一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

2019年九州旅行(4)

2020-02-29 00:20:45 | 旅行記・九州編
外は夜の帳が下りていた。もうこの時間では、2回戦はないだろう。マジックの時間が20年前から倍になったのはいいが、そのぶん見られる機会は減ったわけだ。店側だって、客数が減れば収入が減るのに、これでいいのだろうか。
そうか、それをカバーするための「注文800円以上」ということか。
いずれにしても、来年も来られればうれしいと思う。

さて今宵の宿は、昼の待ち時間の時に予約していた、大村駅にある「花まるみ」というビジネスホテルだ。3,400円と安かったので申し込んだ。
私は川棚駅に入る。駅員は実年男性だった。昨年はオレカを使ったが自動券売機が故障し、女性駅員も要領を得なかったので、720円を損する羽目になった。今年はそのあたりをチクリと抗議したいと思う。
駅員さんに、オレカが使えるかどうかで呼びだし、オレカを渡して買ってもらった。大村まで480円である。すると、ちゃんと買えた。
「買えましたね。いや、この自動券売機、オレカを使って故障したとかいう話ありませんか?」
「実は、2枚連続して入れると、おかしくなるんです」
「そうですか、私昨年のいまごろ、オレカで280円の切符を買ったんですけど、券売機が故障しちゃいまして。オレカも磁気不良になって、残り720円が使えなくなっちゃったんです。信じてもらえますか」
「ああ、ああ、はい」
「その時のオレカここに持ってるんですけどね、まあここでおかしくした証拠がないんで不良分の請求はしませんけど、券売機はちゃんとしたものに取り換えてください」
私は言いたいことを言ったので、これで水に流す。
それで駅員さんは引っ込むのかと思いきや、まだそこに佇んでいた。それで、しばしおしゃべりをした。
「九州の列車は素晴らしいですね」
私は何を言っているのだ。
私も実態はニートなので、他人と話すのは久しぶりだ。ただ、ふつうに話せたので、多少の自信を回復した。
待合室には、店での客がいた。少しおしゃべりして、私は17時54分の快速シーサイドライナーに乗る。さらば川棚。
18時24分、大村着。ここからホテルまで15分近くかかるが、チェックインは21時予定なので、たっぷり時間はある。
二股に分かれる袂に食事処があったので、入る。中はカウンターがコの字に並んでいて、先客の女性がひとりいた。
「長崎きしめん&ばってらセット」がウリだったので、これを注文する。
うどんはツルツルで、ばってらもよく漬かっており、美味かった。
だが「花まるみ」に行くのに少し迷ってしまった。ぐるぐる回ってやっと着いたが、これはさっきの大通りからでもかすかに見えていたところだ。その脇道をあと10数メートル進めばぶち当たっていた。この迂回、まるで私の人生のようである。
「花まるみ」は居酒屋のママさんが経営しているようで、店に一声掛けて部屋に通された。そこはウイークリーマンション仕様で、まあこれはこれでよい。
ただ細かく見ると、寝巻きはない、お茶はない、ドライヤーはない、ヒゲ剃りはない、目覚まし時計はない、もちろん有料ビデオはないの、ないないづくしだった。これなら諫早のホテルに泊まったほうが……とも思ったが、結果論であろう。
やることもないので、明日の計画を立てる。最終地点は博多だが、今年は島原半島を縦断しようと思う。それには「Shimatetsuフリーパス」が便利だ。島原半島内の鉄道、バスが使えて1,000円。確か第2、第4日曜限定だが、12月は毎週使えたような気がする。
だがそれを確認すると、今年(2019年)の3月にリニューアルをしており、1日券が2,000円、2日券が3,000円になっていた。いやいやいやいや、使える日にちは増えても、これじゃ実質値上げじゃねえか!
これが前もって分かっていたら、今日のうちに島原半島の行けるところまで、例えば雲仙温泉あたりまで行ったのだが、またもや結果論だ。
テレビはテレビ東京が入らないから、旅番組を見ることができない。何となくフジテレビにしたが、学校の実態みたいな特集をやっていた。
廊下にはマンガ本が大量に置いてあるが、見たいものがない。いやなんだこれ、もう寝るしかなくなってしまった。

