中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

質問に回答します⑨

2018年02月23日 | 情報

Q:弊社は従業員50人未満の会社です。ですからストレスチェックも努力義務です。
それでも、メンタルヘルス対策は必要でしょうか。また、何から始めればよいのでしょうか?

A:例え従業員が50人未満の小規模事業場であっても、メンタルヘルス対策は必要であり、重要な施策です。
「人間3人集まれば派閥ができる」という例えがあるように、メンタルヘルス対策は、人間関係の問題であり、
人間が主人公である職場環境を改善するための最も重要な対策と云っても差し支えないでしょう。

中小規模の企業においては、経営者に全権限が集中し、経営者が独自の経営思想で、
ほぼ独断で企業経営を行っているのが実態です。
従って、ボトムアップで経営判断を仰ぐには、経営トップを納得させるに足りるストーリーがなければなりません。
わかりやすく言えば、メンタルヘルス対策を実行すれば、「会社の売上は伸びる、利益は拡大する、
会社は、確実に儲かる」という論理展開が必要です。
それには、最近持て囃されている「健康経営」とか、「アブセンティーズムとプレゼンティズム」とかの理論を駆使して、
メンタルヘルス対策が企業業績の向上に寄与することを、経営トップに理解してもらうことから始めることが必要です。
これをやらずに、担当部門が「あがいて」みせても、経営トップの顰蹙を買うのが精々です。

注:欠席を意味するアブセンティズム(absenteeism)は、欠勤や休職、あるいは遅刻早退など、職場にいることができず、
業務に就けない状態を意味し、従来はこの予防と対策がメインに行われていました。
一方で、プレゼンティズム(Presenteeism)とは、「出勤しているにも関わらず、心身の健康上の問題により、
充分にパフォーマンスが上がらない状態」を意味します。
近年、生産性向上や産業衛生の分野で話題となっており、職域の業績に与える影響は、
アブセンティズムよりも、プレゼンティズムの方が大きいことが明らかになっています。

経営トップの理解に成功したならば、次に行うことは、経営トップが、
全社員に向けてメンタルヘルス対策に取り組むことを宣言し、
法令を遵守するとともに働きやすい職場環境づくりを推進することを約束します。
そして、人事労務スタッフがリーダーとなって、なぜメンタルヘルス対策が必要なのか、
メンタルヘルス対策とは、具体的にどういうことなのか、をテーマにして社内の学習会を開催しましょう。
学習会には、当然に経営トップも参加し、社内の取り組みの盛り上がりを促進しましょう。

なお、学習材料は、厚労省のHPにある「こころの耳」等を利用しましょう。
http://kokoro.mhlw.go.jp/
外部講師や外部機関を利用することも有力ですが、習うより、自ら学び、自らで議論することのほうが、
企業の体力向上にははるかに有益でしょう。

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