神社のある風景

山里の神社を中心に、歴史や建築等からの観点ではなく、風景という視点で巡ります。

丸山千枚田

2018年06月30日 | その他

三重県熊野市紀和町丸山

七里御浜では青空も顔を出したが、これから向かう方向は、どんよりと曇っている。
海辺にずっといたい気もしたけれど、しっかりとした予定の無い行程とは言え、丸山千枚田は最後に絶対寄る、と決めていたので山に向かって車を走らせる。
幸い、山間部に入っても雨は降っておらず、空は意外と明るいままだ。
国道311号線から外れて狭い道を進むと丸山千枚田を見下ろす場所に出るが、まずはもっと近くからと思い、道を下っていく。
途中、棚田の中ほどにある駐車場は先客があったので素通りし、最も低い場所にある駐車場に車を入れる。
どの駐車場所も数台分しかスペースが無くて、ここも既に2台の車があったが、この先に駐車場は無さそうだし棚田からも離れていくようなので仕方がない。



丸山千枚田は実際に千枚以上の棚田があるらしいが、低いこの位置からではそれほどの規模は窺えない。
ただ、大石と呼ばれるおむすび型の巨岩が魅力的で、昔ながらの田園風景の眺めを、更に遥か遠い太古への夢想へと駆り立てさせる。



その大石のそばに行ってみる。
雨除けの農機具置き場になっているのが何とも素朴で、いいなぁ、と思う。



観光客は各駐車場に5、6人程度で、本格的なカメラマンは見当たらない。
平日だし、天気も悪いからで、普段はもう少し多いのかも知れない。



棚田の間を縫って下る小道を進む。
水鏡という言葉があるが、水の張られた棚田は光が水面に反射しないと映えない。
大石の辺りからは順光で棚田が周囲の色に溶け入ってしまったけれど、この辺りからなら、それなりに浮かび上がってくれそうだ。



自然の恵みと厳しさ、逞しい人の営み、そういったものを感じさせてくれる風景だ。



人の足跡の残る田圃。
自動化は出来ないし、維持管理は困難な環境。
ただ、多くの地域から協賛する人々がいて、この風景が保たれている。



青空と白い雲が映ればいいなぁ、とは思うけれど、贅沢は言えない。



特筆すべきは、棚田を構築しているのが自然石を積み上げた石垣であることで、最近では随分と減ってしまった風景だ。
そしてそれを、サツキの花が彩る。
ここで撮影していると、斜面の上から「反射してますかぁ?」という声が聞こえた。
一瞬、何のことかと思ったが、すぐに水面のことだと理解して、「はいー!」と答える。
すると、一眼レフを抱えた初老の男性が現れて、私の後ろで撮影を始められた。
確か、駐車場で隣に駐車していた車に乗っていた方で、熊谷ナンバーだったはず。
埼玉県から来られているのは凄いなぁ、と思う。
ここで見かけた方は、皆さん光の向きなど気にせずにスマホでパシャパシャ撮られていたが、この方はいい光が来るのを待っていたようだ。



と、それに呼応するように、雲が切れて日が差し込んできた。



手前の棚田ではなく、向こうにある杉の木をスポットライトのように照らしてくれたら、と思わないでも無かったが、それでも辺りが華やいで、心が昂るのを感じる。



似たような構図ばかりで恐縮だけれど…。



それでも、思うような写真は撮れなかったけれど、美しいと思う光景に出逢えた。



こういう小道が好きなのに、その情緒というか、いいなぁと思わせる何かを写し撮れない。



日が傾いてきた。



ここは夕暮れ時の、朱に染まった棚田の風景が有名なのだが、今日の天気では見られそうにない。



丸山千枚田の文字、観光客が記念に撮るにはいいのかも知れないが、純粋に風景を撮りたい者としてはちょっと邪魔かなぁ…。



ササユリ? 私が知るササユリはもっと白に近い淡いピンクなので確信が持てない。
そういえば名張に住んでいた頃、近所の田圃の畔に、当たり前のようにリンドウが咲いていた。
こういった植物が、当たり前のように水田を彩るのは嬉しい光景だ。



