中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

ホワイトカラー・エグゼンプション

2013年09月04日 | 情報
既に、欧米先進諸国では導入済みの考え方ですが、果たして、日本固有の労働慣行や国民性になじむ制度なのか、
慎重な検討が必要でしょう。これにより、今以上にメンタルヘルス不全者が増えるようでは困ります。

「労働時間規制除外」大企業の課長級以上想定 政府検討
産経新聞 8月15日(木)

政府が、一定水準以上の収入がある会社員を対象に週40時間が上限といった労働時間の規制を適用しない
「ホワイトカラー・エグゼンプション(労働時間の規制除外制度)」の実験的な導入を検討していることが14日、分かった。
年収800万円を超えるような課長級以上の社員を想定しており、一部の大企業で特例的に認める方針。
経済産業省によると、トヨタ自動車や三菱重工業など数社が導入を検討しているといい、柔軟な働き方の実現で生産性向上を狙う。
同制度の適用を受ける社員に対し、企業は一定の年俸と成果に応じた給与を支払う。
労働基準法で定められている時間外労働に対する残業代が支払われないほか、休日や深夜勤務での割り増しなどもなくなる。
その代わり、繁忙期に休日返上で集中的に働き、閑散期に休みをまとめてとるなど、
自分の判断で働き方を選べる。在宅勤務の活用が進むことも見込まれる。
政府は、今秋の臨時国会に提出予定の「産業競争力強化法案」に、
先進的な取り組みを行う企業に対して規制緩和を特例的に認める制度「企業実証特例制度」の創設を盛り込み、
それを活用して実験導入する方針だ。

ホワイトカラー・エグゼンプション White Collar Exemption
経営用語の基礎知識(第3版)より
ホワイトカラー労働者に対する労働時間規制の適用を除外すること。
欧米諸国では導入されているが、日本では導入の是非を巡る議論が続けられている。
ホワイトカラー・エグゼンプションは、2005年6月に日本経済団体連合会(経団連)により提言が行われた、
労働時間規制の適用除外を可能にする制度です。
これまでの労働者保護の大きな柱である労働時間規制を除外可能にする制度のため、導入の是非を巡った議論が続けられています。
現在、アメリカ、ドイツ、フランス、イギリスでは導入されていますが、日本ではまだ導入されていません。
導入が提言された背景
本制度の導入が提言された背景には、産業構造の変化により、労働時間と成果が比例しない業務に従事する労働者の増加があげられます。
労働時間と成果が比例しない業務では、短時間で同じ成果を上げた社員に対する報酬が少なくなるため、不公平感が生じつつあります。
また、企業にとっても、達成すべき成果と労働時間が比例しないため、人員配置を計画することがより難しくなっています。
また、そのような産業構造の変化により、より短時間で成果を上げ、自由な働き方の実現を目指す労働者も見られるようになりました。
現在、業務の遂行に裁量を持っている労働者に対しては、裁量労働制を適用することが可能ですが、
それでも労働時間の規制は残っており、完全に自由な働き方を実現することはできません。
このような背景から、賃金計算のための労働時間の規制を除外する制度が提言されるようになりました。

労働時間以外も考慮した制度設計が必要
現在の議論では、労働時間規制の適用除外の是非のみが議論されていますが、本来は規制の適用除外だけではなく、
労働者保護などの観点も踏まえた制度設計が必要です。
例えば、労働時間規制の本来の趣旨である「労働者保護」の観点から、業務のための拘束時間の規制は引き続き必要であり、
その規制も合わせて導入する必要があります。
また、労働時間に代わる、納得性の高い評価の仕組みが整備・運用されていない状況では、
成果に対する報酬が十分に支払われず、不公平感を増す結果ともなりかねません。


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