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2020年12月に見たい展覧会【眠り/舟越桂/美の交流が生んだ6つの物語】

今年も残すところあと1ヶ月となりました。全国的に新型コロナウイルスの感染が再び拡大し、一部地域では外出や往来の自粛が求められていますが、関東の大半の美術館は感染症対策を行った上で開館しています。予約制を導入した美術館も珍しくなくなりました。

1年の締めくくりの月にはどのような展覧会が開催されているのでしょうか。12月に気になる展覧会をリストアップしてみました。

展覧会

・「根津美術館の国宝・重要文化財」 根津美術館(11/14~12/20)
・「STARS展:現代美術のスターたち―日本から世界へ」 森美術館(7/31~2021/1/3)
・「光―呼吸 時をすくう5人」 原美術館(9/19~2021/1/11)
・「だれも知らないレオ・レオーニ展」 板橋区立美術館(10/24~2021/1/11)
・「上田薫」 埼玉県立近代美術館(11/14~2021/1/11)
・「生命の庭―8人の現代作家が見つけた小宇宙」 東京都庭園美術館(10/17~2021/1/12)
・「1894 Visions ルドン、ロートレック展」 三菱一号館美術館(10/24~2021/1/17)
・「大山エンリコイサム展 夜光雲」 神奈川県民ホールギャラリー(12/14~2021/1/23)
・「本城直季 (un)real utopia」 市原湖畔美術館(11/7~2021/1/24)
・「東郷青児 蔵出しコレクション~異国の旅と記憶~」 SOMPO美術館(11/11~2021/1/24)
・「芳年 激動の時代を生きた鬼才浮世絵師」 うらわ美術館(11/18~2021/1/24)
・「ベルナール・ビュフェ回顧展 私が生きた時代」 Bunkamuraザ・ミュージアム(11/21~2021/1/24)
・「東山魁夷と四季の日本画」 山種美術館(11/21~2021/1/24)
・「138億光年 宇宙の旅」 東京都写真美術館(11/21~2021/1/24)
・「国宝の名刀 日向正宗と武将の美」 三井記念美術館(11/21~2021/1/27)
・「生きている東京」 ワタリウム美術館(9/5~2021/1/31)
・「舟越桂 私の中にある泉」 渋谷区立松濤美術館(12/5~2021/1/31)
・「河鍋暁斎の底力」 東京ステーションギャラリー(11/28~2021/2/7)
・「桑久保徹 A Calendar for Painters without Time Sense. 12/12」 茅ヶ崎市美術館(12/12~2021/2/7)
・「MOTアニュアル2020 透明な力たち/石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか」 東京都現代美術館(11/14~2021/2/14)
・「眠り展:アートと生きること」 東京国立近代美術館(11/25~2021/2/23)
・「美を結ぶ。美をひらく。美の交流が生んだ6つの物語」 サントリー美術館(12/16~2021/2/28)
・「米谷健+ジュリア展 だから私は救われたい」 角川武蔵野ミュージアム(11/6~2021/3/7)
・「Connections―海を越える憧れ、日本とフランスの150年」 ポーラ美術館(11/14~2021/4/4)
・「国立ベルリン・エジプト博物館所蔵 古代エジプト展 天地創造の神話」 江戸東京博物館(11/21~2021/4/4)

ギャラリー

・「第14回 shiseido art egg 藤田クレア展」 資生堂ギャラリー(11/27~12/20)
・「Creation Project 2020 160人のクリエイターと大垣の職人がつくるヒノキ枡」 クリエイションギャラリーG8(12/1~12/25)
・「内藤礼」 タカ・イシイギャラリー(11/27~12/26)
・「内海 聖史 : squid」 アートフロントギャラリー(11/27~12/27)
・「榎忠 RPM-1200」 ANOMALY(12/5~2021/1/16)
・「工藤麻紀子 空気に生まれかわる」 小山登美夫ギャラリー(12/11~2021/1/16)
・「石岡瑛子 グラフィックデザインはサバイブできるか(前期:広告・キャンペーン)」 ギンザ・グラフィック・ギャラリー(12/4~2021/1/23)
・「ダグ・エイケン New Ocean:thaw」 エスパス ルイ・ヴィトン東京(11/13~2021/2/7)

まずは人間が生きるために欠かせない「眠り」をテーマにした展覧会です。東京国立近代美術館にて「眠り展:アートと生きること」が開かれています。



「眠り展:アートと生きること」@東京国立近代美術館(11/25~2021/2/23)

これはゴヤを案内役に、ルーベンスやエルンスト、それに森村泰昌や塩田千春などの作品を「眠りのかたち」から読み解くもので、国内の6つの国立美術館のコレクションから33作家、約120点の作品が展示されます。


微睡みを文字に表したようなチラシデザインからして個性的ですが、トラフ建築設計事務所の会場構成なども見どころとなるかもしれません。なお本展は「陰影礼讃」(2010年)、「No Museum,No Life?ーこれからの美術館事典」(2015年)に続く、国立美術館の合同企画展の第3弾でもあります。

続いて現代の彫刻の展覧会です。渋谷区立松涛美術館にて「舟越桂 私の中にある泉」が行われます。



「舟越桂 私の中にある泉」@渋谷区立松濤美術館(12/5~2021/1/31)

1951年に生まれた舟越桂は、大学院在学中に聖母子像の制作依頼を受けたことを切っ掛けに木彫を作りはじめ、主に楠の人物彫像で高く評価されてきました。


その舟越の1980年代以降の木彫を中心にしたのが「私の中にある泉」と題した個展で、ドローイングや版画の他、制作の際のメモや自作のおもちゃなどを通して、作家の内面を探っていきます。舟越桂の作品は近年、例えば東京都美術館の「木々の対話」(2016年)などでもまとめて公開されましたが、都内の美術館の個展としては久々の機会ではないでしょうか。

続いて定評のあるリニューアル・オープン記念展の第3弾です。サントリー美術館にて「美を結ぶ。美をひらく。美の交流が生んだ6つの物語」が開催されます。



「美を結ぶ。美をひらく。美の交流が生んだ6つの物語」@サントリー美術館(12/16~2021/2/28)


これは古伊万里、鍋島、紅型、和ガラス、浮世絵、ガレの6つのコレクションを公開するもので、洋の東西の「交流」に着目し、互いの文化との影響関係などを紐解いていきます。第1弾、第2弾のリニューアル展と比べると工芸が多くなることが予想されますが、立体展示にも定評のある同館だけに、また魅惑的な内容となりそうです。

個人的に11月は色々と用事が重なり、思ったように展覧会を見て回ることができませんでした。また夏から秋にかけて遠方の美術館などを幾つか回りましたが、この冬は近場の展示を中心に見ていくつもりです。

それでは今月もどうぞ宜しくお願いします。
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2020年11月に見たい展覧会【ベルナール・ビュフェ/琳派と印象派/トライアローグ】

朝晩を中心に冷え込むようになり、関東では紅葉の季節を迎えようとしています。

11月も興味深い展覧会が目白押しです。まずは気になる展覧会をリストアップしてみました。

展覧会

・「工藝2020―自然と美のかたち」 東京国立博物館表慶館(9/21~11/15)
・「日本の美術を貫く 炎の筆《線》」 府中市美術館(9/19~11/23)
・「生誕100年 石元泰博写真展 生命体としての都市」 東京都写真美術館(9/29~11/23)
・「後藤克芳 ニューヨークだより」 渋谷区立松濤美術館(10/3~11/23)
・「ふたつのまどか―コレクション×5人の作家たち」 DIC川村記念美術館(6/16~11/29)
・「国立公園―その自然には、物語がある」 国立科学博物館(8/25~11/29)
・「式場隆三郎 腦室反射鏡」 練馬区立美術館(10/11~12/6)
・「性差(ジェンダー)の日本史」 国立歴史民俗博物館(10/6~12/6)
・「生誕100年 石元泰博写真展 伝統と近代」 東京オペラシティアートギャラリー(10/10~12/20)
・「根津美術館の国宝・重要文化財」 根津美術館(11/14~12/20)
・「M meets M 村野藤吾展 槇文彦展」 BankART KAIKO / BankART Temporary(10/30〜12/27)
・「STARS展:現代美術のスターたち―日本から世界へ」 森美術館(7/31~2021/1/3)
・「光―呼吸 時をすくう5人」 原美術館(9/19~2021/1/11)
・「だれも知らないレオ・レオーニ展」 板橋区立美術館(10/24~2021/1/11)
・「上田薫」 埼玉県立近代美術館(11/14~2021/1/11)
・「生命の庭―8人の現代作家が見つけた小宇宙」 東京都庭園美術館(10/17~2021/1/12)
・「1894 Visions ルドン、ロートレック展」 三菱一号館美術館(10/24~2021/1/17)
・「本城直季 (un)real utopia」 市原湖畔美術館(11/7~2021/1/24)
・「東郷青児 蔵出しコレクション〜異国の旅と記憶〜」 SOMPO美術館(11/11〜2021/1/24)
・「琳派と印象派 東⻄都市文化が生んだ美術」 アーティゾン美術館(11/14~2021/1/24)
・「ベルナール・ビュフェ回顧展 私が生きた時代」 Bunkamuraザ・ミュージアム(11/21~2021/1/24)
・「東山魁夷と四季の日本画」 山種美術館(11/21~2021/1/24)
・「138億光年 宇宙の旅」 東京都写真美術館(11/21〜2021/1/24)
・「国宝の名刀 日向正宗と武将の美」 三井記念美術館(11/21~2021/1/27)
・「生きている東京」 ワタリウム美術館(9/5~2021/1/31)
・「さかざきちはるの本づくり展 手のひらサイズの大冒険」 市川市文学ミュージアム(11/7~2021/1/31)
・「MOTアニュアル2020 透明な力たち/石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか」 東京都現代美術館(11/14~2021/2/14)
・「トライアローグ:横浜美術館・愛知県美術館・富山県美術館 20世紀西洋美術コレクション」 横浜美術館(11/14~2021/2/28)
・「国立ベルリン・エジプト博物館所蔵 古代エジプト展 天地創造の神話」 江戸東京博物館(11/21~2021/4/4)

ギャラリー

・「ポーラ ミュージアム アネックス展2020 後期」 ポーラ ミュージアム アネックス(10/15~11/15)
・「フィリップ・ワイズベッカーが見た日本 大工道具、たてもの、日常品」 ギャラリーA4(10/2~11/20)
・「小西紀行 内なる基準」 ANOMALY(10/24〜11/21)
・「第14回 shiseido art egg 橋本晶子展」 資生堂ギャラリー(10/30~11/22)
・「福永大介 はたらきびと」 小山登美夫ギャラリー(11/7〜12/5)
・「宮島達男 Uncertain」 SCAI THE BATHHOUSE(11/7〜12/12)
・「渋谷敦志写真展:GO TO THE PEOPLES 人びとのただ中へ」 キヤノンギャラリー S(11/5~12/14)
・「内藤礼」 タカ・イシイギャラリー(11/27〜12/26)
・「内海 聖史 : squid」 アートフロントギャラリー(11/27〜12/27)
・「名和晃平 ORACLE」 GYRE GALLERY(10/23~2021/1/31)
・「ダグ・エイケン New Ocean:thaw」 エスパス ルイ・ヴィトン東京(11/13〜2021/2/7)

まずは西洋絵画です。20世紀後半のフランスの画家、ベルナール・ビュフェの回顧展が、Bunkamuraザ・ミュージアムにて開催されます。



「ベルナール・ビュフェ回顧展 私が生きた時代」@Bunkamuraザ・ミュージアム(11/21~2021/1/24)

これは近年、パリ市立近代美術館で回顧展が行われるなど、再評価の進むビュフェの画業を年代を追いながら探るもので、ベルナール・ビュフェ美術館の油彩を中心とした80点の作品が公開されます。


なおベルナール・ビュフェ美術館とは、静岡県のクレマチスの丘の中に位置していて、世界でも随一の画家のコレクションで知られています。私も二、三度出かけたことがありますが、特に大展示室での「キリストの受難」などの見応えのある力作揃いばかりで、もはや国内でのビュフェの聖地と思えるほどでした。今回はビュフェの作品を渋谷でまとめて楽しめる絶好の機会となりそうです。

洋の東西の美術の意外な接点を探る展覧会となるかもしれません。アーティゾン美術館にて「琳派と印象派 東⻄都市文化が生んだ美術」が開かれます。



「琳派と印象派 東⻄都市文化が生んだ美術」@アーティゾン美術館(11/14~2021/1/24)

17世紀の俵屋宗達から18世紀の尾形光琳、そして19世紀に酒井抱一や鈴木其一へと連なる琳派は、いわば京都の町人から江戸へと変奏を遂げた都市の美術でした。一方で印象派は19世紀後半のフランス・パリを中心に、マネやモネ、ルノワールやセザンヌらにより、主に日常的な経験の印象や市民生活を表した新しい芸術でした。


そうした日本とヨーロッパの東西の都市文化の生んだ作品を通し、互いの美意識を比較しようとするのが「琳派と印象派」で、アーティゾン美術館の印象派コレクションに加え、国内の寺院や博物館から集められた琳派の名品など約100点の作品が公開されます。かつて東京国立近代美術館にてクリムトやボナールの作品などと併せて見た「RIMPA」展が行われましたが、また琳派の魅力を思わぬ観点から引き出す展覧会となるかもしれません。

長期休館前の最後の展覧会です。横浜美術館にて「トライアローグ:横浜美術館・愛知県美術館・富山県美術館 20世紀西洋美術コレクション」が行われます。



「トライアローグ:横浜美術館・愛知県美術館・富山県美術館 20世紀西洋美術コレクション」@横浜美術館(11/14~2021/2/28)

これは「トライアローグ」、つまり3者による話し合いの鼎談を1つのキーワードに、横浜美術館と愛知県美術館、それに富山県美術館の各公立美術館のコレクションを紹介するもので、ピカソからクレー、そしてウォーホルやリヒターへと至る20世紀の西洋美術作品が約120点が一堂に展示されます。


なお横浜美術館は同展を終えると、2021年3月より大規模改修工事のため、2年を超える長期休館に入ります。1910年代から60年代にかけての横浜のアートシーンを探るコレクション展「ヨコハマ・ポリフィニー」と合わせて、しばらく見納めとなりそうです。

それでは11月もどうぞよろしくお願いします。
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2020年10月に見たい展覧会【さいたま国際芸術祭/式場隆三郎/桃山―天下人の100年】