先程のおじさんが再び話しかけてこられた。
気儘な年金暮らしで、埼玉から車中泊をしながらあちこち立ち寄ってここまで来た、とのこと。
車中泊は決して楽ではないし、お歳の割に凄い情熱だと思ったが、羨ましくもある。



駐車場の近くに休憩所とトイレがある。
休憩所には記帳ノートがあったのでパラパラと捲ってみると、あらゆる地域から人々が訪ねて来ていることが判る。
外国の方の書き込みも幾つか。
何語か判らないものもあったが、この風景が良い思い出になってくれたなら嬉しいと思う。

雲は多く、夕焼けは望めないけれど、綺麗な空だと思って写真を撮った。


撮影日時 180529 16時50分~18時30分 
地図


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6 コメント

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Unknown (Jun)
2018-07-01 08:28:07
美しい棚田の風景を有り難うございます。
やはり水が光ると本当に素敵ですね。
青空がなかったのは残念だけど、平和な世界が見られました。
ここも一度行ってみたいなぁ。
岩座神の棚田はもうつまらなくて(笑)ここの棚田に比べたら迫力負けですよ。
光を待つ時間がある人が羨ましいですね。
仕事を現役で持っていると、撮影が主体の旅行でもやはり時間が気になって来ますもの。年金生活で健康を保って好きなものを撮影して旅するっていいです。

大岩、すごい迫力と存在感です。
ゴロンと転がってこないかな、なんて思ってしまったり。
畏怖を感じます。
注連縄がないのも良いですね。
お地蔵さんでなく、農機具が置いてあったりして、生活の中に溶け込んでいる存在です。

ササユリだと思いますが・・・百合は種類が多いのでよくわかりません。

昨日は篠山から福知山、丹波と新しいお店ばかり巡ってグルメドライブでした。
篠山は大山新の、二宮神社のそばにある廃幼稚園にできたカフェ。
木のぬくもりがあって、食べ物も野菜中心で美味しいです。
子供づれが多くて、賑やかですが、意外にしつけの良い子ばかりでした。幼稚園跡のカフェに、幼い子供は似合います。写真を撮りたかったですが、今のご時世、親の許可がないとダメで、建物風景だけになりました。

諏訪園で新茶を買って、福知山の9号線を走っていたら、シフォンケーキの看板があります。以前からあるのですが、一度行ってみようと田圃道に入りました。着いたら、普通の民家で、普通の玄関なので躊躇いましたよ。でも家の人が出てこられて、「お好きなものを選んでください、呼んでもらえたらまた出て来ます」と言って中に引っ込まれました。
玄関の上がり框に自家製ケーキが並べてあるだけのお店でした。
安いし、美味しいお菓子でした。

最近は丹波地方で新しいお店がオープンすると、新聞の地方版にニュースで載るんです。





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Unknown (hiro1jz)
2018-07-02 09:33:31
>Junさん
ここへ行くのは二回目でして、前回は晩秋の夕暮れ時で、
殺風景だったので素通りしています。
ずっと田植えの時期に訪れたいと思っていたので、やっと念願が叶いました。
撮影条件は良くはありませんでしたので、またいつか再訪したいものです。
私たちが車に乗り込もうとしたとき、隣の熊谷ナンバーの方と最後に会釈をしたのですが、
あれ、もう帰っちゃうの? という表情をされました。
こちらはT君が、翌朝早くから仕事でしたので、
夕方まで南紀にいるだけでも厳しいスケジュール。
二人で、悠々自適って感じでいいなぁ、と言い合いました。

