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一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

山下奨励会三段、次点2獲得のあと

2025-05-05 23:34:41 | 将棋雑考
2日に指された第38期竜王戦ランキング戦5組準決勝・山本博志五段VS山下数毅奨励会三段戦は、山下三段が勝ち、決勝進出とともに、4組昇級を決めた。
この事態に備え、日本将棋連盟は4月、奨励会員が4組昇級を決めた場合、「次点1」を付与すると発表していた。よって山下三段は、すでに持っていた次点1と合わせ「次点2」となった。イレギュラーな「四段」としては、棋士編入試験合格に匹敵する快記録である。
だが、すぐに四段ということにはならない。すなわち、現在参加している第77回奨励会三段リーグで、「降段点を取らなければ」、そこで四段(フリークラス)となるのだ。
現在山下三段は同リーグを1勝1敗。降段点は4勝以下だから、残り16局を4勝12敗でよい。いまの山下三段なら、楽々クリアできる数字である。
……と、ふつうはここで記事が終わるのだが、当ブログは、もう少し掘り下げる。
三段リーグを5勝13敗で終えた場合、棋士になれてもフリークラスなので、面白くない。よって山下三段は全力を出し、上位2名に入って、即順位戦入りを目指すだろう。もちろん、それが正解である。
だがほかの三段陣は、複雑な思いである。今回の三段リーグは40名。昇段は2名の、相変わらず狭き門だ。だから、四段枠は多ければ多いほどよい。
つまり、山下三段が次点2で抜けてくれれば、今期の四段昇段は3名となる。しかし山下三段に上位2名に入られてしまうと、四段はいつもの2名に戻ってしまうのだ。
実はこれと同じ「悲劇」が以前もあった。2004年の第35回三段リーグで、16歳の佐藤天彦三段は12勝6敗の成績で、次点2となった。
ふつうならここで四段昇段となるところ、佐藤三段は師匠の中田功八段と相談のうえ、真の実力を付けてから堂々と四段になる、とハラを決め、四段昇段を見送ったのだった。
私だったら対局をこなしつつ(すなわち対局料をもらいながら)、フリークラス脱出を狙うところだが、天才は考えることが違うのである。
果たして佐藤三段はその2年後の2006年、第39回三段リーグで2位を取り、堂々と四段昇段となったのだった。
これはこれで、めでたく思える。だが、佐藤新四段が2004年に四段になっていたら、第39回は別の誰かが四段になっていた。そのズレは現在まで続き、誰か1名が四段になれず、退会したことになる。これは相当な悲劇だと思うのである。
だから山下三段は、爆発的に勝ってはいけない。12勝6敗くらいに終わり、3位で次点1を獲得してもいけない。その次点ですら、ほかの三段陣に与えたいからだ。だから理想をいえば、順位の下位のほうで、ひっそりと四段昇段を確定させるのがよい。
むろんこれだと、すぐに順位戦に参加できず、収入も少なくなるが、山下三段なら、すぐにフリークラスから脱出できる。それより棋士がひとり増えたほうが、将棋界の発展につながると思うのである。
山下三段に片八百長を推奨しているわけではない。わけではないが、無責任な将棋マニアとしては、いろいろなことを考えてしまうのである。
それより山下三段は、まだ竜王戦が続いている。5組決勝の高田明浩五段戦に勝てば、決勝トーナメントに出場できる。いっそのこと竜王に挑戦しちゃえばいい。そのときプロになっていれば、いきなり「七段」である。
まさに竜王ドリームではないか。
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羽生会長の次は?

2025-04-06 23:33:38 | 将棋雑考
きのうの続きになるが、日本将棋連盟会長の羽生善治九段が1日、来期も順位戦で指すことを表明した。羽生九段は前期順位戦でB級1組から降級しており、その去就が注目されていたのだ。
この表明には続きがあり、会長職は今年限り、とのことだった。なるほど、順位戦参加の表明が遅かったが、会長辞職と合わせワザの公表なら、ギリギリまで伸ばした気持ちは分かる。
ただ、羽生九段が会長に就いたのは2023年。当時羽生九段は52歳だったから、私は羽生九段が10年くらい会長職を続けると思った。
しかし羽生九段は現役棋士に比重を置く決断をしたわけだ。免状の申請をしたとき、羽生会長の署名がないとさびしいが、仕方ない。これからの羽生将棋を楽しみにしよう。
そして注目されるのは、次期会長だ。ここまで理事に立候補したのは、東京(定数5)が森下卓九段(58)、千葉幸生七段(46)、片上大輔七段(43)、瀬川晶司六段(55)、清水市代女流七段(56)。関西(定数2)が脇謙二九段(64)、糸谷哲郎八段(36)。
届け出と定数が同じになったので新任投票となるが、これら立候補者を否認する理由もないので、このまま全員が選出されるであろう。
そしてこの7名から新会長が決まることになるが、さて、誰か。
ふつうに考えれば、棋歴が長く実績もある、森下九段である。タイトル戦登場6回、棋戦優勝8回、そして先日は公式戦1000勝を達成した。実直を絵に描いたような棋士で、言葉遣いも丁寧でよい。だからスポンサー受けもいいと思う。
よって森下九段でいいのだが、大穴として、清水女流七段も考えられる。清水女流七段は2017年から常務理事を務めており、理事歴は長い。そして清水女流七段にあって森下九段にないもの、それは「タイトル」である。女流棋戦とはいえ、清水女流七段のタイトル43期は、堂々の大記録だ。
将棋連盟次の100年のスタートとして、「清水会長」の誕生はフレッシュである。女性四段が誕生するかというご時世、一足先に女性会長が誕生してもいい。それに、羽生会長の「若い世代に任せたい」のメッセージにも合致する(と思ったら、清水女流七段はけっこう歳を取っていた)。
いや、これは清水会長もあるのではないか?
理事選は6月。さて、どうなるか。
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A級VS.B級2組選抜

