以前から何度か書いているけれど、マクロレンズが無いので花の写真はあまり撮らない。
撮ってもいわゆる図鑑写真になることが多く、自分が美しいと思う花の表情に辿り着けないのだ。
それでも花は好きである。
思い返せば、小学校6年生の時、何故か衝動的に花屋さんに行って、桔梗の花を買ったのが花好きを自覚するきっかけだった。
学校の宿題でアサガオを育てたときも、義務感ではなく楽しく育て、なんと12月まで生き延び、一株から500個以上の種がとれたりもした。
以後、中学くらいから山に登るようになったこともあって、興味は野生の植物に移っていく。
山野に生える、地味だけど味わい深い花たちに逢いたくて山に行くことも多くなる。
特に三重県に住んでいた頃は、すぐ近所に山があったから、徹底的に地元の植物を調べるくらいのつもりで、道なき場所や、険しい場所まで足を踏み入れたりした。
当時使っていた地図を見れば、見つけた植物の名前がびっしりと書き込まれている。
最近は、花が目的で山に入ることは無くなったけれど、神社巡りや滝へ行く際には、どうしても足元の草花に目を向けてしまう。
好きな気持ちは変わらないので、たまに珍しい植物を見つけたりすると、暫くは上機嫌になって足取りも軽くなる。
だから、狛犬と同じで、あまり撮らないと言いながらもそれなりの数の写真がある。
殆どが図鑑的写真、しかも以前使っていたコンデジの方が接写に強かったので、コンデジの写真が多くなったけれど、まあ「神社に咲いていた花の紹介」といった感じで載せてみようと思う。
神社以外で撮ったものも勿論あるが・・・。
ツルアリドオシ
杉林に多いので、神社でもよく見かける。
小さい花だが、下草の少ない林床を、ぽつぽつと白く彩る。
京都府の神社にて
ウツボグサ
高校一年生のとき、一人で福井県の山に登りに行った。
近所の山は何度か一人で登っていたけれど、そんな遠くまで一人で行くのは初めてで、何かと不安を抱えての山登りだった。
その登山道の脇に、このウツボグサがたくさん咲いていて心を和ませてくれた。
ありふれた花だけど、思い出深い特別な花でもある。
京都府の神社にて
ユキノシタ
初めて見たのは小学校の帰り道。
民家の庭先でこの花を見かけ、あ、ユキノシタだ、とすぐに名前が出てきたのは、家にあった図鑑をしょっちゅう見ていたからだろう。
子供の頃、魚類図鑑、昆虫図鑑、植物図鑑の順によく見ていたが、今は逆の順に詳しいような・・・。
兵庫県の神社にて
イチヤクソウ
俯き加減の可愛らしい花。
あまり多いものではないので、たまに出逢うとしゃがんで見入ったりする。
京都府の神社にて
ゲンノショウコ
代表的な民間薬の一つで、名前は飲むとすぐ効くことから「現の証拠」の意。
白花も多く、ありふれた花だけど目に楽しい。
福井県の神社近くにて
キクバオウレン
まだ他の植物が芽も出していない頃に咲く。
早春に相応しい清楚な花。
兵庫県の神社にて
ショウジョウバカマ
山地のやや湿ったところにありふれた、春を代表する山野草の一つ。
通常は紅紫色の花を咲かせるが、場所によっては写真のような白っぽい花も珍しくない。
名前のショウジョウとは中国の伝説上の動物である猩々のことで、その顔の赤さを花色に、葉姿を袴に見立てたものといわれるが、私が高校時代に読んだ本に、葉に霜が降りると葉が赤くなることから、猩々のような色の袴でショウジョウバカマ、と書かれていたように思う。
ウィキペディアでも前者の説が載っているけれど、私は後者だと思う。
ちなみに色の分類では猩々緋という色があって、つまりは猩々の顔の色ということなのだけど、色見本を見てもあまりショウジョウバカマの色に似ているとは思えない。
京都府の神社にて
タチツボスミレ?