あの岩が信仰対象になっていないのが不思議です。
対象になるならないの違いって、判る人には判るんでしょうか。

私も百合はイマイチ判りません。
園芸品種も多く植栽されているので…。

廃幼稚園って木造なんですね!
とてもいい感じです。
野菜中心というのもいいし、ちょっと行ってみたいなぁ。
でも、カフェと聞くと、おっさん二人(と言ってもT君はまだ30ですが)だと抵抗があります(笑
以前にも書きましたが、最近、「食」にお金と時間を費やすのも、
悪くないと思えるようになってきました。
丹波はなかなかユニークなお店が増えてきてるみたいで、
そっち方面でも楽しめそうですね。
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Unknown (Jun)
2018-07-14 09:06:39
おはようございます

悪夢のような豪雨の週末から一週間経とうとしています。
被災された方達に心からお見舞い申し上げます。

hiro1jz様のお家は大丈夫でしたか?
我が町は真夜中に特別警戒警報が出て避難せよと言われましたが、誰も自宅から出ませんでした。真っ暗で豪雨、しかも避難所は川岸・・・自宅避難の方が安全だと判断したからです。
川から高い位置にありますし、山の方はまだ保ちそうだったので。
でも次はどうなるでしょうか。

美しい風景が一瞬に消えてしまいましたね。
丹波・丹後地方もかなり様相が変わった感じです。
通行止がまだ解除にならないところもあり、出かける場所が暫く見つかりそうにありません。

どうかhiro1jz様に被害がありませんように。
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Unknown (hiro1jz)
2018-07-15 09:14:14
>Junさん
おはようございます。

子供の頃から気象に興味があって、中学生の時には気象庁に入りたい、
なんて思っていたくらいですから、気象庁のホームページはほぼ毎日見ています。
Junさんの住む地域に強い雨雲が見られたので、あの辺り、大丈夫だろうかと心配しておりましたが、
まずは御無事で良かったです。
でも、避難するかどうか、という状況だったのなら、さぞお疲れになったでしょう。
体調を崩されませんよう、お気をつけください。

こちらは、普段より強い雨が、普段より長く降った、という程度で問題ありませんでした。
先日の地震の影響か、ちょっと雨漏りしましたが。

主な被害は中国、四国地方のようですが、
丹波、丹後も影響は大きかったのでしょうか?
夏が終わるまでに、丹後に行くつもりでしたが…。

ご心配いただき、ありがとうございます。
台風など来ることなく、平穏に月日が流れてほしいものです。
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Unknown (Jun)
2018-07-18 21:31:05
こんばんは

先週末、丹波から但馬、播磨と走って来ました。
北部は心配したほどの被害はありませんでした。
と言っても、通行止の箇所があったし、1mほどの高さまで泥だらけになった樹木が由良川の堤防の外にあったりで、無事ではなかったようです。
お気に入りのお店が無事なのを確認して、ホッとしました。
まだ渓谷などは怖くて入れませんので、国道をぐるっと走っただけです。
それより猛暑で車から出るのが億劫で、結局夕方たどり着いた福崎町の辻川山公園で妖怪たちの写真を撮っただけです。

先日、FBで素晴らしい夕焼けの写真を見ました。
手前に夕焼けを写して真っ赤になった水、水平線、空・・・と見事だったので、今話題になっている新舞子の干潟かと思って撮影者に場所を尋ねて見たら、撮影者の自宅近所の溜め池ですって。
身近でもすごい風景が撮影出来るのだなぁと感心しました。
多可町は西に山があるので、溜め池に夕日は無理です。
その人は淡路島の人でした。羨ましいです。
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Unknown (hiro1jz)
2018-07-20 06:45:45
>Junさん
私も丹後方面の道路状況を調べてみたのですが、
何か所か通行止めがあるものの、行くこと自体は問題無さそうですね。
ただ、猛暑で出かける気がしないのが問題かも知れません(笑
実際、熱中症による死者も出てますし、
もはやこれも自然災害の一部で、日本の自然はますます厳しくなっているような。

地元というのは絶対な強みです。
私のような街中に住んでいると、あまり意味は無いですが。
名張に住んでいるときは、写真に残したい風景が、しょっちゅう見られたものです。
多可町も、夕日はともかく、そんな瞬間が沢山あると思います。
私にはどちらも羨ましいです(笑
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