一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

7月4日のLPSAジャンジャンマンデー(後編)・Wパパ氏との一戦

2011-07-10 00:11:52 | LPSAマンデーレッスン
Wパパ氏は、大野八一雄七段との指導対局でも、平手で何番か入れている、LPSA芝浦サロン屈指の強豪である。私との対局でも私の0勝2敗で、本局は胸を借りる一戦だった。
振り駒で私の後手となった。持ち時間は10分、秒読みは30秒である。

▲7六歩△3四歩▲2六歩△8四歩▲6六歩△8五歩▲7七角△6二銀▲5八金右△4二銀▲6七金△3二金▲7八金△6四歩▲8八銀△6三銀▲6八角△5四銀▲2五歩△6五歩▲同歩△同銀▲2四歩△同歩▲同飛△6六歩▲7七金寄

3手目▲2六歩に私は△8四歩。ふつうに指しては負けそうなので、横歩取らせから△4五角戦法に出るつもりだった。これなら定跡の力を借りて、終盤の入口まで互角に進めることができるからだ。
ところがWパパ氏は▲6六歩。矢倉志向だが、Wパパ氏の矢倉の研究量はタダモノではない。前局のように一手のミスで攻めつぶされては敵わないので、私は△8五歩▲7七角を決め、手将棋に持ち込む。
Wパパ氏は矢倉を構築し、私は△6四歩から動いていった。
▲2四同飛に私は△6六歩。ここに歩を打たせてくれたので、模様がよくなったと思った。やむない▲7七金寄に、次の手が、本局一の好手だった。

△8四飛▲6四歩△同飛

先手の理想手順は、▲3四飛△4一玉▲6四飛△6二飛▲同飛成△同金▲6四飛△6三飛▲8四飛だ。
もちろんこうはならないが、▲3四飛を許してはおもしろくないので、私は△8四飛と浮いた。これが先手の狙いを消した好手だったようだ。
Wパパ氏は▲6四歩と垂らす。一見好手風だが、ここは▲2五飛△6四飛▲2四歩△3三桂▲2八飛△2五歩▲3六歩の進行もあり、結果的にはこちらのほうがよかった。
私は△6四同飛。先手の次の狙いは見えたが、その次の切り返しがあるので、指せると思った。

▲2二飛成△同金▲5五角△2五飛

Wパパ氏は飛車角交換ののち▲5五角。狙いの一手だ。これに私が△4四飛とひるまず、ノータイムで△2五飛と打ち返したのが用意の一着だった。このときは、横で藤森奈津子女流四段がこの将棋を見ていたから、指がしなった。実質的に、ここで勝負は終わった。

▲6四角△2九飛成▲4九飛△1九竜▲3六歩△1八竜▲5五角△3三金▲2八歩△6二香▲3八銀△5四歩▲4六角△5五桂▲5八玉△6七歩成▲同金寄△同桂成▲同金△6六歩▲7七金△6七金▲同金△同歩成▲同玉△5六銀

▲6四角△2九飛成となり、角桂交換で私の駒損だが、竜の力が絶大で、ここでは後手勝勢。先手は居玉のうえ、左辺の金銀の形がひどい。銀取りを防いで▲4九飛と手放さざるを得ないようでは、もはや大勢決した。
私は6七に駒を打ちたいのをこらえて、△6二香、△5五桂と据える。これも局後Wパパ氏に褒められた好手。6七へは歩が成りたいのだ。まったく、本局の私は冴えていた。
▲5八玉には△7六銀もあったようだが、私は△6七歩成から決めに行った。清算して、△5六銀の両王手!

▲5八玉△6八香成▲同玉△6七金▲5九玉△5七銀不成▲同角△同金▲5八金△6六角▲5二歩△4一玉▲6八銀△5八金▲同玉△6七歩▲同玉△8八角成▲7七金△6六歩▲同玉△2八竜▲3九香△9九馬 まで、84手で一公の勝ち。

