中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

原告側が逆転敗訴

2019年12月23日 | 情報

原告側が逆転敗訴
2019年12月20日 朝日

「長時間労働でうつ病発症」/控訴審

長時間労働などでうつ病を発症したとして、シンクタンク「北海道二十一世紀総合研究所」(札幌市)の
40代の男性研究員=休職中=が会社などに計約9500万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が19日、札幌高裁であった。
冨田一彦裁判長は「会社側が男性のうつ病発症を予見することは困難だった」と判断。
会社側に約3500万円の支払いを命じた一審・札幌地裁判決を破棄し、原告の訴えを退けた。

一、二審判決によると、男性はリサイクル分野の調査を担当。
2005年10月の時間外労働が113時間に及び、3カ月後にうつ病を患った。
その後、札幌中央労働基準監督署から労災認定を受けた。

労災認定に基づき長時間労働とうつ病の因果関係を認めた一審判決に対し、
二審判決は、労災認定に触れず「会社側に安全配慮義務違反は認められない」と結論づけた。
その理由として、男性が業務を減らすことについて機会があったのに上司らに相談しなかったことなどを挙げた。
一審が認めた退職の強要も認めなかった。

原告側代理人の斎藤耕弁護士は「労災認定に言及がなかったのは残念。
判決の内容を精査し、今後の対応を検討したい」としている。
同社の中村栄作代表取締役は「我々の主張を認めてもらい、ありがたい判決だ」とコメントした。

(再掲)研究員うつ病「業務起因」
19.3.26 朝日

総研に3500万円賠償命令/札幌地裁

長時間労働などでうつ病を発症したなどとして、シンクタンク「北海道二十一世紀総合研究所」(札幌市)の
男性研究員(47)=休職中=が同社などに計約9500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が25日、札幌地裁であった。
井上直樹裁判官は「うつ病は業務に起因する」として、同社に約3470万円、
同社と上司に連帯して約30万円を支払うよう命じた。判決によると、男性は研究員としてリサイクル分野の調査を担当した。
2005年10月の時間外労働が113時間に及び、06年1月にうつ病を発症。
その後、札幌中央労働基準監督署から労災認定を受けた。
労災認定は、業務による心理的負荷を精神障害の主な原因と認めており、判決はこの認定について「信用性が十分認められる」と判断。
05年10月の時間外労働が同年8月の約3倍に増えたことを挙げ、「男性の業務態度だけの問題でないことは明らか」と指摘した。
また、井上裁判官は、男性が、不当な減給を受け退職を迫られたことは認定したが、「会社から復職を強要された」などの訴えは退けた。
男性は判決後に記者会見し、「(自分のように)うつ病になった社員がどういう勤務形態なら復職できるか、
会社との間で話し合いができるようにして欲しい」と話した。
同社は「判決内容を確認中で、内容を精査して対応を決めたい」としている。

〇労働契約法
第5条(労働者の安全への配慮
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

〇ストレスチェック制度の実施状況 (概要)より
厚労省労働基準局 労働衛生課 平成29年7月26日公表

安全配慮義務が果たされていたかどうかですが、以下3つ要件がそろっている場合に、会社が安全配慮義務の履行を怠ったと判断されます。
即ち、
1.その業務により事故や疾病が発生する可能性を予見できた。(予見可能性の存在)
2.危険を予見でき、結果を回避することも可能だったにもかかわらず、その努力を怠った。(結果回避努力の不履行)
3.結果回避努力の不履行と事故・疾病の発生との間に、社会通念上相当な因果関係が認められる。(相当因果関係の存在)

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私見「リハビリ出社」

2019年12月20日 | 情報

ある医療専門職が著わした資料によると、「世間では「リハビリ」という言葉が日常的に使われています。
一部の会社では「リハビリ出社」を行っているようです。
各社の考え方の違いがあるとは思いますが、多くの医療関係者は会社内でリハビリ出社を行うことには懐疑的です。
なぜならリハビリは医療行為であり、医療関係者でない一般人が行って効果があるとは思わないこと、
また不用意に社内でリハビリを行った結果、病状が悪化したときには会社は相応の責任を負わなければならないのですが、
そこまで十分に検討して「リハビリ出社」を行っている会社は数少ないこと、などが理由です。(以下略)」

