
20250626
ぽかぽか春庭アート散歩>2025アート散歩ファッションアート(2)「LOVEファッション―私を着がえるとき」展 in 東京オペラシティ アートギャラリー
私がファッションに興味を向けたのは、庭園美術館で「ポワレとフォルチュニィ展」2009年1月31日(土)~3月31日(火)が開催されて以後のことでした。50歳にして、自分が着る服ではなく「アートとして見る衣服」を楽しめるようになったのです。以後は、美術館でのファッション展示や杉野服飾博物館や文化学園服飾博物館にも出かけ、アートとしてのファッションを楽しんできました。昨年は、初台のオペラシティギャラリーで開催された「タカダケンゾー」展、とてもよかったです。
そのオペラシティでの、ファッション展示。「LOVEファッション―私を着がえるとき」も、とてもおもしろかったです。映像の撮影は禁止でしたが、それ以外は撮影OK。
東京オペラシティ アートギャラリーの口上
服を着ることは人間の普遍的な営みのひとつです。そして装いには私たちの内なる欲望が潜み、憧れや熱狂、葛藤や矛盾を伴って表れることがあります。お気に入りの服を着たい、あの人のようになりたい、ありのままでいたい、我を忘れたい.....。着る人のさまざまな情熱や願望=「LOVE」を受け止める存在としてのファッション。そこには万華鏡のようにカラフルな世界が広がっています。
本展では、京都服飾文化研究財団(KCI)が所蔵する 18 世紀から現代までの衣装コレクションを中心に、人間の根源的な欲望を照射するアート作品とともに、ファッションとの関わりにみられるさまざまな「LOVE」のかたちについて考えます。展覧会を通して、私たち人間が服を着ることの意味について再び考えるきっかけとなるでしょう。
本展では、京都服飾文化研究財団(KCI)が所蔵する 18 世紀から現代までの衣装コレクションを中心に、人間の根源的な欲望を照射するアート作品とともに、ファッションとの関わりにみられるさまざまな「LOVE」のかたちについて考えます。展覧会を通して、私たち人間が服を着ることの意味について再び考えるきっかけとなるでしょう。
京都服飾文化研究所(KCI)の所蔵品を中心に、チャプタ―1から5のテーマ別に衣服を展示。
チャプター1 「自然にかえりたい」
毛皮や鳥の羽など、人類最初の衣服として自然界からもたらされた素材にフォーカスを当て、文明が高度に発達した今日においても、自然に対する憧れや敬愛、身にまとってみたいという願望を抱かせる多種多様な衣服をピックアップ。18世紀の男性用のウエストコートや、20世紀前半に流行した鳥の羽根や剥製で装飾された帽子、木材を素材としたアート作品を展示する。
チャプタ―1には、絹やウールに刺繍などを飾った18世紀から現代までのドレス
・スーツ(アビ・ア・ラ・フランセーズ)1810ウールブロードクロス
・ドレス(ローブ・ア・ラフランセーズ)1775絹ブロケード縫い取り織(ブロシェ)


・イヴニングドレス1855絹ウールゴーズ
・イヴニングドレス1905ジャック・ドゥ―セ絹ダマスク織
・イヴニングドレス1956ピエール・バルマン絹タフタ


・ドレス2018黒河内舞衣子 ポイエステル平織ジャガード刺繍
・ジャンプスーツ2019ジョン・ガリアーノ ポリエステル縮緬(花嫁打掛をリメイク)

チャプタ―1の「天然の素材」の中、毛皮は動物愛護のために使われなくなったあとも、フェイクファーが代用に使われるくらい人にとっては大事な素材でした。
・イヴニングコート1900ジャンフィリップ・ウォルト 絹ベルベット、ニードルポイントレース、アップリケ、ダチョウの羽
・ケープ1960年代後半 ダチョウの羽
・ジャケット1930ジョージ・ナイズ コロブス属の毛皮


左から
・ドレス キミンテ・キムへキム2022人工毛、ポリエステル
・コート2021ダニエル・リー ラムファー
・コート2015ステラ・マッカートニー アクリルフェイクファー
・ドレス2(ダブルエッジド・オヴ・ソウト)1997小谷元彦毛髪


人の毛髪を編んだドレスは、庭園美術館の「奇想のモード」展で見ました。20220503 の「ぽかぽか春庭」に書いた感想は「私が着るには、ぞわぞわしてしまって着る気にならない」でした。鬘は人毛でも平気なのに、どうしてドレスはだめなのか。姉に借りたミンクコートを着て出かけたことがありましたが、ミンクは毛皮にするために飼われた動物だし、今のように動物の毛皮に拒否が集ってもいない頃だったのですが、今ならミンクコートも着たらぞわぞわしてしまうかも。
チャプタ―2「きれいになりたい」
衣服によって自分をきれいに見せたい人が、そのときどきの「きれい」の概念によって、コルセットで腰をしばりつけ、腰が細ければ細いほど美しいとされたり、現在の美しさが胸がやたらにでかいことが魅力的な女性の身体であったり。むろん、男性もヘンリー8世からルイ15世まで、股間に「コッドピース(英)ブラケット(仏)と呼ばれる股袋をつけて、詰め物をしてより大きく見せたりしたので、女性だけの問題ではなかったのかもしれません。
・コルセット1870頃木綿スティール製バスク、ボーン
・紳士ウエストコート18世紀~20世紀初頭


