本蔵院 律良日記

熊本県にあるお寺“真言宗 本蔵院 律良のブログ”日々感じるままに活動のご報告や独り言などを書いた日記を公開しています。

奉詔訳(ぶじょうやく)

2024-05-25 19:24:59 | 十地経

「奉」たてまつる

という意味です。

普通には「ほう」と読み、

「ぶ」とはめったに

読みません。

仏教の読み方

だけかもしれません。

 

「詔」みことのり

という意味です。

それで、奉詔訳というのは

中国で天子の命によって

翻訳したということです。

 

いつも読んでいる

『理趣経』(りしゅきょう)

というお経、

正式な名前は

『大楽金剛不空真実

  三摩耶経』といいます。

その中の、

「般若波羅蜜多理趣品」

というところです。

それで簡略して

『理趣経』といっています

 

それでその次の行に

「大興善寺三蔵沙門

  大広智不空奉詔訳」

とあります。

大興善寺の不空三蔵という

真言宗第六祖に当たる方が

翻訳した、ということです

 

ところで

玄奘三蔵の翻訳した

『大般若経六百巻』

詳しく見てみると

玄奘が60歳の時に翻訳に

取り掛かった

西暦でいうと660年正月

から始めて、663年10月

完成しています。

ところがその次の年

664年3月7日に

亡くなります。

まさにこの大般若経翻訳が

最後の大事業です。

 

玄奘三蔵は63年の生涯で

17年間の経典を求めての旅

645年帰国して

大般若経600巻

瑜伽師地論100巻

成唯識論ジョウユイシキロン10巻

大毘婆舎論200巻

倶舎論クシャロン30巻

などなど、全人生を

翻訳という事業に身を

捧げておられます。

 

その中で『大般若経』、

大般若経は転読法要という

600巻を全部読むのは

時間もかかるということで

転読という

お経を読んだふりして

パラパラとやって

読んだということにする

これが、一つの形になり

お参りする方からすれば

結構、面白い作法です。

 

50巻が一箱に入っていて

10巻が一つの帙チツに

入っています

600巻を唱えるとなると

12人の僧が必要になります

 

読み方は

最初の大般若経の表題を

読み、次に

「唐三蔵法師玄奘奉詔訳」

唐の三蔵法師・玄奘

奉詔訳(ぶじょうやく)と

独特の節をつけて読み上げ

ていきます。

 

最初にこの法要に出た時は

驚きとどうやって

声を出したらいいのやら

またパラパラといかない

経本がばっさと落ちる

この読み方はさほどの

決まりはないようで

それぞれ独特の節で読む

というものです。

 

昔は、

伏見の酒蔵では

酒を仕込む前には必ず

この「大般若転読法要」を

そのお宅で行ったのです

人数も12人は多すぎるので

6人が100巻を担当する

それで、途中には

お茶とお菓子も出て

一服してからまた始める

そういう、

一日仕事になりました。

 

こういう大般若経を読む

というのは

やはり、昔は

国に災難や色々の災いが

起こった時に

国の方向、天子のあり方を

経典という基本に立ち返り

もう一度本当の教えを

見直すというところから

始ったのでしょう。

 

ですから

法要と行うと同時に

僧より教えを請うたという

のが本来のあり方だった

のでしょう。

 

経典も「奉詔訳」という

ものだけではなく、

ただだれだれ訳という

経典も多いのです。

そこに「奉詔訳」という

のは国家によって

認められたというか

勅命により訳されたという

一面もあるようです。

 

 

 

 

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