疑問を覚えましたので、調べてみました。
すると、WHO(世界保健機構)は、1981 年に「リハビリテーションは能力低下やその状態を改善し、
障害者の社会的統合を達成するためのあらゆる手段を含んでいる。
さらにリハビリテーションは障害者が環境に適応するための訓練をおこなうばかりでなく、
障害者の社会的統合を促すために全体としての環境や社会に手を加えることも目的とする。
そして、障害者自身、家族、彼らが住んでいる地域社会が、
リハビリテーションに関係するサービスの計画や実行に関わり合わなければならない。」と定義しました。

厚生労働省の平成22年度障害者総合福祉推進事業「知的障害者・精神障害者等の地域生活を目指した
日常生活のスキルアップのための支援の標準化に関する調査と支援モデル事例集作成事業」報告によると、
1960年代にWHOが発表したリハビリテーションの定義によっても、
また、リハビリテーションの世界的な機関である「国際リハビリテーション協会(Rehabilitation International ; RI)」において、
1960年代に医学委員会、職業委員会、社会委員会、教育委員会が常置委員会として設置されていたことからも、
リハビリテーションの主要分野として、①医学的リハビリテーション、②職業リハビリテーション、
③教育リハビリテーション、④社会リハビリテーションの4分野が、1960年代に確立していたことが理解できる。」としてます。

つまり、「リハビリは医療行為」であるものの、リハビリテーションの主要4分野のひとつ
「医学的リハビリテーション」であると理解するのが正しいようです。

あまり言葉尻を捕らえるような議論は、よろしくないのですが、小職のような医療専門職ではないものが、
リハビリテーションについて言及できなくなるのは問題であると考え、あえて投稿いたしました。

 

 

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作業環境

2019年12月19日 | 情報

事務所における作業環境は、事務所衛生基準規則により、主に以下のような基準が定められています。
事業場内にて、1日あたり8時間は労働するわけですから、その事業場の作業環境を健全に保つことは、精神衛生面でも重要です。

〇気積 10㎥/人以上

第2条  事業者は、労働者を常時就業させる室(以下「室」という。)の気積を、
設備の占める容積及び床面から四メートルをこえる高さにある空間を除き、
労働者一人について、十立方メートル以上としなければならない。

〇換気 20分の1以上

第3条  事業者は、室においては、窓その他の開口部の直接外気に向つて開放することができる部分の面積が、
常時床面積の二十分の一以上になるようにしなければならない。
ただし、換気が十分に行なわれる性能を有する設備を設けたときは、この限りでない。
2  事業者は、室における一酸化炭素及び二酸化炭素の含有率
(一気圧、温度二十五度とした場合の空気中に占める当該ガスの容積の割合をいう。以下同じ。)を、
それぞれ百万分の五十以下及び百万分の五千以下としなければならない。

〇室内空気の基準 (原則2月以内に1回定期的に測定する)
・気流 0.5m/秒以下
・室温 17℃以上28℃以下
・相対湿度 40%以上70%以下

第7条  事業者は、労働安全衛生法施行令(昭和四十七年政令第三百十八号)第二十一条第五号の室について、
二月以内ごとに一回、定期に、次の事項を測定しなければならない。

ただし、当該測定を行おうとする日の属する年の前年一年間において、
当該室の気温が十七度以上二十八度以下及び相対湿度が四十パーセント以上七十パーセント以下である状況が継続し、
かつ、当該測定を行おうとする日の属する一年間において、引き続き当該状況が継続しないおそれがない場合には、
第二号及び第三号に掲げる事項については、三月から五月までの期間又は九月から十一月までの期間、
六月から八月までの期間及び十二月から二月までの期間ごとに一回の測定とすることができる。
一  一酸化炭素及び二酸化炭素の含有率
二  室温及び外気温
三  相対湿度

〇照度
・精密な作業 300ルクス以上
・普通の作業 150ルクス以上
・粗な作業   70ルクス以上

第10条  事業者は、室の作業面の照度を、次の表の上欄に掲げる作業の区分に応じて、
同表の下欄に掲げる基準に適合させなければならない。
ただし、感光材料の取扱い等特殊な作業を行なう室については、この限りでない。