・イヴニングドレス1964クリストバル・バレンシアガ 絹ガザール
・デイドレスシガール1952クリスチャン・ディオール 絹オットマンモワレ
・イヴニングドレス1951 クリストバル・バレンシアガ絹ベルベット絹チュール
・イヴニングドレス1951クリスチャン・ディオール絹ファイユ絹チュール
・スーツ1997ジョン・ガリアーノ ウール、ツイード
・ドレス、スカート1996山本耀司ウールフェルトウールニット
・ドレス2009ラフ・シモンズ ウールフェルト、ウールフランネル


チャプタ―2の展示でとりわけ注目したファッションは、コムデギャルソン川久保玲の従来の身体観とは一線を画す「Body meets Dress, Dress meets dody (通称こぶドレス)」1997の発表時、ファッションに興味がなかったせいもあり、「へんな服、こんなん町で着られんな」としか感じなかったフォルムですが、今見ると腰を締め付けて細くしたリ、胸にパッドを入れたり、シリコン注入して大きくしたりすることを、まったく無意味にさせる革命だったとわかります。「身体と服の相互の呪縛を解き放つ」という考え方を鮮やかにファッションで示してくれました。今から見れば身体と衣服の革命と思いますが、新品だった時の値段は知りません。今この「こぶドレス」を買いたいと思ったら、古着値段ですが、付加価値がついて一着20万~50万だそうです。私はいつもの「見てるだけ~」です。



チャプター3「ありのままでいたい」
下着ドレスもいろいろ。コムデギャルソンの革命から、時代はどのような体形であれ、自分らしく・ありのままを肯定するという方向に進みました。下着をそのままドレスとして着るというスタイルも広まりました。
・シュミーズ1920絹クレープ
・ドレス・ブラ・ショーツ1994ミウッチャ・プラダ
・ブラトップ1996カール・ラガーフェルド
・ドレス2021ネンシ・ドジョカ 絹ジョーゼット、ポリエステル


チャプタ―4「オーランド」
時代や性別を超えて生きる主人公オーランドーの数奇な人生を描いた物語。ヴァージニア・ウルフの小説がさまざまな形の舞台作品になってきた中、オルガ・ノイヴィルト作曲、川久保玲衣装による作品(ウィーン国立歌劇場)の上演記録ビデオの一部が映写されていました。
川久保玲による衣装。時代も性別も超えて300年を生きるオーランドの衣装。オーランドを取り巻く他の出演者の舞台衣装が展示されていました。





オペラやミュージカルは総合芸術といわれます。このオーランド上演に関しては、衣装を見ているだけでも壮大な舞台の歌劇が聞こえてくるような気になります。いつかビデオでもいいから見たい舞台です。
チャプター5「我をわすれたい」
近未来的なイメージが爆発しているような最終展示室。衣服としては街中を着て歩けないアートばかりがずらりと並んでいて圧倒されました。
・ドレス「カロリーナ」2005ヴィクター&ロルフ絹サテンモアレファイユ絹ファイユふくれ織、ワイヤー
・ドレス アレキサンダー・マックイーンドレス2010絹ツイル絹オーガンザ、デジタルプリント(爬虫類柄)
・ドレス、ヘッドドレス1984 ティオリー・ミューグレー



・ジャンプスーツ2020トモ・コイズ小泉智貴 ミポリエステルオーガンジー
・ドレス2022ジョナサン・アンダーソン レーヨン・ジャージー、樹脂コーティング


・鎧 デムナ・ヴァザリア2021スティール皮革
・コート2003ヴィクター&ロルフ綿ツイル造花サテンカフ
・ドレストップショートパンツ2023二宮啓PET樹脂ポリエステルメッシュ、色付きの玉、化繊ニット



・ドレス2000渡辺淳弥ポリエステルオーガンジー
・ジャケット、スカート2000渡辺淳弥ポリエステルオーガンジー
・ドレス、ヘッドドレス2023久保嘉男ナイロンチュール、ワイヤーアクリル ・ヘッドピース2023久保嘉男ポリエステルラメ、金属


・ボディウェアスキンシリーズ2007廣川玉枝ナイロンポリウレタン、無縫製ニットクリスタルガラス
・ドレス2023岡崎龍之祐プラスチックポリエステル綿


チャプター5「我を忘れたい」に展示されていたのは、舞台衣装とかパーティやイベントで着る以外には着ることも見ることもない衣装。色鮮やかで華やかで奇抜なデザイン。ひとつひとつ面白かった。ヴェニスカーニバルで着たら映えるかも。
チャプター5には、衣装のほか、「着がえる動物」をテーマにした展示がありました。「着がえる動物=やどかり」
AKI INOMATA「やどかりに「やど」をわたしてみる ‒Border‒」2010/2019年
京都国立近代美術館蔵




プラスチックの造形物の中に入り込んだヤドカリが動き回る動画も展示されていました。やどかりにとっては、着がえるのは家です。家を背負って生き、手狭になると新しい家を見つける。
「私を着がえるとき」というテーマ。自分自身のアイデンティティに包まれている「私」が、さまざまな衣服を着がえてもよし、違う「私」になるもよし。
<つづく>