一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

日レスインビテーションカップの見どころ

2009-05-31 00:17:06 | 女流棋戦
5月30日は日本女子プロ将棋協会(LPSA)の設立記念日。おめでとうございます。

31日(日)は東京・中野サンプラザで、第3回・日レスインビテーションカップの1、2回戦が行われる。
今回は船戸陽子女流二段と渡部愛(まな)ツアー女子プロが初参戦。アマチュア界からは笠井友貴女流アマ名人、小野ゆかりアマ女王、成田弥穂(みほ)女子アマ王位がインビテーションされた。
これら選手の中で最も注目すべきは、「ヤッホー」こと成田女子アマ王位の戦いぶりであろう。第1期天河戦での奮闘はいまも記憶に新しい。対船戸女流二段戦での、大山康晴15世名人を彷彿とさせる▲4五歩。対中倉宏美女流二段戦での、最強の受け▲4七飛。対中倉彰子女流初段戦での、ズピード重視の▲1三銀。対北尾まどか女流初段戦での、1手勝ちを見切っての△5七銀。
中井広恵女流六段との3番勝負第1局、角銀交換の駒損のあと、その銀をじっと4四に据える渋さ。第2局での、中盤からの意表の攻め合い。中学生とは思えない緩急自在の指し回しにほとほと感心した。
今回は松尾香織女流初段との初対局である。どちらもゴキゲン中飛車を得意とするだけに、先後が大きなカギとなりそうだ。
LPSAから誕生したツアー女子プロ・渡部愛さんは、あの藤田麻衣子女流1級との対戦。序盤巧者の藤田女流1級に、終盤に絶対の自信を持つ渡部ツアー女子プロがどういう戦いを見せるか。
女流アマ棋界の第一人者、笠井友貴女流アマ名人は、神田真由美女流二段との対局。神田女流二段はひょっとしたら、この日が現役として最後の将棋になるかもしれない。元アイドル棋士の戦いを、じっくり目に焼き付けたいところだ。
小野ゆかりアマ女王は、関西の鹿野圭生女流初段との対局。鹿野女流初段は、かつて里見香奈女流初段(当時)に快勝したことがある振り飛車の名手。サウスポーからの豪快な指し手と、高校生の若々しい指し手による熱戦を期待したい。
大シードで待つ中倉宏美女流二段は、解説の聞き手で登場予定。久々の宏美節を楽しみたい。
といろいろ書いたものの、今回は公開対局だから、将棋(盤)だけの進行を見るのはヤボである。女流棋士の表情も堪能したい。
島井咲緒里女流初段の、正面から向かって右30度からの表情。船戸女流二段の、正面から向かって左60度からの表情などを観賞するのがよい。
もちろん、化粧のノリ、口紅の色、服装などのチェックも必須である。まさかLPSAのブレザーを着用することはあるまい。
中野サンプラザへ行かれる方は、そのあたりも注目されるといいかと思う。
ちなみに私はまだチケットを買っていない。31日に観に行くかどうかは、朝の気分次第といったところだ。
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女流棋士スーパーサロン金曜日・上田初美女流二段②

2009-05-30 14:18:46 | 女流棋士スーパーサロン
29日のLPSA金曜サロンで、棋友のI氏から、過去に載せた棋譜の書き間違いを指摘いただいた。感謝いたします。