翌15日(日)。1泊2日は早い。もう帰京の日である。6時台に起き、手早く荷物をまとめてチェックアウトする。
見上げれば、空が気妙な形の雲に覆われている。私の現在の進境を表しているかのようだ。



駅には07時05分ごろに着いた。諫早方面の列車は07時22分だが、もう入場してしまう。しかし案の定やることがなく、これなら駅前のコンビニで朝食を調達するのだった。
駅のホームのこちら側は潰され、月極駐車場になっていた。その先は車両車庫が朽ちていた。マニアには堪らない光景である。



大村線に乗り、07時37分、諫早着。ホームから階段を登って、驚いた。
(つづく)
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2019年九州旅行(3)

2020-02-28 00:17:46 | 旅行記・九州編
16番の私が呼ばれたが、マスターは「あなたは何度か来ているから……」と、見送りにしたのだ! いや21回目ともなると、さすがに顔を覚えられていたか。
もっともマスターは、1度でも来た人の顔は覚えているらしい。とはいえこうした措置は初めてである。
次に引いた棒は6番だったが彼女も退出しており、別の男性に当たった。この人の誕生日当てと、悩み事当てだ。
誕生日当ては5人が参加し、もちろん正解した。これは例えば、「昭和44年6月24日生」だったら、電卓に「44624」と出る。稀に西暦の時もあり、その場合は「69624」となる。10月~12月生まれは6ケタになるが、そうなった記憶はあまりない。
私は20年前にこれを当てられ、イベント後に検算する手段もあったが見送ってしまった。その時の後悔ったらない。
「あなたはちゃんと生活していけますよ」
とマスターが言う。彼のメモを公開すると、その悩み事は、「今後の私の経済状況」だった。もちろんこれも、マスターが先読みしていた。
なお私だったら「就職できるか否か」だったが、「仕事を選ばなければできる」くらいの回答になったかもしれない。
さらに男性氏には、マスターから一文が送られた。カラー用紙にマスターが何事かを書き、落款を捺すものだ。
「これならカンタンに捨てられないでしょう」
マスターはそう謙遜するが、これは1人しかもらえない貴重なもの。男性氏はこの場に来てよかった。
マスターが、ホワイトボードに縦4列、横4列の合計16の枠に、2ケタないし1ケタの数字を書いた。そして女性に任意の2ケタの数字を言わせ、マスターがボードの横1列を足すと、その合計が彼女の言った数字となった。それだけではない。縦1列もナナメも、中心の4つも、角の4つも、足すとすべて彼女の数字となった。
「ギョエーーーッ!!!」
と、17番~19番の女性が叫ぶ。いいリアクションである。これ、彼女が数字を言った後に書いても難しいくらいだが、マスターは先に書いているのが凄い。
今度はルービックキューブである。しばし講義をやったあと、マスター流の遊びが出る。すなわち、客の小学生が作った色配置とまったく同じものを、マスターが作るのだ。将棋に例えれば、終盤近くの局面を見て、初手からその局面を作るようなものだ。マスターはもちろん成功した。
さらに、まだ6面揃っていないキューブを女性に持たせ、マスターがキューブを見ずに動かすマスを指示する。そして何手か後には6面揃う、という按配だった。これは詰将棋を空で解くようなものか。
「将棋と同じように、何手か進んだ形を想像します」
これはマジックというより、特殊能力というべきだろう。
なおマスターが本気を出すと、7秒くらいで6面を作ってしまった。
「物事においては、なんでもいい方に考えなければいけません。これを陽転思考といいます。
むかし中村久子さんという、ご病気で手足がなくなった方がいました。
見世物小屋で働いていたんですが、意地悪な人は、手足がなくて大変でしょ、と聞いてくるわけです。
でも中村久子さんは、お陰で泥棒ができませんと言って、カカカと笑ったそうです」
マスター鉄板の、ほろりとさせる話である。笑いの中に時々ぶち込んでくるので、女性陣なんかは情緒不安定になっり、涙を流したりするのだ。