気がつけば日が暮れるのも早くなり、秋の気配も色濃くなりましたが、いかがお過ごしでしょうか。

なかなか開催中の展示を全て追いきれませんが、10月も魅惑的な展覧会がたくさん行われます。気になる展覧会をリストアップしてみました。

展覧会

・「あざみ野コンテンポラリーvol.11 関川航平展」 横浜市民ギャラリーあざみ野(10/10~11/1)
・「MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020」 国立新美術館(8/12~11/3)
・「モノクロームの冒険 日本近世の水墨と白描」 根津美術館(9/19~11/3)
・「もうひとつの江戸絵画 大津絵」 東京ステーションギャラリー(9/19~11/8)
・「東京好奇心」 Bunkamuraザ・ミュージアム(10/20~11/12)
・「竹内栖鳳《班猫》とアニマルパラダイス」 山種美術館(9/19~11/15)
・「工藝2020―自然と美のかたち」 東京国立博物館表慶館(9/21~11/15)
・「さいたま国際芸術祭2020-Art Sightama-」 旧大宮区役所・旧大宮図書館(10/17~11/15)
・「日本の美術を貫く 炎の筆《線》」 府中市美術館(9/19〜11/23)
・「生誕100年 石元泰博写真展 生命体としての都市」 東京都写真美術館(9/29~11/23)
・「後藤克芳 ニューヨークだより」 渋谷区立松濤美術館(10/3〜11/23)
・「ふたつのまどか―コレクション×5人の作家たち」 DIC川村記念美術館(6/16~11/29)
・「国立公園―その自然には、物語がある」 国立科学博物館(8/25~11/29)
・「リニューアル・オープン記念展 Ⅱ 日本美術の裏の裏」 サントリー美術館(9/30~11/29)
・「桃山―天下人の100年」 東京国立博物館(10/6~11/29)
・「式場隆三郎 腦室反射鏡」 練馬区立美術館(10/11~12/6)
・「宮島達男 クロニクル 1995-2020」 千葉市美術館(9/19~12/13)
・「分離派建築会100年展 建築は芸術か?」 パナソニック汐留美術館(10/10~12/15)
・「生誕111年浜口陽三銅版画展 幸せな地平線」 ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション(8/18~12/20)
・「生誕100年 石元泰博写真展 伝統と近代」 東京オペラシティアートギャラリー(10/10~12/20)
・「STARS展:現代美術のスターたち―日本から世界へ」 森美術館(7/31~2021/1/3)
・「光―呼吸 時をすくう5人」 原美術館(9/19~2021/1/11)
・「KING & QUEEN展 ―名画で読み解く 英国王室物語」 上野の森美術館(10/10~2021/1/11)
・「だれも知らないレオ・レオーニ展」 板橋区立美術館(10/24〜2021/1/11)
・「生命の庭―8人の現代作家が見つけた小宇宙」 東京都庭園美術館(10/17~2021/1/12)
・「生きている東京」 ワタリウム美術館(9/5~2021/1/31)
・「トランスレーションズ展 ―『わかりあえなさ』をわかりあおう」 21_21 DESIGN SIGHT(10/16~2021/3/7)

ギャラリー

・「中西敏貴写真展:Kamuy」 キヤノンギャラリーS(9/19~10/31)
・「ポーラ ミュージアム アネックス展2020 前期」 ポーラ ミュージアム アネックス(9/26~10/11)
・「JAGDA新人賞展2020 佐々木俊・田中せり・西川友美」 クリエイションギャラリーG8(9/8~10/15)
・「森万里子 Central」 SCAI THE BATHHOUSE(9/11〜10/17)
・「浜田浄 記憶の地層 -光と影-」 √K Contemporary(9/19~10/24)
・「ジャン=ミシェル・オトニエル 夢路」 ペロタン東京(9/16〜10/24)
・「第14回 shiseido art egg 西太志展」 資生堂ギャラリー(10/2~10/25)
・「アルベルト・ヨナタン・セティアワン Mirror Image」 ミヅマアートギャラリー(10/7〜11/7)
・「約束の凝集 vol. 1 曽根裕|石器時代最後の夜」 ギャラリーαM(8/29〜11/14)
・「いきることば つむぐいのち 永井一正の絵と言葉の世界」 ギンザ・グラフィック・ギャラリー(10/9~11/21)
・「鴻崎正武:MUGEN」 アートフロントギャラリー(10/23〜11/22)

まずは現代美術です。今春の開催が見送られ、一部では「中止」とも伝えられた「さいたま国際芸術祭2020」が、当初の規模を変更し、オンラインとオフラインの双方での作品の公開が決まりました。



「さいたま国際芸術祭2020-Art Sightama-」@旧大宮区役所・旧大宮図書館(10/17~11/15)

まず先駆けて公開されるのがオンラインで、10月3日より展示風景が映像で配信されます。続いて10月17日よりオンサイトとして、旧大宮区役所と旧大宮図書館などの会場を実際に鑑賞することができます。ともに観覧は無料です。(オンサイトは事前日時指定制。)


<新型コロナ>芸術薫る、さいたま10月 中止の国際祭代替イベント 映像配信など市が概要(東京新聞)

9月10日付の東京新聞の報道では、当初予定の37作品のうち、アーティストの了承の得られた32作品が公開されるそうです。コロナ禍において芸術祭が殆ど中止となる昨今、オンとオフラインと交えた新たな取り組みとして注目を集めそうです。

精神科医の傍ら、民藝運動にも取り組んだ式場隆三郎の足跡を辿る回顧展が、練馬区立美術館にて開催されます。



「式場隆三郎 腦室反射鏡」@練馬区立美術館(10/11~12/6)

1898年に新潟県に生まれ、1936年に千葉県に式場病院を設立した式場隆三郎は、学生時代より白樺派に近づくと、武者小路実篤や柳宗悦らの知遇を得て、民藝運動に携わりました。そしてゴッホの精神病理学的な研究に打ち込み、複製画によるゴッホ展を開催するなど、日本でのゴッホ受容にも重要な役割を果たしました。


そうした式場の多様な活動を辿るのが「腦室反射鏡」と題した展覧会で、約200点もの作品と資料が公開されます。

先行して開催された広島市現代美術館では、特設サイトにて「おうちで式場展」と題したオンラインのコンテンツを公開しています。練馬での観覧の前にあらかじめ見ておくのも良さそうです。

この秋、最も話題を集める日本美術展となるかもしれません。東京国立博物館にて「桃山―天下人の100年」が行われます。



「桃山―天下人の100年」@東京国立博物館(10/6~11/29)

これは安土桃山時代に花開いた桃山美術の魅力を紹介するもので、狩野永徳、探幽、長谷川等伯や海北友松の障壁画をはじめ、上杉謙信や豊臣秀吉らの武将ゆかりの武具、はたまた千利休や古田織部の茶道具のほか、南蛮美術や蒔絵の工芸など、約230点もの作品が公開されます。


なお展示は前期(10/6〜11/1)と後期(11/3〜11/29)だけでなく、それ以外にも期間を区切っての作品の入れ替えがあります。まずは公式サイトより出品リストをご参照下さい。

それでは10月もどうぞ宜しくお願いいたします。
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2020年9月に見たい展覧会【大津絵/宮島達男/光―呼吸】

長く続いた酷暑も関東では少し落ち着いてきました。いわゆる秋の展覧会シーズンへと入りましたが、SOMPO美術館の「ゴッホと静物画」展が中止されるなど、新型コロナウイルス感染症による影響は続いています。その一方で長らく臨時休館していた根津美術館が、9月19日から「モノクロームの冒険 日本近世の水墨と白描」にて再開することが決まりました。

9月に見たい展覧会をリストアップしてみました。

展覧会

・「真珠-海からの贈りもの」 渋谷区立松濤美術館(6/2~9/22)
・「あしたのひかり 日本の新進作家 vol.17」 東京都写真美術館(7/28~9/22)
・「東京モダン生活 東京都コレクションにみる1930年代」 東京都庭園美術館(6/1~9/27)
・「Re construction 再構築」 練馬区立美術館(7/8~9/27)
・「2020イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」 板橋区立美術館(8/22~9/27)
・「月岡芳年 血と妖艶」 太田記念美術館(8/1~10/4)
・「エキソニモ UN-DEAD-LINK アン・デッド・リンク」 東京都写真美術館(8/18~10/11)
・「都市への挿入 川俣正」 BankART Station、BankART Temporary、馬車道駅(9/11~10/11)
・「すみだ向島 EXPO 2020」 東京都墨田区曳舟エリア(9/12〜10/11)
・「隈研吾/大地とつながるアート空間の誕生 - 石と木の超建築」 角川武蔵野ミュージアム(8/1~10/15)
・「田中信太郎展 風景は垂直にやってくる」 市原湖畔美術館(8/8~10/18)
・「ショーン・タンの世界展」 そごう美術館(9/5~10/18)
・「MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020」 国立新美術館(8/12~11/3)
・「モノクロームの冒険 日本近世の水墨と白描」 根津美術館(9/19~11/3)
・「敦煌写経と永樂陶磁」 三井記念美術館(9月12日~11月8日)
・「もうひとつの江戸絵画 大津絵」 東京ステーションギャラリー(9/19~11/8)
・「竹内栖鳳《班猫》とアニマルパラダイス」 山種美術館(9/19~11/15)
・「アイヌの美しき手仕事」 日本民藝館(9/15~11/23)
・「ふたつのまどか―コレクション×5人の作家たち」 DIC川村記念美術館(6/16~11/29)
・「国立公園―その自然には、物語がある」 国立科学博物館(8/25~11/29)
・「黄金町バザール2020 第1部」 京急線日ノ出町駅・⻩金町駅間の高架下スタジオ他(9/11~10/11)
・「宮島達男 クロニクル 1995-2020」 千葉市美術館(9/19~12/13)
・「生誕111年浜口陽三銅版画展 幸せな地平線」 ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション(8/18~12/20)
・「STARS展:現代美術のスターたち―日本から世界へ」 森美術館(7/31~2021/1/3)
・「光―呼吸 時をすくう5人」 原美術館(9/19~2021/1/11)
・「生きている東京」 ワタリウム美術館(9/5~2021/1/31)

ギャラリー

・「菅木志雄 放たれた景空」 小山登美夫ギャラリー(8/21~9/26)
・「Echoes of Monologues」 ANOMALY(9/16~10/10)
・「中西敏貴写真展:Kamuy」 キヤノンギャラリーS(9/19~10/31)
・「ポーラ ミュージアム アネックス展2020 前期」 ポーラ ミュージアム アネックス(9/26~10/11)
・「JAGDA新人賞展2020 佐々木俊・田中せり・西川友美」 クリエイションギャラリーG8(9/8~10/15)
・「浜田浄 記憶の地層 -光と影-」 √K Contemporary(9/19~10/24)
・「ベゾアール(結石) シャルロット・デュマ展」 メゾンエルメス8階フォーラム(8/27~11/29)
・「オノデラユキ FROM Where」 THE GINZA SPACE(9/8~11/29)

まずは日本美術です。東京ステーションギャラリーにて「もうひとつの江戸絵画 大津絵」が開催されます。



「もうひとつの江戸絵画 大津絵」@東京ステーションギャラリー(9/19~11/8)

江戸時代初期より宿場だった大津周辺で描かれた大津絵は、旅人の手軽な土産物として人気を集め、全国へと広まりました。その大津絵の魅力を紹介するのが「もうひとつの江戸絵画 大津絵」で、全国屈指のコレクションを誇る日本民藝館や、洋画家・小絲源太郎が収集して笠間日動美術館に収められた作品などがまとめて公開されます。


近年、江戸絵画展などで見る機会も増えた大津絵ですが、美術館での本格的な展覧会は少ないため、また新たなムーブメントを起こすきっかけになるかもしれません。

続いては現代美術です。美術家、宮島達男の個展が千葉市美術館にて行われます。



「宮島達男 クロニクル 1995-2020」@千葉市美術館(9/19~12/13

1957年に東京で生まれ、1980年代よりLEDのデジタル・カウンターを使用した作品を制作してきた宮島達男は、国内で多くの展示を行うだけでなく、1999年の「第48回ヴェネツィア・ビエンナーレ」に参加するなど海外でも活動してきました。


今回の個展は、宮島の転換期とされる1995年から現在までの作品を俯瞰するもので、大型のインスタレーションを含めた約40点が公開されます。また今年の最新作をはじめ、千葉市美術館の所蔵する杉本博司、李禹煥、河原温らの作品とコラボレーションした「Changing Time / Changing Art」も発表されます。

実に関東では2008年に水戸芸術館で開かれた「宮島達男|Art in You」以来、約12年ぶりの大規模な個展でもあります。水戸の展示では仏塔をイメージした巨大なオブジェ「HOTO」に驚かされましたが、今後の活動を見据えるような内容になるのかもしれません。

ラストも現代美術です。原美術館にて「光―呼吸 時をすくう5人」が開催されます。



「光―呼吸 時をすくう5人」@原美術館(9/19~2021/1/11)

これは「自身の立ち位置から社会を省察する」(公式サイトより)今井智己、城戸保、佐藤時啓、佐藤雅晴、リー・キットの5名による作家の作品を紹介するもので、本展の終了をもって原美術館は建物の老朽化により閉館し、約40年の歴史に幕を下ろします。


2021年からは群馬県渋川市の「ハラ ミュージアム アーク」を「原美術館ARC」と改め、同地に拠点を集約して活動を続けますが、品川の地でのフィナーレを飾る展示だけに、見過ごせない内容となりそうです。

それでは今月もどうぞ宜しくお願いします。
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2020年8月に見たい展覧会【月岡芳年/STARS展/ブリューゲル展映像配信】

関東でも8月1日にようやく梅雨が明け、夏らしい晴天の日が続くようになってきました。

全国的に新型コロナウイルスの感染の確認が相次いでいますが、多くの美術館は入場者数の制限や検温、消毒の徹底など、感染症の対策を踏まえた上で開館しています。今月に見たい展覧会をリストアップしてみました。

展覧会

・「第9回新鋭作家展 ざらざらの実話」 川口市立アートギャラリー・アトリア(6/9~8/30)
・「開館15周年記念特別展 三井家が伝えた名品・優品 第二部 日本の古美術」 三井記念美術館(8/1~8/31)
・「写真と映像の物質性」 埼玉県立近代美術館(6/2~9/6)
・「洋風画と泥絵 異国文化から生れた『工芸的絵画』」 日本民藝館(6/9~9/6)
・「開校100年 きたれ、バウハウス―造形教育の基礎」 東京ステーションギャラリー(7/17~9/6)
・「アート・スコープ 2018-2020」 原美術館(7/23~9/6)
・「あるがままのアート―人知れず表現し続ける者たち」 東京藝術大学大学美術館(7/23~9/6)
・「おいしい浮世絵展~北斎 広重 国芳たちが描いた江戸の味わい~」 森アーツセンターギャラリー(7/15~9/13)
・「真珠-海からの贈りもの」 渋谷区立松濤美術館(6/2~9/22)
・「安野モヨコ展 ANNORMAL」 世田谷文学館(7/1~9/22)
・「和巧絶佳展 令和時代の超工芸」 パナソニック汐留ミュージアム(7/18~9/22)
・「画家が見たこども展」 三菱一号館美術館(6/9~9/22)
・「美の競演ー静嘉堂の名宝」 静嘉堂文庫美術館(6/27~9/22)
・「The UKIYO-E 2020 ─ 日本三大浮世絵コレクション」 東京都美術館(7/23~9/22)
・「あしたのひかり 日本の新進作家 vol.17」 東京都写真美術館(7/28~9/22)
・「日産アートアワード2020」 ニッサンパビリオン(8/1~9/22)
・「東京モダン生活 東京都コレクションにみる1930年代」 東京都庭園美術館(6/1~9/27)
・「Re construction 再構築」 練馬区立美術館(7/8~9/27)
・「近代日本画の華~ローマ開催日本美術展覧会を中心に」 大倉集古館(8/1~9/27)
・「2020イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」 板橋区立美術館(8/22~9/27)
・「月岡芳年 血と妖艶」 太田記念美術館(8/1~10/4)
・「ヨコハマトリエンナーレ2020」 横浜美術館(7/17~10/11)
・「田中信太郎展 風景は垂直にやってくる」 市原湖畔美術館(8/8~10/18)
・「ふたつのまどか―コレクション×5人の作家たち」 DIC川村記念美術館(6/16~11/29)
・「STARS展:現代美術のスターたち―日本から世界へ」 森美術館(7/31~2021/1/3)