2025-03-16 23:43:32 | 将棋雑考
プロ野球・巨人の第二次長嶋茂雄政権のとき、巨人があまりにもスター選手を獲りすぎたのと、主要選手がケガや不調で二軍落ちしたため、一軍より二軍のほうが豪華じゃないか、と言われたことがあった。
将棋界のほうも、B級1組以下にタイトルホルダーが多数出現した時期があり、A級よりB級1組のほうが強いんじゃないか、と言われた時期があった。
第83期B級1組順位戦では羽生善治九段が降級した。羽生九段は進退を表明していないが、仮にB級2組で指すとなると、B級2組はかなり豪華になる。実力もスター性も、だ。
そもそもA級とB級は定員制なので、実力のある棋士がB級2組まであぶれてしまうのだ。それに加えて、下からは実力のある若手が昇級してくる。だから熾烈な戦いが展開され、5勝5敗でも降級点になるという、異常事態になる。
そこで、第84期のA級メンバーに対抗すべく、B級2組から10名を選抜したいと思う。
まず、羽生九段は確定。
続いて、谷川浩司十七世名人も推したい。谷川十七世名人も還暦を過ぎ、勝率はそれほどでもないが、レジェンドは外せない。
続いて、藤井猛九段と深浦康市九段。藤井九段は解説名人の座に収まっているが、そのスター性から、外すわけにはいかない。
深浦九段も、なんでB級2組に収まっているのか分からない強豪である。
同じ意味で、丸山九段もこのクラスにいてはいけない棋士だ。当然、上位10名に入る。
屋敷伸之九段、木村一基九段の、第82期降級組も外せない。
おっと久保利明九段を忘れていた。第83期では菅井竜也八段がA級から降級してしまったが、久保九段がA級にいてもおかしくない。
ここまで全員、タイトル経験者である。そして若手からは、第83期でC級1組から昇級した、斎藤明日斗六段と藤本渚六段を入れる。これで10名。第83期B級1組から降級の三浦弘行九段、山崎隆之九段は、今回は控えとさせていただく。
以上を整理すると、こうなる。

【第84期A級】
永瀬拓矢九段or藤井聡太竜王・名人
佐藤天彦九段
渡辺明九段
佐々木勇気八段
増田康宏八段
豊島将之九段
中村太地八段
千田翔太八段
近藤誠也八段
糸谷哲郎八段

【第84期B級2組選抜】
羽生善治九段
谷川浩司十七世名人
藤井猛九段
深浦康市九段
丸山忠久九段
屋敷伸之九段
木村一基九段
久保利明九段
斎藤明日斗六段
藤本渚六段

いかがであろう。A級に藤井聡太竜王・名人が出てくるとアレだが、かなりいい勝負が期待できると思う。
毎日新聞も朝日新聞も、第84期順位戦は、B級2組の将棋を多く載せるべきである。
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藤井竜王・名人の課題

2025-01-20 14:01:48 | 将棋雑考
19日に「ポートメッセ名古屋」で、第18回朝日杯将棋オープン戦本戦トーナメントが行われた(主催:日本将棋連盟、朝日新聞社)。この日の目玉は藤井聡太竜王・名人の登場で、開催が地元でもあり、多くの藤井ファンが訪れたと思われる。
朝日杯は優勝賞金750万円。本戦は1日に2局指す早指し戦なので、うまくいけば実働2日で大金が手にできる。もっとも出場棋士に、金額のことは頭にあるまい。純粋に目の前の将棋に勝つことを考えているだけだ。
藤井竜王・名人は1回戦で阿久津主税八段に勝ち、2回戦で服部慎一郎六段と当たることになった。
服部六段は以前からその実力を高く評価されていたが今年度は顕著で、この対局の前まで32勝4敗.889。年度も終盤の1月19日昼の時点で4敗、というのが意味不明だが、ちなみにその4敗は王将戦、王位戦、叡王戦、B級2組順位戦だった。
本局は服部六段の先手で、矢倉になった。藤井竜王・名人は追随せず、玉を中住まいに構える。
これ、以前も当ブログで記したことがあるが、後手は損な形だと思う。先手陣は金銀3枚で上部が厚いのに対し、後手玉は露出している。たとえば△4一玉の形で先手が指してもらいたい手は「△5二玉」ではないだろうか。そのぶん先手が得している理屈で、攻め合いになれば玉が戦場に遠い先手に分があると思う。だから素人の考えながら、このまま進行すれば服部六段が勝つと思った。
服部六段が銀損を覚悟で突撃する。その見返りは桂得で、これで釣り合いは取れていると見ている。
本局もABEMAが無料中継をしてくれている。最近は有料中継が多いが、私はおカネを出してまで中継を見たくないので、今後はABEMAを見る機会も少なくなると思う。
解説は佐々木大地七段。見ると大盤の駒操作がスムーズに動いている、どうもタッチパネルになっているようで、これは使いやすそうだ。
盤面は服部六段が▲5六桂と打ったところ。形勢は服部六段がやや良い。

