犯罪被害者の法哲学

犯罪被害・刑罰・裁判員制度・いじめ・過労死などの問題について、法哲学(主に哲学)の視点から、考えたことを書いて参ります。

犯罪被害者週間全国大会2007 (全電通ホール) その1

2007-11-26 16:41:31 | その他
11月25日から12月1日までの一週間は犯罪被害者週間であるが、この知名度は今のところ高いとは言えない。近年は11月中旬からクリスマスのイルミネーションで盛り上がり、しかも今年は『ミシュランガイド東京2008』が11月22日に発売されるや否や大ベストセラーとなっており、タイミングが非常に悪かった。やはりこのような問題について世論を盛り上げるのは非常に難しいことを痛感させられる。

金儲け一色に染まってしまった21世紀の日本においては、経済効果がない問題にはなかなかスポンサーが付かない。また、お金に関係のない問題には関心が集まりにくい。年金問題があれだけ盛り上がったのは、自分が将来もらえるお金に関する問題だからである。政治家の汚職事件や公務員の不祥事に関心が集まるのは、彼らが不正に金銭的な利益を得ていたからである。格差社会が問題になるのは年収の問題だからであり、派遣、日雇い、偽装請負、ワーキングプアなどが問題になるのも同様である。お金のことで頭が一杯になっている人間には、犯罪被害者週間など目に入らない。

もちろん、我が国では連日のように犯罪が起きており、犯罪の問題は身近になっている。そして、確かにワイドショー的な関心を集めることも多い。香川県坂出市で祖母と孫の3人が行方不明になっている事件は、関係のない人も巻き込んで様々な憶測を呼んでいる。昨日のテレビ朝日開局50周年記念ドラマスペシャル『松本清張・点と線』も高視聴率であった。しかしながら、同じ犯罪であっても、犯罪被害者の視点で物事を捉えることは想像以上に難しい。これが、犯罪被害者をめぐる問題の難しさそのものでもある。

危険運転致死傷罪の新設、自動車運転過失致死傷罪の新設、刑事裁判における意見陳述制度の新設や附帯私訴制度の復活など、世論は犯罪被害者の側に確実に向いている。しかし、最も盛り上がった出来事が橋下徹弁護士と光市母子殺害事件の弁護団との場外乱闘だというのでは、あまりに空しすぎる。現代社会が最も避けており、最も弱いのが、人間の死に関する問題である。そして、犯罪被害の問題の根本は、同じく人間の死である。その意味で、金儲けには何の関係もなく経済効果も全くない犯罪被害者の問題につき、世論がどこまで真剣に取り組めるかは、国民の成熟度を測る重要な指標である。