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神社のある風景

山里の神社を中心に、歴史や建築等からの観点ではなく、風景という視点で巡ります。

奥上神社

2009年02月12日 | 京都府

京都府舞鶴市吉田


西舞鶴の市街地を抜けて殺風景な埋立地を北上すると、やがて左手から山が迫り、舞鶴湾の狭い海に寄り添うようになる。
短いトンネルを抜ければ吉田の集落。更に進めば、以前に紹介した白杉神社がある。
集落内に車を入れるのは遠慮して、海岸沿いの道の広くなっている場所に駐車する。
家並みの間の狭い道を歩くが、漁村というよりは山里の風情。車で進むよりも、のんびり歩く方が気持ちよい。
途中、瑠璃寺というお寺があり、舞鶴市の天然記念物に指定された枝垂桜がある。京都の吉田山から移植されたものと言われ、集落名もそこからきているとか。長い歴史を辿れば、海縁の小さな集落であっても、様々な場所や人物に繋がっていくのだろう、などと考えると楽しい。
小さな川に沿うようになると、徐々に人家も減ってゆき、田畑と山が広がる風景になる。所々に柿の実の彩りが見え、そして奥上神社も見えてくる。
時刻は夕暮れ時で、鳥居周りを覆う大木が仄暗い陰を作り、しっとりと境内を包み込んでいる。
ああ───と、安息の呟きを漏らしてしまうような、そんな気配で満たされていた。



鳥居周りはケヤキの大木が圧倒的な存在感を放っている。サルノコシカケも巨大で、まさに猿が腰を掛けられる大きさ。他にはムクノキ、カゴノキなどが見られ、狭いながらも豊かな杜だ。
左端に、仄かに浮かび上がる二の鳥居にも、ちょっと身震いがするほど惹かれた。


一の鳥居、正面から。


小さな集落の小さな神社でしか味わえない空気に出逢えた気がする。


外はまだ明るいが、境内には柔らかく陰が降りてくる。


息を潜めて待っていれば、そろそろ木々たちが語らい出すのではないか、なんて夢想をしてしまう。


参道から直角に曲がった先に二の鳥居。


二の鳥居前は苔の絨毯。


拝殿と、出雲タイプの狛犬。


拝殿と本殿。
本殿背後は、やや木々が浅いのが残念。


本殿横の狛犬は、小さくて愛らしい。横顔は童子のようであどけない。


正面から見ると、ちょっとオマヌケな表情だったりするけれど・・・。


本殿背後から。
台座にちょこんと座る風情も可愛らしい。
苔生した石垣、夕暮れの陰翳。


夕暮れ時というものは、時に寂しさを連れてきたり、子供の時分なら怖さを感じたりもしたものだけど、今は心地良さが大きい。奥底には畏れみたいな感覚もあるが、この気配の中に溶け込めそうな気さえする。


こちらは小さいながらも厳めしい横顔。


正面から見ても厳めしい。が、やはり小さいためか、愛らしく感じる。


神社の外から、おばさん達の立ち話が聞こえてくる。
聞くとはなしに聞いていると、やがて別れの挨拶。「はよ帰らな猪が出てくんでー」。
冗談まじりの、だけどちょっと本気にも聞こえる田舎らしい挨拶に、思わず笑みがこぼれた。


2万5千分1地形図 西舞鶴
撮影日時 081023 16時~17時

駐車場 神社横駐車可? 海岸沿いの道からは徒歩8分ほど。
地図
 


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11 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

コメント日が  古い順  |   新しい順
おっ (era)
2009-02-12 22:09:13
いいですね。一枚目の写真と二の鳥居の苔の絨毯
が素晴らしい。よく発見できましたね。地図散策
能力つかったんですか?
あと狛犬さんも素敵。

丹沢は、あまり近づかないんですよ。年々やせ細っ
てきて嫌な気分になりますよ。。。
ヒルが出るって聞いて少し驚きました。
自分は自然の厳しい部分にあたってないですよ。
今日も遠江の自然に癒されましたぁ。