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8時前に出社する社員は5割

2019年12月18日 | 情報

小職は、インターバル勤務に加えて、朝方勤務を推奨しています。
以下、好事例の紹介です。

8時前に出社する社員は5割、“朝の伊藤忠”が目指す姿
11/15(金) 日刊工業新聞

「三方よし」の精神に

 効率性の追求を狙いに原則として20時以降の残業を原則禁止、早朝勤務へシフトを促す「朝型勤務制度」を導入する伊藤忠商事。
意識改革に続き、ペーパレス化の推進や業務プロセスの改善など改革を進めてきた。
足元では人材活性化に向けた取り組みを通じ、付加価値の高い業務へのシフトを目指している。

「業務を効率化することで、お客さまへ効果的に対応することが狙いだった」―。
西川大輔人事・総務部企画統轄室長は、2013年に導入した朝型勤務制度を振り返る。

11年に発生した東日本大震災。震災対応で顧客が早朝から活動している中、
伊藤忠商事ではフレックス(時差勤務)制度を適用して出社し、朝一番に連絡が十分にとれなかったケースが生じた。
これを解消し、顧客対応を徹底することを目的に20時以降の残業を原則禁止し、朝にシフトする「朝型勤務制度」は導入された。

早朝勤務のインセンティブ(意欲刺激)として深夜勤務同様の割増賃金を支給し、8時前に始業する社員に軽食を無料で配布する。
制度導入前の12年度には20時以降に退社する社員が全体の約30%を占めていたが、
現状は約5%まで減少。8時前に出社する社員は、導入前の約2割から現在は約5割へ達しようとしている。
あわせて「健康経営も重要施策として向き合っている」(西川室長)。具体策の一つががんとの両立支援に向けた体制の構築だ。

17年、ある社員(故人)から岡藤正広社長(現会長)に宛てられたメールには、
自身ががんと闘病している中で周囲に支えられ、会社に対して感謝する内容だった。

同年8月、同社では、がんとの両立支援施策を構築。早期発見率を高めるため、40歳以上の社員にがん特化検診を義務付け、
予防や治療として民間企業では初めて国立がん研究センターと提携した。
がんと闘っている社員に対しては“がんとの共生”を評価指標に反映させた。
支えとなる支援体制を作っていくことで、組織力をさらに高めていく狙いがある。

働き方改革を推し進めるために、全社統合データシステムやRPA(ソフトウエアロボットによる業務自動化)などを導入。
定型業務を自動化し、人為的なミスの防止を図りつつ、創出した時間は営業などにシフトさせていく。

目下のテーマは人材活性化。
10月から東京本社の社員約2500人を対象に米ビアトランスポーテーション(ニューヨーク州)の技術を活用した
オンデマンド(注文対応)型乗り合いサービスの運用を開始。
勤務時間に活用し、社員の移動時間短縮による効率化やコストの削減を図る。
さらに21年に東京本社の仮移転を見据え、西川室長は「既存文書の電子化を一段と進めたい」と話す。

健康で効率よく働き、しっかり稼ぐ。
働き方改革は伊藤忠の企業理念である売り手よし、買い手よし、世間よしの「三方よし」の精神にもつながっているとも言えそうだ。

(参考)伊藤忠商事の取組

https://www.itochu.co.jp/ja/csr/employee/safety/working_style/index.html

(参考)日本マイクロソフト、週休3日で「生産性向上」 試験結果を発表

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191105-50297893-bbc-int

 日本マイクロソフトはこのほど、週休3日制を試験的に導入したところ、労働生産性が40%上がったとの結果を発表した。

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アンケート結果

2019年12月17日 | 情報

あるうつ病休職者の職場復帰支援を考えるセミナー(19.10実施)では、
企業関係者等に事前アンケートを実施しました。
その結果の一部が公開されましたので、以下に紹介します。
定量的な統計データではありませんが、参考にしてください。
余計なことですが、ハラハラするような質問・回答が気になります
反対に、法令を遵守した職場復帰支援対策は、難しい課題であるということです。