ギャラリー

・「臼井良平 Solid, State, Survivor」 無人島プロダクション(7/4~8/9)
・「OKETA COLLECTION: A NEW DECADE」 スパイラルガーデン(7/23~8/10)
・「杉本博司|Past Presence」 ギャラリー小柳(3/14~8/29)
・「TDC 2020」 ギンザ・グラフィック・ギャラリー(6/22~8/29)
・「リチャード・セラ:ドローイング」 ファーガス・マカフリー 東京(6/20〜8/29)
・「西澤知美:The skin you are now in」 アートフロントギャラリー(7/31~8/30)
・「Takahiro Matsuo INTENSITY」 ポーラミュージアム アネックス(7/20~9/6)
・「菅木志雄 放たれた景空」 小山登美夫ギャラリー(8/21~9/26)

まずは浮世絵です。幕末から明治時代にかけて活動した絵師、月岡芳年の展覧会が、太田記念美術館にて開催されます。



「月岡芳年 血と妖艶」@太田記念美術館(8/1~10/4)


これは月岡芳年の魅力を「血」、「妖艶」、「闇」の3つのキーワードから探るもので、前後期を合わせて約150点の作品が公開されます。(全点展示替え)。現在、森アーツセンターギャラリーの「おいしい浮世絵」や、東京都美術館の「The UKIYO-E 2020」など、都内各地で浮世絵展が行われていますが、あわせて見ておきたい展覧会と言えそうです。

続いては現代美術です。新型コロナウイルス感染症の影響で長く休館していた森美術館が再開し、「STARS展:現代美術のスターたち―日本から世界へ」がはじまりました。



「STARS展:現代美術のスターたち―日本から世界へ」@森美術館(7/31~2021/1/3)


同展では国内外で幅広く活躍する、草間彌生、李禹煥、宮島達男、村上隆、奈良美智、杉本博司の6名のアーティストの軌跡を辿るもので、新旧作を交えつつ、制作の全体像を紹介していきます。ともかくビックネームが揃っているだけに、壮観な展示となるかもしれません。

最後に展覧会に関するオンライン配信の情報です。2018年から2019年にかけ、東京、愛知、北海道、広島、福島の5会場を巡回した「ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜」展の音声ガイドが、作品とともに楽しめる映像コンテンツとしてリメイクされ、7月27日から期間限定にて配信されています。

【『ブリューゲル展 画家一族150年の系譜』映像コンテンツ特別配信】



■コンテンツ内容:16世紀のフランドルを代表する画家ピーテル・ブリューゲル1世にはじまり、5世代150年とわ たる画家一族の歴史と名画の秘密に迫る物語。絵画の世界へ迷いこむ、不思議な旅へと誘います。番外編「ブリューゲルお悩み相談室」では、模写のコツ伝授、画家の生活も紹介。
■ナビゲーター:石田彰
■配信料:700円
■動画配信サービス「Hulu」
https://www.hulu.jp/store/brueghel‒150‒years‒of‒an‒artistic‒dyn‒asty
販売期間:7月27日(月)12:00〜9月27日(日)23:59
■チケットぴあ「PIA LIVE STREAM」
https://w.pia.jp/t/brueghel‒pls/
販売期間:7月27日(月)12:00〜9月27日(日)18:00
*ともに購入した場合は9月29日(火)23:59 まで視聴可能


ナビゲーターは、音声ガイドを担当した声優の石田彰さんが務め、動画配信サイトの「Hulu」、もしくはチケットぴあの「PIA LIVE STREAM」にて視聴することができます。配信料は700円です。いわゆるコロナ禍の今、開催中止となった「ボストン美術館展 芸術×力」の音声ガイドの映像配信など、様々な取り組みがなされていますが、また新たなコンテンツとして注目を集めるかもしれません。

それでは今月もどうぞよろしくお願いします。
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2020年7月に見たい展覧会【どうぶつ大行進/ART in LIFE, LIFE and BEAUTY/日本三大浮世絵コレクション】

東京を中心に新型コロナウイルスの感染確認が続いていますが、緊急事態宣言の解除以降、基本的に美術館は再開する方向で動いています。2020年7月に見たい展覧会をリストアップしてみました。

展覧会

・「雲巻雲舒―現代中国美術展・紙」 市原湖畔美術館(5/28~7/26)
・「日本絵画の隠し玉~大倉コレクションの意外な一面」 大倉集古館(6/27~7/26)
・「太田記念美術館コレクション展」 太田記念美術館(7/1~7/26)
・「特別展 きもの KIMONO」 東京国立博物館(6/30~8/23)
・「第9回新鋭作家展 ざらざらの実話」 川口市立アートギャラリー・アトリア(6/9~8/30)
・「ドレス・コード? ─ 着る人たちのゲーム」 東京オペラシティ アートギャラリー(7/4~8/30)
・「開館15周年記念特別展 三井家が伝えた名品・優品」 三井記念美術館(7/1~8/31)
・「開館記念展I 珠玉のコレクション」 SOMPO美術館(7/10〜9/4)
・「写真と映像の物質性」 埼玉県立近代美術館(6/2~9/6)
・「洋風画と泥絵 異国文化から生れた『工芸的絵画』」 日本民藝館(6/9~9/6)
・「帰ってきた!どうぶつ大行進」 千葉市美術館(7/11~9/6)
・「開校100年 きたれ、バウハウス―造形教育の基礎」 東京ステーションギャラリー(7/17~9/6)
・「おいしい浮世絵展~北斎 広重 国芳たちが描いた江戸の味わい~」 森アーツセンターギャラリー(7/15~9/13)
・「ART in LIFE, LIFE and BEAUTY」 サントリー美術館(7/22~9/13)
・「真珠-海からの贈りもの」 渋谷区立松濤美術館(6/2~9/22)
・「安野モヨコ展 ANNORMAL」 世田谷文学館(7/1~9/22)
・「和巧絶佳展 令和時代の超工芸」 パナソニック汐留ミュージアム(7/18~9/22)
・「画家が見たこども展」 三菱一号館美術館(6/9~9/22)
・「美の競演ー静嘉堂の名宝」 静嘉堂文庫美術館(6/27~9/22)
・「The UKIYO-E 2020 ─ 日本三大浮世絵コレクション」 東京都美術館(7/23~9/22)
・「東京モダン生活 東京都コレクションにみる1930年代」 東京都庭園美術館(6/1~9/27)
・「ピーター・ドイグ展」 東京国立近代美術館(6/12~10/11)
・「ヨコハマトリエンナーレ2020」 横浜美術館(7/17~10/11)
・「鴻池朋子 ちゅうがえり/Cosmo-Eggs | 宇宙の卵/新収蔵作品特別展示:パウル・クレー」 アーティゾン美術館(6/23〜10/25)
・「ふたつのまどか―コレクション×5人の作家たち」 DIC川村記念美術館(6/16~11/29)

ギャラリー

・「Chim↑Pom May, 2020, Tokyo / A Drunk Pandemic」 ANOMALY(6/27〜7/22)
・「師岡清高写真展:刻の表出」 キヤノンギャラリーS(6/15~7/25)
・「桑原正彦 heavenly peach」 小山登美夫ギャラリー(7/10〜8/8)
・「鈴木理策 写真展 海と山のあいだ 目とこころ」 ニコンプラザ新宿(7/21〜8/8)
・「臼井良平 Solid, State, Survivor」 無人島プロダクション(7/4〜8/9)
・「杉本博司|Past Presence」 ギャラリー小柳(3/14〜8/29)
・「TDC 2020」 ギンザ・グラフィック・ギャラリー(6/22~8/29)
・「Takahiro Matsuo INTENSITY」 ポーラミュージアム アネックス(7/20〜9/6)

まずはリニューアルを迎える2つの美術館に注目したいと思います。大規模拡張工事のため2020年1月より休館していた千葉市美術館が、7月11日にリニューアルオープンし、記念展として「帰ってきた! どうぶつ大行進」を行います。



「帰ってきた!どうぶつ大行進」@千葉市美術館(7/11~9/6)

これは同館の3000件もの美術品や資料から、動物表現に着目してコレクションを紹介する展示で、江戸時代を中心に、室町から昭和時代までの絵画や版画、約230点が公開されます。なお当初予定されていた「ジャポニスム―世界を魅了した浮世絵」展は、海外作品の搬入が困難になったことから延期されました。現在のところ新たな会期は定まっていません。


また拡張工事に伴って、かつて区役所だった建物の全てのフロアも美術館となり、常設展示室や子どもアトリエ、それに図書室などが開設されました。常設展では「千葉市美術館コレクション名品選2020」として「描かれた千葉市と房総の海辺/美人画百花 描かれたひとびと/特集 草間彌生]のテーマ展示もはじまります。(会期:7月11日~8月2日)そちらにも期待したいと思います。

続いてはサントリー美術館です。2019年11月より耐震強化や展示機能刷新工事のため休館していた同美術館が、7月22日にリニューアルオープンし、「ART in LIFE, LIFE and BEAUTY」を開催します。



「ART in LIFE, LIFE and BEAUTY」@サントリー美術館(7/22~9/13)


「ART in LIFE, LIFE and BEAUTY」展は、酒宴で用いられた調度や豪華な化粧道具、あるいは細かな衣装を施した文物など「ハレ」の場に相応しいコレクションを紹介するもので、併せて山口晃や野口哲哉などの現代美術家の作品も展示されます。いわば古典と現代のコラボレーションで、オープニングに見合うような祝祭感のある内容となりそうです。

今年最も人気を博す浮世絵展になるかもしれません。東京都美術館で「The UKIYO-E 2020 ─ 日本三大浮世絵コレクション」が開催されます。



「The UKIYO-E 2020 ─ 日本三大浮世絵コレクション」@東京都美術館(7/23~9/22)


これは質量ともに日本で有数の太田記念美術館、日本浮世絵博物館、平木浮世絵財団の各コレクションの浮世絵を初めてまとめて展観するもので、主に浮世絵の史的変遷を追いながら、約450点の作品が展示されます。(入れ替えあり。)近年、海外の浮世絵コレクションを紹介する展覧会が増えてきましたが、改めて国内の優品に注目が集まる機会になるかもしれません。

同展は混雑緩和のため、日時指定入場制が導入されました。美術館ではチケットの販売がなく、全て公式サイトより購入する形となります。


京都では京都市京セラ美術館も開館し、福田美術館では若冲に関する展覧会も行われています。一応、移動の自粛要請も緩和されました。私もまだ予定が決まっていませんが、どこかのタイミングで関西の美術館の展示を見に行くつもりでいます。

新型コロナウイルスの感染の如何により、美術館の開館状況が大きく変わる可能性があります。お出かけの際は改めて各美術館のサイトをご覧下さい。

*7/1追記

緊急事態宣言を受けて開館を延期していたSOMPO美術館が、7月10日にオープンすることが決まりました。「開館記念展I 珠玉のコレクション」が同日より9月4日まで開催され、「開館記念展II 秘蔵の東郷青児」が中止となります。


「SOMPO美術館」の開館および開館記念展の開催について:損害保険ジャパン株式会社

それでは7月も宜しくお願いします。
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2020年6月に見たい展覧会【奇才―江戸絵画の冒険者たち/ショパン/ロンドン・ナショナル・ギャラリー】

実に2月以来の「予定と振りかえり」の更新です。下記リンク先にまとめましたが、緊急事態宣言解除に伴い、展示を再開する美術館が増えてきました。6月に気になる展覧会をリストアップしてみました。

新型コロナウイルスへの対応に伴う「美術館・博物館」休館情報 第八報(はろるど)

展覧会

・「奇才―江戸絵画の冒険者たち―」 江戸東京博物館(6/2~6/21)
・「画家が見たこども展」 三菱一号館美術館(6/9~6/21)
・「ドローイングの可能性」 東京都現代美術館(6/2~6/21)
・「ルオーと日本展響き合う芸術と魂」 パナソニック汐留ミュージアム(6/5~6/23)
・「神田日勝 大地への筆触」 東京ステーションギャラリー(6/2~6/28)
・「ショパン-200年の肖像」 練馬区立美術館(6/2~6/28)
・「超写実絵画の襲来 ホキ美術館所蔵」 Bunkamura ザ・ミュージアム(6/11~6/29)
・「写真とファッション」 東京都写真美術館(6/2~7/19)
・「雲巻雲舒―現代中国美術展・紙」 市原湖畔美術館(5/28~7/26)
・「古典×現代2020―時空を超える日本のアート」 国立新美術館(6/24~8/24)
・「第9回新鋭作家展 ざらざらの実話」 川口市立アートギャラリー・アトリア(6/9~8/30)
・「写真と映像の物質性」 埼玉県立近代美術館(6/2~9/6)
・「洋風画と泥絵 異国文化から生れた『工芸的絵画』」 日本民藝館(6/9~9/6)
・「真珠-海からの贈りもの」 渋谷区立松濤美術館(6/2~9/22)
・「森山大道の東京 ongoing」 東京都写真美術館(6/2~9/22)
・「東京モダン生活 東京都コレクションにみる1930年代」 東京都庭園美術館(6/1~9/27)
・「MOTコレクション いまーかつて 複数のパースペクティブ」 東京都現代美術館(6/2~9/27)
・「オラファー・エリアソン展/もつれるものたち」 東京都現代美術館(6/9~9/27)
・「ピーター・ドイグ展」 東京国立近代美術館(6/12~10/11)
・「ロンドン・ナショナル・ギャラリー」 国立西洋美術館(6/18〜10/18)
・「鴻池朋子 ちゅうがえり/Cosmo-Eggs | 宇宙の卵/新収蔵作品特別展示:パウル・クレー」 アーティゾン美術館(6/23〜10/25)

