一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第65期王位戦第2局・1日目

2024-07-18 00:15:23 | 男性棋戦
17日からは伊藤園お~いお茶杯第65期王位戦第2局である(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)。第1局は、難しい将棋だったものの渡辺明九段が勝たねばならなかった。これを負けてはクサル。残り6局を4勝2敗は相当つらいが、とりあえず第2局を勝ってイーブンに持ち込むしかない。
いっぽうの藤井聡太王位は、第1局は勝ったものの反省は渡辺九段以上にしている。それでいて残り6局を3勝3敗でいいのだから、だいぶ楽になった。
第2局の対局場は北海道函館市。函館は日本屈指の観光地で、市内の洋館群、五稜郭、朝市、函館山からの夜景など、見どころが多い。ただし、最近は航空機料金が安くなり、札幌へは安価で行けるようになった。そのため函館がスルーされ、一時ほどの盛り上がりはないイメージがある。
北海道新幹線は開通したものの、新幹線は函館に止まらない。その手前の新函館北斗で在来線に乗り換えなければならず、このひと手間がすこぶる面倒である。函館の未来やいかに。
第2局は渡辺九段の先手。前回は千日手局後に渡辺九段が先手になったが、一局完結なので、第2局も引き続き渡辺九段が先手になるのである。
将棋は相掛かりになった。渡辺九段、飛車取りに角を出る。藤井王位は飛車を横に寄る。そこで渡辺九段が桂を跳ねたのが序盤の勝負手だった。7筋の歩を取らせても、その間に一仕事するの意であろう。局面はまったく違うが、私は1964年11月9日・10日に指された第3期十段戦(主催:読売新聞社、日本将棋連盟)第2局・▲大山康晴十段VS△升田幸三九段戦で、升田九段が△3四歩▲同金△3三桂(参考図)と指した手を思い出した。

以下、渡辺九段は金銀で玉を固め、まあまあ構想通りになったといえるだろう。
藤井王位は飛車を引いた。この横利きを残したまま指し手を進めたいが、そう指すと渡辺九段からの攻勢がくる。だが、甘受しなければならなかった。
数手後、渡辺九段は5筋に八方にらみの角を打つ。変化は多岐に渡るが、気持ちのいい角打ちであることは確かだ。
対して藤井王位も最強の手で応じ、そこで渡辺九段が封じた。
本局の封じ手は、99%、角で取る手。形勢はまったくの互角だが、私には渡辺九段が指したい手を指しているように思える。つまり、読んでいて楽しいのは渡辺九段のほうではなかろうか。
(つづく)
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第65期王位戦第1局・第2日目

