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社会理論・現代思想を主に研究する今野晃のblog。業績については、右下にあるカテゴリーの「論文・業績」から

フランス大統領選挙:その2

2017年05月01日 | 社会問題
 前回のエントリーの続きである。

 今の時点で、第二回目の投票の予想をすることが重要かどうかはわからない。が、他方で、「現時点での予想」を何らかの形で残しておくのは重要だと思われるので、ここで少しだけその話を。

 ただ、「誰が勝つか?」という予想は、しないつもりなので、そのつもりで。その辺、選挙の勝敗とは別のところに注目する社会学は、「安全な立場」をとることができる(笑)。

 しかし、いずれが勝つにしても、極右勢力の拡大と現EU体制への不満の声が根強いことが印象づけられるだろう。

 さて、第二回目投票に関する私の見解だが、「結局はマクロンが勝つ」と考えるのは短絡的すぎる、というのが私の立場である。なぜかというと、とりわけ左派に投票した人々は、現在のEUのあり方に批判的であり(なぜならEUの経済政策が、富裕層を優遇し、社会的弱者を追い込むという政策だから:たとえばギリシャ問題)、反ルペンという理由だけで、EUの政策の代弁者であるマクロンに入れるとは、限らないから。その上、彼は、オランド政権下で経済相として、規制緩和政策や労働者の権利を制限する政策を推し進めた中心人物だった(ちなみに社会党の候補が、当初有力視されていた現首相のバルスが選ばれずに、党内最左派のアモンが選ばれたのも、こうした不満が原因)。

 彼の主張は、雇用をはじめ様々な規制を撤廃すれば経済が活性化して、景気がよくなるというもの。しかし、ギリシャ問題に関して言えば、欧州委員会・欧州中央銀行・IMFの言われるとおりの規制緩和・企業優遇・社会保障削減政策を導入しても、全然景気は上向かない。で、景気も上向かないにもかかわらず、社会保障の削減や労働規制の緩和で普通の人々の生活は痛めつけられ、他方で、法人税の軽減や解雇規制の緩和などで企業には有利になる。そんな立場を誰が支持するのだろう。

 これは、私の仏人の友人達が、facebook上でぶちまけていたのだが、それほど政治的でない友人達もマクロンのことを「金持ちの味方」とこき下ろしていた(ちなみに、facebook上の私の仏人の友人は、直接の友人が過半数である[要は、それほど交流範囲が狭いということなのだが(苦笑)])。

 で、まあ、それだけ若者のマクロンへの不信感は根強い。

 だから、メランションなどに投票した人々は、人種差別主義の候補にも、金持ち優遇政策の候補にも入れたくないと、不満をぶちまけているのである。

 でまあ、こうした人々が、第二回投票で棄権に回ったりすれば、ルペンの当選も全くないわけではない。まあ、米の大統領選であったことが、仏でもあり得ると言うことである。あれは、サンダースに投票した人々が、すんなりクリントン票へと流れると楽観視したクリントン陣営の油断も大きな原因だったと考える。

 それから、右派のフィヨンの票が、どちらに流れるかも問題になるかもしれない。フィヨンの立場は、かなり右寄りで、当初の有力候補で、その後フィヨンを支持していたジュペでさえ、フィヨンの政策が右過ぎると批判していた。で、そうした部分を支持していた人々がいたとすれば、彼らは単純にマクロンに入れるとは考えられない。結構な割合で、ルペンに票が流れるかもしれないと、私は考えている。

 以上が、現時点で私が考えていることだが……。

 もう一つ問題が。仏では大統領選挙のあとに、国民議会選挙が行われる。ある意味こちらの方が重要で、極右の国民戦線はおそらく得票数は、かなり増やすだろうが、果たしてそれが議席増につながるのだろうか?

 ヨーロッパは、このあと、イギリスでも国会の選挙だし、ドイツでも総選挙が控えている。まあ、いろいろ大変だと感じざるを得ない。なお、これについては、また続きで。


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