a journal of sociology

社会理論・現代思想を主に研究する今野晃のblog。業績については、右下にあるカテゴリーの「論文・業績」から

私的辞典考:その2

2010年07月24日 | 言語
 ここは一応、社会学や社会思想など(それ以外もあるが)中心としたblogとしているが、ここ最近は語学についての話も多い(そちらの方が話がしやすく、更新が楽なので)。で、今回も仏語の話を。ちなみに辞書の話である。

新スタンダード仏和辞典
鈴木 信太郎,中平 解
大修館書店

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 中クラスの仏和辞典に関して話をしたい。

 今度はスタンダードについて。

 この辞典の長所は、なんと言ってもその訳語の良さ。こんな私でも、翻訳の仕事を任されることがあるのだが、翻訳の際に一番多用するのはこの辞書ではないかと思う。なんと言っても、訳語のこなれた感じが一番である。だから、訳語の選択に悩んで、ロワイヤルの訳語でしっくり来ないときに手にとるのがこの辞典。「なら最初からこの辞書を使えよ」と思うかもしれないが、まあ、私はロワイヤルを主な辞典にしているので……。

 まあ、理由はそれだけではないが……。この辞典で、「私にとって」の難点が、熟語の配列である。というのも、ロワイヤル以下、普通の仏和辞典では、見出し語の意味(訳語)を紹介したあとで、一括して熟語が並べられているが、この辞典では、見出し語の各意味の説明のあとに熟語が並べられている。だから、熟語を調べるためには、その熟語のキー単語が、その単語が持つ複数の意味のうちのどの意味で使われているかを、あらかじめ知らねばならない。この点が、私には、ちょっと……。まあ、それでも、調べる熟語の中の単語がどの意味で使われているかわかるようになったのだが。
 その点では、この辞書は、仏語の出来る人向けということだろうか? この辺の判断はしかねるが、が、おそらく仏文の人はスタンダードの方が、そしてその他の人文・社会科学系の人が使うには、ロワイヤルが向いているのではないかと思う。

 それからもう一つ。この辞書に関して、忘れてはならないのは、その旧版の存在。新しい版の前の古い版も、この辞典はなかなか評価が高いようである。というのも、語の説明が、語源順に並んでいるため、語の最初の意味を知る上で非常に役立つ。まあ、私も一応持っている。なかなか使う機会はないが、しかし、専門の関係上、50~60年代の文章も多く読むため、古めの辞典も持っていた方が役立つ。その点では重宝している。古本屋で1000円ぐらいであれば、買っても損はないのではないと思う

スタンダード仏和辞典 (1976年)
鈴木 信太郎
大修館書店

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 しかし、ロワイヤルの新版が数年前に出たが、とすると、スタンダードの新版もあるのかもしれない。そしたら、すぐ買うだろう。でも、このブログを読んでわかると思うが、私は過度に辞書や、その他の本(文法本)に頼る傾向があって、それでは真の語学力はつかないのかも、と、思う。やはり言葉は、生きた文脈の中でこそ習得すべきかもしれない。がしかし、あちらにいたときに、そうした機会、あるいはそうした友人に恵まれなかった私は(仏人の友人はいましたが、一番近しい友人などは、私が語の説明をしていたぐらいである。本当にそんなんで良かったのだろうか?)、いずれにしても、日本にいる今となっては辞書依存症も仕方のないことと思っている。



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