2024-07-08 17:51:04 | 男性棋戦
伊藤園お~いお茶杯第65期王位戦第1局(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)、藤井聡太王位の封じ手は、飛車を回る手だった。なるほど角を引いた手に呼応したのだ。
さてここから本格的な戦い、というところだが、お互い玉を整備して、全然戦いが始まらない。そのうち千日手の懸念が生じ、2日目15時44分、本当に千日手が成立してしまった。
しばし休憩のあと、指し直しである。持将棋なら一局成立だが、千日手はそれにあらず。対局者はお疲れ様だが、仕方ない。
指し直し局、実は公平な条件でない。千日手局の消費時間が継承されるためで、持ち時間を多く使った藤井王位に1時間が設定される。渡辺九段は2時間20分になり、これは渡辺九段に大きなアドバンテージになった。
指し直し局は渡辺明九段の先手で、相掛かりになった。と、渡辺九段は角を換え、敵陣に打ち込む。アマ同士なら一本取形だが、プロはそうでない。この角(馬)が働くかどうかが、本局のカギとなる。
渡辺九段はその馬を惜しげもなく銀と交換し、その見返りに竜を作った。これで局面をよりよくできるという判断で、それは間違っていなかった。
藤井王位は攻め合いを目指すが、もとは渡辺九段がよかっただけに、手数が進むと、さらに渡辺九段の形勢がよくなる。だが相手は七冠王の藤井王位だから、まだまだ先は分からない。
私の拠り所はABEMAの形勢バーで、その後も渡辺九段の形勢がよくなってゆく。心なしか藤井王位も諦めているようにも見えて、これは渡辺九段が行ったんじゃないかと思った。
渡辺九段、自玉を攻められているが、淡々と応じ、優位は動かない。
藤井王位、しょうがない、という感じで銀を打ち、入手した角で竜を取る。しかしこの時点で「渡辺99:1藤井」である。この評価値は、即詰みの順があるということだ。なるほど、ここで渡辺九段が藤井玉を鮮やかに詰ますわけだ。これは渡辺九段の会心局ができあがったのではないか?
ところが渡辺九段が次の手を指すと評価値が激減。渡辺九段が敗勢になってしまった。ああー!? 渡辺九段、詰みを読み切っていなかったのか!?
渡辺九段、今度は竜を引いて王手。これには銀合いが最善と、AIは示している。しかし藤井王位の合いは「金」で、再び渡辺九段が優勢になった。
AIはここで歩の王手を示している。ところが渡辺九段は竜を切ってしまった。これがまずく、今度こそ本当に、渡辺九段が敗勢になってしまった。このあたり、評価値が乱高下していて、私は訳が分からなかった。
以下渡辺九段は手順を尽くすも、わずかに藤井玉は詰まず。無念の投了となった。
いや~、こんな結末があるのか!? 負けた渡辺九段は頭を抱え、勝った藤井王位もうつむき、とても勝者のそれとは思えない。
私たちは形勢バーを見ているからどちらが勝ちか分かるが、実際は勝ちがあってもそれは最善手がひとつだけ続く細い糸で、対局者はそれを完璧にクリアしないと、勝ちに到達できないのだ。つまり、見た目ほどの形勢は開いていないのである。
しかしどうも、藤井王位は自玉の即詰みを読んでいたみたいだった。対して渡辺九段は詰みを読み切っていなかったみたいで、この差が勝敗を分けたともいえる。
いずれにしても、渡辺九段が第1局を落としたのはとてつもなく痛い。局後のコメントでは、「気を取り直してがんばります」とのことだったが、その胸中、いかばかりだったか。
いっぽうの藤井王位は、「反省するところが多かった」といいつつ、星は勝ち。実はこれが最もよい展開ともいえる。藤井王位、早くも防衛が濃厚になった。
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第65期王位戦第1局・第1日目

2024-07-07 01:44:14 | 男性棋戦
叡王戦、棋聖戦の挑戦手合いが終わり、藤井聡太七冠は休む間もなく、「伊藤園お~いお茶杯第65期王位戦七番勝負」である(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)。
挑戦者は渡辺明九段。渡辺九段といえば「冬将軍」の異名があり、秋から冬にかけてのタイトル戦のイメージがある。秋の竜王戦の9連覇、冬の棋王戦の10連覇は圧巻だ。しかし今回は王位戦に星が集まり、真夏の王位戦七番勝負に初登場の運びとなった。これは新鮮な趣がある。
しかし第三者の気楽な感慨とは裏腹に、渡辺九段の心はさえない。ここまで藤井王位に24戦してわずか4勝。タイトル戦に至っては5戦全敗である。藤井王位がいなければまだ複数のタイトルを保持していたかもしれないし、二十世名人の資格を取得していたかもしれない。藤井王位こそ、渡辺九段の目の上のタンコブなのだった。
しかもこれが皮肉なのだが、強者は強者を知るというか、渡辺九段はクレバーなので、本七番勝負でも、藤井王位との対戦結果をイメージしそうなのである。「1勝できればいいだろうか……」などと考えたら最後、戦わずして結果は見えてしまう。
ただ前夜祭のコメントを読む限り、渡辺九段はリラックスしていて、気負ったところがなかった。この七番勝負は意外にいい戦いになるのではないかと思った。
さて、第1局である。藤井王位の先手で、お互い角道を開ける。ここが早くもミソで、仮に渡辺九段が飛車先の歩を突くと、以下角換わりになる可能性が高かった。藤井王位にその戦法は得策でなく、私も同意するものである。今シリーズ、角換わりは出現しないような気がする。
さらに4手目、渡辺九段は角道を止めた。振り飛車ファンなら振り飛車を期待するが、私は騙されない。すぐに飛車先の歩を突いた。
だが渡辺九段の工夫はこの先にあった。私は雁木を採用するかと思ったのだが、銀の位置に金を上げたのだ。綺麗な左美濃ができあがったが、肝心の玉は居玉だ。
対して藤井王位も慎重に駒を進め、この折衝は先手にごくわずかながら利があったようだ。
渡辺九段は左金を反対側に上げ、結果的には右玉を表した。対して藤井王位側が左美濃っぽくなったのが面白い。結果、ほぼ互角となった。
というところで、藤井王位が封じた。予想手というか、形としては▲6七金と指したいのだが、△3五歩の桂頭攻めが気になる。これを私は、▲4七金で受けたいのである。
よって▲2九飛とでもしたいのだが、これはその前の渡辺九段の手に呼応している。だが渡辺九段はその手を考慮8分で指している。いっぽう藤井王位の封じ手は14分だった。
ということは、渡辺九段の指し手に関係なく、その手を指す予定だったことになる。
とすると、味よく▲6七銀引だろうか。ABEMA解説の佐々木慎七段はそのとき△5五歩を気にしていたが、まあ、大丈夫だろう。うん、角の頭を守る意味でも、「▲6七銀引」を封じ手予想としておく。
(つづく)
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藤井棋聖、「永世棋聖」に(第95期棋聖戦第3局)