さて29日も朝から「女流棋士スーパーサロン」へ行く。ここは定員が計8名なので事前の予約が必要だが、今回は27日の午後に電話をした。金曜日担当の上田初美女流二段、藤田綾女流初段に指導を受けたいファンはいっぱいいるから、遅めに予約をして、定員に達していたらそれもよし、という気持ちであった。
今回はたまたま空きがあったので、10時からのコマに入れていただく。
当日29日は、スーツに着替えて家を出る。私服でももちろん構わないのだが、平日にこの格好だと、失業者に見えてみすぼらしい。
金曜日の担当は上記のおふたりが交互で担当している。先週は藤田女流初段から上田女流二段に変更になったが、だから今週は藤田女流初段にズレるということはなく、もちろん上田女流二段の担当である。
定刻になり上田女流二段が見えたので対局席に着くと、上田女流二段が、「あ」という顔をする。先週と同じヒトだ、と思ったのだろう。しかしこちらからは話しかけない。畏れ多い。
本局も先週に引き続いて平手を所望したが、66手で吹っ飛ばされた。しかしさすがの上田女流二段もこのブログを見ていないだろうから本音を書けば、終始こちらが押されていたこの将棋、冷静に振り返るとそうでもなかった。
全棋譜を記したいところだが、藤田麻衣子大先生や、たいふー先生とは違って、女流棋士会からクレームがきそうなので、終了4手前の局面を掲げる。
例によって懸賞詰将棋のごとく、駒の配置のみを記す。

先手(下手):私 後手(上手):上田初美女流二段
先手:1七歩、1九香、2一竜、2五歩、2九桂、3四竜、5六歩、5七銀、5九玉、6六歩、6八金、7五歩、8五桂、8六歩、9六歩 持駒:角、桂、歩2
後手:1一香、1三歩、2三歩、4七馬、5一金、5三歩、6一金、6三歩、7二銀、7三歩、7六銀、8一桂、8二王、8三歩、8九成銀、9一香、9四歩 持駒:金、香、歩2

ここから▲4八歩△2九馬▲5五角△6七桂、まで私の投了。
△2九馬までの局面は飛車と金銀香の3枚替えだから形勢は不利だが、ここで▲5五角が△6七桂を見落とした大悪手。一遍に受けなしになってしまった。まだしも▲5八玉と耐えるところで、これなら上手の指し手も難しかったのではないか。以下△1九馬なら▲3九竜がある。あと20手ぐらいは延びたかもしれない。ともあれこんな将棋で上田女流二段に平手を所望するとは、我ながら図々しい。せめて定跡だけでも勉強し直さなければいけない。
この日は私の前方で指されていた将棋もおもしろかったので、局面の一部を掲載する。これは最後が劇的だったので、掲載してもクレームは来ないだろう。

先手(下手):3五馬、7一馬、7六歩、8二銀、8六玉、8七歩、9六歩、9九香 持駒:桂など
後手(上手):5一金、5四歩、6三金、6四歩、7二銀、7四歩、8一桂、8三歩、8四王、9一香、9五歩 持駒:香など

ここから▲6二馬上△7三桂▲同銀不成△同金、と進んだ。△7三桂跳ねでは△7三香と合駒をしたいが、下手玉への詰めろが解ける。上田女流二段は桂跳びで詰みがないと読んだらしいが、私は詰みを読み切った。
ここで私に一般対局がついて、見物を離れる。
と、しばらくして、「アーッ!!」と上田女流二段が絶叫する。詰みに気付いたのだ。しかし下手氏はまだ気付いていないようだ。
上田女流二段は「よく考えてください!」とアドバイスする。ここが指導対局のいいところである。私が同じ立場だったらどうか。息を殺して相手のミスを待ち、将棋が終わったところで、「実は…」と、詰み手順を教えたことだろう。
将棋は無事、下手氏が詰みを見つけた。上田女流二段の言動に感心したできごとだった。
さてこの日はもうひとり、私がいま一番お会いしたい棋士にお会いすることができた。それは山口恵梨子女流1級でも中村桃子女流1級でもなく、本田小百合女流二段でもない。上野裕和五段である。その上野五段が、道場に訪れたのだ。
上野五段は先日の棋士総会で、理事に当選した。私は
「上野先生、おめでとうございます。上野先生はお気付きでないかもしれませんが、ご自分の想像以上に、全国のファンが先生の活躍を期待しています。がんばってください!」
と激励したのだった。
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将棋ペンクラブ関東交流会2009(後編)