ギャラリー

・「マギーズセンターの建築と庭―本来の自分を取り戻す居場所」 ギャラリーエークワッド(6/2〜6/25)
・「東京 TOKYO / MIKA NINAGAWA」 PARCO MUSEUM TOKYO(6/12〜6/29)
・「絵の旅 vol.5 深く沈み、軽やかに浮かぶ 伊庭靖子・岡﨑乾二郎・関根直子・東城信之介」 MA2Gallery(6/6〜6/27)
・「師岡清高写真展:刻の表出」 キヤノンギャラリーS(6/15~7/25)
・「PICNIC×KOGEI展 produced by SERENDOUCE CRAFTS」 ポーラミュージアム アネックス(6/26〜7/5)
・「幻想の銀河 山本 基×土屋仁応」 ザ・ギンザスペース(6/2~8/2)
・「コズミック・ガーデン サンドラ・シント展」 メゾンエルメス(6/4~7/31)

今月はいずれも開幕が大きく延期された3つの展覧会に注目したいと思います。まずは江戸絵画です。江戸東京博物館にて「奇才―江戸絵画の冒険者たち―」が行われています。



「奇才―江戸絵画の冒険者たち―」@江戸東京博物館(6/2~6/21)

これは江戸時代、北海道から九州にまで活動した35人の絵師を紹介するもので、若冲、蘆雪、蕭白、国芳といった「奇才」の絵師のみならず、主流派とされてきた琳派の宗達や光琳、応挙ら作品も合わせて展示されます。


私として特に楽しみなのは、高知の出身で、歌舞伎芝居の絵看板で有名な絵金の屏風がやって来ることで、実に同県外としては約10年ぶりの公開となります。

本来、4月25日にスタートするはずでしたが、6月まで開幕がずれ込み、山口や大阪への巡回の関係もあるのか、会期は延長されません。よって残念ながら展示されない作品(出品リスト)も少なくなく、6月21日までのタイトなスケジュールになりましたが、早めに出かけたいと思います。

続いては音楽家の展覧会です。「ショパン-200年の肖像」が練馬区立美術館にてスタートします。



「ショパン-200年の肖像」@練馬区立美術館(6/2~6/28)


ポーランド出身で、ピアノの詩人とも呼ばれるフレデリック・ショパンの音楽は、母国のみならず、世界中の多くの人々に愛されてきました。そのショパンに関する楽譜、手紙の他、美術作品など、約250点の資料を公開するのが本展で、日本でのショパン受容などについても探っていきます。ショパンの優美でかつ時に熱の入った音楽は、クラシックファン以外にもよく知られているのではないでしょうか。

ついに開幕日が決まりました。イギリスの誇る西洋絵画のコレクションを、初めて大規模に国外で公開する「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」が、国立西洋美術館にて開催されます。



「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」@国立西洋美術館(6/18〜10/18)

当初、3月3日のスタートを目指して準備が行われ、既に設営が終了しましたが、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、約3ヶ月間以上もの間、来場者を迎えられない状態が続いていました。

延期後の開幕日は6月18日です。但し6月18日から6月21日の間は「前売券・招待券限定入場期間」とし、前売券と招待券を持っている方のみ入場することが出来ます。

これからチケットを購入する場合の入場期間は6月23日から10月18日までです。チケットは全て日時指定の事前予約制で、スマチケやイープラス、ファミリーマート店頭のFamiポートなどでの販売となり、国立西洋美術館の窓口では一切取り扱われません。なお前売券と招待券を持っている場合は、同期間中においても、当日入場分の整理券が配布されることがあります。とは言え、枚数に限りがあるため、入場出来ない可能性も予想されるため、事前予約の方が良いかもしれません。


入場時間枠は9時半から17時までの15回に分かれていて、さらに金曜と土曜には夜間開館時の5回の枠が加わります。各回ごとの入れ替え制ではありませんが、鑑賞者数を一定に保つ観点から、1時間以内を目処に鑑賞するよう求められています。こうした状況下だけにやむを得ませんが、チケットの販売や入場方法は相当にイレギュラーです。詳しくは同展公式サイトをご覧ください。

コロナ禍において依然として先が見通せませんが、しばらくは各館のガイドラインに準じつつ、感染症対策に努めながら、近場の展示を回るつもりです。それでは今月もどうぞよろしくお願いします。
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2020年2月に見たい展覧会【森田恒友/津田青楓とあゆむ明治・大正・昭和/ピーター・ドイグ】

関東では年が明けても暖かく、あまり冬らしい日がありませんでしたが、ここに来て冷えてきました。風邪のひきやすい時期でもありますが、変わりなくお過ごしでしょうか。

1月に見た展示では、全面新装オープンし、コレクションも充実したアーティゾン美術館の「見えてくる光景 コレクションの現在地」、東京の美術館では初の回顧展となったオペラシティアートギャラリーの「白髪一雄展」、そして会期中の突然の訃報にも驚かされた世田谷美術館の「奈良原一高のスペイン―約束の旅」などが強く印象に残りました。

2月の興味深い展覧会をリストアップしてみました。

展覧会

・「たば塩コレクションに見る ポスター黄金時代」 たばこと塩の博物館(~2/16)
・「DOMANI・明日2020 傷ついた風景の向こうに」 国立新美術館(~2/16)
・「千田泰広―イメージからの解放」 武蔵野市立吉祥寺美術館(~2/23)
・「あざみ野フォト・アニュアル 田附勝 KAKERA きこえてこなかった、私たちの声展」 横浜市民ギャラリーあざみ野(~2020/2/23)
・「第12回恵比寿映像祭 時間を想像する」 東京都写真美術館(2/7~2/23)
・「上村松園と美人画の世界」 山種美術館(~3/1)
・「所蔵作品展 パッション20 今みておきたい工芸の想い」 東京国立近代美術館工芸館(~3/8)
・「何必館コレクション ロベール・ドアノー展」 そごう美術館(2/1~3/15)
・「FACE展 2020 損保ジャパン日本興亜美術賞展」 東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館(2/15~3/15)
・「祈りの造形 沖縄の厨子甕を中心に」 日本民藝館(~3/22)
・「生誕120年・没後100年 関根正二展」 神奈川県立近代美術館 鎌倉別館(2/1~3/22)
・「森田恒友展 自然と共に生きて行かう」 埼玉県立近代美術館(2/1~3/22)
・「狩野派―画壇を制した眼と手」 出光美術館(2/11~3/22)
・「鏑木清方と鰭崎英朋 近代文学を彩る口絵―朝日智雄コレクション」 太田記念美術館(2/15~3/22)
・「虎屋のおひなさま」 根津美術館(2/22~3/29)
・「シュルレアリスムと絵画―ダリ、エルンストと日本の『シュール』」 ポーラ美術館(~4/5)
・「江戸ものづくり列伝-ニッポンの美は職人の技と心に宿る-」 江戸東京博物館(2/8~4/5)
・「奇蹟の芸術都市バルセロナ」 東京ステーションギャラリー(2/8~4/5)
・「村井正誠 あそびのアトリエ」 世田谷美術館(2/8~4/5)
・「森村泰昌:エゴオブスクラ東京2020―さまよえるニッポンの私」 原美術館(~4/12)
・「第23回岡本太郎現代芸術賞」 川崎市岡本太郎美術館(2/14~4/12)
・「生誕140年記念 背く画家 津田青楓とあゆむ明治・大正・昭和」 練馬区立美術館(2/21~4/12)
・「森英恵 世界にはばたく蝶」 水戸芸術館(2/22~5/6)
・「澄川喜一 そりとむくり」 横浜美術館(2/15~5/24)
・「画家が見たこども展」 三菱一号館美術館(2/15~6/7)
・「ピーター・ドイグ展」 東京国立近代美術館(2/26~6/14)

ギャラリー

・「西野達 やめられない習慣の本当の理由とその対処法」 ANOMALY(~2/22)
・「ものいう仕口―白山麓で集めた民家のかけら」 LIXILギャラリー(~2/22)
・「サーニャ・カンタロフスキー  Paradise」 タカ・イシイギャラリー 東京(~2/22)
・「アイノとアルヴァ 二人のアアルト 建築・デザイン・生活革命」 ギャラリーA4(~2/27)
・「ジェームス・リー・バイヤース 奇想詩」 SCAI THE BATHHOUSE(~2/29)
・「ベンジャミン・バトラー 二色、単彩、そしてそれ以外の風景」 小山登美夫ギャラリー(2/1~2/29)
・「ポーラ ミュージアム アネックス展2020 前期展示」 ポーラ ミュージアム アネックス(2/21~3/14)
・「河口洋一郎 生命のインテリジェンス」 ギンザ・グラフィック・ギャラリー(~3/19)
・「増田信吾+大坪克亘展」 TOTOギャラリー・間(~3/22)
・「記憶の珍味 諏訪綾子展」 資生堂ギャラリー(~3/22)
・「師岡清高写真展」 キヤノンギャラリー S(2/13~3/28)
・「コズミック・ガーデン サンドラ・シント展」 メゾンエルメス(2/11~5/10)

今月は明治から昭和にかけて活動した2人の画家に注目したいと思います。まずは埼玉県立近代美術館です。「森田恒友展 自然と共に生きて行かう」が開催されます。



「森田恒友展 自然と共に生きて行かう」@ 埼玉県立近代美術館(2/1~3/22)

1881年、埼玉県の熊谷に生まれた森田恒友は、大学で洋画を学び、渡仏してはセザンヌに感銘を受けて画家としてキャリアを築くも、後に国内の風景を捉えた「清澄」(解説より)な日本画を描くようになりました。


その森田の洋画、日本画、及び書簡やスケッチなど250点もの作品資料が一堂に公開される回顧展で、初期から晩年までの足跡を時間を追って辿っていきます。実のところ私は森田の作品を殆ど知らず、チラシ表紙の「緑野」にて初めて興味を覚えましたが、ご当地の埼玉での展示でもあり、画家を再評価する切っ掛けになるかもしれません。

奇しくも森田と1歳違いでした。練馬区立美術館にて画家、津田青楓の回顧展が行われます。



「生誕140年記念 背く画家 津田青楓とあゆむ明治・大正・昭和」@ 練馬区立美術館(2/21~4/12)

1880年生まれの津田青楓は、森田と同様に渡仏したのち、アカデミーで学んでは洋画を描くものの、後に離れては文人画風の作品を手がけました。また青楓は夏目漱石との関わりながら本の装釘を担ったり、私淑した良寛の研究の他、随筆や画論の文筆でも幅広く活動してきました。

その青楓の初のまとまった回顧展で、交友のあった漱石と経済学者の河上肇、それに良寛の3人を軸に、青楓の生涯を振り返っていきます。

ラストはイギリスの現代画家の日本初個展です。東京国立近代美術館で「ピーター・ドイグ展」が開かれます。



「ピーター・ドイグ展」@ 東京国立近代美術館(2/26~6/14)

エジンバラで生まれ、「ロマンティックかつミステリアスな風景を描く」(公式サイトより)ピーター・ドイグは、世界のアートシーンでも注目を集め、近年、テートやパリ市立近代美術館などで個展を重ねるなどして活動してきました。

そのドイグの画業を日本で初めて本格的に紹介する展覧会で、初期から現在の最新作までの約70点が公開されます。必ずしも国内ではまだ一般によく知られた画家でもないかもしれませんが、ともすると今回の個展で大いに人気を博すかもしれません。

中国では新型肺炎が猛威をふるい、日本でも感染拡大が懸念されています。今のところ展覧会などは通常通り行われていますが、今後の状況次第では何らかの影響を与えてくるかもしれません。病気に罹った方の回復をお祈りするとともに、1日も早い収束を願ってやみません。

それでは今月もどうぞよろしくお願いします。
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2020年1月に見たい展覧会【ダ・ヴィンチ夢の実現展/白髪一雄/コレクションの現在地】

今年のお正月は、3が日の他に、4日、5日の土日を合わせて9連休の方も多いのかもしれません。1月に気になる展覧会をリストアップしてみました。

展覧会

・「大浮世絵展―歌麿、写楽、北斎、広重、国芳 夢の競演」 江戸東京博物館(~1/19)
・「印象派からその先へー世界に誇る吉野石膏コレクション展」 三菱一号館美術館(~1/20)
・「奈良原一高のスペイン――約束の旅」  世田谷美術館(~1/26)
・「坂田一男 捲土重来」 東京ステーションギャラリー(~1/26)
・「能と吉祥 寿―Kotohogi」 大倉集古館(~1/26)
・「ダ・ヴィンチ没後500年 夢の実現展」 代官山ヒルサイドフォーラム(1/5~1/26)
・「国宝 雪松図と明治天皇への献茶」 三井記念美術館(~1/30)
・「パリ世紀末ベル・エポックに咲いた華 サラ・ベルナールの世界展」 渋谷区立松濤美術館(~1/31)
・「やきもの入門 ―色彩・文様・造形をたのしむ」 出光美術館(~2/2)
・「心ある機械たち again」 BankART Station + BankART SILK(~2/2)
・「人、神、自然-ザ・アール・サーニ・コレクションの名品が語る古代世界」 東京国立博物館・東洋館(~2/9)
・「開館40周年記念 太田記念美術館所蔵 肉筆浮世絵名品展―歌麿・北斎・応為」 太田記念美術館(1/11~2/9)
・「〈対〉で見る絵画」 根津美術館(1/9~2/11)
・「MOTアニュアル2019 Echo after Echo:仮の声、新しい影/ダムタイプ|アクション+リフレクション/ミナ ペルホネン/皆川明 つづく」 東京都現代美術館(~2/16)
・「たば塩コレクションに見る ポスター黄金時代」 たばこと塩の博物館(~2/16)
・「DOMANI・明日2020 傷ついた風景の向こうに」 国立新美術館(1/11~2/16)
・「千田泰広―イメージからの解放」 武蔵野市立吉祥寺美術館(1/11~2/23)
・「ミイラ~永遠の命を求めて」 国立科学博物館(~2/24)
・「上村松園と美人画の世界」 山種美術館(1/3~3/1)
・「㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画」 21_21 DESIGN SIGHT(~3/8)
・「ポーランドの映画ポスター」 国立映画アーカイブ(~3/8)
・「ニューヨークが生んだ伝説の写真家 永遠のソール・ライター」 Bunkamuraザ・ミュージアム(1/9~3/8)
・「モダンデザインが結ぶ暮らしの夢展」 パナソニック汐留美術館(1/11~3/22)
・「白髪一雄」 東京オペラシティ アートギャラリー(1/11~3/22)
・「祈りの造形 沖縄の厨子甕を中心に」 日本民藝館(1/12~3/22)
・「開館記念展 見えてくる光景 コレクションの現在地」 アーティゾン美術館(1/18~3/31)
・「シュルレアリスムと絵画―ダリ、エルンストと日本の『シュール』」 ポーラ美術館(~4/5)
・「森村泰昌:エゴオブスクラ東京2020―さまよえるニッポンの私」 原美術館(1/25~4/12)

