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一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

佐藤紳哉七段のパフォーマンス・2

2025-07-25 23:33:31 | 男性棋士
20日放送のNHK杯将棋トーナメントは、木村一基九段VS佐藤紳哉七段だった。これはなかなか面白い組み合わせで、期待して見た。
木村九段は今期、予選からの出場だったが3連勝して本戦出場を決めた。驚くべきは、これが27年連続の本戦出場だったこと。これは隠れた大記録だと思う。
対して佐藤七段も予選3連勝。13年ぶりの本戦出場だという。……あれっ? ということは、「豊島? 強いよね」の将棋以来ということか?
あのコメントはいまや伝説的で、以降豊島将之九段の棋風は、あのコメントの形のまま紹介されることになった。
なお当ブログでもそのときの模様を取り上げている(2012年4月24日「佐藤紳哉六段のパフォーマンス」)。当ブログも無駄に歴史が長いが、アーカイブ的な味も有するようになった。
今回も対局前に、両者のインタビューが紹介される。インタビューアーは室谷由紀女流三段である。
「13年ぶりのNHK杯本戦です。お気持ちはいかがですか?」
「久しぶりだね。この日のために、ずっと! ずっとやってきたよ!」
出た! この日のために温めてきたであろう、佐藤伝説の開幕である。
ここでカットが変わり、佐藤七段が大写しになる。
「きょうは、木村九段との一局です。意気込みをお願いします」
室谷女流三段も内心は大笑いなのだが、そこは散文的にインタビューを続ける。この落差も面白い。
カットが元に戻った。
「木村さんは、俺より、はるかに強いと思う。だけど、勝負はやってみないと分からない! きょうこそは、俺の駒たちが、(そこで両手を広げて)躍動してくれると、信じてる。皆さんも、応援してほしい」
最後に佐藤七段が二、三度頷いた。
佐藤七段渾身のパフォーマンスに、私は心底笑った。佐藤七段はやはり、一流のエンターテイナーだ。
そして、解説の豊川孝弘七段と室谷女流三段が映った。きょうの解説は豊川七段だった! 確かに、佐藤七段のパフォーマンスを正面から受け取れるのは、豊川七段しかいない。NHKも粋な人選をしてくれる。完全に「狙って」いる感じだ。
「はい、ということで、佐藤紳哉節、炸裂していました」
と室谷女流三段が言う。
「いやキテましたね。相当準備したんでしょうね。盤上作戦以上に、いやーあの、チカラ入っていました。佐藤紳哉流ですハイ」
「13年ぶりに私も見れてうれしかったです」
「伝説になりそうですねハイ」
ここまでのやり取りだけで、全国の将棋ファンは大満足である。
なお本編の対局は、佐藤七段が終始首を横に振りながら、鬼の形相で果敢に攻めた。しかし木村九段が頑強な受けを見せ、最後は玉自ら寄せに参加するという木村流が出て、木村九段の快勝となった。
佐藤七段には残念な結果で、次のNHK杯出場は、また13年後なのだろうか。それhこっちの体がもたないので、また来年もぜひ、本戦に出場してほしい。
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藤井九段、看寿賞受賞!!

