幻の詩集 『あまたのおろち』 by 紫源二

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 僕は、まちがったやり方しかできない

2013-06-21 01:12:45 | Weblog

 
 
  とがった鉛筆のような
 
  細い指に
 
  僕の指を絡めて
 
  あなたの冷たさを確かめ
 
  僕の熱を伝えようとする
 
  細い両腕を掴んで
 
  抵抗できなくして
 
  でも
 
  だめだとささやくのが聞こえ
 
  僕は筋肉を弛緩させ
 
  両手をほどく
 
  こんなやり方じゃない
 
  だめだ
 
  一番まちがったやり方だ
 
  子鹿に飛びかかり
 
  前足で羽交い締めにして
 
  細い首に牙を立てるライオン
 
  こんな狩みたいなやり方
 
  死の恐怖しか与えない
 
  小鳥がメスを呼び入れる暖かいベッドをつくり
 
  その前で羽を広げて鳴くように
 
  直接触れたらいけない
 
  指一本だって触れ合わず
 
  ひたすら合意を請いつづけ
 
  恋つづけ
 
  歌いつづけなければならない
 
  天使を抱くには
 
  自らの肉体を
 
  虚しくしなければならない
 
  胸の奥の燃える炎は
 
  たった1滴でも
 
  欲情を含んではならない
 
  僕は二度とまちがったやり方はしない
 
  そう心に誓うけれど
 
  僕には、はたして、正しいやり方ができるのだろうか
 
  小鳥は本能のままに歌い、ダンスするけれど
 
  僕は、本能のままには行動できなくなってしまった
 
  曲がりなりにも、理性を持つ人間だ
 
  ホモサピエンスだ
 
  動物ではないが、天使にもなれない
 
  その中間で、夢見、昇華できない欲情を
 
  あなたのような神聖な存在に出会って
 
  恋い焦がれる
 
  獣に近い存在なのだ
 
  天使にとっては、永遠にまちがったやり方しかできない
 
  進化の途上の野蛮人なのだ