本蔵院 律良日記

熊本県にあるお寺“真言宗 本蔵院 律良のブログ”日々感じるままに活動のご報告や独り言などを書いた日記を公開しています。

DA SEIN

2013-11-13 22:01:44 | 住職の活動日記

  「 DA SEIN 」 ( ダーザイン )

というドイツ語です。

 哲学用語で 「 実存 」 という意味です。

もう一度詳しく調べてみようとネットで検索すると、

「 DASEIN 」 というロックバンドが一番にヒットしました。

  と一瞬びっくりです。

どういう意味で DASEIN という名前にしたのかわかりませんが

えらく難しい言葉をロックバンドの名前にしたものです。

そして、このバンドのファンを 「 ザイナー 」 と

いうのだそうです。

 

 DA SEIN  英語では THERE BING となります。

DA というのは 「 ここ 」 という意味です。

哲学的には、 「 今 」 「 此処に 」 「 誰か 」 

として在る、ということになります。

SEIN というのは 「 在る 」 ということ。

有るというのは、今有る、ここに有る、誰かとして有る、

ということです。  

 話はそれますが、

「 十戒 」 という映画が昔ありました。

その中でモーゼが神に会うという場面があります。

モーゼが神に 「 あなたは誰か 」 と尋ねるのです。

すると、神の声として、

 「 I AM WHO I AM 」

という言葉が響いてきます。

その時の訳は、

 「 我は在りて在るものなり 」

と出ていました。

 やはり、哲学でもキリスト教でも

存在というか実存、在る、という概念が

中心になってくるようです。

 

 

 そして、在るということ、存在という概念は

仏教の中心問題でもあります。

 今読んでいる 「 唯識 」 というお経、

その最初の文にも、

「 異熟 」 ( いじゅく ) 「 思量 」 ( しりょう )

「 了別境 」 ( りょうべっきょう )

という聞きなれない言葉がでてきます。

人間の意識を三つに分けたものです。

 この中で 「 異塾 」 という、

異なって熟する、このことが

先ほどの 「 DASEIN 」 ということにあたります。

 唯識というお経は面白くて魅力的なのは

仏とか如来という立派なものから出発していないのです。

どうにもならない、苦悩している、今いる自分という

具体的に現存する自己、

そこをまずおさえて、そこから出発している

ということがあります。

 

 異熟、異なって成熟している。

これはただ有るというだけでなしに、

成ってきたもの、という意味もあります。

前とは異なった状態で今結果した、成熟した、

と同時にまた異なった状態に移っていく、という。

 

 赤ちゃんを見ていると

日々とても速いスピードで成長しているようです。

口にも態度にも具体的には出てきませんが

ありとあらゆる情報をインプットしているのでしょう。

 今は母親の両親のもとで育ち、

やがて、ひと月を過ぎるころになると、

今度は親子3人での生活が始まります。

その時その時の環境が変わっていくわけです。

その折々の環境を受けながら

成長していくわけです。

その環境に合わせた自分になっていきます。

環境に合わせて、異なって成熟していく、

そういうことを異熟とあらわしたのでしょう。

 

 弘法大師も

  「 心境冥会して道徳玄存す 」

  ( しんきょうみょうえ どうとくげんぞん )

と述べておられます。

心と環境は別物ではなく、

心によって環境も作り出すし、

また、環境によって心は作られていく、

心と環境は切っても切り離せないものです。

 

 今、現実に自分が在るということは

振り返ってみると、自分の歴史は

いろいろな環境によって、その影響を受けつつ

異なりながら成長してきたし

またこれからも、今の自分と違って

成熟していくと思います。

 

 赤ちゃんの寝姿を見ながら

ふと、考えてしまいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

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