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“男のためのガーデニング”改め

猪子山ハイキング~磐座と古墳の山と養命の滝~

2022-03-04 07:15:15 | 御朱印蒐集・仏像・磐座・巨樹・古墳・滝・登山
 湖北地方は年末の大雪以降、何度も積雪に見舞われて、湖北は1年に11カ月しかない!とうんざりされている方も多いかもしれません。
雪が少なく積雪のない他府県へ遊びに行きたいものの、オミクロンの蔓延もあって遠出するのも躊躇してしまっているいちに、すっかり運動不足になってしまいました。

久しぶりに晴天の休日となりましたので雪の積もってなさそうな猪子山を訪れましたが、地元の方の朝のウォーキングコースにも関わらず、運動不足がたたって息を切らしながら登ることになってしまいました。
自分よりも年上と見受けられる人に追い抜かれ、トレイルランニングの人は一瞬で後ろ姿が見えなくなりと情けない状態でしたが、人生と同じで自分のペースで登るしかないですね。



猪子山は、繖山山系に連なる山の一つで、頂上近くに巨岩信仰のある磐座と北向岩屋十一面観音、林道に沿って約40基といわれる古墳群、山麓には巨大な岩船(舟形の巨岩)を祀る岩船神社があります。
頂上近くの展望の良い場所はタカの渡りの観測地になっており、季節によっては山麓に桜、林道にショウジョウバカマが楽しめますし、縦走路を行けばイワカガミまで見られるらしいとあって、いろいろな面で楽しめそうな山です。



林道に入ってすぐに出会うのは「岩船神社」の鳥居で、岩船神社は猪子山の中腹にある「上山天満天神社」の境内社とされ、祀られる磐座は728年に比良大神(白髭明神)が乗船した岩船といわれます。
琵琶湖の反対側の比良の大神が比良山から琵琶湖を船で渡り、降り立つ時に使われた船ということになりますが、白鬚明神・比良明神を御祭神として祀る高島市の白髭神社との関連が興味深い。



岩船社の御祭神は、比良大神(白髭明神)の渡湖の際に岩船を先導した津速霊大神を祀るといいます。
一足先に参拝されていた方は社にお参りした後、岩船に両手をつけて岩船の気の力を受け取るような仕草をされておられましたが、確かに強い気を発するような巨石だと思います。
岩船の後方から見るとまさしく船の形をしていて、古代の巨石信仰と共に琵琶湖を行き来してこの地を治めていた権力者の力を感じます。そこには渡来系民族の強い力も影響したのかもしれません。



猪子山には40基とも100基以上ともいわれる古墳があり、「山面古墳群」の一つの「猪子山23号墳は、岩船神社と林道を隔てた場所にあります。
古墳時代後期(6世紀後半)に造られた円墳とされ、この地域を治めていた豪族などが葬られていると考えられているといいます。



林道の横には湧き水があり数本の柄杓が置かれていたが、飲料水というよりも手水のように思える。
登ってこられる方には、ここで手を清めていかれる方の姿がありました。



少し上方には猪子山古墳群の一つとされる「猪子山14号墳」。
全体で15基確認されている猪子山古墳群の中で良好な状態で残っている古墳の一つだといい、こちらも古墳時代後期(6世紀後半)に造られた円墳なのだといいます。
猪子山の14号墳と23号墳はほぼ林道沿いにあるので見やすく、今回は入りませんでしたが玄室の中に入ることも可能です。



更に登ると分岐があり、「北向岩屋十一面観音」に通じる長い石段の道と、「巨石の神々を訪ねる道」の案内板のある道がありました。
「巨石の神々を訪ねる道」は歩いたことがなかったので、行ってみようと思ったものの、道路上にかなり雪が残っており断念して石段を登ることにします。



頂上近くの「北向岩屋十一面観音」に到着すると、目の前には「玉祖神命」の巨大な岩神群があります。
眼下には能登川の田園地帯が広がり、西の湖や琵琶湖と遠くに雪に覆われた比良山系が広がる。
滋賀県の湖東・湖南地方には古代よりの巨石信仰の山が多く、今も信仰を集めているのは古代からの原初的な思考が現代まで人間に組み込まれているのでしょうか。



巨石群の名となっている「玉祖神命」は、天照大御神の岩戸隠れの際に八尺瓊勾玉を造った神とされ、玉造部の祖先とされる神とされます。
岩屋十一面観音は烏帽子岩の岩窟の中に祀られていますから、神話の世界と観音信仰が微妙に入り混じって語られてきた話のようにも思えます。



巨石群の横には観音堂が建ち、堂内へ入ると線香の香りが立ち込めている。
御堂の屋根の後方に巨石が頭を出していますが、この巨石の窟に岩屋十一面観音は祀られています。



案内板によると桓武天皇の時代の延暦10年(西暦791年)、鈴鹿の鬼賊討伐に向かう坂上田村麻呂が岩窟内に十一面観音を安置して祈願されたと伝わるという。
また、北向岩屋十一面観音は山麓にある「繖山 善勝寺」の奥之院とされており、善勝寺は聖徳太子創建の霊場に太子の叔父の良正が創建したのが始まりだという。

良正上人は、石窟の中に弥勒の霊像を得て、太子彫刻の観音とともに両本尊を祀ったといいます。
創建当初は釈善寺と号した善勝寺は、坂上田村麻呂の東夷征伐の後に寺を再興したと伝わり、湖東地方の聖徳太子伝説と坂上田村麻呂の伝承が色濃く残る。





北向岩屋十一面観音に参拝した後は、すぐ上にある猪子山の頂上を目指します。
頂上は岩窟のある烏帽子岩の上にあり、この道の先は雨宮龍神社や繖山頂上、観音正寺まで続いているが、ここで折り返す。



頂上付近は展望はありませんが、看板の近くには三角点がありました。
猪子山の標高は267.5m。低山ではありますが、見所の多い山です。



猪子山を含む繖山山系は信仰の霊山ですので、帰り道に山の反対側にある正瑞寺の「養命の滝」へと足を運びます。
正瑞寺瀧道の石標から林道に入っていくのですが、道は細いこともあって不安を感じる道です。



正瑞寺は猪子山の中腹の奥まった場所にあり、人の気配が感じられず少し怖い感じがするような黄檗宗の寺院です。
正瑞寺の「養命の滝」は初めて来たと思っていましたが、寺院に着くと以前に参拝した記憶が蘇る。随分と忘れやすくなっていますね。



石組の上には先端を前に突き出すような形の石があり、水は石の先端から落ちている。
残念ながら水量は少なく、滝行の場というよりも滴る水を手の平で受ける程度の滝でした。





本殿へ参拝しようとまた長い石段を登る。
石段の途中ではジョウビタキの♀が可愛らしい姿を見せてくれましたので、辛い石段登りの気休めになりました。





下界へ戻って猪子山を振り返る。
繖山山系は低山ながら猪子山・伊庭山・瓜生山・繖山・観音寺山の峰が連なり、山中や山麓には多くの神社仏閣が祀られています。
巨石や古墳も多く見られる霊山で、何度も訪れたくなる山です。



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