「人は40代になると、30代が若く思えます。50代になると、40代は若かったと思う。60代になると、50代が若かったと思います。これはいくつになってもそうですね。でも、人は過去には戻れません。
……戻れる方法がひとつだけありますよ。
10年先の自分を想像して、ここに帰って来たと思えばいいのです。そしたら10年間丸儲けですね。これからの10年、うかうかしてられませんね」
この話も、私は21年連続で聞いているのだ。しかし20年前に10年後を想像しながら、まったくその修正努力をしてこなかった。それでこのザマである。
そりゃそうだ。仮に「あなたは一流大学に受かる」と言われて、それで勉強を疎かにしたら、やはり落ちる。私は意味を履き違えていた。
マスターが輪ゴムを取り出す。「スターをお見せしますよ」とごちゃごちゃやっていると、1本の輪ゴムが「☆」の形になった。
さらに、輪ゴムを5円玉の穴の中に通す。もちろん、鎖状にするということである。
マジックも佳境に入ってきた。いよいよスプーンである。例によってグニャグニャに曲げたあと、「スプーンは玉の方が美味いんですよ」と、一口齧ってしまった。
続けて100円玉も齧ってしまう。しかしフッと息を吹きかけると、元に戻ってしまった。
今度は千円札に100円玉を通す。それはあっちこっちに移動する。野口英世の眉毛に持って行き、「サンバイザー」。頭に持って行き、「ジョアッ!! ウルトラセブン」。
マスターは指をクロスさせ、「分子の隙間をこう、クロスさせている感じですよ」と解説するが、私たちには馬の耳に念仏だ。そしてマスターは「練習したから!!」の札を挙げるのだ。
「ああそうだ、ここ数年、毎日予約の電話が鳴るんで、去年から、来店日の2ヶ月前の1日から、一斉に電話を受け付けることにしたんですよ。
そしたら2日以降は電話が繋がらない、というデマがネットに流れたようでね。
違うんですよ。2日以降も電話受付はやってますから。もう、営業妨害ですよ」
マスターがふくれるのが可笑しい。「でも電話は繋がりにくくて、ご迷惑をお掛けしています。凝りずに掛けてください。でも来てほしい時は、私が呼びますよ」
マスターが100円玉にボールペンを貫通させる。そのままボールペンを押し抜くと、穴が残っていた。日常生活であり得ない光景である。室内はもはやどよめき、異様な雰囲気になっている。
マスターが千円札にボールペンを刺し、その穴を上下させる。17番~19番の女性は、「何で何で!?」と叫び、もう理解が追いついていかないふうだ。
マスターがボールペンを抜くと、穴は塞がっていた。
マスターがコカコーラの500mlペットボトルを出す。一捻りすると、ラベルがペットボトルの内側に入っていた。
マスターが10円玉を撫でると、10円が小さくなった。これを瓶の口から入れるが、中で元に戻るので、もう瓶から出ない。また小さくして出し、今度は500円玉大に大きくなる。
ペットボトルの底からキャップを入れる。キャップはスコーンと、ペットボトルの内部に入ってしまった。マスターはそれを女性にもやらせた。それが、何度目かに成功してしまったから驚いた。どうもマスターは、他人の肉体を介しても、マジックが行えるようなのだ。
そろそろマジックが終了するようだ。
「お名残り惜しいですが、このあたりで終わらせていただきます。またお会いしましょう」
私たちは、力いっぱいの拍手をした。私たちにはそれくらいしかできないのだ。そして、1日1日を大切に生きることしか。
時刻は午後5時21分。何と、3時間余のマジックだった。これでお代が喫茶代のみとなれば、それはお客がくるはずだ。
私には、ドロドロになった千円札の代わりの千円札が渡された。マスターのサイン入りで、これはこれで御守りになりそうだ。
最後は、ぐにゃぐにゃになったスプーン(300円)を買うため、みなが並ぶ。
私の番になり、頭頂部から邪気を抜いてもらった。いろいろ話したいことはあるが、最後は自分の力で解決しなければならない。来年もここに来られることを祈りつつ、私は店を出た。
(つづく)
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2019年九州旅行(2)