2024-07-02 00:05:55 | 男性棋戦
先月伊藤匠叡王が誕生し、タイトル戦も一段落と思いきや、棋聖戦はまだ終わっていなかった。1日はヒューリック杯第95期棋聖戦第3局である(主催:産経新聞社、日本将棋連盟)。
対局場は愛知県名古屋市。名古屋駅の新幹線ホームでは、きしめんの立ち食いソバが食べられる。私は在来線のホームで食べたことがあるが、美味かった。
藤井聡太棋聖は本局に勝つと永世棋聖の資格を取得できる。挑戦者の山崎隆之八段はあとがないが、とにかく1つは勝たねばしょうがない。
将棋は山崎八段の先手で、相掛かりになった。山崎八段は中住まいに組み、6筋の歩を突き越す。山崎八段らしい大胆な手だ。
対して藤井棋聖は玉を横に寄る。中住まいの位置には金がいるからナナメ上に上がるか横に寄るかしかなかったのだが、名人に定跡なしだ。
戦いは進み、藤井棋聖は自然な指し回しで優位を築く。
というところで、藤井棋聖が7筋に手裏剣を放つ。これが痛打で、山崎八段は玉で取りたいのだが、飛車打ちの王手角取りがある。
よって山崎八段は7筋に飛車の王手で先着したのだが、今度はその飛車と角に両取りの心配が出てきた。
しかし回避するヒマがなく、銀で両取りを打たれては勝負あった。
藤井棋聖の玉はさびしそうだったが、スルスルと安全地帯に逃げ越した。藤井陣はいつも広いが、玉の逃走経路がいつも確保されているのに感心する。
最後は藤井棋聖が山崎玉を即詰みに討ち取り、幕。山崎八段は奮闘虚しく、3局で散った。
さて藤井棋聖は5期連続の棋聖獲得により、「永世棋聖」の資格を得た。藤井棋聖の初タイトル獲得から、もう4年が経ったわけだ。齢「21歳11ヶ月」は、中原誠十六世名人の23歳11ヶ月・永世棋聖を2歳更新する最年少記録となる。しかも、中原十六世名人の永世棋聖は年2期制だったから、それだけチャンスも多かった。藤井棋聖の場合、タイトル獲得が早かったこと、途中の失冠がなく、5連覇だったことから、大幅な記録更新となった。
藤井棋聖は今月22歳の誕生日を迎えるので、21歳までのおもな記録は、ここまでとなる。
前人未到の八冠王、永世棋聖、タイトル獲得23期、棋戦優勝10回、その他もろもろ。この時点で、ほとんどの棋士の生涯成績を抜いている。あらためて、恐ろしい21歳だ。
ちなみに当ブログの記事「永世称号取得は、どのタイトルが最も難しいか」は、藤井永世棋聖誕生直後からアクセスが上がり、いま現在、444件にもなった。

