まつかぜ日記

暮らしの中で思うこと

行李

2005年08月26日 | 手仕事のもの
一年程前の話。
盛岡に嫁いだ友人から突然「こうり」いらない?と電話がかかってきた。「こうり」って?  「氷」じゃなくて---「行李」のこと?!!

彼女は私の好きな物を良く判っていてくれて、というより好みがとても近い部分があって(私だけが思っているのかも知れないけれど)いつも盛岡で発見した素敵な物や美味しい物を送ってくれる。そして時々は荷箱の隅に、きっちり乾燥させたとちの実やもみじ葉楓の実、20cm以上もある巨大松ぼっくり、おはじきみたいにツルッとした河原の石等が忍ばせてあってビックリさせられる。でも、それがとっても嬉しい。

その彼女がご主人の家でこの行李が処分されようとするのを見て、とても捨てられないと思ったのだそうだ。既に幾つかの行李は、やはり捨てられないお母様の手によって解体され、編みなおされて花籠になったそうだが<すばらしいお母様です!>そればかり作っている訳にはいかないようだ。

実物は、想像よりもずっとしっかりとしていて”あじろ”の編目がとても美しい。友人は『嫌だったら取ってね』と言っていたが、四隅に縫い付けられた柿渋染の布もとても趣があって良いと思った。
聞けば、昔お父様が長期出張に出かける時に荷物を送るのに使っていた物だという。これには驚いた!今では全く想像も出来ないけれど、ほんの何十年か前まではダンボール箱なんて使っていなかったんだー。そしてこの行李の全く丈夫なこと!

今、我が家では内と外を別々にして使っている。一方はクロゼットの中で鞄入れに、もう一方は居間でウクレレ置き場に。時々立ち止まって、この整然と繰り返される編み目を見つめると、行李を作った人や、運んだ人、大事にしていた人の様子が目に浮かんでくるような気がする。人の手のかかったものは温かいナ。