2020-02-27 00:09:34 | 旅行記・九州編
「どなたかお札を貸してくれますか」
ここでもたちまちお札が出る。私も千円札を出しかけたが、2列目の左端からでは遠い。それに、私はもう出す資格がないと思う。
マスターは壱万円札をつまむと、薬指(紅さし指)の先にその壱万円札を立てた。これは私たちにも出来そうで、出来ない。
マスターは千円札を小さく折り畳むと、それを中空に浮かせた。ゲエエッ!! と騒ぐ店内。マスターは指で作った輪の中にお札を通し、「ハウス!」と言うと、それがマスターの肩に乗った。まるで生きているかのようだ。
さらに先ほどの筒にお札を入れると、ここでもフワフワ浮かんでいた。
マスターがトランプの絵が描かれた短冊を振ると、本物のトランプが出て来た。
ここでのマジックがまた多彩なのだが、代表的なのはMDプレーヤーを使ったものだ。
「ウルトラセブン」のイントロが流れる。選ばれたお客が、マスターのタイミングに合わせ、カードを選ぶ。4枚を開くと、それらはすべて「セブン」だった。
さらにAKB48の「恋するフォーチュンクッキー」は、「A」「K」「B」「4」「8」と出る。トランプにBはないが、3に付け足して8に見せているのだ。
さらにマスターは、カードの一部を切ってしまう。その切れ端を壁の額縁に当てると、それが額縁のガラスの向こう側に入ってしまった。
歓声を挙げる私たちに、マスターは「仕事だから!!」「練習したから!!」という札を出す。これは新手のアイテムだ。
いつの間にか、トランプのケースが小さくなっている。
「遠近法ですよ、遠近法」
しかしマスターはその中に、大きなトランプを無理やり入れてしまった。
スマホを使ってのカードマジックもいくつか行われた。時代に即し、微妙にネタも進化しているのだ。
小さな犬のおもちゃが出てきた。ちゃんと名前もあるのだがこれが長ったらしく、「~ジェフ」という。そのジェフに、女性が引いたカードを当てさせる。ジェフが女性の臭いを覚えている、という筋書きだ。
最終的には、ジェフがそのカードを当てた。
室内の壁には、ポラロイド写真やチェキ写真がいっぱいだ。
「藤岡弘、さんは8回来ましたね。『フッフッフッ、すごいねぇ』とかね」
マスターは物真似が得意なのだ。あとは有名女優も来たことがあり、未婚の悩みを打ち明けられたという。
マスターは「近々に結婚しますよ」と言ったら、翌年結婚したのだった。
ちなみにマスターは、結婚相手のオーラが見えると言う。私も4回ほど「結婚する」と言われたが、まだマスターの予言は当たっていない。
続いてはサイコロである。客にサイコロとカップを渡し、マスターの見えぬところで目を確認する。それをマスターが当てるのである。
もちろん当たるが、恐るべきは最初の目と変更後の目、これを連続して当てたことだ。もう、天井のどこかに小型カメラが仕掛けられているんじゃないかと勘繰ってしまう。
今度はカウンターの上にカップを伏せ、その中にサイコロを入れる。丁か半か当てさせるのだが、カップの中は判子になっていた。それは「丁田」「半田」のいずれかになっているというオチである。そう、マスターのマジックには、いつもオチがあるのだ。
「世の中には宿命という言葉があります。本屋へ行って、ある本を手に取るのが宿命。それを読んでどう感じるかは運命です。宿命は、変えることが出来ません。今日はここに、ある絵を描きに来る人がいましたよ」
ある女性が当たり、マスターはメモ用紙に、彼女自身の名前と、任意の絵を描かせた。
彼女は名前をピタリと当てられ、マスターが別所から取り出した紙片には、彼女が描いた「妖怪ウォッチ」が描かれていた!!
「2019年12月14日午前7時30分記入、○○さん来店予定」
マスターが読み上げると、私たちは歓声を挙げながら拍手をした。
マスターが2度目の千円札を所望する。私は出す気はなかったが、「さっき出し掛けた人…」と言われ、出すことになった。いいのだろうか。
マスターはナンバーを控えると袋を用意し、その中に生卵と千円札を入れた。ちょいと揉んでいると千円札が消失した。まさか!?
マスターが残った生卵を割ると、白身の中から、ズブズブと千円札が出て来た。
ここまで来ればあとの手順は分かる。ぬるぬるの千円札を拡げると、カウンターの女性2人が、控えていた番号を読み上げた。その2つは同じだった!!
周りはどよめいているが、私はちょっと後悔していた。この運命にあるのなら、例の8が続くお札を持ってくればよかった、と。
「ちょっとお腹が空きましたネ」
背後には6種類のハンバーガーの絵が架けられていた。マスターはそのひとつにごちゃごちゃやると、実物を取り出して見せた。一口食べて戻すと、今度は一口かじった絵になった。驚異の二段仕掛けだ。
もっともこれは、セロのマジックで見たことがある。ただこれを目の前でみせられると、驚きの度合いが違うのだ。ライブで将棋を見ると、違った感慨があるのと一緒である。
マスターがある男性に、奥さんの名前をこっそり書いてもらう。そのそばから、マスターが奥さんの名前を当ててしまった。
「会社で上司が部下に、缶コーヒーを買ってきてくれ、って頼みますね。
そのコーヒーをどこで買ってきたか聞くと、男性社員は単純だから、コンビニ、と答えます。
でも女性社員は、違うメーカーのものを買ってきたと思って、取り換えてきましょうか、と言う。男性と女性の脳はこれくらい違うんですね。
恋人と別れた時も、男性はいつまでも彼女を覚えてますね。だけど女性は、スパッと忘れますね。女性は子供を産まなくちゃなりませんから、いつまでも昔の男に構ってられませんね。
出産の時もね、あの時の痛さったらありませんね。鼻の穴からスイカを出くらいの痛みですね。これが男性は我慢できない。気絶しそうな痛みですね。いつも偉そうにしてますけどね。
女性は赤ちゃんの笑顔を見たら、いままでの痛みをすっかり忘れて、2人目を産もうかー、と考えますね。
だけどあの痛み、ねぇ……。私はその痛みは知りませんけれども」
ここで下げて、客がドッと笑うのである。
このあたりで、私の前の席の6番女性が退席した。これからさらに面白くなるのに、惜しい。
今度はある女性に、1枚だけカードを取ってもらう。「♢8」。マスターがほかのカードを全部表にすると、すべて真っ白だった!!
「あなたが♢の8を取ることは分かっていましたからね。ほかの数字はいらないんです」
女性は絶句して驚いている。20年前の自分を見るようである。
客の中では、私の後列右奥で、椅子の上に立っている17~19の女性らがいい反応である。彼女らは大テーブルにいたと思うが、驚き方が新鮮でいい。
今度は好みのタイプ当てである。マスターが10人の男性芸能人のブロマイドを出す。福山雅治やEXILE・TAKAHIRO、小栗旬などだ。この好みを女性に1位から5位までつけてもらい、マスターが当てるという趣向だ。
途中、マスターが彼女に2~3質問をする。そして5位から2位までピタリと当てると、残りの1位は、メモを傍らの財布から取り出した。そこには女性の1位の芸能人が書かれており、私たちはまたも絶叫した。
マスターが電卓を取り出した。いつもの生年月日当てである。最近だと、マスターがくれたメモ用紙に、生年月日に加え、悩み事をひとつ書くことになっている。となれば、個人的にはここで当たるとうれしい。
3番の女性が、棒を引く。それは「16」で、私だった!!
生年月日はもういい感じだが、悩み事は書きたい。これはツイていると思った。
ところが……。
(つづく)
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2019年九州旅行(1)

