ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

ゼフィルスの開翅

2018-08-01 21:52:25 | チョウ/ゼフィルス

 ゼフィルスは国内に25種類生息しているが、翅裏が特徴的な種類もあれば、翅表が青や緑に輝く種類もいる。出会うことさえ難しい種類もあれば、出会っても、その美しさを写すことが難しい種類が多い。ゼフィルスの仲間でも一際美しい FavoniusChrysozephyrus。その輝く翅表を写真に収めるのは簡単ではない。それぞれの種の生態と行動パターンを学んだ上で、生息地ごとの発生初期に合わせて訪問し、撮影テクニックを駆使して撮らなければならないが、その年の発生のタイミングや天候にも左右され、遠くに遠征しても空振りの事さえある。
 良い時期と天候、そして時間に訪問したとしても翅裏だけの写真で終わることも多い。一枚目の写真は、エゾミドリシジミ Favonius jezoensis (Matsumura, 1915) のオスだが、翅を開く前に飛んで行ってしまった。また、翅を開いたとしても、目線と同じ高さ、あるいはそれ以上の葉先で撮影角度が悪ければ、鱗粉が反射する光の加減で後翅が輝かずに黒く見えてしまう。(写真2.)また、生息環境も一緒に写し込む広角撮影は別にして、被写体の図鑑写真を目的とするならば、遠くの梢では写真的にインパクトがなく、証拠程度になってしまう。(写真3.)それに羽化から時間が経っていれば翅が擦れ、鱗粉も剥がれてしまう。個体の最高に美しい姿を写真に撮るという点では、昆虫の中では一番難しいと言えるのではないだろうか。

 そうしたゼフィルスの仲間でも、掲載したジョウザンミドリシジミ Favonius taxila taxila (Bremer, 1861) は、比較的撮りやすく、山地性ゼフィルスの撮影入門種と言えるかも知れない。
 ジョウザンミドリシジミは、ミズナラやコナラの林縁や林内のギャップにおいて、早朝からオスが飛び廻り、葉先に止まっては翅を開く。自分のテリトリーに他のオスが侵入してくるのを見張るのである。他のオスが侵入してくれば、飛び立って追い払う。相手が逃げ出すまで、互いにクルクルと卍飛翔を繰り返す。逃げだせば、また葉先に止まって見張る。
 種によっては、高い梢の葉先にしか止まらないが、ジョウザンミドリシジミは、個体によっては下草にもよく止まる。曇りや少し雨が降っていても活発に活動している時間帯であれば、葉に止まればすぐに翅を開くので撮影しやすい種だと思う。他の種でもそうだが、撮影者にとっては、この翅を開く瞬間がたまらない。
 掲載したジョウザンミドリシジミは、まさにテリトリーを見張っている瞬間である。翅を広げ始めると前脚2本を持ち上げ、戦闘姿勢に入る様子が分かる。他のオスが飛んで来れば、すぐに飛び出す構えである。
 ジョウザンミドリシジミは、過去に何度も撮影し、美しい姿を公開しているので参照いただきたい。今回は、翅が擦れ、片方の尾状突起が欠けている個体であるが、本年に撮影した個体なので記事として紹介した。

 筆者は、ヒサマツミドリシジミのオスを除く Favonius と Chrysozephyrus のオスの開翅はすべて撮影しているが、満足できる写真は少ない。今年は、ハヤシミドリシジミとウラキンシジミは達成できたが、他は未達。そろそろゼフィルスの季節も終わりである。来年は、十分に計画を練って、すべて達成できるよう楽しみたい。

ゼフィルス(Zephyrus)は、ラテン語でギリシャ神話の西風の神ゼピュロス(Zephyros)が語源となっている樹上性のシジミチョウ科(Family Papilionidae)の一群、ミドリシジミ族(Tribe Theclini)の俗称である。ゼフィルスという属名は、現在では分類学上(Thecla)属の同物異名として破棄されているが、長い間ミドリシジミ族の属名として世界的に使用されてきた関係もあり、またミドリシジミ族(現在では多数の属に分割されている)全体を表現する用語として便利なために一般によく使用されている。

参照:ジョウザンミドリシジミ

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エゾミドリシジミの写真

エゾミドリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250 ISO 3200 -2/3EV(撮影地:長野県松本市 2018.7.21 5:51)

ジョウザンミドリシジミの写真

ジョウザンミドリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 400 -2/3EV(撮影地:長野県松本市 2018.7.21 6:55)

ハヤシミドリシジミの写真

ハヤシミドリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 500 -2/3EV(撮影地:東京都 2018.6.24 7:22)

ジョウザンミドリシジミの写真

ジョウザンミドリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/160秒 ISO 640 -2/3EV(撮影地:岩手県二戸市 2011.7.16 7:38)

ジョウザンミドリシジミの写真

ジョウザンミドリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/160秒 ISO 640 -2/3EV(撮影地:岩手県二戸市 2011.7.16 7:38)

ジョウザンミドリシジミの写真

ジョウザンミドリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/125秒 ISO 640 -2/3EV(撮影地:岩手県二戸市 2011.7.16 7:38)

ジョウザンミドリシジミの写真

ジョウザンミドリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/125秒 ISO 500 -2/3EV(撮影地:岩手県二戸市 2011.7.16 7:38)

ジョウザンミドリシジミの写真

ジョウザンミドリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/160秒 ISO 640 -2/3EV(撮影地:岩手県二戸市 2011.7.16 7:39)

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