2025-07-23 14:00:55 | 男性棋士
最近びっくりしたニュースが、藤井猛九段の看寿賞長編賞受賞だ。
ここ数年「藤井」といえば藤井聡太竜王・名人のことを指し、藤井九段はさしずめ解説名人という立ち位置だった。だから今回のニュースを知ったときも、聡太竜王・名人のことをいっているのかと思った。藤井九段、久々にやってくれた。
看寿賞とは、江戸時代の棋士で詰将棋の名手でもあった伊藤看寿にちなんだもので、1950年創刊の「詰将棋パラダイス」(通称「詰パラ」)で、その前年に発表された全詰将棋の中から発表されるものである。規模は違うが、将棋ペンクラブの将棋ペンクラブ大賞のようなものである。
藤井九段は同大賞の常連であり、技術部門のそれを何度も受賞している。看寿賞と将棋ペンクラブ大賞の両方を受賞したのはたいへん珍しい。
それにしても、である。藤井九段といえば「藤井システム」が代名詞であり、詰将棋のイメージはない。それがどうして、詰将棋創作にハマってしまったのか。
その前に、棋士は強いんだから詰将棋だって創れるだろう、と思うのは浅はかで、詰将棋は作品である以上、たんに詰むだけではダメである。単純にいえば、解いたときの爽快感がなければならぬ。棋士の創作には、残念ながらそれが足らない人もいる。
ちなみに大野八一雄七段のそれは手筋物が多く、解後感がよい。
植山悦行七段のそれはあまり見たことがないが、ちょっとひねった味わい深いものがある。
話を戻し、藤井九段の看寿賞は、現在発行中の7月号に掲載されている(初出は2024年8月号)。だが詰パラは定期購読誌であり、私は購入するまでの熱意はないので、ネットを駆使し、該当作品を探してみた。
看寿賞作品は155手詰。盤面全体に駒が散らばっている。私が分かるのは必然の最初の2手だけで、あとはさっぱりお手上げである。長編は芸術作品なので、作意を鑑賞するのがよい。それで、以降は詰手順を味わうことにした。
4手目が難しいが実は、あとはスラスラ進む。以下もこの感じで進むが、なんとなく実戦の手順を思わせる。
途中で持駒がなくなるも、盤上の駒を拾い、細い手順が繋がっていく。最後は実戦形の詰みのような形。いや、藤井ワールドを堪能した。
藤井九段の多才ぶりを再確認した一局。
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川上七段の成績はどうなっている(第38期竜王戦編)2

2025-07-15 14:39:49 | 男性棋士
当ブログで注目している川上猛七段の戦いだが、第38期竜王戦での成績はどうなっているのか。3月4日に続き、第2弾を記そうと思う。
川上七段はランキング戦5組の1回戦、2回戦に勝ち、3回戦は山本博志五段と当たった。
将棋は序盤でいろいろ駆け引きがあったが、先手山本五段の三間飛車に、川上七段の右玉。
川上七段が下段に引いた飛車を△2一に振り、2筋から戦いが始まった。形勢の揺れは、素人には皆目分からないが、川上七段にも十分戦えていたと思う。
しかし結果は山本五段の勝ち。これにて私調べでは、川上七段は昇級者決定戦で4組に昇級しないと、完全引退となる(仮に昇級できなくとも、第39期も戦える可能性ももちろんある)。
なお「たられば」だが、川上七段が山本五段戦に勝っていれば、準決勝は山下数毅奨励会三段との戦いになり、私はどちらを応援するか、迷うところだった。
余談続きだが、山下三段は先日の奨励会三段リーグで5勝目を挙げ、四段昇段が確定となった。おめでとう!!
さて、昇級者決定戦に回った川上七段は、初戦で門倉啓太六段と戦った。
将棋は川上七段の先手で、相矢倉。門倉六段は当然急戦策を採り、華々しい戦いが繰り広げられた。
結果は、川上七段の攻めが一手早く、川上七段の勝ち。幸先よく、第一関門をクリアした。
次の相手は、(中村太地八段VS斎藤明日斗六段)VS出口若武六段の勝者。いずれも難敵だが、戦う相手はひとりだけだ。全力を尽くして、勝つしかない。
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八代七段、八段に昇段

2025-07-14 23:41:55 | 男性棋士
10日に行われた第84期C級2組順位戦で、八代弥七段が北島忠雄七段に勝ち、七段昇段後190勝。八段に昇段した。順位戦で昇級経験なしで八段まで昇ったのは史上初。大変な珍記録で昇段に花を添えた形となった。
とはいえ、31歳で八段は早すぎる。勝ち星昇段ばかりでは年数がかかってしまうから、どこかで効率のいい昇段があったはずだ。詳しく見てみよう。
八代八段は2012年4月、四段デビュー。
まずは2015年5月、第28期竜王戦で4組昇級を決め、「2期連続昇級は昇段」の規定により、五段に昇段した。
そして2017年2月には、第10回朝日杯将棋オープン戦で優勝し、六段に昇段した。
さらに2019年4月、第32期竜王戦で2組に昇級。またもや2期連続昇級は昇段、の規定により、七段に昇段した。七段まで勝ち星昇段がないのも珍記録であろう。
八代八段はその後、第34期竜王戦で1組に昇級し、翌第35期では堂々と1組に残留した。C級2組在籍で1組残留も、唯一人の記録である。
そして七段からは190勝で昇段となったのだが、この間、6年3ヶ月にも満たない。つまり年間約30勝ペースとなり、八代八段が順位戦以外、いかに勝っていたかの証明となる。
ちなみに第38期竜王戦では、1組で堂々の優勝を果たした。1組の優勝賞金は470万円。さらに本戦トーナメントの初戦の対局料は200万円である。朝日杯の優勝賞金が750万円、将棋日本シリーズのそれが500万円だから、1組優勝だけで、一般棋戦の優勝に十分匹敵するのだ。
それだけの実力がありながら、なぜに順位戦で昇級できないのか。佐々木大地七段と並び、棋界の七不思議といえる。
今期の順位戦は、八代八段2勝0敗。残りの相手を見ても負けそうにないのだが、今期もなぜかどこかで、負けるのだろう。
こうなったら、「順位戦の昇段なしでC級2組九段」の大記録も見てみたい。ただ、これまで通り年間30勝を挙げたとしても、達成は9年後である。そんな先のことを想像するだけで、自分自身が憂鬱になってしまう。
だから八代八段が、早く1つ昇級すればよい。
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棋聖戦五番勝負に、杉本六段登場!!