△5六銀(▲同玉は詰み)と気持ちのいい手を指したので、続けて△6八香成としたが、これは功を焦った。こんなに慌てなくても、△6七銀成▲4八玉△6八成銀と黙って角を取っておけば、後手の勝ちだった。
本譜▲5九玉にも△6八角を利かすべきで、たんに△5七銀不成としたため▲同角△同金となり、盤上がサッパリして、めんどうなことになった。
Wパパ氏は▲5八金と受けたが、ひねって▲6八銀もあったようだ。
本譜は△6七歩から△8八角成と銀を補充し、今度こそ私の勝ちが確定した。
△9九馬でWパパ氏投了。感想戦に入るが、ここで驚くべき事実を聞く。Wパパ氏は前日、埼玉県のアマ名人戦予選に出場し、本局と同様の戦いになり、負けたらしい。つまりWパパ氏は、自分の作戦の可否を、本局で再び問うたわけだ。ところが、私の指し手が前日の相手とまったく同じで、しかもまったく受けがなく、二重に驚いたという。
しかし驚いたのは私のほうだ。アマ名人戦に出場するくらいだから、相手も腕に覚えがあるはずだ。その人と同じ手を指したと言われては、私もいい気分になる。
「オレってホントは強かったのかなあ」
私は渾身のジョークを飛ばすが、周りはクスリともしなかった。
Wパパ氏は納得のいかない将棋だったが、悪びれることなく感想戦に臨む姿は、さすがだと思った。
Wパパ氏は、
「いやあ、△2五飛までの指し手は、大沢さん完璧でしたね」
と、最後まで私を持ち上げた。
その後は雑談だが、Wパパ氏からは、研究会に出席したときに出たという「矢倉穴熊」の攻略法を聞いた。これがまた鮮やかな手順で、私は唸るしかなかった。Wパパ氏はこんな深いところまで研究しているのか。彼はいったい、何者なのだろう。
本局、Wパパ氏に断りなく、全譜を載せさせていただいた。Wパパ氏には申し訳なかったが、Wパパ氏の実力がこんなものではないことは、冒頭の記述でも明らかである。だがそれだけに、社団戦の成績(2勝2敗)は、不可解だった。
私はというと、きょうは不出来な将棋もあったが、白星が並べば気分もよく、なかなか充実した1日だった。これだから将棋はやめられない。
放課後は、途中入室のA氏と、神田駅前で一杯。またごちそうになってしまった。いつもいつも申し訳ない。
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7月4日のLPSAジャンジャンマンデー(前編)・香織、乱れる

