和歌山県東牟婁郡古座川町松根
さて、最終目的地である「植魚の滝」へ向かうことにする。
もちろん滝より上流にも水はあるし、本当の意味での源流となると、もっと遡らねばならないのだけど、ここは最後を飾るに相応しい場所であるし、地形的にも「始まり」、あるいは「終わり」を感じさせる場所である。
張尾の滝から本流へ戻る。振り返ると先ほどの合流点の滝が見える。090408 07:36
変わらず、水と苔の美しさが続く。090408 05:47
合流地点から僅かな距離で、いきなり両岸の岩が切り立ち、洞窟状に空を塞いでいる。090408 05:52
事前に調べていたので、ある程度どんな場所であるかは判っていた。
けれど、そうではあっても、暫し入り口で立ち尽くしてしまうほどの衝撃があった。090407 16:16
まるで異界への入り口のようだ。090407 15:20
狭く、滝音が響くだけの岩峡の中に入る。090407 15:24
頭上の空は、ギザギザに細く歪な線を描くだけの薄暗い空間。090408 05:59
ハングした岩からは水滴が落ちてくる。見上げれば緑が眩しい。090407 15:59
薄暗さのせいもあって、夢現の世界を彷徨う感覚。
現実的な落石などへの恐れよりも、もっと根源的な自然への畏怖が勝る。
けれどそれよりも、陶然としてしまうような悦びが満ちてくる。090407 15:55
欲を言えば、もう少し水量が多ければよかったのだが。090408 06:49
語彙が貧困で申し訳ないけれど、まるでダンジョンの中にいるみたいだ、と思った。090408 06:45
それにしても、岩に描かれる陰翳と、水の表情の美しさ。090407 15:26
仄暗い中で、密かに呼吸しているかのようだ。090407 15:26
息を呑んで、耳を澄ませば、何か囁きが聞こえてきそう。090408 06:25
ただただ見惚れるばかりだ。090407 16:02
洞窟状の地形の終点は植魚の滝である。
正面から見えるのは、この部分のみ。090407 15:49
暗がりの中で、水の白さがぼうっと浮かび上がり、幽玄の趣。090408 06:40
左に回り込む。岩に囲まれた空間に一条の光。090407 15:40
左側のハングした岩の基部に潜るようにして入ると、滝の全貌を見ることが出来る。090408 06:05
頭上は完全に岩に覆われていて、まるで岩に抱かれている感覚になる。
それが、何故か心地良い。090407 15:34
視界は狭い。聞こえるのは滝音のみ。090407 15:46
岩と水だけで色の乏しい世界だが、見上げれば緑が帯を描いている。090408 06:12
滝の中ほど。こちらは無機質な美しさがある。090408 06:37
滝壺は、暗い中でも青さを放っていた。090407 15:42
左側は、水勢によって深く抉られている。090407 15:45
名残惜しいが引き返すことにする。
たくさんの写真を使ったが、振り返って見れば大した距離ではない。090408 06:16
元の場所へ戻るだけなのだが、また違った世界へ踏み出すような感覚。090408 06:28
入る前よりも、緑は鮮やかに、光はより眩しく見える。090408 06:01
悩ましく思えるほど、緑は匂い立つように迫ってくる。090408 07:08
水のせせらぎ。春の息吹。090408 07:10
何かの始まりのように、色彩に満たされた世界に戻る。090408 07:24
以上、三回に亘って古座川源流を掲載しました。
これらの風景はネット上で他にも取り上げられていますが、たぶん、掲載枚数はこのブログがいちばん多いと思います(写真の出来はともかく、ですが)。
多くは張尾の滝と植魚の滝のみの紹介のようで、私にはそれが物足りなく思えました。特に、植魚の滝手前の洞窟状の空間は、滝そのものよりも魅力的に迫ってきました。目に映る風景そのものの美しさではなく、もう少し観念的なものに訴えかけてくるものがあるように感じました。
素晴らしい神社空間に出逢った時と同じように、心の昂ぶりと鎮まりが同時に訪れるような、そんな感覚です。
洞窟状の滝としては、兵庫県にあるシワガラの滝が有名で、ネット上でも称賛されています。私はそちらを実際には見ていないので何とも言えませんが、植魚の滝は、その素晴らしさに比べてちょっと評価や知名度が低いように思います。
2万5千分1地形図 木守
駐車場 登山道入り口近くにスペースあり
地図
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ノーコメントでお願いします
いやもう絶句ですよ
胎内回帰のようかもしれないと
伺ってはいましたが
なるほどそうかもしれないし
胎内回帰よりももっと根源的な
返本還源というか
失礼を承知で言えば
hiro1jzさんの
水を捉える写真のスキルが
異常なまでに目覚めたような
もう
背筋がぞくぞくと…
魚になってみたい様な綺麗な水の写真です。
水が綺麗なのは当然ですが、写真がとても素晴らしいです。
滝もシワガラの滝より綺麗に見えます。
むしろ滝の形から見たら、私はこっちの方が好きです。
水が少ないのが残念ですが、でも水量が多いとhiroljzさんが危険になるので、この程度の量で良いのでは、とも思います。
知名度が低い方が、荒らされなくていいと思いますが。
たよ。滝だけじゃ物足りないですよね。そこに行き
つくまでに素敵な風景が横たわっていますよね。
それは神社も同じですね。
幽黙さんと同じ意見でhiro1jzさんの水を撮る技術
は凄いですよ。
若狭は潮風の影響でしょうね。でも若狭湾綺麗だ
ったんでしょうね。写真的には、hiro1jzさんの
納得のいかないレベルなのかな?