2009-05-29 01:34:24 | 将棋ペンクラブ
妙齢の美女が人妻と分かって気が抜けてしまった私は、雑談…いや感想戦をとっとと終わらせ、バトルロイヤル風間氏の将棋の観戦にまわった。ちなみにバトル氏の将棋を見るのは初めて。相手は私が2局目に戦った方だった。
中盤にチラッと見たときはバトル氏が優勢だと思ったが、次に見たときは以下の局面になっていた。
例によってその局面の一部を記す。図面の作り方が分からないので、というか分かっても作るつもりはないので、記載は符号のみ。暇な方は並べてください。

先手 バトル氏:3一飛、3二竜、3五歩、4七歩、4八金、5六歩、5九玉、6七歩、7六歩、7八金、8七歩、8九桂、9六歩、9九香 持駒:角、銀、歩
後手:1一香、2一桂、2三歩、3七銀、4四歩、4五桂、5四歩、5七金、6一角、6二歩、6三銀、7一王、7二銀、7三歩、8一桂、8三歩、8八金、9一香、9四歩 持駒:大した駒はなし
ここからなんと、▲6一飛成△同銀、でバトル氏の投了。
そ、それはないだろう。自玉が受けなしと読んで後手王を詰ましにいったのだろうが、それならその前に▲5七金と持駒を補充しておくところ。以下△同桂成で先手玉は必死だが、そこで先手は▲6二竜と捨てる。王手を続けるには3二の飛車(竜)のほうを捨てるしかない。
△同王の1手に▲5三銀は△7一王で詰まないから、▲5三角。
以下△同王▲5一飛成△5二銀(△5二合駒は▲4二銀△4三王▲3四金△3二王▲3一竜まで詰み)▲4二銀△6三王▲6四歩△同王▲6二竜△6三合▲7五金、までピッタリ詰みだった。
第三者がこういう手を指摘すると、対局者のメンツが丸つぶれの面はあるが、バトル氏の快勝だったかもしれないのに「順当に負けた…」と本人が考えてしまったら、それは悲しいことである。だから余計なことと知りつつも、言わずにおれなかった。
さて4時からは懇親会。私は5勝だからトップかと思いきや、7連勝という強豪がいた。それぞれ希望の賞品を取って、自己紹介をする。私は佐藤康光九段の直筆色紙をいただき、皆さんの投稿を切に希望します、とコメントした。佐藤「九段」の肩書きは貴重と思う。
ついでだから過去に頂戴した賞品も書くと、05年・米長邦雄永世棋聖著「米長の将棋4・ひねり飛車」(マイコミ文庫)、07年・森内俊之名人(当時)直筆色紙、08年・船戸陽子女流二段直筆ミニうちわ。森内・佐藤元名人はともかく、船戸女流二段のミニうちわは、それだけで3,000円以上の価値がある(交流会の参加費は3,000円である)。
自己紹介が終わると、雑談タイム。私のふたり隣りに、詰将棋界というか、清水市代女流名人・女流王将のファンで有名なT氏がいた。私もLPSAのイベント等で何度か顔を合わせたが、初めて言葉を交わしたのは、今年に入ってからだったと記憶する。
「今日は東京會舘へ行かなくていいんですか?」と振ると、T氏は「もう…みんなから言われる」と苦笑する。彼は先日のLPSA ファンクラブイベントに出席し、クイズコーナーを選択したそうだ。しかし結果は3位で、相当悔しかったらしい。
私が「松尾女流初段はどこのプロ野球チームのファンか、とかいうクイズが出たらしいですけど、あれって基本中の基本ですよねぇ」と言うと、彼も「基本です」と同意する。
「ですよねぇ。だから、松尾女流初段は広島県出身ですが、何島の出身でしょう? ぐらいの問題にしないとダメですよねぇ」
「そのとおりです。そりゃ、誰々がどこの学部の出身で、なんの教員免許を持ってるか、なんて知りませんよ。だけど我々が知り得る範囲の知識だったら、そのくらいはスラスラ答えられないとダメです」
なんだか混同しそうだが、下のほうはT氏の言葉である。しかしこれとまったく同じ言葉を、私はこの前日のアフターサロン(金曜サロン後の食事会)で発言している。T氏はたぶん、腹を割って話せば相当おもしろい人なのだろう。しかしこのオタクぶりは自分自身を見ているようで、どうも親しくなるのを躊躇してしまう。
バトル氏は、さきほどの妙齢の人妻に、似顔絵を描いてあげている。これが、バトル氏自身が絶賛するぐらい本人にそっくりで、さすがはマンガ家と感心した。私も以前描いていただいたことはあるが、こんなに気合いを入れていただいていただろうか。少なくとも絵のほうは、もっとマンガチックだった。
この後、幹事のA氏がきて、常連の会員と3人で、観戦記は情景描写を優先するか、指し手の変化手順を重要視するかについて議論する。たまにはマジメな話もするのである。
7時になったので、二次会へ参加する。店に入ると、湯川統括幹事が「こっちこっち」と私を自分のテーブルへ呼ぶ。見ると、なんだかメンツがヘビーである。
石橋女流王位と石橋ママの間に座ると、対面にはバトル氏が座った。その右には湯川幹事、さらにその右には、二上達也ペンクラブ名誉会長がすでに先乗りしていた。
石橋女流王位と中井広恵女流六段の間に座るのもプレッシャーがかかると思うが、石橋母娘の間に座るのも、相当な圧迫感がある。バトル氏を正面から見る機会はあまりないが、本当に顔がでかい。横の湯川氏はなにか面白くないことでもあったのか、あの顔でしかめっ面をし、うつらうつらしている。ただでさえ恐い顔なのに、あれでは鬼瓦だ。その横の二上名誉会長は、瞑想しながら盃を傾けている。
なんだか凄まじい絵図だ。これで「将棋」というキーワードがなかったら、相当あぶない組織の会合だと思われそうだ。
この席では、私が食事や軽食を頼まなかったので、石橋ママがだいぶ気を遣ってくださり、恐縮した。
「まあー、ジェントルマンねえ」
と、やたら褒めてくれる。しかし否定する理由がないので、黙って聞いておく。うしろのテーブルでは、ライトな会員が集まって談笑している。そちらに移動したいが、席替えしたいです、などと小学生みたいなことは言えない。
結局まともに話せるのはバトル氏しかおらず、マンガの裏話を聞いたりしたが、これがすこぶる面白かった。ただ周りの話声もうるさいので、適当に「はい、はい」と答えたときもあった。と、バトル氏が、同じ言葉を私に投げかけてくる。よくよく聞いたら、「あなたは何歳?」と言っていたのだった。
何歳か訊かれているのに、「はい、はい」はない。
そんな二次会は、とりあえず9時すぎに中締めとなった。年に一度の、とても楽しい会だった。帰宅すると10時を回っていたが、大丈夫。「MR.BRAIN」は、ちゃんとタイマー録画してある。
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将棋ペンクラブ関東交流会2009(中編)

