僕はびわ湖のカイツブリ

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“男のためのガーデニング”改め

日本百名山「伊吹山」~初冠雪の前に登山~

2022-12-02 18:00:55 | 御朱印蒐集・仏像・磐座・巨樹・古墳・滝・登山
 伊吹山は滋賀県米原市から岐阜県揖斐町や関ケ原町にまたがる標高1377mの山で、滋賀県では最高峰の山となり、深田久弥が選んだ「日本百名山」のひとつです。
これまで伊吹山以外の百名山に登ったことはありませんが、麓の登山口・三之宮神社から登るコースから登ったのは遥か昔の小学生だった頃以来です。

夏休みに担任の先生に引率された有志のメンバーで、ナイトハイクして山頂で御来光を見るという企画でしたが、特に苦しかった記憶はなく楽しい夜間登山だった記憶があります。
その後はドライブウエイで8合目まで行って山頂へ行くことはありましたが、今回は小学校以来の登山口・三之宮神社から山頂コースで登ってみることにしました。



「新・花の百名山」に選ばれて花の山として有名な伊吹山とはいえ、晩秋の季節には花はないけど雪が降ったら登れなくなってしまうの一心でよく晴れた小春日和の日に伊吹山へ訪れました。
驚いたのは山麓駐車場に7時前に到着したにも関わらず、次々に車が入ってきて各駐車場では客引きをしておられる。
まるで京都辺りの有名観光地のような感じで、伊吹山の人気ぶりが伺われます。



まず三之宮神社で伊吹山登山の守り神である山ノ神に参拝して本日の登山の無事を祈ります。
三之宮神社は、山ノ神として大山咋命を祀り、大国主命と玉依姫命の3柱を祀る神社で、麓に三之宮・2合目辺りに二之宮・山頂に一之宮を祀る。



伊吹山では自然環境を保全や植生回復事業・登山道整備のために「伊吹山入山協力金」導入していますので、協力金を支払って登山口へと向かいます。
受付には何人か人が並んでいて、後続にも早朝から登山者が集まってきていますが、誰も人のいない山を登る不安感がないのは助かります。



登山開始前に少し寄り道して「ケカチの水(悔過池)」のところへ立ち寄ります。
伊吹山は江戸時代まで山岳修行の山だったといい、行者は「ケカチの水」で身を清めて山頂の弥勒堂を目指したといいます。
また、ヤマトタケルが草薙剣を持たずに伊吹山の山ノ神(白いイノシシ)と対峙し毒気にあたり、高熱を癒した「命の水」とされている。
(同じ話は醒井の「居醒の清水」にも伝わる。)



それでは山頂まで6キロの道のりを登り始めますが、木々の中を通り抜けて一合目を目指すと途中に「ひろきち地蔵」というお地蔵さんが祀られている。
「ひろきち地蔵」はひろきちという人が6合目で見つけたお地蔵さんを家へ持ち帰ったところ病気で寝込んでしまい、見舞いの村人にお地蔵さんを伊吹山へ返してくれと頼み、運びあげてお祀りしたという。



かつてのスキー場でパラグライダースクールをやっていると思われる開けた場所を登って二合目を目指すと、「二之宮神社(白山神社)の案内があり、「石神(シャクシ)の森」と「白山神社」があるという。
お店か何かの家があったので道を教えてもらったが、「松尾寺跡・上杉神社」しか見当たらず、「白山神社」はどこか分からず仕舞い。



伊吹山では弥高寺・長尾寺・太平寺・観音寺を以って「伊吹山四大護国寺」としているが、ここでは「伊吹山五大護国寺」として松尾寺を数えている。
「四大護国寺」という数え方と「五大護国寺」という数え方があるのか分かりませんが、早い年代に堂宇を焼失し堂宇も何も残っていないことが関係しているのでしょうか。

この寺域は伊吹信仰における「いわくら信仰」の故地であったといい、岩の祠の中には弥勒石仏が祀られています。
山頂には「南弥勒菩薩」と「弥勒菩薩堂」が祀られていますので、古来より山伏や修験者が山中で修行を行い弥勒菩薩を信仰していたと言えるのかと思います。



不思議なことに、境内だったと思われる場所には「上杉神社」という上杉謙信を祀る簡素な神社があり、「上杉大明神」の扁額が掛かっています。
「上杉神社」は江戸期享保の時代に勧請されたといい、祭祀を依頼したのは若狭小浜藩士だったとされていますので、何とも不思議な神社です。



二合目を過ぎると広いススキ原があります。奥にある山は徳蔵山といい薬草が多く、かつては絶好の草刈り場だったといいます。
伊吹山には平安の昔、「伊吹童子」という酒呑童子につながる鬼の話や、その父である伊吹弥三郎にまつわる伝承が残り、この草原は伊吹弥三郎が鞠を蹴った場所だとされている。
山には鬼や山之神、あるいは悪しきものの伝承が伝わることが多いが、それだけ山を霊的なものとして捉え、崇敬と畏れを感じていたということでしょうか。



五合目が近づいて来ると、周囲の景色は一変します。
ここから先は九十九折の急登となりますが、この日はよほど運が良かったのか、年間300日以上雲に包まれるという伊吹山にほぼ雲がなく青空が広がっている。



そして五合目に到着。
ここは標高880m、山頂まで2.4㌔の所です。
山頂までの登りはコースタイム通りに登りましたが、実際は次々と後続者に抜かれていく。みなさん健脚揃いです。