山ではごく普通に見かける花で、スミレの仲間でも圧倒的に個体数が多いから、スミレを見かけたらほぼタチツボスミレだと思ってしまうのだが、微妙に葉の形状や花色に個体差があって、あまり自信が無かったりする・・・。
京都府の神社にて
ミヤマカタバミ
カタバミといえば庭や路傍に生える黄色い花か、南アメリカ原産の帰化植物であるムラサキカタバミが普通で、どちらも雑草というイメージだ。
このミヤマカタバミは、木陰にひっそりと咲き、清楚で可憐といった感じでカタバミのイメージを払拭する。
珍しいものではないけれど、山で出逢うといつもちょっと立ち止まってしまう。
京都府の神社にて
ミヤマカタバミとタチツボスミレ
光の当たり方などから、陰翳を活かして撮ったので、図鑑写真とはちょっと違うものになったかな、と。
京都府の神社にて
シロバナタンポポとオオイヌノフグリ
決して珍しいものではないと思うのだが、シロバナタンポポをあまり見かけることが無い。
花が好きとは言いながら、その種類によって関心の度合いは大きく偏っていて、キク科植物は関心の薄い方に属すから気付いていないだけかも知れない。
京都府の神社近くにて
オオイヌノフグリ
ヨーロッパ原産の帰化植物ではあるが、もはや春を代表する花の一つとして定着した感がある。
爽やかな青は、春の空を思わせて清々しい。
京都府の神社近くにて
ヒメオドリコソウ
これもヨーロッパ原産の帰化植物。
中央にオオイヌノフグリが二輪。
取り囲まれて怯えているようにも、祝福されているようにも見える。
京都府の神社近くにて
トリカブト
厳密にいえばヤマトリカブトだとかキタヤマブシだとかいろいろ種類があるのだが、見分けがつかないので総称であるトリカブトで。
有名な有毒植物ではあるが、花色は美しく、形も面白い。
福井県の山中にて
セイヨウカラシナ
これも帰化植物で、もはや菜の花畑と呼ばれるのは「アブラナ」ではなく「セイヨウカラシナ」であることが多い。
接写でもなく、図鑑写真でもなく、風景として花を撮るとすればこういう感じだろうか。
帰化植物で好きになれないとはいえ、日本の春の風情に溶け込んでしまった。
京都府の川沿いにて
ノアザミ
背景に神社の建物を入れてみたり、昆虫を入れてみたりと図鑑写真からの脱却を試みるが・・・。
京都府の神社にて
ヤマアジサイ
これも背後の流れを入れて風景っぽく。
京都府の山中にて
ヘビイチゴ
これは光の当たり方でいちおう写真になっているような・・・。
野生のイチゴは山でよく食べるけれど、これはあまり美味しくない。
奈良県の山中にて
イワタバコ
夏の渓谷を代表する花。
初めて見たのが赤目四十八滝だったので、イワタバコといえば赤目を思い出す。
和歌山県の谷川沿いにて
ドクダミ
庭に生える雑草でもあり、神社でも普通に見かけるものだが、薬用としてもよく知られる。
独特の臭気があり、昔は吐き気を催すほどの悪臭に感じたのに、今は癖のある匂い、という風にしか感じず、特に嫌なものでもない。
私の母などは、懐かしいような匂い、と言っている。
鳥取県の神社にて
マムシグサ
山にありふれた特徴ある花。
秋に生る実は毒々しい感じで一目でそれと判る。
あまり群生はしないと思うが、ここでは固まって生えていて、何となく楽しげに見えた。
和歌山県の谷川沿いにて
ウマノアシガタ
神社の一コマっぽく、手水鉢付近の濡れた石畳を背景に。
京都府の神社にて
ムラサキケマン
これも神社の一コマらしく撮れたのではないかと。
接写できないのなら、ある程度背景の条件がいいところで咲いてくれている花を探し、いちおう花が主役ではあるけれど風景の一部、というような感じで撮るのがいいかも知れない。
兵庫県の神社にて
ヒガンバナ
遠景でも映える花なので、ヒガンバナは普通に風景写真になる。
子供の頃、周りの人間が、縁起の悪い花だとか、家に持って帰るとその家が火事になるだとか言っていた。
毒々しいくらいに真っ赤な花ではあるけれど、今は素直に美しいなぁと思う。
京都府の田園にて
ムシトリナデシコ
帰化植物は好きではないのに、帰化植物の写真が多いなぁ・・・。
神社にある苔生した古木の根元で、鮮やかな淡紅色の花が映えていた。
兵庫県の神社にて
シュウカイドウ
これは園芸植物で、普段は見向きもしないのだけど、光としては理想的だったので思わず撮った。
写真というのはとにかく光を見ることで、光次第で被写体は180度変わる。
根気があれば、全ての花をこんな光で撮ってみたい・・・。
兵庫県の神社にて
エゴノキの花
草本類に比べて木本類には興味が無い。
だから写真に撮ることもあまり無いのだけど、緑の苔の上に落ちた真っ白な花が目を引いた。
実にサポニンを含んでおり、石鹸代わりに用いられたそうだが、魚への毒性もあって漁にも使われたとか。
昔、川沿いの水溜りのようなところで、この実を磨り潰して流し込んでみたことがあるけど、魚は元気に泳ぎ続けていた。
京都府の神社にて
サザンカ
これも木本類だけど、花の少ない時期に咲くので・・・。
兵庫県の神社にて
──ランの花──
ランといえば多くの人はカトレアやデンファレといった豪華な洋ランを思い浮かべると思う。