2020-02-26 00:13:55 | 旅行記・九州編
2019年12月、今年も長崎旅行の季節がやってきた。私は堕落の求職中ながら、日程は14日(土)~15日(日)と、1泊2日の強行スケジュールだった。
朝、まだ暗いうちに起床する。準備を整えリュックを背負って表に出ると、空には月が煌々と光っていた。
早暁5時台に最寄り駅に着き、電車を待つ。時間があったので、改札内の精算機で500円だけチャージした。お釣りの500円玉が目的だ。出す機会はないと思うが、あんでるせん用に一通りの硬貨は揃えておきたい。もう、20年前の失敗はゴメンだ。
精算機の上部には「待ち時間にチャージはどうですか」の貼り紙があった。私はまさに、それを実行したわけだ。
なお家を出る前、お金の確認をしていると「MT088887Z」の千円札があったが、8が4つ並ぶのは縁起がいいと思い、家に置いてきた。だがこの千円札こそ、あんでるせん用に持って行くべきだったかもしれない。
ようやく京浜東北線に乗った。乗客は意外に多く、私は浜松町まで立って行った。
モノレールの空港快速に乗り換え、06時37分、羽田空港第1ビル着。こちらにスカイマークが控えている。07時20分発の長崎空港行き401便に搭乗した。
離陸後、眼下に富士山が見えた。せっかく窓際にいたので、1枚パチリ。うまく撮れたようだったら、これを来年の年賀状の写真にしようか。



