まつかぜ日記

暮らしの中で思うこと

『琉球の織物』展 日本民藝館

2008年06月02日 | 沖縄
5月31日(土)日本民藝館へ。
4月から始まった『琉球の織物』展。既に週間を残すのみ、となっています。
この日は、沖縄県立芸術大学付属研究所の柳 悦州(やなぎよしくに)氏の講演もおこなわれました。

2005年・秋の『琉球の美』展では、陶器や漆器とともに戦前に作られた紅型染めや絣の衣装をみて、その美しが深く心に残りました。

今回は織物。絣や花織の衣装が中心です。
柳氏のお話によると、日本民藝館が所蔵する「沖縄の織物」は主に19世紀前半(王朝後期)からのものだそうですが、展示品はどれも非常に状態がよく、素晴らしいものばかりでした。

素材は芭蕉や苧麻、桐板(トンビャン)、木綿、絹で、
ほとんどのものが現代でも使われているものです。
でもい風合いというか、布の感じが明らかに現在のものとは違うものがいくつもあり、気になりました。

講演の中で、私がその違いの要因として思い当たったのが
当時の糸は、染色との関係からか、数種の素材が適材適所に使われているそうですので、その素材の多様な組み合わせが今にない風合いを生んでいるのかもしれない、ということ。もう一つは作り手の技術の違いではないか?ということでした。
お話では、現在残されている布を再現する事は構造的には可能なのだそうです。しかしながら、例えば腰機で布を織る昔の女性の映像が残っていて見てみると、軽々とよどみない動きで、とてもすぐに真似できるものではないのだそうです。

戦後、失いかけた織の技術は多くの人の熱意によって再生されて、今につなぎ、渡されてきたのだと理解しています。しかしながら、人の手が長い月日をかけて育んできた技術は易々とは再現できないのだと痛感しました。


それから余談ですが・・・
今年の春、新宿で開かれた『うちくい展』というところで「芭蕉・苧麻が繊維になるまで」を実際に自分の手で体験させていただくという好機に恵まれました。
↓がその時の写真です。
同行の友人も私も、芭蕉が糸になる工程は理解しているはずでした。大変手のかかるコトであると。
ですが、実際に鉄板を手に芭蕉の繊維をしごいていく感触と動きを体験してみると、それはもう、想像を何十倍も超えたご苦労が存在しているに気づかされたのでした。
その後、芭蕉布を見るたびに体の芯のほうからソソソッと鳥肌が立つような感覚が起きるのでした。
この度の展示を見ていてもソレは全く同様で。
蜻蛉の羽のように薄い~といわれる衣装を見たときは、クラクラと気が遠くなるような感覚に襲われました。

手前から糸芭蕉の葉。
葉の上の茶色いノシイカ(?)のようなものが芭蕉の皮を剥いで灰汁で煮たもの。この状態のものを金具(パイ)でしごいて繊維を出す。又は灰汁で煮ることなく使う事もある。
中央の細い枝が苧麻の原料。イラクサ科カラムシ。
白い棒状のもが、糸芭蕉の木の外皮を取り除いたもの。緑の葉になる前の状態のもので、何枚も重なって幹の様に太くなっている。これを一枚づつ剥いで使う。

ちなみに、糸を取るためには年に3~4回梢頭部を切り落としつつ、2~3年育てなければならないそうです。

芭蕉の皮の内側はこんなふう。
実を外したトウモロコシみたい。


うまく文章に表せませんが、鉄板で不純物をしごき取ると艶のある糸が現れるのです。








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4 コメント

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Unknown (くっちゃ寝)
2008-06-05 10:50:51
>人の手が長い月日をかけて育んできた技術は易々とは再現できないのだと痛感しました。

ほんとにそうですね。
手仕事というのは、気の遠くなるような作業を長い時間かけてこつこつやっていくもの。
それを家族で、あるいは地域で、代々伝えていくものだから、一度とぎれてしまうと、その文化や技術を再現するのは、ほとんど不可能なことことではないかとさえ思います。

芭蕉布というのは聞いたことありますが、まだ実物を見たことはありません。
こういう植物から糸をつくろうとした人はすごいですね。
昔の人々の技と根気に脱帽です。
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くっちゃ寝さん (まつかぜ)
2008-06-06 10:56:14
おはようございます。

展示されていた芭蕉布はとても繊細で美しいものばかりでした。
↑で剥いでいた芭蕉の皮を思い出すと、本当に魔法のようです。

歴史的なお話をうかがってみると、作り手にとっては強いられた“過酷な労働”であったのかもしれません。でも、この素晴らしい人の技をなくしてしまうのはあまりに惜しい気がしました。
時代に沿って変化することがあっても、しなやかに伝承されていってもらいたいと願っています。
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たからもの (マーガレット)
2008-06-13 06:25:33
まつかぜさん こんにちは。
芭蕉布、沖縄で実際に織っているところを見学させてもらい、その美しさとたいへんさにくらっときたことがあります。
そして、欲しいーと思って見た値段に飛び上がった思い出も。
その労苦と歴史の値段なのですね。
素敵な記事を読ませていただきました。ものを作る方たちの感性ってすごいですね。
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マーガレットさん (まつかぜ)
2008-06-13 12:26:33
こんにちは。
コメント頂いて、嬉しいです。ありがとうございます。
私も沖縄で芭蕉布を織っているところを実際に拝見して、もう本当に気が遠くなるような繊細な作業に驚きました。ですから、あのお値段に驚いてはいけないのだ…とも自分に言い聞かせ。(苦笑)
しかし、ほんの一部ですが、自分の手で体験した途端、頭の中にあったものがあまりに小さなイメージだった事に気が付いたのでした。
手が伝えるもの、手が作り出すもの、その大切さをあらためて考えた一日でした。
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