋を指すのがつらくなった。
中井女流六段、△8六歩の垂らしに、私は「負けました」と投了した。
「エエーッ!?」
大仰に驚く、中井女流六段。
「もうダメです。戦意喪失」
「だってこっちが不利の局面でしょ。これじゃ、感想戦ができないじゃない」
「…すみません」
私はうなだれた。せっかくの中井女流六段との指導対局だったのに、なんてことだと思う。
こんな体たらくでは、私が芝浦サロンをフェードアウトするのも、時間の問題であろう。
(つづく)
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復活!! 1日限りの金曜サロン

2011-08-31 00:18:25 | LPSA金曜サロン
LPSA芝浦サロンの、9月のラインナップが発表された。注目すべきは16日(金)に中井広恵女流六段が登板することで、これは珍しい。芝浦サロンでは昨年の12月17日(金)以来2度目となるが、このとき私は長崎県を旅行中で、指導対局は叶わなかった。
話が脱線するが、12月中旬の長崎旅行は私の必須行事となっている。1999年から毎年訪れていて、もう12年も続いている。これは絶対で、2009年12月のLPSA金曜サロンでは、船戸陽子女流二段・中倉宏美女流二段という、当時のファンランキング1位と3位の担当にもかかわらず、私は旅行を優先させたくらいだった。
なぜ私はそんなに長崎にこだわるのか。いままでの旅行記ではその部分を若干ボカしていたが、今年12月の旅行記では、その理由を詳らかにしたいと思う。そしてそれを読んだ読者の何人かは、「だまされたと思って」長崎へ飛ぶに違いない。
ひとつの心配は、それまでこのブログが存続しているかどうかだが、それは私の気力次第といえる。
余談ついでだが、中井女流六段は私が長崎を旅行する理由を知っている。そして私の行動に興味を示してもいるのだが、しかし中井女流六段は、長崎へは将棋のイベントなどのついでに、タダで行きたい意向のようだ。
じゃあ旦那に内緒でオレと一緒に行こう、と誘ってもいるのだが、これも首をタテに振ってくれない。
だが中井女流六段、そんな受け身の姿勢では、一生長崎へは行けないと知るべきである。
話を元に戻すが、16日の中井女流六段の日は、あくまでも非公式だが、かつての金曜サロンのシステムを復活させようという声があるらしい。
金曜サロンは、女流棋士が2人常駐し、入室した会員は順番に指導対局を受けるという、柔軟なシステムだった。また夕方には女流棋士の実戦解説があり、疲れた頭には一服の清涼剤となっていた。
合間には会員同士で金曜リーグ戦も行い、それがまた熱を帯びて、本当に充実したシステムだった。
16日は、担当女流棋士は中井女流六段のみではあるものの、それを再現する、というわけらしい。また16日はほかにも、いろいろサプライズがありそうである。
そこで私は、この9月16日を、旧金曜サロンメンバーの一大同窓会にしようじゃないか、と提案したいのだ。
サロンが駒込から芝浦に移って、旧金曜サロンメンバーは、散り散りの状態にある。ここで今一度みんなが芝浦に集まって、あのころの熱気を再び味わおう、と思うのだ。
当日は四ッ谷で「将棋ペンクラブ大賞」の贈呈式があるのだが、私も今年は参加を見送り、芝浦サロンにいつもより早めにお邪魔して、1日限りの金曜サロンを楽しむつもりである。
このブログを読んでいる旧金曜サロン会員の方、是非とも16日は時間を作って、芝浦サロンに足を運んでください。私が言うのもヘンですが、絶対に損はさせません。よろしくお願いいたします。
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金曜サロンファイナル・中倉宏美女流二段⑬・ありがとう、金曜サロン