古代の鉄の散策のしかたって、どんなのだったん
ですかね?中世になると山の形とかで見分けたらし
いんですが古代の場合は不明ですね。
鉱物は星が化成したなんて説もあったみたいです
よ。そのせいで妙見さんの場所は鉱物が取れるな
んて話みたいです。
あと毘沙門天はムカデに関係するので鉱物に関係
するそうです。
返信する
Unknown (幽黙)
2009-02-12 23:18:08
いいなぁ
いいなぁ
いいなぁ
hiro1jzさんのコメントにあったように
二の鳥居の風情が
思わずぞくっとする素晴らしさですね
しかも愚生好みの狛犬が…
彼らは
子供たちが来たら
一緒に遊んでくれそうな気配が
あったりしますね
あるいは
夜中も遊んでいそう…
返信する
Unknown (Jun)
2009-02-12 23:47:51
境内の薄暗さと外の明るさが、聖域と俗界の境界みたいで、いいですね。
一の鳥居のそばにあるのは、馬ですか?
狛犬が本当に可愛らしい。
阿形の顔、いしいひさいちの地底人を思い出しました。
猪、出るでしょう。でも危険なのは野猿の方です。
私の集落でも五神社に野猿が出るので、夕刻どころか昼間でも女性や老人は一人で行かないように、と放送されました。マジに襲ってくるんです。離れ猿らしいです。人がポケットにお菓子とか持っていると知っているんです。
だからお供えとかも出来ないんですよ。
返信する
Unknown (hiro1jz)
2009-02-13 11:01:35
>eraさん
ここは地図と航空写真で探訪決定しました。
白杉神社の情報は少しあったので、そちらは先に決まっていて、
次に寄るべき場所を探したときに、ここの杜が一番深そうだったので。

丹沢は結構近いんですよね?
関西の人間からすると、都市の近くにあれだけ高い山があるのは不思議な感じなんですが、
それなりに開発されてしまってるんでしょうか?
遠江に行かれてましたか。
陽気でちょうどいい気候だったのでは?

鉱脈をどうやって見つけるか。
私も以前から不思議でならなかったんです。
製鉄技術などは渡来人によってもたらされたものですし、
鉱脈の発見や採掘のノウハウも渡来系の人々によって伝えられたものと思いますが、
山の形、地形、地質などによる判断材料を持たない頃は、
やはり修験者など、実際の山の様子を知悉していた者が見つけたのでしょうね。
つまり露頭の発見に頼っていたものと思います。
ムカデは鉱脈の象徴らしいですが、
そういえば近江の三上山もムカデの伝説がありますね。
御上神社の祭神も製鉄神ですし、近江はかつて有力な鉄の産地でしたし。
製鉄関連は、ダイダラボッチやアメノマヒトツノカミ、
更には西洋の鍛冶神との共通項などもあって面白いです。


>幽黙さん
ここはほんとにお気に入りです。
ヒガンバナの葉がたくさんあったので、
今年は花の咲く頃に再訪しようと思ってます。

木々もそうですが、
狛犬達も夜中に語らっていそうですね。
何となく、跳ね回る様子が想像できて楽しいです。
木霊とか、そういった存在がいるなら、
時にはちょっと交ぜてもらいたいなぁ、
とか考えます(笑


>Junさん
大木が一本あるだけで、そこは一つの聖域という気がしますが、
大木が数本あって、更に鳥居があると、
外との明暗差と相俟って、本当に清浄な場所に感じられます。
一の鳥居そばにあるのは神馬像です。

狛犬君、確かに口元が地底人っぽい(笑
こんな地底人なら仲良くなれるでしょうね。

猿には困っているところも多いみたいですね。
猟師も猪や鹿のように駆除したくはないみたいですし、
頭もいいですから対策は難しいですね。
ヤマヒルにしても野生動物の害にしても、
根本的に自然環境を豊かにしないとどうにもならないんでしょうが・・・。
返信する
さすがですね (era)
2009-02-13 21:10:11
でましたね地図検索能力ですね。hiro1jzさんの異
能っぷりが発揮してますね。予想いじょうの神社に
出会うのって嬉しいですよね。
丹後も知られていない素晴らしい場所ありそうで
すねぇ。