2009-05-28 02:15:37 | 将棋ペンクラブ
石橋女流王位との指導対局は私の苦手な相居飛車となったが、将棋は悪手さえ指さなければ、そう簡単に形勢が傾くものではない。
私は、とにかく離されないように心掛け、1手1手を落ち着いて指した。
では今回も、石橋女流王位へは事後報告とし、その棋譜を以下に記す。

先手(下手):一公 後手(上手):女流王位 石橋幸緒 手合割:平手
▲7六歩△3四歩▲2六歩△3二金▲2五歩△8八角成▲同銀△2二銀▲7七八銀△3三銀▲4八銀△6二銀▲4六歩△6四歩▲4七銀△6三銀▲7八金△5二金▲6八玉△5四銀
▲5六銀△4二王▲6六歩△7四歩▲5八金△3一王▲7九玉△4四歩▲3六歩△9四歩▲9六歩△1四歩▲1六歩△6五歩▲同歩△7三桂▲4八飛△6二飛▲6四歩△8四角
▲6七銀△6四飛▲6六歩△6二飛▲4九飛△6五歩▲同歩△5五銀▲8六歩△6五桂▲6六歩△7七桂成▲同桂△6六銀▲同銀△同角▲7三角△6一飛▲6四桂△4二金右
▲7二桂成△6三飛▲9一角成△7五歩▲6八香△7六歩▲6六香△同飛▲5五馬△7七歩成▲同金△6五歩▲6六金△7七銀▲7八歩△6六銀成▲同馬△同歩▲6一飛△2二王▲6六飛成△6五歩
まで、82手で石橋女流王位の勝ち。

