原告側が逆転敗訴
2019年12月20日 朝日
「長時間労働でうつ病発症」/控訴審
長時間労働などでうつ病を発症したとして、シンクタンク「北海道二十一世紀総合研究所」(札幌市)の
40代の男性研究員=休職中=が会社などに計約9500万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が19日、札幌高裁であった。
冨田一彦裁判長は「会社側が男性のうつ病発症を予見することは困難だった」と判断。
会社側に約3500万円の支払いを命じた一審・札幌地裁判決を破棄し、原告の訴えを退けた。
一、二審判決によると、男性はリサイクル分野の調査を担当。
2005年10月の時間外労働が113時間に及び、3カ月後にうつ病を患った。
その後、札幌中央労働基準監督署から労災認定を受けた。
労災認定に基づき長時間労働とうつ病の因果関係を認めた一審判決に対し、
二審判決は、労災認定に触れず「会社側に安全配慮義務違反は認められない」と結論づけた。
その理由として、男性が業務を減らすことについて機会があったのに上司らに相談しなかったことなどを挙げた。
一審が認めた退職の強要も認めなかった。
原告側代理人の斎藤耕弁護士は「労災認定に言及がなかったのは残念。
判決の内容を精査し、今後の対応を検討したい」としている。
同社の中村栄作代表取締役は「我々の主張を認めてもらい、ありがたい判決だ」とコメントした。
(再掲)研究員うつ病「業務起因」
19.3.26 朝日
総研に3500万円賠償命令/札幌地裁
長時間労働などでうつ病を発症したなどとして、シンクタンク「北海道二十一世紀総合研究所」(札幌市)の
男性研究員(47)=休職中=が同社などに計約9500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が25日、札幌地裁であった。
井上直樹裁判官は「うつ病は業務に起因する」として、同社に約3470万円、
同社と上司に連帯して約30万円を支払うよう命じた。判決によると、男性は研究員としてリサイクル分野の調査を担当した。
2005年10月の時間外労働が113時間に及び、06年1月にうつ病を発症。
その後、札幌中央労働基準監督署から労災認定を受けた。
労災認定は、業務による心理的負荷を精神障害の主な原因と認めており、判決はこの認定について「信用性が十分認められる」と判断。
05年10月の時間外労働が同年8月の約3倍に増えたことを挙げ、「男性の業務態度だけの問題でないことは明らか」と指摘した。
また、井上裁判官は、男性が、不当な減給を受け退職を迫られたことは認定したが、「会社から復職を強要された」などの訴えは退けた。
男性は判決後に記者会見し、「(自分のように)うつ病になった社員がどういう勤務形態なら復職できるか、
会社との間で話し合いができるようにして欲しい」と話した。
同社は「判決内容を確認中で、内容を精査して対応を決めたい」としている。
〇労働契約法
第5条(労働者の安全への配慮)
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
〇ストレスチェック制度の実施状況 (概要)より
厚労省労働基準局 労働衛生課 平成29年7月26日公表
安全配慮義務が果たされていたかどうかですが、以下3つ要件がそろっている場合に、会社が安全配慮義務の履行を怠ったと判断されます。
即ち、
1.その業務により事故や疾病が発生する可能性を予見できた。(予見可能性の存在)
2.危険を予見でき、結果を回避することも可能だったにもかかわらず、その努力を怠った。(結果回避努力の不履行)
3.結果回避努力の不履行と事故・疾病の発生との間に、社会通念上相当な因果関係が認められる。(相当因果関係の存在)