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私的辞典考:その3

2010年07月28日 | 言語
ディコ仏和辞典
山田 ジャク
白水社

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 中辞典クラスの仏和辞書について、ここまで旺文社のロワイヤルと大修館のスタンダードをあれこれ言ってきたけれど、今回は中辞典よりも少し小さくはなるが、白水社のle dicoについて。

 現在各社、どの辞典も「現代語」をこぞって導入しているが、そうした潮流の先駆けになったのがこの辞典。コンピュータ関連の用語、これを最初に、豊富に導入した辞典でもある。まあ、この傾向は他の辞典ですでに取り入れられているので、もはやこの辞典の長所、もしくは専売特許とは言えなくなっているのだが(あ、でも私が使っているのは第二版なので最新版ではさらに新しい用語が取り入れられているかもしれない)、しかしそれ以外にもこの辞書の長所はしっかりある。
 まず第一にあげられるのが、語の説明の細やかさ。例えば、instruction。この語の説明をクラウンの第三版における説明と比べてみると……。

白水社の辞典では
instruction:女性名詞 1教育、【軍事】訓練 2(学校で身に付く)知識、教養 3{複数形で}(詳しい)指示、訓令、使用説明書、注意書き 4(官庁などでの)通達 5【法律】予審 6【情報】命令、インストラクション
とあり、それに対してクラウンでは
nstruction:女性名詞 1教育{主に知育}、{古}訓育 2知識、教養 3{複数}指示、訓令、命令 4{複数}(商品の)使用法、説明書 5【法律】予審

 以上見られるように、白水社では、instructionが、学校で身につけた知識や教養のことを指すこと、あるいは指示でも具体的な指示を指すことなどが、明記されている。これに対して、クラウンでは上には上げませんでしたが、用例と説明が一番多い項目は5の予審についてだった。
 こうした点を見ても、語の説明の細かさ、あるいはあちらに行ったときの使い勝手の良さなどは、le dicoの方が一段上であると、私には思われた。

 あるところで、仏和辞典の編纂をされた先生と一緒にお仕事をさせて頂く機会があっただが、彼が使っているのも、ご自身が編纂した辞典と、そしてこのle dicoだった。ということで、買って損のない辞典だと言えると思う。


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