ギャラリー

・「αMプロジェクト2019 東京計画2019 vol.5 中島晴矢」 ギャラリーαM(~2020/1/18)
・「利休のかたち 継承されるデザインと心」 松屋銀座(~1/20)
・「ソピアップ・ピッチ RECLAIM」 小山登美夫ギャラリー(~1/25)
・「ものいう仕口―白山麓で集めた民家のかけら」 LIXILギャラリー(~2/22)
・「無形にふれる」 ポーラ ミュージアム アネックス(1/18~2/16)
・「アイノとアルヴァ 二人のアアルト 建築・デザイン・生活革命」 ギャラリーA4(~2/27)
・「増田信吾+大坪克亘展」 TOTOギャラリー・間(1/16~3/22)
・「記憶の珍味 諏訪綾子展」 資生堂ギャラリー(1/17~3/22)

まず年明け早々に注目したいのは、2019年に没後500年を迎えたレオナルド・ダ・ヴィンチに関する展覧会です。代官山ヒルサイドフォーラムにて「ダ・ヴィンチ没後500年 夢の実現展」が始まります。



「ダ・ヴィンチ没後500年 夢の実現展」@代官山ヒルサイドフォーラム(1/5~1/26)

これは東京造形大学が、レオナルド・ダ・ヴィンチの絵画を復元した成果を披露するもので、未完を含む、全16点の作品がヴァーチャルの形で展示されます。いずれもダ・ヴィンチ研究で知られる池上英洋(東京造形大学教授)の監修の元、教員や学生ら100名によって約1年間ほど復元作業が行われました。


また同じく未完のブロンズ製騎馬像や、構想段階に留まった巨大建築物や発明品も、縮小模型や3DCGによって再現されます。いわゆる実物の展示ではありませんが、絵画空間へ入り込んだり、機械をVRで動かす体験展示など、まさに夢のあるチャレンジングなダ・ヴィンチ展となりそうです。

意外にも東京の美術館では初の本格的な個展です。東京オペラシティ アートギャラリーにて画家、白髪一雄の展覧会が開催されます。



「白髪一雄」@東京オペラシティ アートギャラリー(1/11~3/22)

戦後日本の前衛芸術を牽引し、具体美術協会のメンバーでもある白髪一雄は、1954年より支持体に足で直接描くフット・ペインティングの制作をはじめ、アクション・ペインターの泰斗として旺盛に活動してきました。


白髪の個展といえば、自ら生前に構想し、亡くなった1年後の2009年に横須賀美術館で行われた「白髪一雄 - 格闘から生まれた絵画」を思い出しますが、約10年ぶりの今回の展示においても、また新たな知見が示されるかもしれません。

ブリヂストン美術館がアーティゾン美術館と名を変えて東京・京橋に誕生します。「開館記念展 見えてくる光景 コレクションの現在地」が開催されます。



「開館記念展 見えてくる光景 コレクションの現在地」@アーティゾン美術館(1/18~3/31)

2015年に建物建て替えのため休館し、今年新たに開館するアーティゾン美術館は、休館中も作品を収集し、コレクションの幅を広げてきました。そして記念すべき開館記念展では、旧館の約2倍の新たな展示スペースにて、新収蔵品31点を含むコレクション作品が一堂に公開されます。


なおアーティゾン美術館では日時指定入場制が導入されたため、予め来館前に入場券を専用サイトで購入する必要があります。改めてサイトを確認したところ、開館を半月後に控えた現段階においても、開館当日の18日も含め、土日、平日ともチケットは購入出来ます。



また予約チケットが完売していない場合は当日チケットも販売されますが、予約(1100円)と当日(1500円)の値段に差があり、事前に確保しておくのが良さそうです。

それでは今月もどうぞ宜しくお願いします。
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2019年 私が観た展覧会 ベスト10

年末恒例の私的ベスト企画です。私が2019年に観た展覧会のベスト10をあげてみました。

2019年 私が観た展覧会 ベスト10

1.「ジョゼフ・コーネル コラージュ&モンタージュ」 DIC川村記念美術館



「箱」の作品で知られるコーネルの、ただし「箱」だけに留まらない、多様な制作について紹介した回顧展でした。国内の美術館のコレクションの「箱」、及びコラージュ、日記から構想ノート、さらには知られざる映画までを網羅していて、コーネルの精神や思考を垣間見るかのようでした。おそらく国内で望みうる最高のコーネル展ではなかったのではないでしょうか。

2.「クリスチャン・ボルタンスキー – Lifetime」 国立新美術館



現代美術家、ボルタンスキーの過去最大スケールでの回顧展でした。新旧のインスタレーションによって構成された空間は、まるで異界へと繋がる洞窟のようで、深く潜り込んでは霊魂と向き合うかのような独特の鑑賞体験を得ることが出来ました。なお同展は全国3巡回し、先行した国立国際美術館も評判を呼んでいましたが、私は見ることが叶わなかったため、国立新美術館での展示を推したいと思います。

3.「没後90年記念 岸田劉生展」 東京ステーションギャラリー



岸田劉生の初期から晩年の作品を集めた回顧展で、意外なほど変化する画家の作風を丹念に追うことが出来ました。単発的には作品を見る機会の多い劉生ですが、ともかく全貌を網羅していて、公式サイトに記載された「珠玉の劉生展を目指しました」との言葉も、あながち誇張とは思えませんでした。

4.「イケムラレイコ 土と星 Our Planet」 国立新美術館



2011年秋、東京国立近代美術館で開催された「イケムラレイコ うつりゆくもの」以来、久しぶりとなる大規模な個展でした。「生命の循環」を起点に、全部で16のセクションに及ぶ展示は、まるで人間や動物、神、そして宇宙に大地、さらに生と死を巡る一大叙情詩を辿っているかのようで、ずっしりと心に染みるような静かな感動を得ることが出来ました。これほど深い余韻をもたらす現代美術展もあまりないかもしれません。

5.「カミーユ・アンロ|蛇を踏む」 東京オペラシティアートギャラリー



第55回ヴェネチア・ビエンナーレ(2013年)にて銀獅子賞を受賞したカミーユ・アンロの日本初の大規模な個展でした。実のところ、私自身、この個展で初めてアンロの作品を見知りましたが、受賞作の映像「偉大なる疲労」はもとより、インスタレーション「青い狐」などは、複数の学問を横断しつつ、高度な思考実験を伴いながら、生命や世界の理に迫っていて、壮大な天地創造の物語を目の当たりにするかのようで圧倒されました。

6.「コートールド美術館展 魅惑の印象派」 東京都美術館



今年に見た西洋美術では最も心を惹かれる作品の多い展覧会でした。作品数は約60点ほどと必ずしも多くはありませんでしたが、チラシ表紙を飾ったマネの「フォリー=ベルジェールのバー」などのコレクションはいずれも粒揃いで、特に10点ほど出展された質の高いセザンヌには舌を巻くものがありました。また漫然と作品を並べるのではなく、画家の言葉や時代背景、それに技法などに着目した構成も良かったと思いました。

7.「バスキア展 メイド・イン・ジャパン」 森アーツセンターギャラリー



近年、メディア等で露出の多かったバスキアを、日本との関わりにも着目しながら、約130点もの作品で辿る回顧展でした。1980年代のアメリカのアートシーンを席巻したバスキアですが、作品には強い批判的態度も感じられて、当時の社会の様々な問題が浮き彫りになるような内容でもありました。また絵画の重層的な質感、特に絵具の筆触には躍動感があり、事前に図版で見知るのとは迫力がまるで違いました。

8.「岡山芸術交流2019」 前編(旧内山下小学校、林原美術館) 後編(岡山城、旧福岡醤油建物、岡山県天神山文化プラザ、岡山市立オリエント美術館)



今回で2度目の開催となった岡山芸術交流に初めて行くことが出来ました。「もし蛇が」とした謎めいたタイトルしかり、コンセプチャルな作品も目立ちましたが、芸術祭全体があたかも1つの大きな有機物のようで、生命科学の問題など考えさせられる内容の多い展示でした。また岡山城界隈に広がる展示エリアも程よいスケール感で、街歩きとしても楽しめました。

9.「石川直樹 この星の光の地図を写す」 東京オペラシティアートギャラリー



世界各地を写真に撮り続ける石川直樹の視点を追体験するような展覧会でした。また実際の装備品や道具、さらには愛読書までも紹介していて、石川の冒険の軌跡を臨場感のある形で見ることが出来ました。中でも途中で断念した「K2」では、石川自身の体験が克明に記録されていて、どれほど苦難であったのかがひしひしと伝わってきました。

10.「シンコペーション:世紀の巨匠たちと現代アート」 ポーラ美術館



ポーラ美術館では開館以来、初めてとなる現代美術とのコラボレーション企画で、同館の西洋、東洋美術コレクションと、国内外の12組の現代美術家の作品が、さながら音楽を奏でるように響きあっていました。また実際にも音をモチーフにした作品が少なくなく、特に屋外の「森の遊歩道」に展開したスーザン・フィリップスのサウンドインスタレーションは、風が樹木を揺らす音や鳥のさえずりなどを取り込んでいて、森に囲まれたポーラ美術館ならではの鑑賞体験をすることが出来ました。

次点.「Meet the Collection ―アートと人と、美術館」 横浜美術館

開館30年を迎えた横浜美術館の全館スケールでのコレクション展でした。中でも束芋、淺井裕介、今津景、菅木志雄のゲスト作家が、自作とともに作品をセレクトする展示が面白く、元々、常設展においても意欲的な企画が多い横浜美術館による、新たな取り組みを示したような展覧会でした。

なおベスト10以外で特に印象に残った展覧会は以下の通りです。(順不同)

「メスキータ」 東京ステーションギャラリー
「インポッシブル・アーキテクチャー もうひとつの建築史」 埼玉県立近代美術館
「シャルル=フランソワ・ドービニー展」 東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館
「竹工芸名品展:ニューヨークのアビー・コレクション」 東京国立近代美術館工芸館
「青木野枝 霧と鉄と山と」 府中市美術館
「山沢栄子 私の現代」 東京都写真美術館
「窓展」 東京国立近代美術館
「ルノワールとパリに恋した12人の画家たち」 横浜美術館
「やなぎみわ展 神話機械」 神奈川県民ホールギャラリー
「現在地:未来の地図を描くために」 金沢21世紀美術館
「目  非常にはっきりとわからない」 千葉市美術館
「カルティエ、時の結晶」 国立新美術館
「ハプスブルク展」 国立西洋美術館
「桃源郷展―蕪村・呉春が夢みたもの」 大倉集古館
「黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部 -美濃の茶陶」 サントリー美術館
「伊庭靖子展 まなざしのあわい」 東京都美術館
「ロイス・ワインバーガー展」 ワタリウム美術館
「加藤泉 – LIKE A ROLLING SNOWBALL」 原美術館
「大竹伸朗 ビル景 1978-2019」 水戸芸術館
「原三溪の美術 伝説の大コレクション」 横浜美術館
「円山応挙から近代京都画壇へ」 東京藝術大学大学美術館
「塩田千春展:魂がふるえる」 森美術館
「特別展 三国志」 東京国立博物館・平成館
「ジュリアン・オピー」 東京オペラシティアートギャラリー
「没後50年 坂本繁二郎展」 練馬区立美術館
「食の器」 日本民藝館
「遊びの流儀 遊楽図の系譜」 サントリー美術館
「マンモス展」 日本科学未来館
「クリムト展」 東京都美術館
「宮本隆司 いまだ見えざるところ」 東京都写真美術館
「トム・サックス ティーセレモニー」 東京オペラシティアートギャラリー
「ルート・ブリュック 蝶の軌跡」 東京ステーションギャラリー
「世紀末ウィーンのグラフィック-デザインそして生活の刷新にむけて」 目黒区美術館
「福沢一郎展 このどうしようもない世界を笑いとばせ」 東京国立近代美術館
「百年の編み手たち-流動する日本の近現代美術」 東京都現代美術館
「ラファエル前派の軌跡展」 三菱一号館美術館
「国宝 東寺―空海と仏像曼荼羅」 東京国立博物館・平成館
「メアリー・エインズワース浮世絵コレクション-初期浮世絵から北斎・広重まで」 千葉市美術館
「へそまがり日本美術 禅画からヘタウマまで」 府中市美術館
「The 備前―土と炎から生まれる造形美―」 東京国立近代美術館工芸館
「アルヴァ・アアルト もうひとつの自然」 東京ステーションギャラリー
「河鍋暁斎 その手に描けぬものなし」 サントリー美術館
「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」 東京都美術館
「終わりのむこうへ:廃墟の美術史」 渋谷区立松濤美術館
「ルーベンス展―バロックの誕生」 国立西洋美術館
「マイケル・ケンナ写真展」 東京都写真美術館
「ル・コルビュジエ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代」 国立西洋美術館
「ギュスターヴ・モロー展―サロメと宿命の女たち―」 パナソニック汐留美術館
「キスリング展 エコール・ド・パリの夢」 東京都庭園美術館
「ショーン・タンの世界展 どこでもないどこかへ」 ちひろ美術館・東京
「マリアノ・フォルチュニ 織りなすデザイン展」 三菱一号館美術館
「日本の素朴絵」 三井記念美術館
「闇に刻む光 アジアの木版画運動 1930s-2010s」 アーツ前橋
「生誕100年 飯塚小玕齋展―絵画から竹工芸の道へ―」 太田市美術館・図書館
「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」 国立新美術館
「ミュシャと日本、日本とオルリク」 千葉市美術館
「ゴッホ展」 上野の森美術館
「ラスト・ウキヨエ 浮世絵を継ぐ者たち ―悳俊彦コレクション」 太田記念美術館 

例年同様に絞りきれず、たくさんの展覧会をあげてしまいましたが、私にとって2019年は明らかに現代美術に心が引きつけられる一年となりました。



ベスト10以外では、心象世界の向こうにロマンを垣間見た「マイケル・ケンナ写真展」(東京都写真美術館)、あたかも美術館に住む住人のごとくに彫刻が並んだ「加藤泉 – LIKE A ROLLING SNOWBALL」(原美術館)、利休の見立てを現代に再生したような「トム・サックス ティーセレモニー」(東京オペラシティアートギャラリー)、ビルと都市の並び立つ熱気に呑まれた「大竹伸朗 ビル景 1978-2019」(水戸芸術館)、そして作家の人生そのものが作品として体現したかのような「塩田千春展:魂がふるえる」(森美術館)などが特に印象に残りました。



また会期末に向けて人気を集めた「目  非常にはっきりとわからない」(千葉市美術館)も、チバニアンに着想を得つつも、改修中の美術館の場を効果的に用いていて楽しめました。それに現在、開催中の「窓展」(東京国立近代美術館)も、「窓」を切り口にした現代美術が多く展示されていて、とても面白く見られました。その他にも「山沢栄子 私の現代」(東京都写真美術館)では、具象と抽象を行き来する作品の魅力はもとより、山沢のチャレンジングな生き方そのものにも共感を覚えました。



