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ぽかぽか春庭「質問に答えてその3」

2018-01-21 00:00:01 | エッセイ、コラム
20180121
ぽかぽか春庭ニッポニアニッポン語教師日誌>質問に答えて(3)

(日本語教師、日本語教育)
質問8)先生になってから外国の文化を知ろうとする努力はしていますか?
[回答]
 留学生と接していれば、日々、異文化に出会うのが日本語教師の仕事になります。私は、1988年に第1回日本語教育能力検定試験に合格して以来、百カ国以上の国の留学生と出会ってきましたので、さまざまな世界の文化を知る機会がありました。ただ、その異文化の知識を日本語授業に反映できるかできないかは、教師の努力しだいです。

 一例をあげると。「~ことができない」「~できる」の文型練習で、食文化の多様性をクラスメートに教えあう時間を作りました。どの食材も、文化によって食べられないものがあることを話しておいた上で)
・日本では、昆虫(蜂の子やイナゴ)を食べることができます。(昆虫食文化は、アジアアフリカに広がっていますが、欧米の留学生にはなじみがない。
・私の国では、ラマダンの間、日の出から夜まで、食べ物を食べることはできません。
・イスラム教の人はお酒を飲むことができません。
・ヒンズー教の人は牛肉を食べることができません。

などを出してもらい、世界の食文化比較をして、自分たちの文化では食べないものを、食べる文化があったとき、相手の文化を尊重すべきことを伝えました。日本の鯨食文化について、欧米からの反発もありましたし、犬肉を食べることについて嫌悪感を示した学生もいました。
 交流授業で、ウナギやあなごが大好きと言った日本人学生が、蛇肉を食べる食文化を否定したり、ということもありました。自分自身の好き嫌いを表現するのはかまいませんが、自分とは異なる文化や習慣を否定してしまっては、語学教師の資質に疑問が出てしまいます。語学教師は、言葉による伝達交流を教えるのと同じくらい、多様な文化を受け入れることを教えていきたいと思います。

質問9)日本語教員は、給料が低いってほんとうですか。
[回答]
 日本語教師の主な就職先である日本国内の日本語学校は、経営が順調な学校ばかりではありません。教育についてきちんとした見識のある経営者もいないことはないですが、日本語就学生を「授業料を搾り取る金儲けの対象」とみなす経営者もいるのです。
 外国人が出稼ぎ労働者として日本に働きにくる場合、労働ビザは取得が難しい。専門的職業人でなく、単純労働、アルバイトの労働には労働ビザは発給されません。その場合、日本ではアルバイトとして働きたい外国人はどうするか。就学生として日本語学校に在籍し、就学生に対するアルバイト許可を利用して稼ぎたい外国人を集めて、学生から授業料を徴収し、労働を主にして、授業はテキトーに受けさせておけばよい。そういう授業なら、できるだけ賃金の安い教師を雇って、収益率を高くしたい、と考える経営者もいます。全部とはいいませんが、そういう学校の存在が日本語教師全体のレベルを下げ、「日本人ならだれでも日本語授業ができるだろう」といういいかげんな日本語学校経営者の考えを排除できないでこれまできました。
 もちろん、良心的な学校もあり、しっかりした教育を行っている学校もあります。

 日本語教師の資格をきちんと評価してくれる社会になってほしい、と思っています。

質問10) 日本語教員になって1番苦労したことはなんですか?
[回答]
 日本語を教えはじめのころ、授業準備には膨大な時間がかかり、大変でしたが、それを苦労とは思いませんでした。日本語学は大学で学ぶ以上に、毎日の授業の下調べでしっかり学ぶことができました。教室での留学生とのふれ合いのなかで、異文化理解も深まりました。
 苦労をしたとしたら、日本語教師になりたてのころ、周囲の先生方との人間関係だったように思います。手本としたい立派な教員もいました。しかし、私が第1回目の日本語教育能力検定試験に合格して日本語教師になったころ、先輩の先生はこの試験に合格していない方のほうが多かったです。後輩なのに、自分がまだ合格していない資格を持っていることが目障りだと感じた先輩もいて、いわれのない意地悪をされました。いわゆるイジメ。でも、このことがあったから私も強くなれたし、今、後輩にはできる限り先輩として面倒をみてやりたい、という気持ちも持てましたから、意地悪だった先輩にも、今では反面教師として感謝しています。
 
 すぐれた同僚や先輩にもたくさんのことを教えてもらったし、多くの人に助けてもらって30年間続けてこられたのだと思います。中学校の国語教師は3年でリタイアしてしまったことを思うと、30年続いた留学生への日本語教育の授業、日本人学生への日本語教育学の授業、苦労したこと、と言われて振り返ってみると、ほんとうに私は恵まれた教師生活をおくれたと、感謝の思いがいっぱいになります。

<おわり>
コメント (2)
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