2011-07-09 01:38:58 | LPSAマンデーレッスン
4日(月)は、「LPSAジャンジャンマンデー」に行った。ジャンジャンマンデーとは、「マンデーレッスンS」のスピンオフ(独立企画)で、短い持ち時間で、ジャンジャン将棋を指しまくるものである。講師の藤森奈津子女流四段(塾長)、船戸陽子女流二段、松尾香織女流初段も参戦し、優秀な成績を収めた部員には、副賞も出る。月に1回活動し、3ヶ月で1クール。今月から第3期が始まった。
私は第2期で最多対局賞を獲ったので、表彰式への出席も兼ねて、お邪魔した。時間は午後6時から8時半までだが、まだ部員が揃っていないので、表彰式は後回しとなる。
この時点で部員は8名。私は松尾女流初段との対局になった。今回は「芝浦サロン」が船戸女流二段の担当なので、松尾女流初段も忙しいが、部員を暇にさせてはいけない。
松尾女流初段とジャンジャンで指すのは初めてだが、松尾女流初段は2度目だという。しかし私の記憶のほうが正しい。私が松尾女流初段との対局を忘れるわけがないからだ。
振り駒で私の先手。▲7六歩△3四歩▲4八銀△5四歩▲5六歩。松尾女流初段が後手番ならゴキゲン中飛車に来るだろうとキメ打ちしての出だしである。5五の位を取られては厄介なので、▲5七銀~▲6七銀の二枚銀で対抗しようと思った。
松尾女流初段は
「毎回いろいろ工夫してきますね」
とつぶやき、中飛車に振った。
私の目論見どおりになったが、玉頭位取りに出たのはどうだったか。松尾女流初段に角を換わられ、飛車を2筋に振られてみると、駒が偏っている先手は、強く戦えなくなった。
松尾女流初段、△6九角。3六に駒を作らせては負けなので▲1八角と対抗したが、これではいかにもつらい。おまけに、△2五歩を▲同歩と取ったのが手拍子だった。
松尾女流初段、△2七歩。これを▲同角では△2五飛と走られて身動きできないので▲同飛だが、(4七から)△3六馬とされ、形勢を損ねた。
戻って▲2五同歩では、▲5八金と馬を殺すところ。△5八同馬▲同飛△2六歩なら、▲2八歩と謝っておいて先手十分だった。
本譜は飛車角を取られ、先手敗勢。▲6七金、6八金、7八銀、7九金、8八玉、9六歩、9八香 △4九竜、8六桂・持ち駒・銀、歩…の局面で、松尾女流初段が△9七歩▲同玉△9八桂成としたのが、秒読みに追われた緩手。ここは△9九銀なら、先手の投了だった。
以下も先手敗勢の局面が続くが、松尾女流初段は慌てまくる。私は自玉が固いだけで、完全な指し切り模様。もうどう指されても負けなのだが、松尾女流初段はまったく手が見えない。
(確かこのころだったと思うが)隣に船戸女流二段が来て、Wパパ氏と対局を始めた。かすかに香水の香りがして、きょうの船戸女流二段も素敵だが、見とれている余裕はない。
こちらは松尾女流初段の疑問手連発と私の好手が織り交ざり、形勢が急接近する。
▲5二銀、7五歩、7六桂、8四歩 持ち駒・銀、歩…
△3三飛、3五馬、7二王、7三歩、8一桂 持ち駒・いっぱい
の局面で、私は▲6四歩。これに松尾女流初段がどう指したか忘れたが、怖いようでも△6二歩と受けられていたら、負けだった。
本譜は▲6三歩成△同飛▲8三歩成△6二王▲6三銀成△同王▲3三飛△5三香▲6四歩△6二王▲3二飛成 まで、私の勝ち。
このあたりの松尾女流初段の狼狽ぶりは、指していて気の毒なほどだった。△5三香では、ほかの合い駒がなかったものか。本譜は飛車成で私の勝ちである。
説明が前後するが、私の▲6四歩では、▲6三歩だった。これに△6一歩なら▲8三銀△7一王▲6四桂で後手受けなしなので、▲6三歩には△同飛と取ることになり、それで本譜に合流できた。
負けた松尾女流初段は、
「大沢さん、強いですー」
と褒めてくれたが、負け将棋をこんなに粘ってしまい、松尾女流初段には申し訳ないことをした。
ただ、松尾女流初段はいかんせん秒読みに弱い。私の見立てが間違いでなければ、松尾女流初段はLPSAの中で、最も将棋のセンスがよい。それで優勢を築いても、秒読みに慌てて好局を落としては、なんにもならない。
松尾女流初段はマイナビ女子オープンの一斉予選対局で、鈴木環那女流初段と対戦する。難敵ではあるが、持てる力を100%出せば、きっと勝てる。それには秒読みの克服が肝心だ。ここはご主人のアドバイスを仰ぐのが最善だろう。
2局目は好漢・ミスター中飛車氏と。先手・中飛車氏の中飛車に、私は6筋(後手だから4筋)位取り。中盤、△7六飛と角(7七)金(5六)両取りに打ったところでは必勝を信じて疑わなかった。ところがこの将棋が、もつれる。
中飛車氏は8筋に香を2本立てる。私は△1三金と受けに回るが、こんなところに金を打つようでは流れがおかしい。しかしここでも秒に追われた中飛車氏が正着を逃し、どうにか一手勝ちを収めることができた。
感想戦ではどの変化も際どく、私が負けていても不思議ではなかった。それにしても、あんなに優勢な将棋をこれだけ追い込まれるとは…。将棋は本当に恐ろしい。
ここで表彰式の時間となった。連勝賞や最高勝率賞、最多勝利賞の表彰のあとに、私の表彰。成績が優秀ならばいいが、6勝6敗の表彰は複雑な気持ちだった。
3局目。対戦相手に、Wパパ氏の名前が呼ばれた。これは難敵と当たってしまった。しかし本局が、私の「今年一番」の将棋となる。
(つづく)
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6月20日のLPSAジャンジャンマンデー(後編)・中倉宏美女流二段に負ける

2011-06-25 11:54:48 | LPSAマンデーレッスン
まさに異例の再戦であるが、中倉宏美女流二段は現在6戦全勝のため、「連勝ストッパー」として、私に白羽の矢が立ったらしかった。
宏美女流二段はきょうもミルキーである。凛として気高く、その貌は白亜の彫像のようだった。
またも私の先手で、居飛車対三間飛車の対抗形となった。私は急戦策を採る。▲5七銀左から、▲5五歩~▲4五歩と仕掛けた。△5三銀▲4六銀に、宏美女流二段は△5六歩。ここは△5四銀も有力だが、宏美女流二段はいつも△5六歩である。これが宏美女流二段の「マイシステム」なのだ。
数手後、宏美女流二段は△2四歩と反撃する。その局面が下。