掲載待ってますけど・・・いまのネタでひっぱる
方が面白いかな?
大阪の神社好きも多いんで申し訳ないんですが
我々には向かないんですね。
自分も東京の神社はスルーしていますけどね。
でも二十三区いがいの東京の神社は面白いんで
すよ。
チャリで十分で式内なんて悶絶する環境ですが
・・・参拝してないんですか!自分なら一回は
御朱印もらいに行きますよ。
スナックの姉ちゃんは百恵ちゃん知らなかった
んですよ。ドリフは知ってますよね。
ガンダムは嫌な生き延び方してますよね。アザト
イと友人が言っていました。
歳よりは大人しく神社に参拝ですね。
雨が川になり、川から海へ、
そして、水蒸気となって再び雨になり・・・
そんな水の循環を、生物の輪廻転生的なものと照らし合わせてみたり・・・。
ここは水の通過点に過ぎないわけですけれど、
ガラにも無くそんなことに思いを馳せてしまう場所でした。
実際の水が美しかっただけで、
スキルは上がってないです(笑
ただ、より一層、水に魅せられたのは確かで、
滝や渓谷の掲載比率が上がって、神社好きの方から見放されないかと心配(笑
>Junさん
魚よりもイモリがとても多かったです(笑
水底でじっとしている姿は気持ちよさそうで、
彼等がトカゲではなくサンショウウオに近いのだというのがよく判りました。
心配していただいてありがとうございます。
ここは水量が多くなる雨後には、
洞窟状の側壁にも滝が出来たりするみたいなんで、
ちょっと見てみたかったなぁ、と。
シワガラは、いずれ行かねばならないですねぇ。
多くの趣味写真家は絶賛してますし・・・。
知名度は低いほうがありがたいのですが、
自分の好きな場所が評価されていないと悔しい、みたいな、
相反する思いがあります(笑
>eraさん
誰もが必ず撮る場所だけでなく、
見落とされていたり、自分なりの感性で目に留まった場所、
というものを撮ったり紹介するのが楽しいです。
水をテーマに撮影されている方は多くて、
私はまだまだなんですよ・・・。
遠目には綺麗でしたが、そばで見るとちょっと濁ってました(笑
ブログの主旨からすると、さすがにこれ以上渓谷ネタを引っ張るわけには・・・。
最低でも半々くらいの比率が許される範囲でしょうか。
でも、若狭の神社も紹介出来そうなのが少なくて・・・。
東京は大阪よりずっと緑が多そうですよね。
しかも結構な山奥もありますし。
今の地元の神社には全く興味が無くて、
ろくに調べたこともなかったんですが、
今みてみると、自転車10分の式内社が2社ありました(笑
ああ、確かにガンダムはあざといかもです。
正常進化ではないですね。
昔ハマった人間としては、今のはガンダムじゃない、
と言い切ってしまいます(笑
私、テレビを殆ど見ないんで、
芸能人の名前とか言われても全然判らず、よく馬鹿にされます。
どうも趣味が偏っているようです・・・。
いやぁ堪能させて頂きました。撮られていたフレーミングの中にここ撮ってみたいなぁって場所のヒントも頂けた様な・・・出来れば新緑豊かな5月中に再訪したいと考えています。広角側如何だったでしょうか?
ファインダーを覗きながら「もうちょっと・・・」って呟いた様なカットがあったんじゃないかと・・・これだけの作品と文章力には脱帽です。(生き方の深さのような物を感じます。)
私の撮ったものの中からヒントになるものがあって、
それを更に昇華していただけるならとても嬉しいです。
おっしゃるように、「あともうちょっと」と思うことが度々ありまして、
岩にへばりついてギリギリまで後ろに下がったりして苦労しました。
写真も文章も、まだまだ力不足ではありますが、
あの場所で感じた悦びを、少しでも伝えられたらと苦慮しました。
そう言っていただけると嬉しいです。
5月、更に緑いっぱいで美しくなっているでしょうね。
掲載が楽しみです。
「水のせせらぎ。春の息吹。090408 07:10」
が一番のお気に入りです。(最後から2枚目)
浪漫派のフリードリヒの絵を見ている様です。
すべてのお写真を拝見して、
水に透けて見える小石が印象に残りました。
いやいやいや、嬉しいですが、とてもそんな奥深いものでは・・・。
というか、共通する部分ってどこでしょう・・・。
最後から2枚目、現地でも撮影時に「いいな」と思ったので、
珍しくLサイズ(3888×2592)で撮ってます。
私は殆どMサイズ(2816×1880)なんですが、
気に入ったときだけLサイズで撮ります。
水の透明感や表情というものは、水底の石の色などにも左右されると思うのですが、
そういう意味では、ここの水と石は印象的でした。
ただ、前にも言ったと思いますが、
被写体としての渓谷の美しさ、という観点では、
私が実際に行った場所では赤目四十八滝がトップです。
赤目に住んでいた時に、もっと撮っておけば良かったと、今でも悔やみます。
丹波も源流として
透き通る美しい森と里に
しなければと!
さらに思わせられる
美しさです。
丹波は源流でもあり、里でもありますから、
水を美しく保つには、相当な困難が伴いますよね。
でも、大自然の中よりも、
人が暮らす中にある美しい水というのは、
本当にかけがえの無い美しさだと思います。
豊かな森と綺麗な水、
そしてそこに、豊かな暮らしが溶け合えるのは、
理想であり目指したいものです。