2015年 私が観た展覧会 ベスト10

年末恒例、独断と偏見による私的ベスト企画です。私が今年観た展覧会のベスト10をあげてみました。

2015年 私が観た展覧会 ベスト10

1.「ヴォルフガング・ティルマンス Your Body is Yours」 国立国際美術館



国内の美術館では11年ぶりとなるティルマンスの個展。初台のオペラシティ以来でした。ティルマンスの視線はあらゆる現象を捉えて離しません。二巡三巡しても受け止めきれないほどに膨大です。まるで大海を彷徨うかのごとく写真の中へ投げ込まれた体験は実に鮮烈でした。

2.「グエルチーノ展 よみがえるバロックの画家」 国立西洋美術館



17世紀イタリアのバロック芸術を代表するグエルチーノ。もし宗教的な体験があるとするならば、グエルチーノの絵画を見ている時の感動に近いかもしれません。祭壇画が生み出す荘厳な空間は圧巻の一言でした。

3.「No Museum, No Life?ーこれからの美術館事典 国立美術館コレクションによる展覧会」 東京国立近代美術館



ともかく作品の選定ないし並びが面白く、見るだけでなく、読み解くことに関しても楽しめる展覧会でした。また美術館の収蔵庫、調査や研究機能など、普段目にする機会の少ない裏側について触れていたのも印象に残りました。

4.「ヂョン・ヨンドゥ 地上の道のように」 水戸芸術館



現実と虚構がない交ぜになった映像世界。見えることと見えないことを関係について考えさせられる内容でした。白眉はラストの「マジシャンの散歩」です。ヨンドゥの生み出したファンタジーの中を練り歩くような構成も魅惑的でした。

5.「ディン・Q・レ展:明日への記憶」 森美術館



ベトナム人の社会や歴史の様々な問題をあぶり出すディン・Q・レ。ベトナム戦争終結40年に際しての個展でした。社会を常に批判的に見据えながらも、何かを声高に叫ぶのではなく、いわゆる美術表現として器用に落とし込んでいる点にも惹かれました。

6.「尾形光琳300年忌記念特別展 燕子花と紅白梅 光琳アート 光琳と現代美術」 MOA美術館



琳派400年のメモリアルだった今年。全ての琳派展を見ることは出来ませんでしたが、最も発見の多かったのがMOAの光琳アートでした。やはり特筆すべきは近、現代美術への展開です。琳派がどのように後の美術に影響を与えたのか。ひいては琳派とは何かを考えさせる企画でもありました。

7.「石田尚志 渦まく光」 横浜美術館



待ちに待った石田尚志の大規模な個展でした。改めて「フーガの技法」が素晴らしい。バッハの音楽を昇華させています。一方で近作では実験的な取り組みもありました。終始、燃え上がる炎とも、また生き物の触手のようにも広がる線の軌跡、その躍動感に酔いしれた展覧会でした。

8.「オットー・クンツリ展」 東京都庭園美術館



まさかコンテンポラリー・ジュエリーにこれほど惹かれるとは思いませんでした。単にジュエリーの造形だけでなく、そこに込められた斬新な発想にも興味深い。また建物との相乗効果を呼んでいた本館、そしてジュエリー自体の魅力を引き立てた新館とのメリハリのある構成も優れていました。

9.「ジョン・ウッド&ポール・ハリソン 説明しにくいこともある」 NTTインターコミュニケーション・センター(ICC)



どこか不条理なまでの世界を描きながら、何やらコミカルで、肩の力を抜いて見入ってしまうような映像ばかりでした。身体を張ってのパフォーマンスにはにやりとさせられることも少なくありません。そして奇妙にアナログで人懐っこい。直感的にも楽しめました。

10.「『月映(つくはえ)』田中恭吉・藤森静雄・恩地孝四郎」 東京ステーションギャラリー



まだ20代だった3人の美術学生が生み出した雑誌、「月映」。展開はあまりにもドラマチックです。若すぎる田中の死と終刊。しかし生み出された詩画は永遠に残りました。以前から強く惹かれていた「冬虫夏草」を描いた田中の作品を多数見られたのも収穫でした。

次点. 「村野藤吾の建築ー模型が語る豊饒な世界」 目黒区美術館
 
いかがでしょうか。またベストには入れなかったものの、特に印象に深かった展覧会は以下の通りです。(順不同)