丹沢近いですよ。気合いれれば車で一時間かから
ないですね。とにかく木々が細くなっていると
いうか丹沢の生命力が毎年減少している気がしま
す。
丹沢の中心と言ってはいいすぎなんですが大山
○○○神社が全然駄目ですしね。
この神社が何度も勝手に丹沢の木を伐採している
ような神社なんですよ。
昨日は冬と思えない陽気でした。遠江は神社も人
も素晴らしかったです。そのせいで予定通り参拝
できませんでした。車中泊恐るべしです。

昔の製鐵は、調べて少しわかったんですが肝心の
鉱山の発見方とか不明ですね。やはり渡来の人達
が何か知ってたのかな?
でも、それ以前は・・・不明ですね。カナクソが
ボロボロと出てるような場所を掘ったのかな?
秩父に聖神社ってありましてね。和銅の発見の
場所なんですが天皇から銅製のムカデをもらって
いますね。やはり坑道の象徴なんでしょうね。
三上山のムカデと結びつくと思われる話が北関東
にありますよ。
鉄は面白いですよね。意外と海外の鍛冶神も共通
な要素多いですもんね。
返信する
Unknown (幽黙)
2009-02-13 22:54:02
製鉄といえば
愚生は播磨奥地の
宍粟市は千種の
鍋ヶ森散策が
楽しかったなぁ

それにしても
hiro1jzさんの
地図検索能力はもう
異能の範疇ですなぁ
返信する
Unknown (hiro1jz)
2009-02-14 02:47:27
>eraさん
暇があれば地図を眺めている人間ですので(笑
地形図と航空写真と環境省の巨樹リスト、
この三つが揃えば勘の要素はほとんど要りませんよ。
使えるデータが地形図だけ、という地域が多いですが、
この奥上神社は三つとも使えましたので。

丹沢は地図で見るとかなり深そうに見えて、
関西の都市近郊、金剛山や生駒、六甲などよりも
相当自然が豊かという印象がありましたが・・・。
いちおう国定公園だったと思うのですが、
その神社のあるところは違うのかな・・・。
今年の最初の車中泊ですか?
予想以上の神社に出逢えて予定が狂うのはいいことです。
遠江って、なんか麗らかなイメージがありますねぇ。

そもそも一番最初の製鉄というのが気になります。
岩を溶かす、なんて発想は出てこないと思いますし、
やはり神の・・・と思いたくなりますが、
山火事とかで、偶発的に最初の鉄が生まれたんですかね?
そういえば滋賀には湖西に金糞峠、湖北に金糞岳という地名があります。
近江に限らず、金属に関わる地名は近畿各地に見られますが、
鉱物資源は東日本の方が豊富だったような気がします。
製鉄神を祀る神社の数や分布を見ていくと面白そうですね。
ムカデをはじめ、共通の伝承なども出てきそうです。


>幽黙さん
確かまだリンクしていただく前ですよね。
当時興味深く読ませてもらった記憶があります。
ご承知のように、私は神話や神々に疎く、
強い関心も示さない人間ですが、
製鉄神だけは、ちょっと興味を持ったことがあります。
ひとつは「鈴鹿の山と谷」という本に出逢ったこと。
これは従来の山のガイドとは違い、
山域を「面」として捉えようと試みたもので、
鈴鹿のあらゆる山と谷、そして集落、地名の語源にまで迫ったものでした。
そこに、今の鈴鹿の姿を形成するに至る過程として、
炭焼、木地師、製鉄民の影響が、
見逃せないものとして書かれていました。
もうひとつは「もののけ姫」の影響(笑
根源は山が好きというところからきたものですが、
隻眼、一本足という風貌、紀伊半島に残る一本ダタラと呼ばれる妖怪の伝承、
それから有名なダイダラボッチなど、
一般の人間にも興味を惹きやすい要素があったからだと思います。
もっとも、軽く触れた程度で語るべき知識もありませんし、
「もののけ姫」では寧ろ「森」への渇望を掻き立てられましたから、
神社に行く場合も祭神ではなく木々への関心が強いです。