日本美術では、まず「竹工芸名品展:ニューヨークのアビー・コレクション」(東京国立近代美術館工芸館)に魅せられました。メトロポリタン美術館の竹工芸コレクションが里帰りした展覧会で、先だって観覧した「生誕100年 飯塚小玕齋展―絵画から竹工芸の道へ―」(太田市美術館・図書館)の飯塚小玕齋の優品などが多数並んでいて、竹の本来のしなやかさと繊細な意匠に大いに目を奪われました。



「へそまがり日本美術 禅画からヘタウマまで」(府中市美術館)と「日本の素朴絵」(三井記念美術館)も、徳川の将軍の描いた絵画や庶民向けの大津絵など、ヘタウマや知られざる作品に焦点を当てていて、日本美術の新たな魅力に接することが出来ました。この他、創意工夫に溢れた現代の備前にも引かれた「The 備前―土と炎から生まれる造形美―」(東京国立近代美術館工芸館)や、衰退したとされる明治以降の浮世絵にあえて着目した「ラスト・ウキヨエ 浮世絵を継ぐ者たち―悳俊彦コレクション」(太田記念美術館)も興味深く見られました。



西洋美術では、2つのクリムトに関した展覧会、「クリムト展」(東京都美術館)と「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」(国立新美術館)が充実していました。特に後者はクリムトのみならず、世紀末ウィーンの文化全体までを網羅するような構成で、作品と資料も多く、大変に見応えがありました。さらに「世紀末ウィーンのグラフィック-デザインそして生活の刷新にむけて」(目黒区美術館)もクリムト、シーレ、ココシュカから、オットー・ヴァーグナー、カール・モルなど、約300点もの作品を紹介していました。2019年はクリムトを中心としたウィーン世紀末が1つのトレンドでもあったかもしれません。

「ミュシャと日本、日本とオルリク」(千葉市美術館)も忘れられません。日本でも人気のあるミュシャだけでなく、同じチェコ出身で来日経験もあったオルリクの制作を紹介する展覧会で、同国におけるジャポニスム受容、及び日本への影響関係などを丹念に検証していました。



今年は数こそ少ないものの、東京以外の地域へ何度か遠征して来ました。そのうち近場では、根府川の江之浦測候所が大変に印象的で、あたかも古い社か古代の遺跡へと迷い込んだかのような空間は、まさに杉本博司の美意識を体現したかのようで圧倒されました。また北陸では、常設展示のスケールに驚かされた福井県立恐竜美術館、そしてエルリッヒのプールでも知られ、多くの観光客で賑わっていた金沢21世紀美術館へもともに初めて行くことが出来ました。



また西日本方面では、ベスト10にあげた「岡山芸術交流」をはじめ、まだブログにまとめきれていないものの、現代アートの聖地とさえ呼ばれる直島へも旅することが出来ました。1日で回る行程だったため、直島限定となりましたが、ベネッセハウスミュージアム、李禹煥美術館、地中美術館から家プロジェクトなど、一通りのアートスポットを周遊しました。芸術祭期間中ではないのにも関わらず、国内外から多くの観光客が集っていて、改めて直島の人気を感じさせるものがありました。

見に行ったのにも関わらず、今年もブログに感想を書ききれない展覧会が多々ありました。(ベスト10にあげた展覧会でも、コーネル展とコートールド展の感想を書きそびれてしまいました。)来年はもう少しアウトプットに力を入れたいとは思いますが、当面は週3回程度の更新となりそうです。

最後になりますが、皆さまは今年一年、どのような美術との出会いがありましたでしょうか。このエントリをもちまして年内のブログを終わります。今年も「はろるど」とお付き合い下さりどうもありがとうございました。それではどうぞ良いお年をお迎え下さい。

*過去の展覧会ベスト10
2018年2017年2016年2015年2014年2013年2012年2011年2010年2009年2008年2007年2006年2005年2004年その2。2003年も含む。)
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2019年12月に見たい展覧会【ブダペスト展/サラ・ベルナールの世界/青木野枝 霧と鉄と山と】

今年も早いもので残すところあと1ヶ月となりました。

11月に見た展覧会では、先だって会期を終えた「岡山芸術交流2019」をはじめ、千葉市美術館で開催中の「目 非常にはっきりとわからない」、それに東京国立近代美術館での「窓展:窓をめぐるアートと建築の旅」などが印象に残りました。



そのうち「岡山芸術交流2019」は目標の26万名を超え、入場者が前回を大幅に上回る延べ31万名を記録しました。要因として瀬戸内国際芸術祭と一部の会期が重なった上、二度目の開催で知名度が上がったこともあげられていましたが、岡山に根差しつつ、独自色のある展示内容が光っていただけに、また次回の展開にも大いに期待が出来そうです。

それでは12月に見たい展覧会をリストアップしてみました。

展覧会

・「鹿島茂コレクション アール・デコの造本芸術 高級挿絵本の世界」 日比谷図書文化館(~12/23)
・「江戸の茶の湯 川上不白 生誕三百」 根津美術館(~12/23)
・「松本力 記しを憶う-東京都写真美術館コレクションを中心に」 東京都美術館(~2020/1/5)
・「YCC Temporary 高橋匡太」 YCCヨコハマ創造都市センター(~2020/1/12)
・「小さなデザイン 駒形克己展」 板橋区立美術館(~2020/1/13)
・「ニューヨーク・アートシーン-滋賀県立近代美術館コレクションを中心に」 埼玉県立近代美術館(~2020/1/19)
・「北斎没後170年記念 北斎 視覚のマジック 小布施・北斎館名品展」 すみだ北斎美術館(~2020/1/19)
・「大浮世絵展―歌麿、写楽、北斎、広重、国芳 夢の競演」 江戸東京博物館(~2020/1/19)
・「印象派からその先へー世界に誇る吉野石膏コレクション展」 三菱一号館美術館(~2020/1/20)
・「山沢栄子 私の現代/中野正貴写真展 東京/中野正貴写真展 東京」 東京都写真美術館 (~2020/1/26)
・「奈良原一高のスペイン――約束の旅」  世田谷美術館(~2020/1/26)
・「坂田一男 捲土重来」 東京ステーションギャラリー(12/7~2020/1/26)
・「国宝 雪松図と明治天皇への献茶」 三井記念美術館(12/14~2020/1/30)
・「パリ世紀末ベル・エポックに咲いた華 サラ・ベルナールの世界展」 渋谷区立松濤美術館(12/7~2020/1/31)
・「やきもの入門 ―色彩・文様・造形をたのしむ」 出光美術館(~2020/2/2)
・「人、神、自然-ザ・アール・サーニ・コレクションの名品が語る古代世界」 東京国立博物館・東洋館(~2020/2/9)
・「MOTアニュアル2019 Echo after Echo:仮の声、新しい影/ダムタイプ|アクション+リフレクション/ミナ ペルホネン/皆川明 つづく」 東京都現代美術館(~2020/2/16)
・「たば塩コレクションに見る ポスター黄金時代」 たばこと塩の博物館(12/14~2020/2/16)
・「ミイラ~永遠の命を求めて」 国立科学博物館(11/2~2020/2/24)
・「青木野枝 霧と鉄と山と」 府中市美術館(12/14~2020/3/1)
・「㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画」 21_21 DESIGN SIGHT(~2020/3/8)
・「ブダペスト―ヨーロッパとハンガリーの美術400年」 国立新美術館(12/4~2020/3/16)
・「フィリップ・パレーノ展 オブジェが語りはじめると」 ワタリウム美術館(~2020/3/22)
・「未来と芸術展:AI、ロボット、都市、生命―人は明日どう生きるのか」 森美術館(~2020/3/29)

ギャラリー

・「O JUN展 途中の造物」 ミヅマアートギャラリー(~12/14)
・「167人のクリエイターと京都の職人がつくる ふろしき百花店」 クリエイションギャラリーG8(~12/21)
・「栗山斉展」 アートフロントギャラリー(12/6~12/22)
・「勅使河原 蒼風」 タカ・イシイギャラリー東京(~12/27)
・「みえないかかわり イズマイル・バリー展」 メゾンエルメス8階フォーラム(~2020/1/13)
・「動きの中の思索―カール・ゲルストナー」 ギンザ・グラフィック・ギャラリー(~2020/1/18)
・「αMプロジェクト2019 東京計画2019 vol.5 中島晴矢」 ギャラリーαM(~2020/1/18)
・「ソピアップ・ピッチ RECLAIM」 小山登美夫ギャラリー(12/20~2020/1/25)
・「ものいう仕口―白山麓で集めた民家のかけら」 LIXILギャラリー(12/5~2020/2/22)

まずは西洋美術です。国立新美術館にて「ブダペスト―ヨーロッパとハンガリーの美術400年」が始まります。



「ブダペスト―ヨーロッパとハンガリーの美術400年」@国立新美術館(12/4~2020/3/16)

これは日本とハンガリーの外交関係開設150周年を記念して開催されるもので、ハンガリーのブダペスト国立西洋美術館とハンガリー・ナショナル・ギャラリーのコレクションが約130点ほどやって来ます。なお両コレクションが日本でまとまって公開されるのは、約25年ぶりのことになります。


ルネサンスから20世紀美術の西洋美術はもとより、日本で紹介されることの少ないハンガリーの近代絵画にも注目が集まるのではないでしょうか。まだ見知らぬ意外なハンガリーの名品に出会える機会となるやもしれません。

意外にもサラ・ベルナールに着目した展覧会としては日本で初めての開催となります。渋谷区立松濤美術館にて「パリ世紀末ベル・エポックに咲いた華 サラ・ベルナールの世界展」がスタートします。



「パリ世紀末ベル・エポックに咲いた華 サラ・ベルナールの世界展」@渋谷区立松濤美術館(12/7~2020/1/31)

フランスのベル・エポック期を代表する女優、サラ・ベルナールは、女優として活躍しただけでなく、ミュシャやラリックと交流して庇護した他、劇団を立ち上げるなどして幅広く活動しました。


そのサラ・ベルナールに関した作品を紹介するのが今回の展覧会で、絵画、彫刻、舞台衣装、装飾品、あるいはポスターなどが一堂に公開されます。それこそロートレックやミュシャ作品のモチーフとして見ることの多いサラ・ベルナールですが、彼女自身の人生なり活動に着目した展覧会だけに、知られざる意外な側面も浮かび上がってくるかもしれません。

ラストは現代美術です。関東では約20年ぶりの美術館での個展です。府中市美術館にて「青木野枝 霧と鉄と山と」が開催されます。

「青木野枝 霧と鉄と山と」@府中市美術館(12/14~2020/3/1)

1958年に東京で生まれ、主に鉄を素材にした彫刻家、青木野枝は、ガラスや石膏なども用い、空間全体を取り込むような作品を多様に手掛けてきました。


青木野枝「空玉/紀尾井町」 2016年 *東京ガーデンテラス紀尾井町にて

今回の個展では、美術館の空間にあわせた新作をはじめ、最初期の彫刻など、青木の新旧の作品を紹介する内容となるそうです。これまでにも青木の作品は、美術館での常設展示や現代美術のグループ展などで目にすることは少なくありませんでしたが、必ずしも網羅的に見る機会は多いとは言えませんでした。まさにファン待望の個展となりそうです。

最後に来年の芸術祭の情報です。「ヨコハマトリエンナーレ2020」と「房総里山芸術祭 いちはらアート×ミックス2020」の企画概要が発表されました。


「房総里山芸術祭 いちはらアート×ミックス2020」
会期:2020年3月20日(祝・金)~5月17日(日)
開催エリア:小湊鉄道を軸とした周辺エリア


「ヨコハマトリエンナーレ2020 Afterglow―光の破片をつかまえる」
会期:2020年7月3日(金) ~10月11日(日)
会場:横浜美術館、プロット48

アートミックスはGWを挟んでの春の開催、ヨコハマトリエンナーレ7月以降、秋にかけての開催です。ともに楽しみな芸術祭だけに、今後の情報もチェックしていきたいと思います。

それでは今月もどうぞ宜しくお願いします。
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2019年11月に見たい展覧会【ラスト・ウキヨエ/大浮世絵/目(mé)】

今年の秋は東日本を中心に、度重なる風水害に見舞われ、各地で甚大な被害が起きてしまいました。関東では、収蔵庫が浸水した川崎市民ミュージアムや、水害により電気設備に影響の発生したホキ美術館が、今も活動を再開出来ない状況に置かれています。特に川崎市民ミュージアムは、被害の全容すら明らかになっていないだけに、再開には相当の時間がかかると思われます。コレクションの状態も大いに懸念されます。

10月は上野の2つの展覧会に混雑が集中しました。1つは東京国立博物館の「正倉院の世界」展で、平日休日を問わず、長蛇の列となり、会期半月にして早くも10万名の入場者を記録しました。また上野の森美術館の「ゴッホ展」も、土日を中心に入場に際しての待ち時間が発生しています。

今月も多くの興味深い展覧会がスタートします。気になるものをリストアップしてみました。

展覧会

・「不思議の国のアリス展」 そごう美術館(~11/17)
・「エドワード・ゴーリーの優雅な秘密」 練馬区立美術館(~11/24)
・「辰野金吾と美術のはなし 没後100年特別小企画展」 東京ステーションギャラリー(11/2~11/24)
・「おかえり 『美しき明治』」 府中市美術館(~12/1)
・「線の迷宮〈ラビリンス〉3 齋藤芽生とフローラの神殿」 目黒区美術館(~12/1)
・「やなぎみわ展 神話機械」 神奈川県民ホールギャラリー(~12/1)
・「描く、そして現れる―画家が彫刻を作るとき」 DIC川村記念美術館(~12/8)
・「ラウル・デュフィ展―絵画とテキスタイル・デザイン」 パナソニック汐留美術館(~12/15)
・「カミーユ・アンロ|蛇を踏む」 東京オペラシティ アートギャラリー(~12/15)
・「金文―中国古代の文字―」 泉屋博古館分館(11/9~12/20)
・「東山魁夷の青・奥田元宋の赤―色で読み解く日本画」 山種美術館(11/2~12/22)
・「ラスト・ウキヨエ 浮世絵を継ぐ者たち―悳俊彦コレクション」 太田記念美術館(11/2~12/22)
・「建国300年 ヨーロッパの宝石箱リヒテンシュタイン 侯爵家の至宝展」 Bunkamuraザ・ミュージアム(~12/23)
・「鹿島茂コレクション アール・デコの造本芸術 高級挿絵本の世界」 日比谷図書文化館(~12/23)
・「江戸の茶の湯 川上不白 生誕三百」 根津美術館(11/16~12/23)
・「目【mé】 非常にはっきりとわからない」 千葉市美術館(11/2~12/28)
・「オランジュリー美術館コレクション ルノワールとパリに恋した12人の画家たち」 横浜美術館(~2020/1/13)
・「アジアのイメージ―日本美術の『東洋憧憬』」 東京都庭園美術館(10/12~2020/1/13)
・「ルネ・ユイグのまなざし フランス絵画の精華―大様式の形成と変容」 東京富士美術館(10/5~2020/1/19)
・「ニューヨーク・アートシーン-滋賀県立近代美術館コレクションを中心に」 埼玉県立近代美術館(11/14~2020/1/19)
・「北斎没後170年記念 北斎 視覚のマジック 小布施・北斎館名品展」 すみだ北斎美術館(11/19~2020/1/19)
・「大浮世絵展―歌麿、写楽、北斎、広重、国芳 夢の競演」 江戸東京博物館(11/19~2020/1/19)
・「印象派からその先へー世界に誇る吉野石膏コレクション展」 三菱一号館美術館(~2020/1/20)
・「山沢栄子 私の現代」 東京都写真美術館 (11/12~2020/1/26)
・「奈良原一高のスペイン――約束の旅」 世田谷美術館(11/23~2020/1/26)
・「窓展:窓をめぐるアートと建築の旅」 東京国立近代美術館(11/1~2020/2/2)
・「人、神、自然-ザ・アール・サーニ・コレクションの名品が語る古代世界」 東京国立博物館・東洋館(11/6~2020/2/9)
・「MOTアニュアル2019 Echo after Echo:仮の声、新しい影/ダムタイプ|アクション+リフレクション/ミナ ペルホネン/皆川明 つづく」 東京都現代美術館(11/16~2020/2/16)
・「ミイラ~永遠の命を求めて」 国立科学博物館(11/2~2020/2/24)
・「㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画」 21_21 DESIGN SIGHT(11/22~2020/3/8)
・「未来と芸術展:AI、ロボット、都市、生命―人は明日どう生きるのか」 森美術館(11/19~2020/3/29)