指導対局とはいえ、タイトルホルダーと平手の対局だから負けて当然だが、中盤まではまずまず指せていたと思う。
75手目、飛車ではなく角取りに香を打ったのが自慢の1手。以下▲5五馬と飛車取りに引けては、さすがに優勢を意識した。しかし上手は平然と△7七歩成。
ここで相手がアマチュアなら、「飛車取りをうっかりしたんだ」と、喜んで▲6六馬と取るところ。だが、相手は天下の石橋女流王位である。
飛車を取っても△7六歩と繋がれる手がうるさいと思った。それなら▲7七金と喉から手が出るほど欲しい歩を手に入れ、以下△6三飛に▲6四歩と打ったほうがいいと考えた。
ところが石橋女流王位は▲7七金に△6五歩!と指した。
あくまでも飛車をくれるというのである。私はこれでペースが狂ってしまい、数手進んで、再び△6五歩と竜取りに打たれたところで戦意喪失、潔く投了した。以下は、▲6五同竜なら△3八角。また竜が逃げてもこの歩を足場に先手先手と攻められ、とても勝てる気がしない。シミズイチヨならともかく、私の棋力(気力)では、このあたりが投げ時であろう。
戻って、△7七歩成にはやはり▲6六馬と飛車を取るのが明快だった。懸念していた△7六歩には構わず▲7七金と取り、△同歩成▲同馬と清算する。以下△6五桂には▲6一飛の王手があるので、上手には△2二王の1回休みが必要となる。そこで遊んでいる4九の飛車を▲6九飛と回り、これは下手が有望だったと思う。
ただしこの手順中、△7六歩で単に△7八と、と金を取り、▲同玉に△5四桂と馬取りに打たれると、下手も容易ではない。上手は駒損だがすべての駒が捌けたのに対し、下手は大駒4枚を持つものの、桂香の遊びが大きいからだ。
とすると、▲5五馬と引いて優勢を確信した時点でも、形勢は微差だったのかもしれない。石橋女流王位の懐の深さを実感させる手順であった。
私が幹事の手合い係氏に敗戦を告げたら、かなりビックリされた。実は△7七歩成までの局面を幹事の2人が観戦していたらしく、「次は▲6六馬の1手だから一公氏必勝」と結論を出して、席に戻ったようなのだ。
幹事氏も残念がっていたが、もちろん私も悔しかった。
このあと、会員と5局目の対局がついたが、こういうときは気合いが抜けて、良い将棋が指せないものだ。果たして中盤でうっかり王手飛車を掛けられてしまい、これも必敗となった。ところが私はまたも妖しい勝負手を連発し、かなり形勢を挽回してしまうのだ。
ここでまた部分図を掲げてみよう。

