2014年 私が観た展覧会 ベスト10

年末恒例、独断と偏見による私的ベスト企画です。今年私が観た展覧会のベスト10をあげてみました。

2014年 私が観た展覧会 ベスト10

1.「ジャン・フォートリエ展」 東京ステーションギャラリー



前々から惹かれていたフォートリエの回顧展にようやく接することが出来ました。初期のレアリスムに驚き、「人質の頭部」におののき、また後の抽象的な「黒の青」などに心打たれる。時間軸で追うことで画風の変遷も辿れたのも大きなポイントでした。レンガ壁の展示室とフォートリエの作品の相性も良かった気がします。また一人、かけがえのない画家と出会えました。

2.「ダレン・アーモンド 追考」 水戸芸術館



全体が一つの物語を紡ぐような構成にも魅了された展覧会でした。最初と最後でテキストと映像のメッセージが輪を描くように繋がります。また僧侶の修行を捉えた「Sometimes Still」や生命賛歌ともとれる「All Things Pass」の映像も端的に素晴らしい。展示室を何周もしては作品世界を堪能しました。

3.「さわひらき」 東京オペラシティアートギャラリー



さわひらきの新たな展開を見る展示ではなかったでしょうか。飛行機の飛び交う幻想世界のみを期待すると、良い意味で裏切られます。テーマは多面的でかつ重層的です。深化という言葉が相応しいかもしれません。オペラシティのスペースを効果的に利用していたのも好印象でした。

4.「ウィレム・デ・クーニング展」 ブリヂストン美術館



テーマ展ということで、点数こそ少なめでしたが、国内では紹介されないデ・クーニングを一定度見られただけでも満足というものです。生の画肌は図版から到底分かり得ないほど熱気を帯びていました。それにデ・クーニングだけでなく、主に現代の抽象表現をピックアップしたコレクション展との連携も見事でした。

5.「名画を切り、名器を継ぐ」 根津美術館



ある意味でタブーに挑戦した企画だったと思います。どのような意図であれ、古美術品の「切って、貼った」が、作品にどのような影響をもたらしていたのか。改変は思いの外に多様で、時に作品の価値を決めてしまいます。カスタマイズという言葉は適切かどうか分かりません。ただそれでも切り、継ぐ際における意匠の機知やアイデアに驚かされました。

6.「ヴァロットン展」 三菱一号館美術館



かつてオルセー展で見た「ボール」が忘れられなかったヴァロットンの単独での回顧展です。「夕食、ランプの光」や「貞節なシュザンヌ」など、どこか不穏でかつ人間の心理劇を捉えたかのような絵画がすこぶる面白い。裸婦像に見られる画家のフェティシズムも独特です。時に「変態」とも称されるヴァロットンの奇異な魅力に虜となりました。

7.「戦後日本住宅伝説」 埼玉県立近代美術館



派手さはありませんでしたが、50~70年代の建築のみにスポットを当てた興味深い建築展でした。一口に住宅と言っても多様、建築家の個性が如実にも表れます。自らの生活経験に引き寄せて「住みたい家」を探して歩くのも楽しいものでした。

8.「菱田春草展」 東京国立近代美術館



都内では42年ぶりとなる大回顧展です。新出を含めて全100点超もの作品が揃いました。また近年の春草の作品研究を紹介した図録の出来も特筆に値します。このスケールでの春草展はもう見ることが出来ないかもしれない。そう思ってしまうほどに質量とも充実した春草展でした。

9.「松林桂月展」 練馬区立美術館



まさか松林桂月がこれほど魅惑的な日本画家とは知りませんでした。事前にはチラシ表紙の「春宵花影」程度しか知りませんでしたが、文人画しかり、琳派を志向した作品など、画業は思いの外に多彩です。そしていずれも趣き深い。情緒的でもあります。また妻、雪貞の花卉画も殊更に美しいものでした。

10.「木島櫻谷展」 泉屋博古館分館



「このしまおうこく」。この日本画家の魅力を関東で初めて知らしめた展覧会だったのではないでしょうか。代表的な「寒月」のみならず、何と言っても狐やライオンなど、動物を描いた作品がすこぶるに佳い。いずれの動物も眼差しは優しく、見ていると思わずほっとしてしまいます。住友家に伝来した装飾的な屏風絵も雅やかでした。

次点.「光琳を慕う 中村芳中」 千葉市美術館

如何でしょうか。上位に現代美術の展覧会、以下、西洋美術、建築展と並び、近代日本画、江戸絵画展と続くランキングとなりました。

なおベストには入れなかったものの、特に印象深かった展覧会は以下の通りです。(順不同)