ギャラリー

・「藤元明 陸の海ごみ」 ギャラリーA4(~11/14)
・「竹村 京 Madeleine. V, Olympic, and my Garden」  タカ・イシイギャラリー東京(~11/22)
・「中岡真珠美 個展 : SCALE PUZZLE」 アートフロントギャラリー(11/7〜12/1)
・「O JUN展 途中の造物」 ミヅマアートギャラリー(11/13〜12/14)
・「三宅信太郎 ふと気がつくとそこは遊園地だった」 小山登美夫ギャラリー(11/16〜12/14)
・「167人のクリエイターと京都の職人がつくる ふろしき百花店」 クリエイションギャラリーG8(11/26〜12/21)
・「ジェイ・チュン & キュウ・タケキ・マエダ セレクションによるグループ展」 資生堂ギャラリー(~12/22)
・「舘鼻則孝 It's always the others who die」 ポーラ ミュージアム アネックス(11/22~12/22)
・「みえないかかわり イズマイル・バリー展」 メゾンエルメス8階フォーラム(~2020/1/13)
・「動きの中の思索―カール・ゲルストナー」 ギンザ・グラフィック・ギャラリー(11/28~2020/1/18)
・「αMプロジェクト2019 東京計画2019 vol.5 中島晴矢」 ギャラリーαM(11/30~2020/1/18)

今月は2つの浮世絵の展覧会に注目です。まずは太田記念美術館にて「ラスト・ウキヨエ 浮世絵を継ぐ者たち―悳俊彦コレクション」が始まります。



「ラスト・ウキヨエ 浮世絵を継ぐ者たち―悳俊彦コレクション」@太田記念美術館(11/2~12/22)

これは「最後の浮世絵師」と呼ばれる月岡芳年や小林清親をはじめ、明治から大正時代にかけて活動した浮世絵師37人に着目するもので、洋画家であり、コレクターとしても知られる悳俊彦(いさおとしひこ)氏のコレクションが一堂に公開されます。


タイトルに「ラスト・ウキヨエ」とありますが、「継ぐ者たち」と定義することで、一般的に衰退したとされる明治の浮世絵を肯定的に捉える意味もあるそうです。おそらくは知られざる浮世絵師に思わぬ優品があるに違いありません。出来れば前後期の展示替えを追いかけたいと思います。

2014年の「大浮世絵展」の続編が約5年の時を超えてやって来ました。江戸東京博物館にて「大浮世絵展―歌麿、写楽、北斎、広重、国芳 夢の競演」が行われます。



「大浮世絵展―歌麿、写楽、北斎、広重、国芳 夢の競演」@江戸東京博物館(11/19~2020/1/19)

この「大浮世絵展」は、文字通り、歌麿、写楽、北斎、広重、国芳にスポットを当てたもので、前回のように網羅的に通史を紹介するのではなく、いわば浮世絵師5人のグループ展的な内容となります。


国内のみならず、海外からも優品が出展されるそうです。「誰もが知っており、そして誰もが見たい」とありますが、とりわけ人気の浮世絵師の揃う展覧会だけに、早々から多くの人で賑わいそうです。

ラストは現代美術です。現代アーティストチーム「目」の個展が、千葉市美術館にて開催されます。



「目【mé】 非常にはっきりとわからない」@千葉市美術館(11/2~12/28)

近年、各地の国際芸術祭などでも活動する「目」は、2014年には資生堂ギャラリーで個展を開き、まるでホテルと見間違うようなミステリアスな空間を築いては、多くの注目を浴びました。


その「目」は今回の展示に際し、市原市で発見された地球磁場逆転地層、チバニアンを訪ね歩き、1つの着想のヒントとしたそうです。千葉市美術館のスペースをどのように変容させるのでしょうか。

11月に入って一気に冷えてきました。身体に気をつけてお過ごし下さい。

それでは今月もよろしくお願いします。
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2019年10月に見たい展覧会【やなぎみわ/ラウル・デュフィ/ゴッホ展】

9月末になっても残暑が長引き、秋の本格的な気配がなかなか感じられませんが、いかがお過ごしでしょうか。

10月は展覧会シーズンもたけなわです。気になる展覧会をリストアップしてみました。

展覧会

・「引込線/放射線(第1期)」 第19北斗ビル(~10/14)
・「没後90年記念 岸田劉生展」 東京ステーションギャラリー(~10/20)
・「大観・春草・玉堂・龍子―日本画のパイオニア」 山種美術館(~10/27)
・「歌川国芳―父の画業と娘たち」 太田記念美術館(10/4~10/27)
・「新創開館10周年記念 美しきいのち 日本・東洋の花鳥表現」 根津美術館(~11/4)
・「DECODE/出来事と記録―ポスト工業化社会の美術」 埼玉県立近代美術館(~11/4)
・「黄金町バザール ニュー・メナジェリー」 黄金町エリアマネジメントセンター(~11/4)
・「引込線/放射線(第2期)」 旧市立所沢幼稚園(10/12~11/4)
・「あざみ野コンテンポラリー vol.10 しかくのなかのリアリティ」 横浜市民ギャラリーあざみ野(10/12~11/4)
・「チェコ・デザイン 100年の旅」 世田谷美術館(~11/10)
・「不思議の国のアリス展」 そごう美術館(~11/17)
・「写真新世紀 2019」 東京都写真美術館(10/19~11/17)
・「エドワード・ゴーリーの優雅な秘密」 練馬区立美術館(~11/24)
・「日本・東洋 美のたからばこ ~和泉市久保惣記念美術館の名品」 渋谷区立松濤美術館(10/5~11/24)
・「正倉院の世界―皇室がまもり伝えた美」 東京国立博物館(10/14~11/24)
・「おかえり 『美しき明治』」 府中市美術館(~12/1)
・「茶の湯の名碗 高麗茶碗」 三井記念美術館(~12/1)
・「線の迷宮〈ラビリンス〉3 齋藤芽生とフローラの神殿」 目黒区美術館(10/12~12/1)
・「やなぎみわ展 神話機械」 神奈川県民ホールギャラリー(10/20~12/1)
・「竹工芸名品展:ニューヨークのアビー・コレクション―メトロポリタン美術館所蔵」 東京国立近代美術館工芸館(~12/8)
・「描く、そして現れる―画家が彫刻を作るとき」 DIC川村記念美術館(~12/8)
・「ラウル・デュフィ展―絵画とテキスタイル・デザイン」 パナソニック汐留美術館(10/5~12/15)
・「カミーユ・アンロ|蛇を踏む」 東京オペラシティ アートギャラリー(10/16~12/15)
・「カルティエ、時の結晶」 国立新美術館(10/2~12/16)
・「建国300年 ヨーロッパの宝石箱リヒテンシュタイン 侯爵家の至宝展」 Bunkamuraザ・ミュージアム(10/12~12/23)
・「オランジュリー美術館コレクション ルノワールとパリに恋した12人の画家たち」 横浜美術館(~2020/1/13)
・「ゴッホ展」 上野の森美術館(10/11~2020/1/13)
・「アジアのイメージ―日本美術の『東洋憧憬』」 東京都庭園美術館(10/12~2020/1/13)
・「ルネ・ユイグのまなざし フランス絵画の精華―大様式の形成と変容」 東京富士美術館(10/5~2020/1/19)
・「印象派からその先へー世界に誇る吉野石膏コレクション展」 三菱一号館美術館(10/30~2020/1/20)
・「ハプスブルク展 600年にわたる帝国コレクションの歴史」 国立西洋美術館(10/19~2020/1/26)

ギャラリー

・「青山悟展 The Lonely Labourer」 ミヅマアートギャラリー(10/2~11/2)
・「アルフレッド・ジャー Lament of the Images」 スカイザバスハウス(10/4~11/2)
・「マルク・シャガール—夢を綴る」 ポーラ ミュージアム アネックス(10/4~11/4)
・「αMプロジェクト2019 東京計画2019 vol.3 vol.4 ミルク倉庫+ココナッツ」 ギャラリーαM(~11/9)
・「ヴァルダ・カイヴァーノ」 小山登美夫ギャラリー(10/11~11/9)
・「藤元明 陸の海ごみ」 ギャラリーA4(10/4~11/14)
・「日本のアートディレクション展 2019」 ギンザ・グラフィック・ギャラリー/クリエイションギャラリーG8(10/23~11/16)
・「竹村 京 Madeleine. V, Olympic, and my Garden」  タカ・イシイギャラリー東京(10/19~11/22)
・「ジェイ・チュン & キュウ・タケキ・マエダ セレクションによるグループ展」 資生堂ギャラリー(10/18~12/22)

まずは現代美術です。今年2月の高松市美術館を皮切りに、アーツ前橋、福島県立美術館と巡回してきたやなぎみわの個展が、神奈川県民ホールギャラリーで開催されます。



「やなぎみわ展 神話機械」@神奈川県民ホールギャラリー(10/20~12/1)

1967年に神戸で生まれ、「エレベーター・ガール」などの写真で評価を得た美術家のやなぎみわは、2010年から演劇プロジェクトをスタートさせると、日本各地を巡礼した野外劇「日輪の翼」といった舞台作品を発表してきました。


そしてやなぎみわは舞台作品と共に、日本神話をモチーフに桃を撮影した新作シリーズも制作しました。それが今回の展覧会で初めて公開されます。なお国内の美術館で個展が開かれるのは、2009年の「やなぎみわ マイ・グランドマザーズ」(東京都写真美術館)以来、約10年ぶりのことになります。待っていた方も多いかもしれません。

続いては西洋美術です。パナソニック汐留美術館にて「ラウル・デュフィ展―絵画とテキスタイル・デザイン」が行われます。



「ラウル・デュフィ展―絵画とテキスタイル・デザイン」@パナソニック汐留美術館(10/5~12/15)

フランスのフォーヴの画家として活動したラウル・デュフィは、海の風景や音楽的な主題の絵画を描きながら、リヨンの絹織物製造業ビアンキーニ=フェリエ社のために、約15年以上に渡ってテキスタイルのデザインを提供していました。



そのテキスタイルに着目したのが今回の展覧会で、デュフィデザインの衣装作品の他、プリント生地、そして絵画など、資料を含め約150点ほどが出展されます。

デュフィの回顧展といえば、2014年に「デュフィ展 絵筆が奏でる 色彩のメロディー」(Bunkamura ザ・ミュージアム)が行われました。同展においてもテキスタイルが出展されましたが、今回はデザインの仕事についてより突っ込んだ内容になるかもしれません。

この秋、最も注目を集める西洋絵画展になるのではないでしょうか。上野の森美術館で「ゴッホ展」がはじまります。



「ゴッホ展」@上野の森美術館(10/11~2020/1/13)

ともかく日本でも人気の画家だけに、過去、度々回顧展が開かれてきたゴッホですが、最近では2017年に「ゴッホ展 巡りゆく日本」が東京都美術館にて行われました。同展では日本の美術との関係を検証するため、ゴッホに影響を与えた浮世絵などを参照しながら、ゴッホの絵画を併せ見る構成となっていました。


一方で今回は、ハーグ派や印象派との影響から、いかにゴッホが自らの画風を築いたのかについて追いかける展示となります。そのために端的にゴッホの作品のみで構成されず、アントン・マウフェらのハーグ派や、モネやセザンヌらの印象派の画家の作品も出展されます。(ゴッホ40点、他の画家30点。)

何かとスペースに制約のある上野の森美術館のこともあり、早々から混雑することも十分に考えられます。当面は金曜、土曜の夜間開館が狙い目となりそうです。

それでは今月もどうぞ宜しくお願いします。
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2019年9月に見たい展覧会【桃源郷/バスキア/竹工芸名品展】