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藤井八冠、ついに敗れる(第9期叡王戦第5局)

2024-06-20 23:44:53 | 男性棋戦
第9期叡王戦(主催:不二家、日本将棋連盟)第5局がきょう20日、山梨県甲府市で行われ、挑戦者の伊藤匠七段が18時32分、156手まで藤井聡太叡王に勝ち、初のタイトル「叡王」を獲得した。藤井八冠のタイトル戦連勝記録はついに「22」で途切れ、七冠に後退した。

では、時を戻して見て行こう。きょうも私は、ABEMAでの観戦である。ただ、一日中雑用があるので、ヒマを見つけての観戦となった。
藤井叡王のフルセットは第6期叡王戦に続いて2度目だが、前回は豊島将之叡王に挑戦する立場だったから、防衛側としては初のケースとなる。
将棋は藤井叡王の先手で角換わりになったが、しばらく経ってABEMAを見ると、なんと藤井叡王が穴熊に潜っていた。金銀は雁木のような形で、むかし私が「東大将棋」で遊んでいたとき、このソフトがよく、雁木から穴熊に組んでいたことを思い出した。そのココロは「玉の遠さ」で、藤井叡王も同じ狙いだったと思われる。
それからしばらく経って見ると、形勢バーが「藤井66:34伊藤」となっていた。
ABEMA解説陣は、早くも伊藤玉を寄せている。やっぱりな。いろいろあったが、最後は藤井叡王が勝つんだと思った。
だが伊藤七段は、玉を金銀のある窪地に逃げ込み、反撃とばかり、銀頭に歩を打った。これがなかなかの手で、伊藤七段もまだ戦えるのではないかと思った。
またしばらく経ち、ABEMAを見る。すると、伊藤七段が藤井陣にけっこう攻め込んでいた。飛車を下ろし、と金を2枚作っている。しかも形勢バーが「藤井30:70伊藤」となっていた。藤井叡王有利(優勢)の局面から不利になるとは、珍しいことがあったものだ。
だが問題は深刻で、局面はすでに終盤だから、双方が最善手を指せば、即伊藤七段の勝ちになる。
伊藤七段、藤井叡王が自陣に引いた竜に当てて、金を打つ。藤井陣のこの竜はどこから出てきたのかと思うがそれはともかく、これで藤井玉は受けなし。ただ伊藤七段が打ったこの金が一枚入手できるので、それで伊藤玉が詰むかどうかだ。もっとも、それで詰むなら伊藤七段が金を打つわけがない。
ということは、伊藤七段の叡王奪取なのか!?
藤井叡王はうつむいている。これは相手玉が不詰みということを示している。藤井叡王、敗勢のときは、けっこう顔に出るのだ。
藤井叡王、金の王手に、伊藤七段が玉を左に逃げる。これが好手で、伊藤玉はどうしても詰まない。むろん藤井叡王もそれは分っているが、なおも王手を続ける。このあたり、藤井叡王も人間なのだと、ちょっとホッとした。
藤井叡王、いよいよ王手が尽きた。「負けました」と投了。ここに伊藤七段の初戴冠が決まったのだった。
いやいや、まさか伊藤七段が叡王を奪取するとは思わなかった。だってこの五番勝負の前までは、藤井叡王の10戦全勝(1持将棋)だったのだ。しかも第1局に藤井叡王が勝ったのだから、誰だって藤井叡王が防衛すると思うではないか。そこから伊藤七段が3勝1敗で乗り切った。これは本当に恐れ入った。
大殊勲の伊藤新叡王は、終局直後のインタビューでも、神妙な面持ち。
いっぽうの藤井竜王・名人は、「(八冠が崩れるのは)時間の、問題だと思っていた」と、サバサバしたように見えた。もちろん負けたことは悔しいが、悔しいのはその内容についてだけで、「22連覇でストップ」「七冠に後退」は、さして重要なことでないように見えた。これも藤井竜王・名人らしい。
伊藤匠叡王。いい響きだ。おめでとうございます。おふたりとも、お疲れ様でした。熱い戦いを、ありがとうございました。
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