けれど日本にも多くのランが自生していて、野生ランとして愛好家に親しまれている。
私は多くの植物の中でも日本に自生するラン科植物が大好きで、洋ランのような派手さは無いのに、どこか気品を湛えた姿や、特徴的な生態に魅入られてしまう。
そんなランの中でも一番好きな(つまり植物の中で一番好きなということになるが)花がフウラン(風蘭)である。
葉姿、花姿ともに気品があって、花の甘い芳香も素晴らしく、私にとっては非の打ち所の無い植物で、花の季節になれば園芸店に並ぶものの、とにかく自生の姿が見たくて堪らなかった。
暖地を好むので、南紀を中心に何年もかけて随分と探し回り、もう無理かも、と諦めかけたところでやっと見つけた。
全部で7株ほどあったと思うが、そのうち開花株は3株くらい。
見つけた一ヵ月後、またその場所にフウランを見に行った。
開花株は全て誰かに採られていた。いや、盗られていたと書くべきか。
フウランは絶滅危惧種である。
しかも発芽から開花まで20年ほどかかるという草本類とは思えぬゆっくりとした成長速度だ。
美しい花を採って手元で育てたいという気持ちは判るが、厳に慎むべき行為であると思う。
そんなわけで、フウランの花の写真が撮れるのはいつになるか判らないのだけど、その他の何種類かのランを神社で撮っているので・・・。
キンラン
とある神社で数十株が群生していて驚いた。
豊かな黄色は金蘭の名に相応しい。
兵庫県の神社にて
クモキリソウ
地味なランだけど、山で初めて見つけたランなので愛着がある。
兵庫県の神社にて
ネジバナ
もっともありふれたランで、公園の芝生などでよく見かける。
一つ一つの花は小さくても螺旋状に咲く姿は面白く、色も鮮やかで魅力的である。
京都府の神社にて
カヤラン
木に着生するラン。
シダやラン科植物などでよく見られる生態で、決して寄生ではなく、ただ木の表面に根を張っているだけである。
私の好きなフウランも同様に着生種で、そのことが余計に発見を困難にしている。
カヤランは着生種の中では最も個体数が多く、少し頑張れば見つかる。
フウランを見つけるのは奇跡に近い気がする。
京都府の神社にて
セッコク
これも着生ランで、洋ランのデンドロビウムと同じ仲間だ。
兵庫や京都では殆ど見つけられなかったが、三重や和歌山ではけっこう簡単に見つかって驚いた。
三重県の神社にて
あとはサギソウ、トキソウ、カキラン、エビネ、シュンラン、コバノトンボソウにハクウンラン、ヒナランやウチョウラン、他にもいろいろ見つけたけれど写真には撮っていない。
いつか撮りに行きたいなぁと思いつつ、それらの殆どは神社ではなく山の中なので、なかなか実現しそうにない。
──おまけ──
キノコたち
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今回は草花でしたか。それにしてもhiro1jzさんの
写真は生き生きとしていて美しい!
くしくも今日、私もイワタバコをUPしました。
なんだかとても恥ずかしい限りです。
是非今後も「花たち」は定期的に掲載をお願い
します。
私が写真を始めたのも、同じ町内に住む女性がお花や小鳥の写真のHPを持っていらっしゃったからです。
あんなのが撮りたいな、って。
結構難しいです。
紫の花を撮ったのに、写真を見たら青になっていてがっかりしたことがあります。
人間の目には紫に見えているが本当は青なんだ、と言われましたけど。
いちおう何とか週一更新でやってきてますが、
忘れられないよう頑張らねば(笑
ありがとうございます。
そう言ってもらえると、これからはもう少し
積極的に花を撮っていこうかな、なんて気になりました。
写真を撮り溜めて、また掲載したいと思います。
アタさんの撮られたイワタバコ、
というか他の植物もそうですが、
生育環境や、その植物の持つ雰囲気等を忠実に捉えられているので、
植物好きにはありがたいです。
うーん、嬉しいんですけど、
でも何か、何かが駄目なような・・・そんな気がしませんか?
とりあえず、機材のせいにしておきます(笑
カメラは花の写真から入っていく人も多いですね。
マクロなんか使い出すとハマる人も多いし、
実際ビックリするような綺麗な写真が撮れたりもしますし。
でも、やっぱり難しい。
綺麗なだけで終わってしまうことが多いのも、花の写真の難しさですね。
確かに紫の花色の再現は手間取ります。
ホワイトバランス調整しまくりです(笑
下手で下手で
なかなかそのあるような
状態に撮れないので
こういう写真は
嫉妬の対象です(笑)
hiro1jzさんの写真は
そこに命が息衝いている
という感じがあって
いわゆる図鑑写真とは
違いがあるので
心に沁み入ってきます
何をおっしゃいますやら。
少なくとも樹に関しては、いつも印象的で、
何か迫ってくるものを感じています。
野草は幽黙さんもそんなにアップされていないですから、
追手神社や岩戸神社でのイメージが強いですが。
レンズの制約上、花との距離感は図鑑写真と似たようなものになるのですが、
そこから先の捉え方というか表現の仕方は、
やっぱり光次第なので、何とか図鑑とは違う感じに、
とまあ四苦八苦してます。
違うと言ってもらえると、報われたようで嬉しいです。