神戸空港には定刻より4分早い08時36分に到着した。長崎便は神戸を経由するのだ。ここで私たちはいったん降りる。若干ストレスが溜まるが、11,290円だから文句は言えない。
同じシートに戻り、09時15分、神戸空港発。長崎空港には10時25分に着いた。川棚バスセンターへの連絡バスは10時50分である。あんでるせんの集合は午前11時だが、飛行機の客も考慮して、遅刻は大目に見てくれる。
しかしバスは多くの客でいっぱいである。観光バス用で、私は一般席に座れたが、補助席が何席か使われた。要するにほぼ満席である。この大半はハウステンボスへ行くのだろう。
走ってしばらくすると、スマホに電話がきた。auからで、何かの営業であろう。
オヤジもauユーザーなので、家族割にするとか私も相談したい件はあるのだが、いまこの席だけは会話が憚られる。「旅行先のバスの中なので……」と切らざるを得なかったが、まことに間が悪い。
外は晴れだが、これから室内になるので、雨男の私にはもったいない。
川棚に近付くと、後方で降りる気配がした。これで私も自然に降りられる。11時36分、川棚バスセンター着。降りたのは後ろの女性2人と、私だけだった。彼女らもあんでるせんであろう。
歩道橋からあんでるせんの外観を写真に収め、中に入ると、ほぼ満席だった。





私はドア横の大テーブルに案内された。昨年と同じ席だ。右手には男性2人、左手には女性3人。男性はひとり旅のようだが、女性はグループっぽい。
カウンターの5人は全員女性だ。窓際のテーブルには、西洋の外国人男性が2人いた。外国のお客があるのは知っていたが、実際に見るのは初めてだ。以上、総勢24~5人になろうか。1日のマジックの回数が減ったこともあるが、相変わらずの人気だ。ただそれだけに、20年前の「3人」は何だったのだろうと改めて思う。



