喜多院法興寺

住職のひとりごと

トリオ消費は新たな救世主となるのか

2012-04-16 06:31:35 | Weblog
4月16日付 編集手帳 読売新聞
{漫画、チャンバラ、てんぷく、脱線といえば、中高年の方なら続く言葉は一つ。今どきは、ネプチューン、森三中、我が家あたりだろうか。お笑い<トリオ>である。
◆ケンカする2人を1人がなだめる。かと思えば、別の2人が結託し、1人を攻めたてる。ボケと突っ込みの直線的な攻守が漫才コンビの笑いのツボだとすれば、トリオの妙味は協調と敵対、疎外と妥協、様々な感情が交差する複雑な人間模様にある。
◆個人やカップルが基本単位の接客業で最近3人客が増えているという。もっともこちらは、舞台上の過激な関係ではなく、緩やかな連帯感がたぐり寄せた三角形のようだ。1人は寂しい、2人だと気詰まり、だから3人――。かかわりを求める震災後の空気を映しているような気もする。
◆居酒屋チェーン「かまどか」は、月間来店客の約半分を占める3人組に注目し、専用プランを提供する。プリンスホテルも、年明け以降、3人客に対応する客室の大規模な改装を行った。
◆濃密な交流を避けるデジタル世代はサービス業に「おひとりさま需要」を生んだ。さて<トリオ消費>は新たな救世主となるか。}

3人客が増えているというのを初めて知った。テレビで一人カラオケや、一人焼き肉をする客のために専用ルームを用意していると言っていた。今度は3人客が増えているというのは本当なのか。ホテルや居酒屋が3人客用の客室の改装をするというのは、まんざら、嘘ではないようだ。一人様需要から、トリオ消費に移行していくのか、楽しみである。

木嶋被告に死刑判決

2012-04-15 06:46:16 | Weblog
4月15日付 編集手帳 読売新聞
 {この100日間の裁判員たちの重圧を思う。年明け早々に選任手続きがあり、計36回の公判。結審後もひと月にわたって評議を続けてきた。選択した結論は死刑だった◆首都圏の男性3人連続不審死事件の裁判は、木嶋佳苗被告(37)と殺害行為を結びつける直接的な証拠がない。検察は3事件に共通する状況証拠を積み重ねて「犯人は被告以外に考えられない」との主張を展開した。
◆状況証拠については2年前、最高裁が「被告が犯人でなければ説明できないものがなければならない」と厳しい条件を示している。初動捜査で警察が、男性1人を自殺と見誤り司法解剖しなかった、などの失態も明らかになった。証拠の細部まで吟味し尽くした評議だったろう。
◆裁判員の苦悩に敬意を表しつつ、検察の論告には疑問を呈しておく。<夜晴れていて朝雪化粧なら、雪が夜中に降ったのは明らか>。状況証拠だけでも有罪にできると、雪に例えて言いたかったのだろうが、想像力で殺人を認定するわけにはいくまい。
◆「 雪冤 ( せつえん ) 」という言葉が浮かぶ。自らの無実を晴らす、の意味。冤罪を生まぬことが刑事裁判の鉄則である。}


 木嶋佳苗被告に対し、さいたま地裁(大熊一之裁判長)は13日、求刑通り死刑の判決を言い渡した。判決は、3件の殺人事件で「現場に残されたものと同種の練炭とこんろを被告が事件前に入手した」と認定。大出さんと安藤さんの遺体から検出された睡眠薬についても「被告が同種のものを入手し、2人に服用させる機会もあった」とした。殺害した3人に愛情のかけらもなく、ただ金銭目的で交際し結婚の意思もなく、受け取った金の返済に困り殺害したと断定した。当然の判決である。







てんかん持ちの男の車が歩行者をはね8人死亡

2012-04-13 06:38:05 | Weblog
4月13日付 編集手帳
 {今ごろの季節だろう。与謝野晶子に一首がある。〈 清水 ( きよみづ ) へ祇園をよぎる 桜 ( さくら ) 月夜 ( づきよ ) こよひ 逢 ( あ ) ふ人みなうつくしき〉。京都の繁華街・祇園から清水寺に向かうところか。 朧月 ( おぼろづき ) に照らされた、夢幻のような夜桜が目に浮かぶ。
◆見頃を迎えた桜をもとめて、きのうも祇園はかなりの人出であったと聞く。惨劇が待ち受けていることを誰が予想したろう。
◆祇園の一角、京都・四条通の交差点で軽ワゴン車が信号を無視して歩行者の列に突っ込み、7人が死亡した。運転していた会社員の男(30)も電柱に衝突して死亡している。意識を失う病気があったとも報じられているが、事故との因果関係はまだ分からない。
◆誰もが日に何度か、どこかの交差点を渡る。人命を奪う事故に恐怖感の序列があるはずもないが、日常生活のすぐそばに潜む惨事に身の震える思いでテレビ画面に見入った人も多かろう。
◆〈あなたの車を凶器に変えないでください〉。30年ほど前、ある自動車メーカーが安全運転キャンペーンに用いた広告コピーである。事故原因の究明を待つまでもなく、ハンドルを握る人はこの言葉をもう一度、胸に刻み直していい。}