先手・一公:1七歩、1九香、2五歩、2八飛、3六歩、3七桂、4五歩、4六銀、5六銀、5八金、6七歩、6九金、7六歩、7八玉、8七歩、8八角、8九桂、9七歩、9九香 持駒:歩
後手・宏美女流二段:1一香、1三歩、2一飛、2四歩、3三桂、3四歩、4二金、5三銀、6一金、6三歩、7二銀、7三歩、8一桂、8二王、8三歩、9一香、9四歩 持駒:角、歩2

先手の飛車が「2六」ならこの筋があり、昭和53年の名人戦昇降級リーグ1組(現在のA級)・米長邦雄八段×勝浦修八段戦で、勝浦八段がこの手を指したことがある。しかし本局では▲2八飛なので響きが薄い。とはいえ△2四歩を▲同歩では△2七歩▲同飛△3八角なので、私は▲3五歩と攻め合った。
宏美女流二段は△2五歩。ここで私が指した▲2二歩が、ココセ級の大悪手だった。△同飛なら数手後の▲3三歩成が飛車に当たるという読みだが、手順に△5一飛と逃げられ、大損をした。
感想戦では、▲2二歩を利かさずに▲3四歩と攻める手が検討された。以下△3六歩▲3三歩成△3七歩成▲4二と△2八と▲2二歩が進行の一例だが、▲2二歩で飛車を取り返せれば、先手が金得で優勢。ほかの変化もやってみたが、いずれも先手十分だった。
本譜は▲3四歩△3六歩▲3三歩成△3七歩成▲2五飛に、△6四銀が大きな手。5六の銀を取らせるわけにはいかないから▲5七歩の辛抱だが、宏美女流二段は一転して△4一金。私も▲3七銀とと金を払い、新規蒔き直しとなった。
しかし以後は宏美女流二段の軽快な攻めに遭い、私は無念の投了となった。
「大沢さん、負け」
と、船戸陽子女流二段の声が聞こえる。ここで連勝ストッパーになれば、船戸女流二段の私を見る目が少しは変わったかもしれないのに、残念な敗局となってしまった。
これで第2期のジャンジャンマンデーが終了した。私は12局戦い、6勝6敗(●○●○●○●○○○●●)の五分だった。対戦表を見ると、私は「最多対局賞」にすべりこんだようである。しかし同時に、次回(7月4日)のジャンジャンマンデーで行われる表彰式にも参加せねばならなくなった。どうも先方のネライにはまるようでおもしろくないのだが、マンデーレッスンS講師が、私のために賞品を買ってくれると思うと、欠席はできない。やはり来月も、参加してしまうのだろう。

帰りはA氏と神田へ。以前も行ったことのある、A氏馴染みの店に入った。カウンターにいた店長(だと思う)はアジア系の濃い顔をしているが、将棋界の事情に詳しく、鉄道マニアでもあり、A氏と私の趣味にピッタリ合っている。話していて、楽しい人である。
A氏はビール、私はウーロン茶で乾杯。私は下戸だが、ウーロン茶でも十分酔えるので、構わない。
A氏の著した書物が、朝日新聞の某エッセイで取り上げられるという。
「ボクの本まで取り上げるなんて、いよいよネタがなくなってきたかな」
とA氏は謙遜しつつも、うれしそうだ。私は別にうれしくも何ともないが、
「それはよかったですねえ」
と、にこやかに答えておく。
2時間ほど、談笑した。会計はA氏がほとんど持ってくれたが、私のほうも大ネタを提供したので、勘弁してもらおう。
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6月20日のLPSAジャンジャンマンデー(前編)・「ブログには書かないでください」

2011-06-24 00:28:48 | LPSAマンデーレッスン
23日に指された女流王座戦、上田初美女王対室谷由紀女流初段は上田女王、島井咲緒里女流初段対山口恵梨子女流初段は山口女流初段の勝ちとなった。上田-室谷戦は0:100、島井-山口戦は50:50の割合で応援していたが、室谷女流初段は相手がわるかったか。それにしても、パーフェクト室谷女流初段の美しさを何と形容したらいいのだろう。ほかの女流棋士とは格が違う。まったく、女優が将棋を指しているかのようだった。
山口女流初段の夏らしい服装も見事。女流棋士会の未来はやっぱり明るい。