2011-01-13 00:23:09 | LPSA金曜サロン
巷では「タイガーマスク現象」が起きている。ちょっと偽善のニオイを感じるのは私だけだろうか。

昨年9月24日のLPSA金曜サロン、2部は中倉宏美女流二段の担当だった。どっぷり日は暮れ、中倉女流二段が「夜のナカクラヒロミ」に変身する。時間的に見て、この中倉女流二段との指導対局が、駒込金曜サロン最後の対局となる。
この日はこれで8局目。昨日書いたように、この日の金曜サロンは、最後のサロンを楽しもうと会員が集い、満席状態だった。ローカル線なら廃止の侘しさがあるが、LPSAのそれは発展的解消ともいえ、明日への希望がある。
対局の前に改めて挨拶。
「(芝浦に移ったら、なかなか行けないと思うので)これが最後の金曜サロンになると思います」
と中倉女流二段をおどす。事実芝浦サロンのシステムを見ると、女流棋士の担当は1日1人に減る。それが本来の姿かもしれないが、1日2人システムに慣れた常連から見ると、サービスの低下を意識せざるを得ない。
「そう言わずに、また来てください」
と優しく返す中倉女流二段であった。
中倉女流二段との金曜サロン指導対局は、これで18局目。私の三間飛車に、中倉女流二段の一目散穴熊。私は例によって☗8八飛と振り直し、☖6四歩に☗5六銀と出、☗6五歩と歩交換が出来ては、まずまずの序盤だと思った。
☗5八飛と回り、☗5六歩と銀取りに歩を突く。以下☖6六歩☗5七金に☖5六銀が中倉流。☗同金☖6七歩成☗同銀に☖8七飛成ときた。銀損しても飛車が成れれば指せる、との大局観に基づくものだが、私もトクした銀を8八に打ち、竜を追い払う。
☖6九角☗7八角☖5八角成☗同金。私は銀ドクだから、切らせる方針だ。
☖7四歩に☗4六角と竜取りに打つ。以下☗7三歩成とと金を作れては、こちらが手厚い。容易に負けない局勢である。しかし☖4五金の角取りに☗5四歩の垂らしは功を焦った。ここは大人しく角を自陣に引き、次に歩の垂らしを狙うべきだった。
本譜は角金交換から桂を取られたうえ飛車を下ろされ、☖9九飛成と香を補充されては、こちらに指し切り筋が出てきた。
頼みの綱は中倉女流二段が6面指しであることだが、それよりけっこう時間が押しており、閉席の9時までに6局が終わらない可能性もでてきた。私はそちらのほうが気になっていた。
☗7九金とトラの子の金を打ち、☖8七竜と追い返す。ここでうっかり☗6七金寄と指しそうになったが、それは☖7八歩成があるので不可。私は☗5二と左と指した。中倉女流二段が戻ってくる。私は提案をした。
「先生、ここで指しかけにしたいと思うのですが、いかがでしょうか」
「あっ、いえいえ、まだ指せますよ」
「いえいえ時間もだいぶ押してるし、ここで指しかけのほうが…」
「じゃあそうですね、これは私の負けで…」
「いえいえ局面は完全な私の負けです。まあきょうは駒込最後だし、勝敗をつけないほうがいいでしょう。ありがとうございました」
一礼すると、私は指導対局を終了させた。参考までに、記念すべき最終局面を、以下に掲げておこう。

これでLPSA金曜サロンが終了した。金曜サロンでの指導対局は、2008年3月14日の藤森奈津子女流三段戦から、2010年9月24日の中倉女流二段戦まで、計183局。平手89勝70敗1指し掛け、香落ち8勝4敗、角落ち9勝2敗という成績だった。
しかしたいへんな対局数である。もし金曜サロンに行ってなかったら、けっこうなおカネが残ったんじゃないか? などと考えてはいけない。いままでに使ったおカネ以上の見返りを、私はいただいた。それはLPSA女流棋士との交流であり、新しくできた棋友であり、週に一度の心から笑えるひとときであった。
ありがとう金曜サロン。本当にお世話になりました。
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金曜サロン・大庭美樹女流初段⑫・最後にやってもーた

2011-01-12 00:37:03 | LPSA金曜サロン
きょう1月12日は、大庭美樹先生のお誕生日。おめでとうございます。
大庭先生はトーナメントプロの本業のかたわら、LPSA理事という激務をこなし、昨年10月からは芝浦サロンの手合い係にも着任しました。これからのますますのご活躍をお祈りいたします。

