ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

ヒメボタルの交尾~孵化

2019-06-25 20:31:47 | ヒメボタル

 ヒメボタル Luciola parvula Kiesenwetter 1874 は、幼虫が陸地で生活する陸生ホタルで、成虫はゲンジボタルとヘイケボタルのようによく発光するホタルである。フラッシュのように明滅する独特な発光が写真映えするため、昨今では多くのカメラマンが生息地を訪れ写真を撮っている。ネット上に溢れるヒメボタルの飛翔写真は、どれも美しい。しかし、見た目とは大きくかけ離れた創作写真が大半を占めている。撮影方法やそれら写真の批評については別の機会に述べるとして、この記事では、誰もが撮る飛翔写真ではないヒメボタルの姿を掲載したいと思う。(尚、写真はすべて飼育個体で、自宅室内での撮影である。)

 ヒメボタルの発生期間は短く、7~10日間ほどである。メスには羽ばたく下翅がなく、地面や草の茎、枝などに捕まりながら発光し、それに惹かれてやってきたオスと交尾し、翌日には卵を産み始める。産卵数は少なく、およそ30~90個ほどである。メスの体長はおよそ6mmしかないが、卵は直径約0.7mmで、ゲンジボタルの卵と比べてもかなり大きい。一度に全部の卵を一か所にかためて産卵する個体もいれば、数日間に渡って土の上に数個ずつバラバラに産む個体もいる。

 ヒメボタルの卵は、およそ20日(積算温度約435度日)で孵化する。ゲンジボタルの場合は、卵がだんだんと黒くなるので(卵の中の幼虫が見える)孵化が間近であるかどうかが分かるが、ヒメボタルの場合は、最初から最後まで卵はレモン色のままである。孵化した幼虫(およそ1.4mm)には模様がなく、レモン色であるためだ。孵化して2日ほどすると、少し茶色に色づいてくる。
 孵化で興味深いのは、かなり遅れて孵化する卵があるということである。クロマドボタルでは、産卵後一カ月で孵化するものと、秋になってから孵化するものが混在しているという。ヒメボタルの場合も、十分考えられる。今後の研究課題である。
 孵化した幼虫は、落ち葉や土の隙間等で過ごし、夜になるとオカチョウジガイやキセルガイ等の陸生巻貝、ミミズなどを食べ、1~数年かかって成虫になる。

 ヒメボタルの産卵数が少ないのは、環境が安定しており、生存率も高いからであるが、逆に言えば、環境が激変すれば一気に減少するということである。飛翔写真の撮影で生息域内に立ち入れば、土の上にいるメスや産んだ卵を踏んでしまうことにもなる。生態を学んだ上で、撮影を楽しんでほしい。

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1024*683 Pixels で掲載しています。ウェブブラウザの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorer等ウェブブラウザの画面サイズを大きくしてご覧ください。

ヒメボタルの写真

ヒメボタル(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F11 16秒 ISO 400

ヒメボタルの写真

ヒメボタル(交尾)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/60秒 ISO 400 +2/3EV

ヒメボタルの写真

ヒメボタル(交尾)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/60秒 ISO 400 +2/3EV

ヒメボタルの写真

ヒメボタル(交尾)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F2.8 1/60秒 ISO 400

ヒメボタルの写真

ヒメボタル(産卵)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F16 1/60秒 ISO 400

ヒメボタルの卵の写真

ヒメボタル(卵)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F20 1/8秒 ISO 3200

ヒメボタルの卵の写真

ヒメボタル(卵)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F2.8 1/60秒 ISO 400

ヒメボタルの卵の写真

ヒメボタル(発光する卵)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F2.8 114秒 ISO 6400

ヒメボタルの写真

ヒメボタルの雌雄背面(左:オス 右:メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F16 1/50秒 ISO 3200

ヒメボタルの写真

ヒメボタルの雌雄腹面(左:オス 右:メス) / オスの複眼の方が大きい。
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F20 1/100秒 ISO 3200

ヒメボタルの写真

ヒメボタルの雌雄腹面(左:オス 右:メス) / 死んでもしばらくは発光し続ける
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F2.8 10秒 ISO 400

ヒメボタルの孵化写真

ヒメボタルの孵化
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F14 1/15秒 ISO 3200 -1/3EV

ヒメボタルの孵化写真

ヒメボタルの孵化
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F14 1/15秒 ISO 3200 -1/3EV

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