20日は「LPSAジャンジャンマンデー」に行った。今クールの最終3回目である。「芝浦サロン」の担当は、前週金曜日に続き島井女流初段だった。
午後6時すこし前に入室すると、何人か会員がいた。数えてみると、ジャンジャンマンデーの参加は、私を含めて8人。早速松尾香織女流初段から、手合いが発表される。
私の1局目はTa氏と。私が先手番になったので、横歩取りに誘導した。△8五飛と引かれたので、私は角を換わって▲9六角。中座飛車を指す以上、▲2二角成~▲9六角の変化は把握していなければならない。それをご存じですか、と私は問うているわけだ。
Ta氏は△8二飛。私は労せずして▲6三角成とし、押し切った。
2局目を待っている間、船戸陽子女流二段が遅れて来る。マスクをしていたので心配だ。マスクを外した顔は相変わらず魅力的だったが、少し顔色が悪いように見えた。
珍しく、将棋ペンクラブ幹事のA氏(作家)が見える。2局目は、そのA氏と対局がついた。いつだったか、将棋ペンクラブの幹事同士はあまり将棋を指さない、と聞いたことがある。私は幹事ではないが、たしかに幹事とはあまり指したことがない。しかしこの適当な距離感、私は好きである。そんなわけで、A氏とも初対局であった。
私の居飛車明示に、A氏の四間飛車となった。と、隣の席に船戸女流二段が座り、将棋を始めた。ジャンジャンマンデーでは、マンデーレッスンS講師も、会員と真剣勝負を指すのだ。奥では塾長の藤森奈津子女流四段が、F氏と指していた。
船戸女流二段が香水をつけていて、その芳醇な香りがモロにこちらに来る。ああっ…あああっ…!! な、なんかムラムラする。ポワ~ンとしてしまって、将棋を指すどころではない。もし船戸女流二段との将棋だったら、TKO、というところだった。
局面――。私は▲4六銀から▲3五歩と仕掛けるつもりだったが、気が変わって棒銀に出た。
しかし△3二飛と予め守られたところに▲3五歩と突いたため一手遅くなり、△4五歩から捌かれてしまった。その後△3六歩▲4八銀右と引かされては、ハッキリこちらが悪くなった。
ところがここでA氏は△6四歩~△7四歩と意味不明の手待ち。この2手の間に私も自陣に手を入れ、ヨリが戻った。△6四歩では、△6四角とのぞき、ガンガン攻められるのがイヤだった。
中倉宏美女流二段が見える。宏美女流二段はマンデーレッスンS講師ではないが、進んでこのジャンジャンマンデーに参加している。その意気やよし。
私はA氏に逆転勝ちとなった。A氏は私の文章のよき理解者であり、いつもとてもお世話になっている。この将棋に限り、勝敗はどうでもよかった。
A氏に、将棋のあとの飲み会に誘われたので、快諾する。私の交友関係は、すべて将棋がらみだ。将棋さまさまである。
ともあれ、これで2勝。通算すると6勝4敗だ。連勝賞は無理だが、最多対局賞と最多勝利賞を狙える位置につけた。ただ、入賞したとしても、副賞を受け取るために次回も参加せねばならず、そこが面倒くさい。
3局目は某氏と。「某」と書いたのは、本人からこの将棋のことを書いてくれるなという指示があったから。そう言われたって私の将棋でもあるわけだから、書く書かないは私の自由である。もちろん書くが、せめて…ということで、イニシャルも伏せたわけだった。
余談だが、最近はこのブログがあっちこっちに浸透しているのか、「このことはブログに載せないでね」と言われることが多くなった。
「振り駒名人」の某氏に振っていただき、またもや私の先手で、▲7六歩△8四歩。ではと矢倉に誘導したが、某氏は△6四歩と突いて急戦の構えを採る。私も強く迎え撃つと、某氏は△7五歩~△8五桂と来た。▲7六銀△5五歩▲同銀△5四銀。いきおい銀交換になり、私は▲8六歩と、△8五の桂を殺しにいく。この桂を代償なく取れれば私が勝つ。さればと某氏は、△7七歩と打った。この局面が下。