昨年9月24日、LPSA金曜サロンは、1部が大庭美樹女流初段、2部が中倉宏美女流二段の担当だった。
2008年3月よりお世話になった金曜サロンも、ついにこの回で最後である。植山悦行手合い係が5月に卒業してから、駒込サロンへの来席人数も減少気味だったが、この日はさすがに客が多かった。たとえは悪いが、ローカル線の営業最終日を思わせる賑わいである。みんな、スケジュールをやりくりして訪れたのだろう。その光景を前にして、私は感傷的な気分になった。
さて大庭女流初段による金曜サロンでの指導対局は、これが17局目。金曜サロンでは、船戸陽子女流二段、松尾香織女流初段の23局、藤森奈津子女流四段の21局に続く、4位タイであった。
対局開始。☗2六歩☖3四歩☗7六歩☖3三角。
この4手が早くも両者の棋風を表している。私が飛車先の歩を突き攻め味を見せたのに対して、大庭女流初段は4手目☖3三角と、変化球を投げる。
☗4八銀☖2二銀。ここで角を換わってしまうと☖3三同銀でカベ銀を直されてしまうので、この角は無視して駒組を続けた。
私は☗4五銀と、ガッチャンとぶつけ、銀交換に出る。☖5一角にすぐさま☗5五銀(打)と据え、☖6四歩を取るぞと見せかけて、4筋に狙いをしぼった。
しかしこの構想は思ったほど効果がなく、持駒の銀を手放しただけ、損だった。
私は無理気味でも攻めを続けるしかない。ハシ(9七)に覗いた角をバッサリ切って(☗4二角成)、☗7七桂と活用する。
大庭女流初段は相手の言いなりになっているようで、こちらの攻めが息切れするのを待っている。いままでこうした指し方で、平手の下手が切らされたケースを、私は何度も見てきた。LPSAのみならず女流棋士全体を見ても、異質の勝ち方をする女流棋士だと思う。
果たしてこちらの攻めが一息つくと、大庭女流初段の反撃が始まった。
☖7七桂成と銀を取られ、再度の☖8五桂が厳しい。☗6七玉に☖7七銀。次に☖6六銀成を喰らったら終わりだ(☖4四角がいる)。
私は☗5五香と遮断したが、☖5四歩と冷静に香を取りに来られては、非勢を覚悟せざるを得なかった。
☗5七同玉に☖5五桂。がんじがらめで、受けようがない。☗5八玉と引く。ここでは負けたと思った。大庭女流初段、☖6七銀。こちらから打ってくるのか。☗4九玉。☖3九金。この攻めでいいのか? ☗5九玉☖5八歩☗同金☖同銀成☗同飛。
指導対局はマンツーマンではないから、上手がほかを回っているときに、下手はこんこんと考えることができる。しかしこれ、下手が敗勢のときは、自分に負けを言い聞かせる時間になってしまう。うまく逃げおおせたかと思ったが、次に☖6七桂不成と来られると、下手が詰んでそうだ。
大庭女流初段が戻ってきて、☖6七桂不成。いや、そうか…。☗6九玉。大庭女流初段、☖7九金。ダメだこりゃ。私はここで投了した。
大庭女流初段も礼を返すが、厳しい顔を崩さない。…? ちょっと様子がおかしいが、一応感想戦に入る。しかし私も気になって、数手をやりとりしたあと、
「一応、詰め手順だけ確認させていただいていいですか」
と申し出た。ちなみに投了局面は以下のごとくである。

ここから☗6八玉☖7七銀☗6七玉☖6六銀成☗6八玉☖7七桂成まで詰み、と読んでいたのだが、盤上で駒を進めると、これは5九に引いて詰まない。☖7七銀に☗6七玉と桂を取れるので、5九(7九)への逃げ道が自動的に出来るのだ。
ええっ!? じゃあ、私は不詰めの局面を投げてしまったということか!?
「そう、ですね…」
ええーっ!? またか! また、やってもーたのか!!
完全に寄せられたと思った。まさかすり抜けていたなんて…!
不詰めなのに投了したのは、2009年5月の藤田麻衣子女流1級戦以来、2度目。しかし、何も金曜サロン最後の日にこんなチョンボをしなくてもいいではないか。まあそれも私らしいといえばいえるか。
大いにヘコんだ、1部の指導対局だった。
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