六合目の手前には避難小屋があり、その先には登山者が点々と連なっています。
ここから急登と石灰岩がゴロゴロとした道が続き下山者もいるので、若干渋滞してきます。



八合目の辺りまでくると西方向に「行者岩」が見えてきます。
「行者岩」は平等岩ともいわれる伊吹山修験の霊場とされ、円空が伊吹山で修行をした際に「行者岩(平等岩)」で修行をしたことを残しているといいます。



急登の九十九折の登山道をさらに登ると「手掛岩」が見えてくる。
かつて伊吹山は修験の山で女性の入山が許されておらず、出家した夫を求めて山へ登った女性が七分まで来た時、強風が巻き起こり女性を岩から引き離して谷へ投げ落としたという。
最後まで岩にしがみついた女性の指跡がいつまでも岩に残っているとされ、ここから上は神の領域であることを示しているという。



さて、ここから先は伊吹山からの絶景が望めるエリアに入ります。
伊吹山の登山道は土だけの部分がほとんどなく、石がゴロゴロとした歩きにくい道ばかりですが、この辺りからはカレンフェルトという石灰岩が形成する山の度合いが強くなってきます。



早くから稜線は見えているものの、中々山頂に届きません。
右の崖の部分に人影が見えますが、あそこは西遊歩道の展望台。景色は抜群だったものの風が強く吹き、肌寒く感じてしまう場所でした。

伊吹山は若狭湾と伊勢湾に挟まれる本州では最も狭い場所で、日本海からの雪雲に吹き付けられる豪雪地帯であり、世界の山岳史上最高の積雪量が記録されている山です。
初冠雪も平年値で11月20日、2021年は11月4日となっていますから、初冠雪直前の登山となりましたが、登山した日は地上の気温が20℃超えでしたから、特別な天候に恵まれたようです。



山頂には日本武尊の像が祀られており、この前には参拝と記念撮影の方が列を成していました。
雪が降る前の晴天の日に登山した方やドライブウエイで上がってきた人を含めて伊吹山を訪れた方がそれほど多かったということなのでしょう。



山頂標識の前にも記念撮影の方が並び、次の番の方に写真をお願いしている方が多く、和気あいあいムードです。
独りで写真を撮ってもらうのも気恥しいので、人が下りた一瞬の間に山頂表示を撮っておきました。



伊吹山の一等三角点は山頂標識のある場所とは少し離れた場所にあり、三角点まで来る人は日本武尊や山頂標識にいた人よりかなり少ない。
山頂が広々としている山へは行ったことがないのですが、伊吹山の山頂部はかなり広く宿泊や食事のできる売店のエリア以外にも一回りすれば山頂散歩といっていいような広さがあります。





伊吹山の山頂の広いスペースには「日本武尊の像」「白イノシシの像」「一等三角点」「大乗峰 伊吹山寺 覚心堂」、伊吹山測候所で勤務中の遭難で亡くなられた方々の「殉難之碑」が点在している。
中でも伊吹山の弥勒信仰を表すものとして「南弥勒堂」と伊吹山山岳信仰の中心的な御堂とされる「弥勒堂」が別々の場所にお祀りされています。

「南弥勒堂」は明治45年に弥勒石仏と石室が建設されて開眼供養されたものだといい、尾張国御嶽照王教の方々によって建設されたという。
名称から御嶽山の修験道や山岳信仰と関係がありそうであり、同じく修験道や山岳信仰の山である伊吹山に奉納したものかと推測してみる。



「弥勒堂」の方は18世紀前半の絵図にも描かれているといい、かつてはここに多くの石塔や石仏が祀られていたようです。
山麓上野地区(登山口のある集落)では弥勒堂の前で松明を焚く「千束焚」を行って雷踊りを踊って降雨を祈ったといい、古くより雨乞いの場として山頂は「弥勒の庭」としていたといいます。



伊吹山の山頂には伊吹山一之宮ともされることがある「大乗峰 伊吹山寺 覚心堂」という薬師如来を本尊として祀る天台宗寺院があります。
伊吹山は古代より修験の山で、平安期には比叡・比良・愛宕・神峯-金峰・葛城(高野)と並んで本朝七高山として信仰されていたといいます。

明治維新後の修験道廃止によって衰退し、山頂の覚心堂が復興したのは平成の世になってからのこと。
伊吹山では「伊吹回峰行」や「常行三昧」などの修行が復活してきているそうで、総じていう「伊吹禅定」が行われていると書かれているものがある。



山頂ウォークを終えて下山に入ります。
11月中旬とは思えない暑さと好天に恵まれて、体の塩分が抜けてしまったと思うくらい汗をかき、気持ちのいい時間でした。
9合目辺りから眺める琵琶湖は、湾曲した琵琶湖のラインがはっきり認識でき、竹生島もはっきり見えますが、その先は霞んでいる。



ここで今日の反省です。
下山途中に3合目まで下った辺りからエネルギー切れで足がガクガクになってペースダウンしてしまいコースタイムを遥かにオーバー。
歩いてばっかりでろくに休憩を取らず、行動食での栄養補給やお昼ご飯を食べないまま歩き続けていたのが裏目に出ました。
大いに反省して、次からは山登りの基本行動をしっかり守って登りたいと思います。

追記:伊吹山は12月2日に初冠雪が観測されました。平年より12日遅い初冠雪だそうです。


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