先手:四段氏 1六歩、1九香、2六銀、2七歩、2九桂、3七歩、4八王、6三馬、6五銀 持駒:飛、角、金、桂2…など
後手:一公 2五桂、3二玉、3四銀、3五歩、4二金、5三歩、6四歩 持駒:飛、金、銀、歩
ここから△6八飛▲5八金△4七歩▲5七王△6五飛成と進んだ。ここで先手が▲4四桂とでも王手をすれば、恐らく私が負けていただろう。しかし先手は大事を取って▲4七王と歩を払った。以下△4六銀▲3八王△4七銀打▲2八王に、私は「しょうがない」と弱々しい手つきで△5八銀不成と金を取る。
実はこれがこっそり詰めろ。△3八金▲1八王を決めないで、単に金を取るところがミソである。
先手は▲4四金と打ったが、私にペタッと△3八金と打たれ、飛び上がった。以下▲同王の1手に、△4七銀引成で、先手の投了となった。
今日はこんな勝ち方ばっかりだ。これで親睦対局は5勝0敗となったが、実質2勝3敗である。この体たらくでは、次の対局は絶対負ける。私はこれであがることにした。
ところが湯川博士統括幹事から、「一公君、このコと6枚落ちで1局やってくれんか」と言われる。
見ると、相手は妙齢の美人である。これは喜んでもう1局指す1手であろう。手合い係氏が「あんた将棋はあがったんじゃないの?」とあんぐりしていたが、知ったことではない。
彼女は友人の女性のお供で来たらしい。こういう将棋は緩めるべきなのだろうが、どうも私は本気を出してしまう。私が高校生のとき、文化祭で対局相手の女子高生にこれをやって大失敗をしたのに、一向に懲りていない。
頬がほんのりと紅い彼女は、正座を崩して指しているが、膝下をペシャッと拡げているので、こちらから見るとその脚が「W」に見える。
▲4九玉に△5七銀と打って詰めよをかけようとすると、湯川幹事がやってきて、「一公君、せめて1手違いにしてくれよ」と低音で囁く。
なんだか「1手違いで負けなさいよ」に聞こえた私は、△7八銀と打ち、△8九銀成とソッポの桂を取った。何たる手か。しかしこれも女性への将棋の普及と思えばやむを得ない。
その結果、誰にでも分かるカンタンな1手詰を長考のすえ指され、私は見事に討ち取られたのだった。
懇親会の4時まで、まだ時間がある。これから楽しい感想戦を…と思いきや、湯川幹事がそのまま残り、寄せのミニ講座が始まってしまった。
しかしそれも5分ほどで終わり、やっと湯川幹事が抜けて、楽しい楽しい雑談…いや、感想戦の始まりである。
聞くと、彼女は木村一基八段のファンだった。気のせいかもしれないが、木村八段はなぜか女性に人気がある。あの激しいアタマが女心を鷲摑みにするのだろうか。彼女は木村八段が棋聖戦の挑戦者になったことも知っていたし、王座戦5番勝負で敗退したことも知っていた。しかし木村八段は妻帯者であるから、どうということはない。
それからも私はなんとか会話をつなげ、いい雰囲気になっていった。
だが、次の私の質問に対する彼女の答えが、私を奈落の底に突き落とした。世の中、知らないほうがいいことはいっぱいある。
「あの、将棋はよく指すんですか?」
「はい、主人とよく指しています」
(つづく)
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将棋ペンクラブ関東交流会2009(前編)