「デュフィ展」 Bunkamura ザ・ミュージアム
「赤瀬川原平の芸術原論」 千葉市美術館
「鈴木康広展 近所の地球」 水戸芸術館
「輝ける金と銀ー琳派から加山又造まで」 山種美術館
「超絶技巧!明治工芸の粋」 三井記念美術館
「オルセー美術館展 印象派の誕生」 国立新美術館
「清麿」 根津美術館
「シャヴァンヌ展」 Bunkamura ザ・ミュージアム
「現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展」 東京国立近代美術館
「東北のオカザリー神宿りの紙飾り」 多摩美術大学美術館
「内藤礼 信の感情」 東京都庭園美術館
「イメージの力ー国立民族学博物館コレクションにさぐる」 国立新美術館
「ザ・ビューティフル」 三菱一号館美術館
「ラファエル前派展」 森アーツセンターギャラリー
「メイド・イン・ジャパン南部鉄器」 パナソニック汐留ミュージアム
「白絵展」 神奈川県立歴史博物館
「第17回 岡本太郎現代芸術賞展」 川崎市岡本太郎美術館
「ミヒャエル・ボレマンス:アドバンテージ」 原美術館
「佐藤時啓 光ー呼吸」 東京都写真美術館
「ヨコハマトリンナーレ2014」 横浜美術館・新港ピア
「ニコラ・ビュフ:ポリフィーロの夢」 原美術館
「竹尾ペーパーショウ2014」 TOLOT/heuristic SHINONOME
「Plastic?/Plastic! 高度経済成長とプラスチック」 松戸市立博物館
「観音の里の祈りとくらし展」 東京藝術大学大学美術館
「101年目のロバート・キャパ」 東京都写真美術館
「コレクション リコレクションVOL.3 山口長男/コレクションは語る」 DIC川村記念美術館
「野口哲哉展ー野口哲哉の武者分類図鑑」 練馬区立美術館

文化村の2つの展示、「デュフィ展」と「シャヴァンヌ展」は、制約のあるスペースではあるものの、ともに充実した作品の揃った最良の回顧展ではなかったでしょうか。「オルセー展」は毎度のことながらコレクションが充実極まりない。やはり地力があります。また一号館の「ザ・ビューティフル」と森アーツの「ラファエル前派展」は二つあわせて見ることでより内容が深まりました。こうした連携の企画展、ひょっとするとこれからも増えていくかもしれません。

山種美術館の「輝ける金と銀」は、技法サンプルなど、日本画の技術的な面について突っ込んで紹介していたのが印象的でした。また多摩美の「東北のオカザリ」と芸大の「観音の里の祈り」は、普段、なかなか目を向けにくい地域の芸術を丁寧に取り上げた展覧会でした。

三井記念の「超絶技巧!明治工芸の粋」や神奈川歴博の「白絵」は、作品の切り口や見せ方に面白さを感じました。またパナソニックの「南部鉄器」は展示空間からして目を見張るものがありました。それに日本のプラスチックの普及史を追った松戸市博の「高度経済成長とプラスチック」も異色の内容で楽しめました。

「ニコラ・ビュフ展」と「ボレマンス展」は原美術館の空間との相性も良かったのではないでしょうか。また同じく庭園美術館の「内藤礼展」も歴史ある空間を巧みに活かした展示でした。「ひと」に誘われて美術館の細部までに目を凝らす体験、ともすると今までで一番、丹念に建物の中を巡り歩いたような気がします。

「赤瀬川原平展」は千葉市美ならではの圧倒的な物量で作家の全貌に迫る回顧展でした。また水戸芸術館の「鈴木康広展」は作品はもとより、それを生み出す作家のアイデアそのものにも強く感心させられる展覧会でした。鈴木さん本人による2時間のトークも聞き応えありました。

毎年あげていたギャラリーのベスト10はお休みします。と言うのも、展示自体はそれなりに見ているつもりですが、アウトプット、つまり感想にあまり残せていないからです。

とは言うものの、ギャラリーαMの安村崇や八幡亜樹展、それに資生堂ギャラリーの加藤俊輔展や「たよりない現実展」、またアルマスの横山奈美展、カオスラウンジの「キャラクラッシュ展」などはとても印象に残りました。常に新しく、刺激的な美術に接することが出来るのは、やはりギャラリーの展示だと思うことも少なくありません。来年も足繁く通いたいです。

皆さんは今年、どのような美術との出会いがありましたでしょうか。印象深かった展示などについてコメントかTBをいただけたら嬉しいです。

このエントリをもって年内の更新を終わります。今年も「はろるど」とお付き合い下さりどうもありがとうございました。それではどうか良いお年をお迎え下さい。

*過去の展覧会ベスト10
2013年2012年2011年2010年2009年2008年2007年2006年2005年2004年その2。2003年も含む。)
コメント( 10 )|Trackback( 17 )
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コメント
 
 
 
Unknown (Tak)
2014-12-31 14:50:29
こんにちは。

来年は琳派イヤー、益々選ぶの難しくなりそうですね~
まずは、岡田美術館展そしてMOA美術館から観て参りましょう。

来年もどうぞ宜しくお願い致します。
 
 
 