佐々木七段は、以下△5五銀▲4四桂打△同銀▲同桂△同角▲5三銀△同角▲同歩成以下を説いていた。
実戦もそれに近い形に進んだが、服部六段は▲5三銀のところでじっと▲4五歩と突いた。これがプロらしい手で、私なら何はともあれ▲5三銀と打っている。だが、目先の駒得にとらわれない▲4五歩が、服部六段の好調の証左なのだろう。
ここで形勢は五分に戻ったのだが、流れは服部六段のままである。以下も好調に攻め、119手まで服部六段の勝ちとなった。
本局、好調の服部六段がそのまま表れた感じだった。
対して藤井竜王・名人はまたも完敗。先日ネットの記事にあったが、藤井竜王・名人は棋士になってから、後手番での初手はすべて「△8四歩」だったという。だが今後は作戦面も考え、「△3四歩」もあるかもしれない、と述べていた。
本局の進行でも、後手が△5二玉形を採用する限り、かなり先手が深く研究を深くできる。藤井竜がそれを嫌うなら、2手目に△3四歩を指すしかない。今後、藤井竜王・名人の後手の作戦が興味深くなった。
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藤井竜王・名人は年度勝率8割を達成できるか

2024-12-22 23:38:26 | 将棋雑考
藤井聡太竜王・名人は2016年10月デビュー。その年度は10戦全勝で終え、2017年度も連勝を継続し、新記録の29連勝まで伸ばした。勝率は優に8割を越えたが、藤井竜王・名人にとってはこれが普通の数字だったことが後に分かった。なぜなら藤井竜王・名人は以後毎年、勝率8割を記録したからだ。
実力伯仲の将棋界の中で、勝率がつねに6割を越えていれば一流であろう。7割なら楽にタイトルを獲れる。それが勝率8割とくれば夢の数字で、しかも7年連続で記録することは考えられない。
メジャーリーグのイチローは10年連続200安打を記録したが、それに匹敵する大記録といえる。
だが今年度の藤井竜王・名人は27勝9敗・勝率.750と苦戦?しているのだ。ここから.800にするには相当難しく、たとえば9連勝で36勝9敗.800となる。
では、藤井竜王・名人が残り3ヶ月で巻き返せるか、検討してみよう。
まず、藤井竜王・名人の残る棋戦を記してみる。

第10期叡王戦本戦
第74期王将戦七番勝負・対永瀬拓矢九段
第18回朝日杯将棋オープン戦本戦トーナメント
第50期棋王戦五番勝負・対増田康宏八段
第74回NHK杯4回戦~

藤井竜王・名人は竜王、名人なので、竜王戦ランキング戦と順位戦は指さない。よって、この5棋戦となる。
続いて、各棋戦の最大勝数を記す。

第10期叡王戦 ○○○○
第74期王将戦 ○○○○
第18回朝日杯将棋オープン戦 ○○○○
第50期棋王戦 ○○○
第74回NHK杯 ○○○

以上、最大18勝。よって今年度の藤井竜王・名人は最大45勝となる。
王将戦、棋王戦は番勝負だから勝ち数は見込めるが、それでも、どちらも1敗しただけで勝率はほとんど上がらない。
叡王戦、朝日杯、NHK杯はトーナメント戦なので、負けた時点で相当つらい。ことに叡王戦の敗戦は、二度目の八冠王の夢がついえるので、藤井ファンにはそちらのショックのほうが大きいだろう。
あらためて勝率8割のパターンは、「36勝以上9敗」「40勝以上10敗」「44勝以上11敗」となる。12敗すると48勝が必要だが、上記のとおり、今年度の最大勝数は「45」なので、あと2敗しかできない。
となると、勝ちは17勝が必要となる。これを一例にすると

第10期叡王戦 ○○○○
第74期王将戦 ○○○●○
第18回朝日杯将棋オープン戦 ○○○●
第50期棋王戦 ○○○
第74回NHK杯 ○○○

となる。さすがの藤井竜王・名人も、今年度の勝率8割は相当厳しくなった。
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