中学の時から地形図を読み耽ってましたから。
上に挙げた「鈴鹿の山と谷」も高校の時に出逢って
地理という横軸と歴史という縦軸の融合に開眼、
その割に知識は無いまま、というか、歴史はかなり苦手です(笑

返信する
ポン (era)
2009-02-14 23:15:49
なるほど地図だけじゃなくて航空写真と巨樹リスト
!これは膝をポンとたたきました。巨樹リストは
想像もつかなかったです。たしかにデカイ樹木の
ある神社にハズレは少ないですもんね。
自分は式内社調査報告を読んで行き先決めます。
でも巨樹リストは参考にさせてもらいます。

丹沢は奥深いですよ。人が入りやすい場所はアウト
です。奥までいけば別だと思いますが・・・
某神社は国立公園内にありますよ。それでも何度
も勝手に伐採してばれています。懲りないんです
よねぇ。
そうです今年初の車中泊です。久しぶりだったの
で寝付けなかったんですが素晴らしい神社の連続
で眠気消えましたよ。
最初は工業地帯のイメージで敬遠していたんです
がhiro1jzさんの想像通りで麗らかですよ。

鉄神は面白いですよね。一つ目小僧が鉄神の零落
した姿なんて読んだときは好奇心が爆発しました。
最初に鉄を発見は何だったんでしょうね?
日本でいえば渡来なんでしょうけどね。天孫族
が鉄を持ってきたのかな?
出雲は青銅でしょうね。
近江と北関東の鉄を結びつけるのが俵藤太です。
けっこう面白い話ありますね。
和銅・金も東日本ですよね。関東や東北の式内社
でも鉄や金に関係する神社ありますよ。
そうそう鉄のでる場所としては中山ってキーワー
ドがありますよ。これも面白いですね。
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Unknown (hiro1jz)
2009-02-16 09:12:30
巨樹データは
http://www.kyoju.jp/prog/kj1010.asp?data=kyoju97
もしくはhttp://www.biodic.go.jp/area/area_frm.html
で調べられますが、ちゃんと神社名が書かれていることもあれば、
所在地の町名のみだったり、地域によって精度にかなり差があります。
他にも個人の巨樹サイトなんかもあるので参考にされると良いと思います。

国立、あるいは国定公園での無許可の伐採って、
罰則がありますよね?
いったいどういう料簡なのか・・・。
私は最初の遠出はたぶん4月までお預けです。
以前に言いましたように、南紀の桜を見るつもりですが、
この気候だと、行く予定の日には散ってるかも・・・。

私も一つ目小僧と天目一箇神の関連を知ったときは
へぇ~、と感心しました。
他にも、神が凋落して妖怪になったとかあるんですかね?
最初の鉄の発見、ちょっと調べてみると、
鉄鉱石のある地帯での森林火災という説がけっこう有力なようです。
他には隕石に含まれていた鉄の利用から始まったとか・・・。
俵藤太は三上山のムカデ退治しか知りませんでしたが、
もともとは関東に縁のある人なんですね。
中山が鉄に縁のある地名なんですか?
鉱山に関わるような地名は幾つか知っていたんですが、
中山は初耳です。
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はじめまして (ai)
2009-06-17 10:21:56
はじめまして、aiといいます。
私はこの神社付近に住んでいる地元民です。

見慣れた神社も、こんな風に紹介していただけると
違った感じがして楽しいなぁと思いながら拝見しました。

いつもなら、"見てるだけ"なのですが・・・

実は先日、一枚目の写真にあるケヤキの大木が
倒れてしまいました。
神社側に倒れなくて幸いでしたが・・・。
もしまたいらした時に、木がなくなっていて
がっかりされてしまうのかなーと思うと
どうしてもお知らせしたくなってコメントを投稿しました。
では、突然失礼しました。
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