暑かった8月が過ぎたものの、残暑も厳しい日が続きます。いかがお過ごしでしょうか。

いよいよ秋の展覧会シーズンも開幕です。気になる展覧会をリストアップしてみました。

展覧会

・「マイセン動物園展」 パナソニック汐留美術館(~9/23)
・「日本のよろい」 東京国立博物館(~9/23)
・「1933年の室内装飾 朝香宮邸をめぐる建築素材と人びと」 東京都庭園美術館(~9/23)
・「嶋田忠 野生の瞬間 華麗なる鳥の世界」 東京都写真美術館(~9/23)
・「みんなのレオ・レオーニ展」 東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館(~9/29)
・「奥の細道330年 芭蕉」 出光美術館(~9/29)
・「生誕250年記念 歌川豊国―写楽を超えた男」 太田記念美術館(9/3~9/29)
・「しなやかな闘い ポーランド女性作家と映像 1970年代から現在へ」 東京都写真美術館(~10/14)
・「引込線/放射線」第19北斗ビル(9/8~10/14)
・「没後90年記念 岸田劉生展」 東京ステーションギャラリー(~10/20)
・「ミュシャと日本、日本とオルリク」 千葉市美術館(9/7~10/20)
・「慰霊のエンジニアリング」 TODA BUILDING(9/14〜10/20)
・「大観・春草・玉堂・龍子―日本画のパイオニア」 山種美術館(~10/27)
・「新創開館10周年記念 美しきいのち 日本・東洋の花鳥表現」 根津美術館(9/7~11/4)
・「北斎没後170年記念 茂木本家美術館の北斎名品展」 すみだ北斎美術館(9/10~11/4)
・「士 サムライ―天下太平を支えた人びと」 江戸東京博物館(9/14~11/4)
・「DECODE/出来事と記録―ポスト工業化社会の美術」 埼玉県立近代美術館(9/14~11/4)
・「黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部―美濃の茶陶」 サントリー美術館(9/4~11/10)
・「チェコ・デザイン 100年の旅」 世田谷美術館(9/14~11/10)
・「話しているのは誰? 現代美術に潜む文学」 国立新美術館(~11/11)
・「桃源郷展」 大倉集古館(9/12~11/17)
・「バスキア展 メイド・イン・ジャパン」 森アーツセンターギャラリー(9/21~11/17)
・「不思議の国のアリス展」 そごう美術館(9/21~11/17)
・「おかえり 『美しき明治』」 府中市美術館(9/14~12/1)
・「茶の湯の名碗 高麗茶碗」 三井記念美術館(9/14~12/1)
・「竹工芸名品展:ニューヨークのアビー・コレクション―メトロポリタン美術館所蔵」 東京国立近代美術館工芸館(9/13~12/8)
・「描く、そして現れる―画家が彫刻を作るとき」 DIC川村記念美術館(9/14~12/8)
・「コートールド美術館展 魅惑の印象派」 東京都美術館(9/10~12/15)
・「オランジュリー美術館コレクション ルノワールとパリに恋した12人の画家たち」 横浜美術館(9/21~2020/1/13)

ギャラリー

・「小早川秋聲展」 加島美術(~9/16)
・「竹中大工道具館企画展 木工藝 清雅を標に―人間国宝 須田賢司の仕事」 ギャラリーA4(~9/20)
・「第13回 shiseido art egg 遠藤薫展」 資生堂ギャラリー(~9/22)
・「青柳龍太|sign」 ギャラリー小柳(~9/27)
・「二つの魂の神話 ヴァサンタ ヨガナンタン写真展」 シャネル・ネクサス・ホール(9/3~9/29)
・「珠洲焼 – 中世日本海・黒のやきものグラフィック」 渋谷ヒカリエ8F(9/18~9/29)
・「栗林隆展」 アートフロントギャラリー(9/6~9月末)
・「有山達也展 音のかたち」 クリエイションギャラリーG8(~10/05)
・「シュテファン・バルケンホール」 小山登美夫ギャラリー(9/7~10/5)
・「利部志穂 マントルプルーム ― イザナミ、ペレの怒り。」 KAYOKOYUKI(9/7~10/6)
・「Sculptural Type コントラプンクト」 ギンザ・グラフィック・ギャラリー(~10/12)
・「法貴信也展」 タカ・イシイギャラリー東京(9/14~10/12)
・「戸谷成雄 視線体」 シュウゴアーツ(9/21~10/19)
・「αMプロジェクト2019 東京計画2019 vol.3 vol.4 ミルク倉庫+ココナッツ」 ギャラリーαM(9/28~11/9)
・「椅子の神様 宮本茂紀の仕事」 LIXILギャラリー(9/5~11/23)
・「アーキテクテン・デ・ヴィルダー・ヴィンク・タユー展」 TOTOギャラリー・間(9/13~11/24)

まずはリニューアルオープンの情報です。2014年4月より増改築工事のため休館していた大倉集古館が、約5年間に及んだ工事を終え、この9月12日に再開館します。



「桃源郷展」@大倉集古館(9/12~11/17)

それを記念して行われるのが「桃源郷展」で、新収蔵品の呉春の「武陵桃源図屏風」がお披露目される他、蕪村や周辺の画家が描いた桃源郷の世界を紹介します。また国宝「普賢菩薩騎象像」や横山大観の「夜桜」など、同館のコレクションもあわせて公開されます。


増改築に際しては建物の外観に手をつけず、新たに地下階を増築して収蔵庫機能などを移転させたそうです。そしてリニューアルを祝うに相応しく、桃は古くからお目出度い存在として尊ばれたモチーフでもあります。以前とは異なった環境で、お馴染みの名品を楽しめるのかもしれません。

続いて現代美術です。1960年、ニューヨークに生まれたアーティスト、ジャン=ミシェル・バスキアの日本初の大規模な回顧展が、森アーツセンターギャラリーで開催されます。



「バスキア展 メイド・イン・ジャパン」@森アーツセンターギャラリー(9/21~11/17)

1980年代のアメリカのアートシーンで活動し、1988年に27歳で薬物の過剰摂取で死去したバスキアは、約10年間あまりの間に2000点を超すドローイングや1000点以上の絵画を描き、同時代のみならず、今日へ至るアートやファッションなどにも大きな影響を与えました。

そしてバスキアは日本の世相を反映したモチーフなどの作品も制作し、度々来日しては複数回の個展やグループ展を開催しました。今回のバスキア展では、絵画やドローイング、それに立体など約130点が公開される上、日本とも関わりのある作品も出展されます。


近年、何かと日本でも知名度の高いバスキアですが、実際に作品をまとめて見られる機会は殆どありませんでした。現在、森美術館での塩田千春展も人気を博していますが、同様にバスキア展も話題を集めるのではないでしょうか。9月末より10月にかけての六本木ヒルズは、2つの大規模な現代美術展で大いに賑わいそうです。

最後は竹工芸です。東京国立近代美術館工芸館にて「竹工芸名品展:ニューヨークのアビー・コレクション」が行われます。



「竹工芸名品展:ニューヨークのアビー・コレクション―メトロポリタン美術館所蔵」@東京国立近代美術館工芸館(9/13~12/8)

アメリカの美術コレクター、アビー夫妻は、日本の近現代の竹工芸品を蒐集し、有数のコレクションを築き上げました。そのコレクションが里帰りするのが今回の展覧会で、約75点の竹工芸とともに、工芸館所蔵の近代工芸の作品があわせて展示されます。


なお本展は、2017年から翌年にメトロポリタン美術館でも開催され、47万名以上を動員するなどして注目を浴びました。いわゆる国際巡回展(国内では先行して大分県立美術館でも開催。)でもありますが、このところ関心も高まっている竹工芸を愛でる良い機会となりそうです。



夏休み中は特に遠出も出来ませんでしたが、近場ながらも水戸芸術館の「大竹伸朗 ビル景」、そしてポーラ美術館の「シンコペーション:世紀の巨匠たちと現代アート」、それに小田原にある杉本博司の手がけた「江の浦測候所」などを鑑賞、ないし見学してきました。追ってブログでもまとめたいと思います。

それでは今月もどうぞ宜しくお願いします。
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2019年8月に見たい展覧会【美ら島からの染と織/円山応挙から近代京都画壇/加藤泉】

関東では長い梅雨が明け、一転して最高気温が35度を超えるなどの猛暑が続いています。連日、うだる様な暑さゆえに、体調など崩されていませんでしょうか。

7月に見た展示では、六本木の2つの展覧会、「クリスチャン・ボルタンスキー展」(国立新美術館)と「塩田千春展:魂がふるえる」(森美術館)、それに上野での「伊庭靖子展 まなざしのあわい」(東京都美術館)など、各現代美術家の個展が印象に残りました。

8月にスタートする展覧会はさほど多くありません。今月に気になる展覧会をリストアップしてみました。

展覧会

・「山口蓬春展」 日本橋高島屋S.C本館8階ホール(8/7~8/19)
・「山種美術館 日本画アワード」 山種美術館(8/10~8/23)
・「唐三彩 ―シルクロードの至宝」 出光美術館(~8/25)
・「江戸のスポーツと東京オリンピック」江戸東京博物館(~8/25)
・「第8回 新鋭作家展 あ、これ、ウチのことです。」 川口市立アートギャラリー・アトリア(~8/25)
・「異世界への誘い ―妖怪・霊界・異国」 太田記念美術館(8/2~8/28)
・「谷中圓朝まつり 幽霊画展」 谷中・全生庵(〜8/31)
・「高橋秀+藤田桜――素敵なふたり」 世田谷美術館(~9/1)
・「日本の素朴絵」 三井記念美術館(~9/1)
・「MAY I START?計良宏文の越境するヘアメイク」 埼玉県立近代美術館(~9/1)
・「原三溪の美術 伝説の大コレクション」 横浜美術館(~9/1)
・「太田喜二郎と藤井厚二-日本の光を追い求めた画家と建築家」 目黒区美術館(~9/8)
・「国立西洋美術館開館60周年記念 松方コレクション展」 国立西洋美術館(~9/23)
・「モダン・ウーマン―フィンランド美術を彩った女性芸術家たち」 国立西洋美術館(~9/23)
・「マイセン動物園展」 パナソニック汐留美術館(~9/23)
・「日本のよろい」 東京国立博物館(~9/23)
・「1933年の室内装飾 朝香宮邸をめぐる建築素材と人びと」 東京都庭園美術館(~9/23)
・「嶋田忠 野生の瞬間 華麗なる鳥の世界」 東京都写真美術館(~9/23)
・「美ら島からの染と織―色と文様のマジック」 渋谷区立松濤美術館(8/10~9/23)
・「みんなのミュシャ」 Bunkamura ザ・ミュージアム(~9/29)
・「みんなのレオ・レオーニ展」 東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館(~9/29)
・「円山応挙から近代京都画壇へ」 東京藝術大学大学美術館(8/3~9/29)
・「大竹伸朗 ビル景 1978-2019」 水戸芸術館(~10/6)
・「しなやかな闘い ポーランド女性作家と映像 1970年代から現在へ」 東京都写真美術館(8/14~10/14)
・「あそびのじかん」 東京都現代美術館(~10/20)
・「MOTサテライト2019 ひろがる地図」 東京都現代美術館およびMOTスポット(8/3~10/20)
・「塩田千春展:魂がふるえる」 森美術館(~10/27)
・「虫展 デザインのお手本」21_21 DESIGN SIGHT(~11/4)
・「シンコペーション:世紀の巨匠たちと現代アート」 ポーラ美術館(8/10~12/1)
・「加藤泉 – LIKE A ROLLING SNOWBALL」 原美術館(8/10~2020/1/13)

ギャラリー

・「風能奈々 触っても触っても遠い」 小山登美夫ギャラリー(~8/24)
・「第13回 shiseido art egg 小林清乃展」 資生堂ギャラリー(8/2~8/25)
・「宮島達男 Counting」 Akio Nagasawa Gallery Ginza(~8/31)
・「中村弘峰 SUMMER SPIRITS」 ポーラ ミュージアム アネックス(8/8~9/1)
・「中谷ミチコ 個展」 アートフロントギャラリー(8/9~9/1)
・「毛利悠子/David Horvitz 『summer rains』」 SCAI THE BATHHOUSE(~9/7)
・「川島小鳥 写真展:まだなまえがないものがすき」 キヤノンギャラリーS(~9/9)
・「αMプロジェクト2019 東京計画2019 vol.3 Urban Research Group」 ギャラリーαM(~9/14)
・「竹中大工道具館企画展 木工藝 清雅を標に―人間国宝 須田賢司の仕事」 ギャラリーA4(8/2~9/20)
・「青柳龍太|sign」 ギャラリー小柳(8/3~9/27)

まずは染色の展覧会です。渋谷区立松涛美術館にて「美ら島からの染と織―色と文様のマジック」が開催されます。



「美ら島からの染と織―色と文様のマジック」@渋谷区立松濤美術館(8/10~9/23)

これは琉球に花開いた紅型をはじめとする染色文化を紹介するもので、沖縄県立博物館・美術館の他、那覇市歴史博物館のコレクションなど、制作地が全て沖縄に由来する作品が一堂に介します。また古い時代の染色だけでなく、現代の人間国宝や名工らの作品も合わせて紹介されます。


琉球に関した展覧会といえば、2018年にサントリー美術館で「琉球 美の宝庫」展があり、そこでも多くの染色が出展され、朱やオレンジなどの色鮮やかな紅型に魅了されたものでした。今回もどこか涼しげで、また華やいだ琉球の染色を愛でることが出来そうです。

続いては日本美術です。東京藝術大学大学美術館にて「円山応挙から近代京都画壇へ」が行われます。



「円山応挙から近代京都画壇へ」@東京藝術大学大学美術館(8/3~9/29)

18世紀の京都では、写生画で名を馳せた応挙による円山派とともに、応挙に師事した呉春が四条派を形成し、円山・四条派として、近代へ至るまでの京都の中心的な画壇の地位を占めました。


その応挙や呉春にはじまる円山・四条派の系譜を近代まで引きつけて紹介する展覧会で、いわゆる江戸絵画のみならず、竹内栖鳳、山元春挙、上村松園らの作品なども出展されます。また兵庫県香美町にある応挙寺こそ大乗寺に描かれた、応挙や呉春らによる障壁画の空間再現展示も見どころとなりそうです。

ラストは現代美術です。独特な木彫の人物表現などで知られる作家、加藤泉の個展が原美術館にてはじまります。



「加藤泉 – LIKE A ROLLING SNOWBALL」@原美術館(8/10~2020/1/13)

1990年代より絵画を描き、2000年代に入ると彫刻を制作した加藤は、近年、木彫のみならず、石やソフトビニールなどの多様な素材を用いては、インスタレーションを手がけるようになりました。


その加藤の新作の絵画、彫刻約30点からなる展示で、意外にも東京の美術館としては初めての個展でもあります。おそらくは旧邸宅の建築空間とのマッチングにも注目が集まるのではないでしょうか。

全国各地では芸術祭シーズンに入りました。少なくとも8月には「あいちトリエンナーレ2019 情の時代」(8/1~10/14)、「リボーンアート・フェスティバル 2019」(8/3〜9/29)、「中之条ビエンナーレ」(8/24〜9/23)、それに「瀬戸内国際芸術祭 2019」の夏会期(〜8/25)などが開催されます。夏休みを兼ねて遠征される方も多いかもしれません。

今年で開館43周年を迎え、7月末で累計入館者数が600万人に達した東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館の移転、リニューアルオープンが発表されました。



2020年5月28日、「東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館」は、「SOMPO美術館」に生まれ変わります。(PDF)

新美術館は「SOMPO美術館」と名を変え、現在の損保ジャパン日本興亜本社ビル敷地内に建築中の新たな建物に移転します。それを祝し、開館記念展として以下の展覧会が行われます。

開館記念展Ⅰ:珠玉のコレクション 2020年5月28日(木)~7月5日(日)
開館記念展Ⅱ:秘蔵の東郷青児 2020年7月18日(土)~9月4日(金)

新しい美術館は6階建てです。展示フロアは3層に渡り、4メートルの天井高が確保されるなど、いかんせん空間に制約のあった現美術館よりもスケールアップします。詳しくは開館案内(PDF)をご参照下さい。


それでは今月もどうぞ宜しくお願いします。
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