Q.1 今回のフォーラムで取り上げて欲しい話題(複数回答、4つまで)
・主治医との連携(16%)
・職場復帰支援機関の使い方(16%)
・再発防止(16%)
・産業医の役割(15%)

Q.2 産業医と精神科主治医との復職判断が分かれたとき主にどうしていますか
・産業医の判断を優先(28%)
・合議で判断する(18%)
・主治医の判断を優先(14%)
・知らない(12%)「実例なし、産業医不在、産業医に復職判断をしてもらっていない等」
・分かれたことがない(11%)
・人事責任者が判断する(8%)

Q.3 産業医と人事の復職判断が分かれたとき主にどうしていますか
・合議で判断する(27%)
・産業医の判断を優先(21%)
・分かれたことがない(14%)
・知らない(12%)「実例なし、ケースごとに違う、産業医に意見を聴いていない等」
・人事の判断を優先(10%)

Q.4 より的確な復職判断のためにどのような取り組みがより必要だと思いますか(複数回答、2つまで)
・産業医と主治医の連携強化(32%)
・産業医と人事の連携強化(27%)
・社外職場復帰支援機関の積極的活用(20%)
・復職手続きの明確化と周知(19%)

(参考)主治医と産業医の連携に関する有効な手法の提案に関する研究
(労災疾病臨床研究事業費補助金.総括研究報告書。2017.3)より引用

【研究1】連携の実態に関する事例調査
産業医と主治医の連携の効果と、非連携の不利益―(連携事例調査の双方向からの分析)
  19,810 名の主治医に調査票を送付した。
282 名から回答を得て、連携に対する意識やコスト に関する解析を行った。
またこのうち 150 名から提供のあった 222 事例を解析した。
回答主治医の属性は、男性 186 名・女性 96 名。
平均年齢 49.5 歳。就業形態は、開業医 162 名、勤務医 116 名。医師としての経験年数は平均 26.6 年だった。
産業医経験ありは 118 名、なしは 164 名。経験ありのうち、産業医先の従業員を自身の診療所 等へ紹介し、
主治医としても担当することが「よくある」は 16 名、「ときどきある」は 48 名、「全くない」は 50 名だった。
産業医との連携に対する主治医の意識ならびに実態を表1に示す。
約 9 割の主治医が、産業医との連携は、疾病の早期発見・治療の点で、
また治療を続けながら働く患者の利益になる点

表1 産業医との連携に対する意識と実態

1)産業医との連携は、疾病 の早期発見・治療の観点で 患者の利益になるか?
回答数   非常にそう思う 148(53%)    ややそう思う 108(39%)    あまりそう思わない 22(8%)   
全くそう思わない 1(0.4%)

2)産業医との連携は、治療 を続けながら働く患者の 利益になるか?
回答数  非常にそう思う 157(56%)    ややそう思う 111(40%)    あまりそう思わない 10(4%)   
全くそう思わない 1(0.4%)

3)産業医との連携は? 
回答数    いつもする 8(3%)    たいていする 27(10%)    まれにする 120(43%)    全くしない 21(8%)   
対応したことがない 102(37%)

4)連携や患者の就労支援 に診療報酬が発生すべきか
回答数    非常にそう思う 89(32%)    ややそう思う 141(51%)    あまりそう思わない 40(14%)   
全くそう思わない 7(3%)

5)診療報酬が発生すれば、 現状よりも多く連携するか 
回答数    非常にそう思う 60(22%)    ややそう思う 124(45%)    あまりそう思わない 76(27%)   
全くそう思わない 17(6%)

6)連携の妥当な費用は? (企業等の負担と仮定)  金額 (244 名回答)   
産業医への情報提供    (文書、1回あたり)平均 3475 円 (200-10,000)   
産業医や職場関係者    との面談(15 分当り)平均 3462 円 (250-15000)

7)実際の連携時の処理は 回答数    文書料 56(27%)    診療情報提供料 61(30%)    費用発生なし 89(43%)

8)実際の連携時の負担は 回答数    本人 59(50%)    患者の勤務先 9(8%)    不明 49(42%

 

 

 

 

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