2025-04-29 00:04:20 | 男性棋士
最近ビックリしたのが、25日に指された第96期棋聖戦の挑戦者決定戦で、杉本和陽五段が永瀬拓矢九段を破り、挑戦権を獲得したことだ。
杉本五段は2017年デビューの、振り飛車党の中堅。私にそれ以上の知識はない。
対して永瀬九段は歴戦の雄で、天敵藤井聡太竜王・名人がいなければ、いまごろはタイトルをいくつか持っていたはずだ。
そのふたりが戦えば、当然永瀬九段が勝つと思う。しかし永瀬九段に恨みはないが、王将戦、名人戦と藤井―永瀬戦が続いているので、そろそろ別のカードが見たいところではあった。
だが挑戦者決定戦は中盤まで永瀬九段がリード。ああやっぱり、永瀬九段の棋聖挑戦かと思った。
ところがその後ABEMA を見ると、形勢が逆転して、杉本五段がリードしていた。その後は「50:50」の局面も出現したが、杉本五段の攻めが分かりやすく、指し手が続けば、杉本五段が再びリードすると思った。
果たしてその後は杉本五段がリードを奪い、最後は鮮やかな即詰みで幕。杉本五段、六段昇段を手に入れて、藤井棋聖への挑戦となった。
それにしても、杉本六段の挑戦とは……。第96期の開幕時、杉本六段が挑戦権を獲得するなど、誰が予想しただろう。まして優勝賞金5000万円を争うことになろうとは、本人がいちばんビックリしているのではなかろうか。
せっかくだから、「意外な挑戦者」を、独断で何件か挙げてみる。

1979年 第35期棋聖戦 中原誠棋聖VS淡路仁茂六段
1991年 第32期王位戦 谷川浩司王位VS中田宏樹六段
1997年 第10期竜王戦 谷川浩司竜王VS真田圭一六段
2018年 第3期叡王戦 高見泰地六段VS金井恒太六段

第35期棋聖戦は、「長手数の美学」こと淡路六段が棋聖戦に登場。しかし相手は当時全盛期の中原棋聖で、0勝3敗で敗退した。
第32期の王位戦は、第1局、第2局と中田六段が連勝してあわやと思われたが、以降は谷川王位が底力を発揮し、4連勝で逆転防衛。とはいえ、中田六段の実力を、広く世間にアピールした。
第10期竜王戦は、気鋭真田六段の登場。当時は「茶髪の挑戦者」として話題になった。番勝負は0勝4敗で敗退したが、第1局の「奇手▲4一金」は高く評価された。
第3期叡王戦は、この期からタイトル戦になったため、挑戦者決定戦のカードがそのままタイトル戦七番勝負となった。なおここでは、金井六段のほうが「意外な挑戦者」のウエイトがある。結果は高見六段が4連勝で初タイトルとなった。
ちなみに負けた4棋士は、これが唯一のタイトル戦となっている。

さて、杉本六段はどうだろうか。ただ勝敗はともかく、振り飛車のタイトル戦が見られるのはうれしい。第1局は6月3日。杉本六段の作戦を楽しみにしている。
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