幻の詩集 『あまたのおろち』 by 紫源二

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 フラウ ドイチュ

2004-12-24 16:09:09 | Weblog

  あなたは、なぜ
  好きでもないハゲ頭に
  腰を振って
  デートに誘って
  と言うのか?
  あなたは、なぜ
  どうでもいい一般人に
  唇を寄せて
  あなたに逢えなくて寂しかったわ
  なんて言うのか?
  全部ウソだってことは
  見え透いているのに
  あなたは
  僕に当て付けるように
  自分を安売りして見せて
  僕にだけは
  法外な値段をつけて
  ガラスのショーケースに鍵をかける
  それがあなたのプライドなら
  迷惑してるのは
  いったい誰?
  そのせいで失われたのは
  いったい何?
  二人の間に放出されるはずだった
  オルゴン・エネルギー?
  それとも
  感じられるはずだった快楽?
  素直になれないのは
  あなたがインテリだから?
  それとも
  あなたは、
  優秀なアーリア民族で
  僕の髪が黒いから?
  あなたの肌の色は
  白い、というより
  ピンク色で
  誇り高い鼻はそびえ立ち
  ブロンドの髪は
  あなたがどこから来たかを証明している
  そこでは、西の太陽が
  青い大河流れる金色の平野を照らし
  ピンク色の豚を
  滑らかなソーセージにして食す国
  あなたは茹でたての
  湯気立つ
  熱い太いソーセージを口の先に入れ
  赤いルージュからこぼれる
  白いエナメルの歯を立てて
  ピンと張った薄皮を軋る
  肉汁が弾け
  滴る
  縦に割れたふくよかな顎に
  そして、あなたは
  艶やかなマネキュアの指先を
  慎重に操って
  縦に割れた顎の谷間ににじむ油を
  笑いながらぬぐう
  日曜日には
  ルターの教会に集い
  讃美歌を歌い
  夜は奔放になって
  ベッドを濡らす
  翌朝、理性に目覚め
  ゴミを几帳面に分類して
  リサイクルに出す
  模範的な小市民
  それなのに
  あなたは
  加害者の深い傷を負っている
  それは
  アウシュヴィッツでユダヤ人を裸にし
  シャワーを浴びさせると嘘をついて処分し
  皮を剥いで金歯を抜き
  頭髪を刈って毛布を織り
  食事も与えず
  敷地内の近代工場で働かせ
  弱ると、生きたまま解剖し
  ホルマリン標本にしてラベルを張った
  民族の記憶
  あなたが僕の目を見るとき
  悲しい目をするのは
  僕の目が
  ユダヤ人のように黒いから?
  でも
  その昔
  ロシアを破った日本は
  ヒトラーと同盟を組み
  そう、かつてのあなたの国家と同盟を組み
  ハーケンクロイツがヨーロッパを占領するとき
  東の果てで
  ロシアと戦う勇敢な国のはずだった
  しかし実際は
  石油が尽きたまま
  アメリカの空母に
  カミカゼ特攻し
  海の藻屑と消えた
  太陽女神の国家
  あなたのかつての国家は
  あなたのように美しく
  優秀な頭脳と
  優良な肉体を持った
  青い目をした金髪の男女を召集し
  遺伝子が明らかになるまで身体検査をし
  精子と卵子を結合させ
  優等民族を創造しようとした
  生まれた子供は、
  ハーケンクロイツを崇拝させるはずだった
  しかし、今あなたは
  十字架に貼り付けにされたキリストの前にひざまずき
  鞭打たれた半裸の
  黒髪の
  黒い瞳の
  ユダヤの王を
  見上げ
  悔恨の涙を流して
  懺悔する
  民族の浄化を?
  欲情の昇華を?
  あなたが僕の前にひざまずき
  青い目で
  かつてのハーケンクロイツを見上げるように
  僕の男根を崇拝するなら
  黒髪の生け贄は
  マグダラのマリアを愛したように
  あなたに投石する者に向かって言うだろう
 「
  アダムのペニスを
  いちぢくの葉で隠匿する知恵を授けたのは
  善悪を知ったイブだった
  そのイブが
  今
  アダムの男根を露わにし
  改悛の眼差しで見上げ
  勃起した亀頭に接吻し
  悔い改めようとしている
  見よ、そのとき
  彼女がエデンで犯した罪を贖うため
  自らの子宮で
  アダムのリンガを包み
  忘我の歓喜
  アナートマンのサマーディの中で
  新しいキリスト
  如来を
  胎臓界に孕む
  この赤裸々なマンダラ!
  このタントリックな秘儀を
  公衆の面前で公開せん!
 」
  と。


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