「プラド美術館展ースペイン宮廷 美への情熱」 三菱一号館美術館
「春画展」 永青文庫
「舟越保武彫刻展 まなざしの向こうに」 練馬区立美術館
「開館20周年記念 没後20年 ルーシー・リー展」 千葉市美術館
「画鬼・暁斎ーKYOSAI 幕末明治のスター絵師と弟子コンドル」 三菱一号館美術館
「尾形光琳300年忌記念特別展 燕子花と紅白梅 光琳デザインの秘密」 根津美術館
「大ニセモノ博覧会-贋造と模倣の文化史」 国立歴史民俗博物館
「新印象派ー光と色のドラマ」 東京都美術館
「村上隆の五百羅漢図展」 森美術館
「シカゴ ウェストンコレクション 肉筆浮世絵ー美の競艶」 上野の森美術館
「坂茂ー紙の建築と災害支援」 世田谷文化生活情報センター生活工房
「スペインの彫刻家フリオ・ゴンサレスーピカソに鉄彫刻を教えた男」 世田谷美術館
「鴻池朋子展 根源的暴力」 神奈川県民ホールギャラリー
「縫い―その造形の魅力」 うらわ美術館
「杉本博司 趣味と芸術ー味占郷/今昔三部作」 千葉市美術館
「逆境の絵師 久隅守景」 サントリー美術館
「ニキ・ド・サンファル展」 国立新美術館
「MOMATコレクション 特集:藤田嗣治、全所蔵作品展示。」 東京国立近代美術館
「そこにある、時間ードイツ銀行コレクションの現代写真」 原美術館
「最後の印象派 1900-20's Paris」 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
「伊豆の長八ー幕末・明治の空前絶後の鏝絵師」 武蔵野市立吉祥寺美術館
「引込線 2015」 旧所沢市立第2学校給食センター
「白鳳ー花ひらく仏教美術」 奈良国立博物館
「躍動と回帰ー桃山の美術」 出光美術館
「おとなもこどもも考える ここはだれの場所?」 東京都現代美術館
「蔡國強展:帰去来」 横浜美術館
「うらめしや~、冥途のみやげ 全生庵・三遊亭圓朝 幽霊画コレクションを中心に」 東京藝術大学大学美術館
「衣服が語る戦争」 文化学園服飾博物館
「浮世絵師 歌川国芳」 そごう美術館
「鈴木理策写真展 意識の流れ」 東京オペラシティアートギャラリー
「異端の作曲家 エリック・サティとその時代展」 Bunkamura ザ・ミュージアム
「サイ トゥオンブリー:紙の作品、50年の軌跡」 原美術館
「ヘレン・シャルフベックー魂のまなざし」 東京藝術大学大学美術館
「着想のマエストロ 乾山見参!」 サントリー美術館
「マグリット展」 国立新美術館
「ドラッカー・コレクション 珠玉の水墨画 『マネジメントの父』が愛した日本の美」 千葉市美術館
「鎌倉からはじまった。1951-2016 PART1:1985-2016」 神奈川県立近代美術館鎌倉館
「山口小夜子  未来を着る人」 東京都現代美術館
「速水御舟とその周辺ー大正期日本画の俊英たち」 世田谷美術館
「生誕110年 片岡球子展」 東京国立近代美術館
「生誕三百年 同い年の天才絵師 若冲と蕪村」 サントリー美術館
「生誕110年 海老原喜之助展」 横須賀美術館
「人と自然のあいだの精神と芸術 スサノヲの到来」 DIC川村記念美術館
「山口晃展 前に下がる 下を仰ぐ」 水戸芸術館
「1930-1985 没後30年 ロベール・クートラス展」 渋谷区立松濤美術館
「ホイッスラー展」 横浜美術館

かなり多くなってしまいました。うちあえて挙げるとするなら、開催自体が快挙でもある「春画展」、そして通常疎んじられるニセモノにこそ価値を見出した「大ニセモノ博覧会」、また作品はもとより、一人の女性、いやアーティストとしての生き様にも共感を覚えた「ニキ・ド・サンファル展」、「山口小夜子展」、「ヘレン・シャルフベック展」などが心に深く残りました。

絵画だけでなく、数多くの資料を交えた「片岡球子展」や「海老原喜之助展」も回顧展として充実していました。ほか奈良だからこそ実現し得た「白鳳展」をはじめ、その機知に翻弄されつつ魅了された「山口晃展」、そしてまさに今、六本木で強烈な存在感を放っている「村上隆展」なども一期一会の展覧会として挙げられると思います。「マグリット展」もよくぞあれほどの主要作品が集まったものだと感心しました。

戦後70年ということで、戦争に関連した展示も目立っていました。なかなか追いかけられなかったのは残念でしたが、うち藤田の戦争画を初めて全点見せた「MOMATコレクション 特集:藤田嗣治、全所蔵作品展示。」や、服飾という身近な素材から戦争との関係を追った「衣服が語る戦争」などは大変に興味深かったことを覚えています。

今年は比較的展覧会をコンスタントに廻れたと思います。皆さんはこの一年、どのような美術との出会いがありましたでしょうか。心にとまった展示などについてコメントかTBをいただけたら嬉しいです。