ベストテン 2014 (とら)
2014-12-31 15:10:45
ハロルドさん、こんにちは。
ノミネート展覧会の数が多くて10本に絞るのは「気合だ!」になってしまいます。フォートリエ、デ・クーニング、名画を切り・名器を継ぐ、松林桂月、木島櫻谷、中村芳中は、私の最終候補にの入っていました。菱田春草やヴァロットンは文句のつけようのない展覧会でしたね。
来年もよろしくお願いします。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2014-12-31 15:25:44
@takさん

こんにちは。

>琳派イヤー

そうですね。もう今からワクワクどきどき…

三越の岡田コレクションも楽しみにしております。

>MOA

発表会のことをまとめなくては!

来年も宜しくお願いします。


@とらさん

こんにちは。

10本に絞るのは確かに難しいですよね。フォートリエは前々から凄く好きな画家でもあったので、ともかくはあの点数を見られて感無量でした。
日本画家にも良い回顧展が多かったように思います。

こちらこそ来年も宜しくお願いします。
 
 
 
Unknown (道楽ねずみことFrederick Maus)
2014-12-31 16:54:58
はろるどさんこんばんは。
TB有り難うございました。こちらもTBをお願いしました。

デ・クーニングは本当に良かったですね。
私も2回ほど行きまして、随分と時間をかけて見ました。その時のブリジストンの常設展も、デ・クーニング展と相性のいい絵が中心で、とても良かったと思いました。

はろるどさんのベスト3は行ったことのない美術展ばかりで勉強になりました。

どうかよい年をお迎え下さい。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2014-12-31 19:05:59
@Frederick Mausさん

こんばんは。コメントとTBをありがとうございます。

デ・クーニングは私も2回ほど行きました。
そして仰るように常設との連携が素晴らしかったです。

国内ではなかなかまとまって見る機会がないだけに、
本当に貴重な展覧会だと思いました。
 
 
 
Unknown (SH)
2015-01-01 07:12:22
はろるどさん、明けましておめでとうございます。

TB頂き、ありがとうございます。
こちらからもさせていただきました。
東京在住ではないので、あまり見ることのできないような展覧会をあげていらっしゃり、うらやましい限りです。
今年もよろしくお願い申し上げます。
 
 
 
2月の熱海 (mizdesign)
2015-01-01 10:11:38
はろるどさんのベスト10を見て、「切り、継ぐ展」と「ヴァロットン展」しか観ていないことに気付きました。今年はもう少しコンスタントに観て廻ろうと思います。
2月の熱海、行けると良いですね。

本年も宜しくお願い致します!
 
 
 
やっぱり現代美術が好き (テツ)
2015-01-01 14:09:38
私は今昨年はほんとに鑑賞数の少ない1年だったのですが
ダレン・アーモンド展に遠征できたことは幸運でした。

あの個々の作品の魅力と会場構成、無限ループする時間感覚
西洋的知のフィルターを通した東洋世界の再構築。

はろるどさんが上位にあげられたことに、共感します。
 
 
 
Unknown (ホライズン)
2015-01-01 15:52:33
はろるどさん

明けましておめでとうございます。
初めまして。
以前からブログを拝見させていただいております。
観に行きたい美術展の紹介文をいつも楽しませていただいてます。

自分は美術展巡りを本格的に始めてから1年ちょっとの浅学者ですが、実際に絵を観て学ぶことが多く、2015年はもっと貪欲にいろんなものを観て回りたいと思ってます。

本年もよろしくお願い申し上げます。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2015-01-05 21:32:12
@SHさん

あけましておめでとうございます。

こちらこそTB下さりありがとうございます。

あまり遠征も出来ず、都内近辺のみで動いているのですが、
またご参考いただければ幸いです。

本年もどうぞ宜しくお願いします。


@mizdesignさん

あけましておめでとうございます。

皆さんのベスト10を見ていると、自分も同じく「見ていない」というのが結構あるなあと思います。
関心のある全ての展示を見て回るのはそもそも難しいですよね。

是非熱海ご一緒しましょう。

それでは今年も宜しくお願いします。


@テツさん

あけましておめでとうございます。

ダレン・アーモンド展は1巡、2巡するうちに何か衝撃的なものを感じてなりませんでした。
水戸芸は展示も巧いですよね。

今年も現代美術、ガンガン見ていきたいと思います。

どうぞ宜しくお願いします。


@ホライズンさん

あけましておめでとうございます。
こちらこそ初めまして。コメント下さりどうもありがとうございます。

自分も好きなものをただ気の赴くままに見ているだけですので…
素人の感想で恐縮ですが、見ていただけて嬉しいです。

同じく今年も貪欲に色々と見たいものです。

こちらこそ本年も宜しくお願いします。
 
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