 暴走の男にてんかん症状があり、車で歩行者8人死亡、11人けがをさせた。12日午後1時すぎ、京都市東山区の大和大路通四条交差点付近で、信号無視の軽乗用車が横断歩道を渡っていた歩行者を次々とはねた。男にはてんかんの通院歴があった。男の親族も同日午後取材に応じ、最近発作を起こしていたため、運転を控えるよう家族会議で話していたと言う。以前にもてんかん症状の交通事故で多数の死者を出したばかりだというのに、また悲惨な事故が起きてしまった。誠に残念でならない。



"ダルビッシュ、六回途中まで5失点でも白星

2012-04-12 08:07:29 | Weblog
4月11日付 よみうり寸評
 {テキサスの面積は日本の1・8倍、アラスカに次いで米国で2番目に広大な州だ。異名はローンスター・ステート(ひとつ星州)
◆米大リーグ、テキサス・レンジャーズのユニホームの左袖にもこのひとつ星のマーク。州の旗も同じだ。地元紙はダルビッシュ投手を「ローンスター・ヒーロー」の大見出しで紹介した。
◆何でも大型を好むのがテキサス流だ。州のモットーは「フレンドシップ」。日本時間の10日、あれだけ打たれても降板してベンチに帰るダルビッシュをファンはスタンディングオベーションで迎えた。これがテキサスの友情か。
◆「こんな投球であれだけたたえてくれたなんて、申し訳ない」とダルビッシュ。それでも初登板初白星なのだから「持っている」と思った方がいい。
◆良薬口に苦し。相手マリナーズのイチローが3安打の良薬をくれた。その最初の安打が三塁の頭を越えたいわゆるテキサスヒットだったのも面白い。
◆「日本の野球が低くみられないように」海を渡ってきた侍・ダルの戦いが始まった。}

 ダルビッシュは初登板で緊張したのか、ストライクが入らず、公式戦初対戦のイチロー外野手に安打を許すなど打者一巡の猛攻を受けて4失点。二回もイチローに二塁打を浴びるなど1点を失ったが、その後は追加点を許さず、この間に味方打線が逆転した。六回、イチローに中前打を打たれ2死一、二塁となって降板した。初登板で5失点しても強運ダルビッシュ勝利投手となる。

戒名は西方浄土に行くパスポート

2012-04-11 06:27:28 | Weblog
4月11日付 編集手帳 読売新聞
 {歌舞伎の六代目尾上菊五郎は、生前に自分で戒名(法名)をつけた。〈芸術院六代菊五郎居士〉という。
◆「芸術院」が、わけもなくおかしい。「日本芸術院」という機関が実在するので、遺族が文部省(いまの文部科学省)に差し支えないかどうか相談した、という挿話が残っている。
◆『赤とんぼ』の詩人、三木露風は秋(穐)の空に赤蜻蛉の舞う〈穐雲院赤蛉露風居士〉。「雪は天から送られた手紙である」の名言を残した雪氷物理学者にして文章家の中谷宇吉郎博士は〈文藻院精研浄雪居士〉。それぞれに味わいがある。
◆六代目のような“自作派”も、今は昔か。本紙の世論調査で、自分の葬式を仏教式でおこなう場合、戒名(法名)が「必要ない」と答えた人が56%を占めた。40歳代では63%という。自身の、ではなく父母の葬式であればまた別の数字になるのだろうが、しきたりに対する意識にも幅が生まれているようである。
◆古川柳より。〈甚六(=ぼんやりした人)は戒名忘れ南無親父〉。きっと、それでも声は届くのだろう。墓前で「なあ、おふくろ…」と呼びかけることの多い甚六の自己弁護である。}

 近年、戒名も葬儀もいらないという人が増えたのは、事実である。原因は仏壇も神棚もない家で生活し、先祖の墓参りも親たちがしなかった。そんな環境で育てられた人たちには戒名なんかは必要ないのかもしれない。しかし、寺で葬儀を行うには戒名は西方浄土に行くパスポートである。娑婆の煩悩や悪業を精算し新たに仏の弟子になる必要がある。そのはじめが俗名を捨て、法号(戒名)が授与され、仏弟子として戒が授けられる。穐雲院赤蛉露風居士は生前故人を偲ばれる最高の戒名であると思う。