先手・一公:1七歩、1九香、2六歩、2九桂、3六歩、4七歩、5五歩、5六金、5八飛、6六歩、6九金、7五歩、7六銀、7八玉、8六歩、8八角、8九桂、9七歩、9九香 持駒:銀、歩
後手・某氏:1一香、1三歩、2一桂、2二角、2三歩、3一王、3二金、3四歩、4二銀、4三歩、5一飛、6一金、6四歩、7七歩、8四歩、8五桂、9一香、9三歩 持駒:銀(銀と桂を書き間違えました)

ここで私は持ち時間10分のうちの2分近くを割き▲6七玉とかわしたが、玉飛が接近し、結果的によくなかった。本譜は△5三銀▲8五歩△4四銀▲5四桂△4五銀打▲同金△同銀▲6二銀△5六金▲7七玉△6二金▲同桂成△5五飛と進み、後手が優勢になった。
▲6七玉では、▲7七同桂△同桂成▲同角、とサッパリしてしまうのが良かった。死んでる桂を交換するのは気が利かないが、これで後手の持ち駒は歩切れの銀、桂。私は△4四桂がイヤだったのだが、こんな手は何でもなかった。
そういえばプロの実戦でも、こうした歩(△7七歩)は、必ず取っているようである。5日の「大野教室」で、大野八一雄七段が、「自分から攻めていかないで、相手の攻めを利用するといいよ」と語ってくれたが、上の応接は、それを地で行くものといえよう。
▲7七同角までの局面は、▲7五歩、▲7六銀といつの間にか盛り上がり、しかも歩得で何の不満もない。ここから引き続き某氏の攻めを丁寧に受ければ、戦わずして私が勝っていただろう。
本譜は某氏にいいように攻められて、惨敗した。
「うわああああ!! この将棋を負けるとは!!」
私は投了後、咆哮する。続いて室内にわく、苦笑。マナー違反だと分かっていながら、つい叫んでしまった。某氏には社団戦で、この実力を余すところなく発揮していただこう。
時間は8時を過ぎている。いまからもう1局は遅いが、藤森女流四段が、何とか私にもう1局指させてくれようとしている。ありがたいことである。
宏美女流二段の将棋が終わり、宏美女流二段と指すことになった。え? でも宏美女流二段とは今クールで当たっているけど…?
(つづく)
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6月13日のマンデーレッスンS(後編)・二度負けた

2011-06-15 00:05:26 | LPSAマンデーレッスン
「ああっ、二歩だ!!」
二歩をっ、二歩を打ってしまった!! 「7二」に歩が落ちていた。それに気付かず、私は二歩を打ってしまったのだ! それも自信満々で!! 何てことだ、恥ずかしい!!
ああうっ、二歩は何年ぶりだろう。少なくとも駒込サロンや芝浦サロンでは、二歩はなかった。
これは負けだ。私は潔く投了したが、これは指導対局である。植山悦行七段は「まあまあ…」と、そのまま指し継いでくれる。その優しさがつらい。
私は緊張の糸が切れたが、何とか気力を振り絞って、指し手を進めた。
私は待望の▲6六桂を打ち、以下、大振り替わりとなった。
「いつの間にかそちらに持ち駒がいっぱいあるねえ」
「いえ、それほどでも」
「ニャニオウ!!」
と苦笑いする植山七段。それにつられて、周りにドッと笑いが起きた。
上手は△4四歩から△4三王と早逃げする。その局面が下。

上手(角落ち)・植山七段:1一香、2三歩、2四銀、2五桂、3三歩、4二金、4三王、4四歩、5三歩、5四銀、5七金、6四歩、8一飛、9一香、9四歩 持駒:角
下手・一公:1四歩、1九香、2二歩、2八飛、2九桂、3五歩、4六歩、5六歩、6二成桂、6七歩、7二歩、7八金、7九玉、8六歩、9六歩、9九香 持駒:金、銀2、桂、歩3

(△4三王以下の指し手)
▲7一歩成△8六飛▲5一銀△3五銀▲3六歩△4六銀▲2五飛△4一金▲2三飛成△4五銀▲6六桂△6八角▲同金△同金▲同玉△8八飛成▲7八歩△5七金 まで、113手で植山七段の勝ち。