私はビーフカレー(840円)とブレンドコーヒー(550円)をオーダーする。数年前から800円以上の注文が義務化されたので、コーヒー1杯だけの注文はできなくなった。もとよりマジック観賞料として、そのくらいの額は消費するつもりである。
ビーフカレーが運ばれてきた。一口入れる。レトルト風の味が懐かしい。しかし、肉片が奥歯に挟まって参った。この歯はまた治療しなければいけないのだが、同じ歯を何回病んでいるだろう。歯医者がヤブなのだ。
食後はやることがない。例年は「私の今年の10大ニュース」を選出するのだが、ここ数年はアクティブでないので、ほとんどニュースがない。それでも今年は、「5月就職」「7月離職」が、ツートップとなる。
午後2時近くになり、私たちはママさんに促され、会計を済ます。いよいよマジックである。私はどこに行ってもいいのだが、2列目の最も左の位置となった。昨年とほぼ同じである。
数年前から整理券番号は廃止され、ここで自分の番号を告げられる。私は「16」だった。番号の書かれた棒がカウンターに置かれ、それを3番の女性が引くわけだ。
問題は、どの出し物の時に呼ばれるのがベストか。悩み事をひとつだけ書ける回があるのだが、そこに当たれば理想的だ。
客は総勢28人となった。心地よい緊張感に包まれる中、2時12分、カウンターにマスターが登場した。丹波義隆似のマスターは、20年前とほとんど変わっていない。強いて言えばメガネを掛けたことくらいだ。
対して私はブクブク太り頭もハゲ散らかし、結婚もできず、職も失ったままだ。20年前からマスターのアドバイスを拝聴していたのに、それを活かせず、悪い方向に進んでいる。私ほど堕落した人間はいないと思う。
「本日はお越しいただき、ありがとうございます。これからしばし、不思議な世界にお付き合いください」
まずは指環を所望する。女性陣は手慣れたもので、すぐに4つの指環が出た。これもネット情報のなせる業だが、情報が回りすぎるのも一長一短だと思う。
マスターはそのひとつを掌に載せ、クククと浮き上がらせる。「30度」「45度……」。
客は驚きの声を挙げるが、これで驚いていては、これから身が持たない。
マスターは外国人に英語で話しかけると、アクリル製の筒に入れ、やはり浮き上がらせた。
マスターは、指環4つを小さな木箱に入れる。それをライターの火であぶり横に振ると、やがて音が聞こえなくなった。
マスターは傍らの財布からキーホルダーを取り出す。するとそこに、指環がひとつ、くくりつけてあった。またも歓声がわく。
「あとの指環は、各自のご自宅に戻っていると思いますよ」
その言葉が信じられるのが凄いところである。ただまあ……というわけで、マスターが黒いセーターの下から、ネックレスを取り出した。そこには別の人の指環がくくりつけられていた。またも歓声である。
結局、残りの指環も出て来た。私たちは自然に拍手をする。思えば昨年は3番席に、煽動係のような拍手男がいたが、やはり今回の自然な感じがいい。
「高橋君、(よく)見てますか」
私の後方にいた男性が、曖昧に返事をする。実はこれも名前当てになっているのだが、どのくらいの客が気付いただろう。
続いてESPカードである。カウンターの4人が、カードの5種類を当てる例のやつだ。
これも4人とも当たるのが分かっているが、万が一ということもある。しかもマスターが「今から(選んだカードを)変えてもいいですよ」とか言うので、余計に盛り上がるのだ。ただカードは、4人とも正解だった。
今度はマスターがカードを透視して、上から何番目が何の模様かをピタリと当てた。
私は1年振りのマジックを、懐かしい思いで見ていた。
(つづく)
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花村元司の△7四金

2020-02-25 00:14:28 | 男性棋士
花村元司九段は1917年、浜松市生まれ。アマ時代に真剣師で鳴らし、その実力を買われ、1944年、プロ五段試験を行った。2005年に瀬川晶司氏が棋士編入試験を行った際、「61年ぶり」の文字が躍ったが、その第1号が花村九段だった。
花村アマは試験に合格し、1952年A級八段。タイトル戦は名人戦を含め4回登場した。また1977年度の第36期B級1組順位戦では8勝3敗の成績でA級復帰。当時60歳で、大きな話題になったものである。
花村九段の指し手はチャンバラのようで、持駒がなければ駒台を投げる、と言われた。三間飛車に振ったが「いかん、間違うた」と四間飛車に振り直したこともあった。手損など、細かいことは気にしないのである。
1979年に上梓した「ひっかけ将棋入門」(ベストセラーズ)では必勝法として、「(他の駒箱から)あらかじめ金将を懐に忍ばせておき、ここぞという時に打つ」と真面目に説いていた。
そんな花村九段は八段時代の1972年11月24日(放送日は12月24日)、第22回NHK杯戦で中原誠名人と当たった。この年中原名人は大山康晴名人から名人位を奪取し、棋界の第一人者になっていた。それまでの対戦成績も花村八段の0勝6敗。誰もが中原名人が勝つと予想していた。
戦型は花村八段の先手で角換わりになり、中原名人は△5四角と据えた。16日の「将棋フォーカス」で中村太地七段も取り上げた形である。
中盤△1三桂の飛車取りに、花村八段は▲8三銀!(図)