本エントリをもって年内の更新を終わります。今年も「はろるど」とお付き合い下さりどうもありがとうございました。それではどうか良いお年をお迎え下さい。

*過去の展覧会ベスト10
2014年2013年2012年2011年2010年2009年2008年2007年2006年2005年2004年その2。2003年も含む。)
コメント( 8 )|Trackback( 12 )
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コメント
 
 
 
今年も (M。)
2015-12-31 15:43:36
楽しく拝見させて頂きました。
また、中村酸とのウエブ対談も。

私も選びました。http://s.ameblo.jp/mar518/entry-12112017675.html
今年は非常に選ぶの苦労しました、
それも各展覧会、色々工夫がされていたからかなと。
来年も良い展覧会に出会えますこと、また記事を楽しみにしています。
 
 
 
TBさせていただきましたm(_ _)m (PLAstica.)
2015-12-31 20:04:04
先日の「あなたが選ぶ〜」に引き続き、はろるどさん視点のランキング楽しみに拝見させていただきました。
1位の展覧会は知らなかったので、展覧会記事を読ませていただきながら観てみたかったなと思っています。

来年も記事を楽しみにしています!
 
 
 
Unknown (ホライズン)
2016-01-01 20:30:12
昨年末の「あなたが選ぶ展覧会2015」の動画を後日拝見させていただき、とても勉強になることが多く楽しい時間でした。
限られた時間の中で展覧会を観る場合、どうしても自分の先入観や好みが最優先してしまいがちですが、もう少し視野を広げればもっと興味深いものや好きになれる可能性を秘めたものが多く開催されている事に改めて気づかされます。
今年も美術展を選ぶ一つの指南役として、こちらのブログの記事を楽しみにしております。

本年もよろしくお願いします。
 
 
 
Unknown (SH)
2016-01-03 14:47:16
明けましておめでとうございます。
トラックバックさせていただきました。

私も「光琳アート」の現代美術への展開は興味深く感じました。
また、「No Museum, No Life?」展の展示の仕方による、新たな発見というのが、よかったです。
 
 
 
こちらを拝見していたら… (花田あや子)
2016-01-03 23:44:38
「鈴木理策写真展 意識の流れ」でのことを思い出しました。この作品は作者の琴線に触れたものとして切り取られているからこそ美しいと感じるだけで実際に同じ景色の中に立った時、自分の力でも美しいと感じることができるのかな…とそんなことを会場を何周もしているうちにぼんやり思いました。それまでの絵画展等では味わったことのない気持ちだったのですが、実物が存在する写真だからこその感想だったのかな…と今になってやっと思い至りました。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2016-01-05 18:40:58
@M。さん

あけましておめでとうございます。

TBありがとうございました。またイベントもご視聴くださりどうもありがとうございます。

こうして振り返ると展覧会のことを色々思い出しますよね。
後ほどリンク先にもお伺いします。

今年もどうぞ宜しくお願いします。


@PLAstica.さん

あけましておめでとうございます。
コメントありがとうございます。

一位のティルマンスは自分でも意外なほど惹かれました。
また今年も素晴らしい展覧会に出会いたいものです。

今年もどうぞ宜しくお願いします。


@ホライズンさん

あけましておめでとうございます。
イベントの動画を見てくださりどうもありがとうございます。
私ももう少し視野を広げて色々と見ていければと思うことばかりです。

拙いブログで恐縮ですが、今後ともどうぞ宜しくお願いいたします。


@SHさん

あけましておめでとうございます。
TBありがとうございます。

光琳アート、面白かったですよね。
No Museumは掘り下げもさることながら、私のような一般向けにも分りやすい内容だったのが良かったとも思いました。


@花田さま

あけましておめでとうございます。
いつもコメントをありがとうございます。

理策展、会場を巡っていると、確かに色々なことを考えさせられました。
作者の琴線、確かに実際の場に立った時、理策さんの目を追うのは難しいかもしれません。
だからこそハッとさせられる面も少なくないですよね。

今年も変わらずに宜しくお願いします。
 
 
 
はじめまして (yunemoko)
2016-01-07 15:14:50
初めてコメントさせて頂きます!自分のブログで2015年のランキングをつけたものの、他の皆さんはどうなのだろうー?とドギマギしながら楽しく拝見しました。違っててもいいとわかっていながらも同じ展覧会があると嬉しいものですね。同じ時代に同じ作品を見て感動している方が日本にいっぱいいると幸せな気持ちになります!またお邪魔させていただきます!
 
 
 
Unknown (はろるど)
2016-01-14 21:59:48
@yunemokoさん

こんばんは。コメントをありがとうございました。
ランキング、みなさん違っていて楽しいですよね。

またぜひ遊びにいらしてください!
 
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