この局面、下手は角桂交換の駒損だが、上手は歩切れで持ち駒は角一枚だけ。下手は持ち駒が豊富のうえ6二成桂の存在が大きく、下手優勢といえる。
ここで▲7七銀と一枚入れれば下手陣は盤石、安全勝ちであろう。しかしいままで受けを続けていた私は、ここで攻め合って勝とうと考えた。
▲7一歩成は△8六飛を与えてお手伝い気味だが、次の▲5一銀に期待した。
植山七段、△4六銀。ここで▲2五飛と走りたいが、飛車の横利きが消えるので、△6八角からの攻めを警戒する必要がある。▲6八同金は一目あぶないので、▲6九玉と寄ってみる。これで逃れていると思いきや、以下△8九飛成▲7九歩△7八竜▲同玉△7七金▲8九玉△7九角成▲同玉△6八金左▲8九玉△7八金寄▲9八玉△8八金寄▲9七玉△8七金引までで詰むことに気が付いた。
では△6八角には▲同金か。以下△同金▲同玉△8八飛成▲7八歩△5七金に、▲6九玉(▲5九玉は△7九竜で、合駒が悪く下手負け)でわずかに詰まず、下手勝ちと信じた。
私は勇躍▲2五飛。数手後、いよいよ受けに窮した植山七段は、下手陣に目を転じ、「さっきから打てたのか…」という感じで、△6八角と打ってきた。
私は読み筋どおり応対する。▲7八歩と打つときイヤな予感がしたが、打った。その直後、私はまたも、あっ!! と言った。
植山七段、△5七金。
「しまったア!! 香を拾われるのをうっかりした!!」
私はそう叫ぶと、本局2度目の投了をした。
その直後、ふたりで大笑いする。先ほどの会話から、周りの会員は、そのまま私が勝ったと思ったらしい。
整理すると、△6八角▲同金△同金▲同玉△8八飛成▲7八歩△5七金(ここで投了)▲6九玉に、△9九竜(と香を取る)▲7九合△6八香▲5九玉△7九竜まで、下手玉が詰んでしまったのだ。
すぐに感想戦に入った。
「7八の合い駒が悪かったね。金? 銀でもいいのか。…金だね」
と植山七段。すなわち終了1手前、▲7八歩合で▲7八金合なら、△5七金▲5九玉△9九竜▲7九歩で下手玉は詰まない。こう指せばよかった。
余談だが、帰宅後考えてみると、△6八角に▲6九玉の変化も、△8九飛成▲7九歩△7八竜▲同玉△7七金のとき、▲6九玉と元に戻る皮肉な手があり、以下△7九角成▲5九玉△6八馬▲4九玉△6七馬▲3九玉で詰まず、△6六馬と桂を外す手に▲6三銀で、これも下手勝ちだと分かった。
何てことだ…。△6八角にスッと玉を横に寄り、上手の猛攻を凌ぎきったら、これも痛快な勝利だったろう。まあ、これも実力だから仕方がない。
マンデーレッスンの1コマは、2時間だから忙しい。8時からは、佐々木勇気四段との将棋の、ワンポイント解説となった。本来ならここは、十分時間を取って植山七段の解説を聴きたいところだったが、時間の関係で「次の一手」の周辺を解説したのみ。ちょっと消化不良だった。
夜のマンデーレッスンは8時半までである。塾長の藤森奈津子女流四段がせかすので、後半の植山七段は、勝利者とのツーショット写真やサイン、コメントの記入と、てんてこ舞いの忙しさだった。
けっきょく、指導対局が終わったのは、9時すぎだった。9面指しだから、これはやむを得ない。どうも、レッスンの「2時間」という設定自体に、無理があるのではないか。2時間半は欲しいところである。
残ったメンツで、とりあえず食事に行くことにする。このシチュエーション、懐かしい。サロンを出るとき、私は金曜サロンを思い出して、ちょっとホロッとした。
W氏、Ho氏、Ka氏、私が同行し、中華料理屋に入って、食事。食後は近くの喫茶店に入った。けっきょく、雨は降らなかったようである。
植山七段とのバカ話は楽しかった。考えてみれば、金曜サロンでは、毎週こんな感じだった。私たちは駒込で、本当に幸せな時間を過ごしていたのだ。
植山七段は、述べ17人と指したそうだ。いまLPSAで、これだけの将棋ファンを集められる女流棋士は、残念ながら、いない。これからもときどきでいいから、植山七段がLPSAに遊びに来てくれることを、私は切に願った。
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