これがNHK杯戦史上五指に入る鬼手で、日本全国に「花村の鬼手」をアピールした。
▲8三銀以後は花村八段が2枚の馬を自陣に引きつけ、手厚い指し回しで快勝した。花村九段の、生涯三指に入る名局であった。
そして花村九段は1980年、第37期棋聖戦本戦2回戦で、またも中原名人とまみえた。
中原名人は前期五番勝負で米長邦雄棋王に棋聖を奪われており、リターンマッチの炎を燃やしていた。
一方の花村九段は対中原戦1勝8敗。要するに、あのNHK杯戦でしか勝っていない。よって本局も中原名人の勝ちと思えたが……。
将棋は後手花村九段の中飛車に、中原名人の居飛車穴熊。数手後花村九段は△6二飛と寄り、そこであの奇手が出た。

第1図以下の指し手。△7四金(途中図)

▲3五歩△同歩▲3八飛△2二角▲3五飛△1三角▲3八飛(第2図)

第1図から△7四金と出たのが、大内延介九段が語った「△7四金」である。私にはまったく狙いが分からず、やぶれかぶれの手にしか見えない。
中原名人は▲3五歩からゆさぶり、△1三角に▲3八飛と引く。名人らしく、泰然自若としている。

第2図以下の指し手。△8五金▲2四歩△同歩▲6五歩△4三銀▲6四歩△同飛▲6六銀△6二飛▲4六歩△3三歩▲2八飛△5四銀▲6八歩(第3図)

花村九段は△8五金と出たが、先手はとくに恐くない。2筋の突き捨てから▲6五歩と突き出した。これには、次の▲4四角を防いで△4三銀。続く▲6六銀にも△6二飛と引き、▲4六歩には△3三歩。
花村九段、これじゃ平身低頭で、落ち着き過ぎている。花村九段の指し手を「チャンバラの手」と評したが、仔細に見て行くと、やはり常識的な手が多い。私は花村九段の幻影に惑わされていたか。

第3図以下の指し手。△2二飛▲3七桂△2五歩▲同飛△同飛▲同桂△4六角▲2二飛△1九角成▲2一飛成△2九飛▲2八歩(第4図)

花村九段は△2二飛と動いていく。中原名人は▲3七桂と跳ね、歓迎の飛車交換である。
素人目にもこの取引は穴熊側が得をしたように見えるが、花村九段はちょっとの不利なら十分指せると判断する楽観派である。△2九飛と下ろして、自信を持っていただろう。

第4図以下の指し手。△9五歩▲8六歩△8四金▲7五銀△同金▲同歩△9六歩(第5図)

花村九段は△9五歩と伸ばす。中原名人は▲8六歩△8四金を入れたあと、▲7五銀とぶつけた。金銀交換だから先手に利ありだが、△7四金などという奇抜な手を見せられた後だから、この金が捌けただけでも後手大儲け、すなわち作戦成功に見えた。
▲7五同歩に待望の△9六歩。やはり穴熊には端攻めが急所なのだ。重複するが、トップクラスは、同じところに手が行くのだ。

以下も難しい戦いが続いたが、花村九段が優位を持続し、見事に勝ち切ったのだった。
以上、これが私の知る「△7四金局」である。
コンピュータソフトが猛威をふるう現代、ソフトは△7四金を指さないだろう。
「△7四金は花村にしか指せん、ケケケ」
花村九段が泉下で笑っているような気がする。
コメント
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