はじめの戦車模型づくり

老眼に悩みながらもとにかく完成させることを目指します! 2009年3月8日開設

MR エム・アール 上下

2023-05-15 16:18:51 | 読書

表4 あらすじより

上巻
中堅製薬会社のMRである紀尾中(きおなか)は、自社新薬の「診療ガイドライン」第一選択Aグレード決定のために奔走する。決まれば年間売り上げ1,000億円超のメガヒット商品となる。難攻不落、MR泣かせの大御所医科大学長からようやく内定を得た直後、外資ライバル社の鮫島による苛烈で卑劣な妨害工作で一転、新薬はコンプライアンス違反に問われる.......。

下巻
追い詰められた紀尾中とその部下たちは反転攻勢のため死力を尽くす。ようやくガイドラインの行方が見えた頃、かねてより紀尾中が大学と共同で進めていたがんワクチン研究を邪魔する新たな敵が今度は社内に現れる。絶体絶命の窮地での疑惑、裏切り、暗躍、疑心暗鬼、紀尾中に勝機はあるのか。注目集める医薬業界の光と影を描くビジネス小説の傑作!

 

下巻巻末掲載の解説から抜粋(原文まま)
あなたが医療機関から処方された医薬品は、様々な思惑が絡み合った末に手元に届いたものであるはずです。
もちろん毒やプラセボではないでしょうが、今の症状に最適な薬と断言できるしょうか?
MRの世界を知ったこの機会に一度、身の回りにある医薬品について調べてみるのも面白いかもしれません。

 

紹介した小説内には、薬価を少しでも高く設定されるようにする企業トップの目論みと、患者ファーストを理念とするMRとの葛藤があります。
そのための診療ガイドラインでの第一選択、その結果得られるブロックバスターとしての売り上げ期待、まさに魑魅魍魎の伏魔殿さながらの攻防が繰り広げられていました。

40数年前、大学を卒業した私は、短い間ですが医薬品専門商社(卸)に勤めていました。
当時、巷で問題視されていたのは薬価差益。今のジェネリック医薬品を国が推奨するようになったきっかけです。
例えば1カプセルの薬価が200円である抗生物質を40円で医療機関に納入すれば、1カプセルあたり160円の利益を医療機関は得ることになります。
膨大に膨れ上がる薬剤費(医療費)の負担が国の財政に与える影響を看過できなくなった結果、諸外国に習ってジェネリック医薬品を推し進める結果となったようです。
実際は前述した通り、販売価格は薬価より低いので数年に一度行われる薬価改定で薬価は下がっていく運命にあります。
卸に身を置いていた私には、医薬品の開発過程はわかりません。ただ販売の第一線にいた身として熾烈なメーカー間の競争は身をもって体験しました。
もちろん卸の間での競争もあります。
私は開業医の担当でしたが、40数年経った現在、卸の納入先は主に調剤薬局になっているようです。

個人的に私は現在、ジェネリック医薬品は避けています。人の命に関わる医薬品は厳格な生産管理と品質管理のもとで製造されなければなりません。
日医工株式会社などによる事件は、以前から危惧していたことが現実に起こった事件でした。
先発メーカーが心血を注いで開発した医薬品。「そのような製品をたった1社で何十種類もきちんと管理できるのだろうか」とずっと思っていたのがその理由です。

最後に、あまりにもジェネリック医薬品偏重に走れば、先発メーカーの開発意欲がそがれる恐れがあるのではないでしょうか。
コロナ禍でのワクチン開発。ワクチン類は治験を経て承認を得るまで一定の期間が必用です。
国が将来起こり得るリスクを考慮した有益で持続的な援助が医薬品業界に実施されない限り、売り上げがほぼ確実に見込める高血圧、高脂血症、発生率の高いがんを適応症とするがん治療薬などに新薬の開発は偏る危険性は十分にあり得ると思います。

コメント (2)
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