2009-05-27 01:09:47 | 将棋ペンクラブ
先週の23日(土)に将棋ペンクラブ関東交流会が行われた。
会にはいままで3回参加したが、開会の10時から入ったことはない。今年は仕事も休みだし、たっぷり将棋を指すつもりだったので、早めに家を出た。
前日に続いて東京・将棋会館へ行くのは、初めての経験である。しかし将棋を指す階が違うので、別の建物へ訪れた気がする。
服装も前日に続いてスーツ。昨年は夕方からの日本女子プロ将棋協会(LPSA)のパーティーに参加するためにスーツを着たが、ペンクラブの親睦対局に思いのほか気合が入ったので、縁起を担いで今年もスーツを着用した。ただし今年は、女流棋士会35周年パーティーのほうへは行かない。
4階の大広間に10時20分ごろ入室すると、「おっ、エース登場!」と声がかかる。
4年前は無名だったことを考えると大した出世だが、私がマイナビ女子オープン挑戦者決定戦の懸賞スポンサーになり、「週刊将棋」に私の写真が載ったことで、冷やかされたにすぎない。
今年は湯川博士統括幹事も、「よっ、一公君!」と声を掛けてくれた。ようやく顔を覚えてもらえたようだ。
そのほかの幹事の皆さんにも挨拶をして、早速対局をつけてもらう。この1年、LPSAの女流棋士にお稽古をつけてもらった、その成果が問われるのだ。
1局目は相手の△ゴキゲン中飛車に一進一退の攻防となった。やや苦戦気味だったが、終盤になり、駒が揃ったので、一気に詰ましにいく。簡単な部分図をあげると、
先手(私):3二竜、9三歩、9九香 持駒:角、金2、桂
後手:4三歩、5二歩、7一桂、7二銀、7四銀、8二王、8三歩、9一香 持駒:角など
後手王は上部に逃げられない形だった。
ここから、▲9二金△同香▲同歩成△7三王▲8二角△6三王▲4三竜△5三角▲5五桂△6二王▲7一角成△同王▲8二金△6二王、と進んだ。
ここで平凡に▲7二金と銀を取り、△同王に▲5二竜で、後手玉は即詰みだった。それが分かっていながら、少しでも盤上に自分の駒を置いておこうと▲5四桂と打ったのが大悪手。駒音高く△5一王と引かれて愕然とした。
詰みがないのだ。先の▲5四桂がなければ、▲7二金に△5一王でも、▲6三桂打で詰んでいた。
呆然としつつ、私は▲6二金と銀を取って後手王に必死をかける。
ここで後手からの王手ラッシュがきたが、なんとか玉を逃げて、緒戦は冷や汗ものの勝利となった。
2局目、これがひどかった。相手の▲筋違い角に指し手が分からず、角金交換の駒得になったものの、2枚の角をヘンなところに打って、こちらの飛車は蟄居する始末。完全な必敗形だったが、ここから相手の緩手連発で大逆転となってしまった。
この将棋は詰将棋作家の岡本真一郎氏に似た方が序盤から観戦していたらしいのだが、いつの間にか「ふたりがかりの将棋」になって、最後は3人で「先手は100回勝ちを逃した!!」と叫んだものだった。
3局目は、「近代将棋」元編集長の中野隆義氏との一戦。△中野氏のゴキゲン中飛車で始まった将棋だが、中野氏が1筋を攻めて、私に香を先に渡したのがやや無理筋だった。こちらがその香で飛車を取っては優勢となった。
以下、こちらも角を詰まされ、最後はかなり追い上げられたが、中野氏に諦めの気持ちがあったみたいで、最後は△7七歩成に▲同金ではなく、スッと▲6九玉と引いて、中野氏の投了。これで望外の3連勝となった。
4局目は、相手の3手目▲3六歩戦法から意外な相振り飛車となり、これもまったく指し方が分からなかった。
ポンポンと桂を跳ばれ端攻めをされ、手にした香で▲3五香と打たれた。△1四飛に▲3三香成と無条件に桂損をしては、私の不利が明白となった。以下、その成香で飛車もただで取られ敗勢となったが、私はなんだかんだと先手陣にイヤ味をつけ、最後は逆転勝ちとなってしまった。なんだか今日は妙に、勝利の女神に微笑まれている。
この前後に石橋幸緒女流王位(LPSA)が見え、3面指しの指導対局が用意された。しかし皆さん対局中で空きがあり、私が指導していただくことになった。
タイトルホルダー相手に、私は畏れ多くも平手で挑む。
私の▲7六歩に石橋女流王位△3四歩。3手目▲2六歩と指したところで、石橋女流王位から、「何か戦法のリクエストはありますか?」と訊かれる。
将棋はどんな手を指してもいい、自由なゲームだ。たとえ指導対局とはいえ、上手の作戦を限定させるわけにはいかない。だから生意気にも
「いえいえ、それは先生のお考えになった手をお指しください」
と言うと、石橋女流王位は△3二金。以下▲2五歩に△8八角成!ときた。
プロで大流行の1手損角換わりである。これは本気だな、と思った。
(つづく)
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