
20250320
ぽかぽか春庭アート散歩>2025アート散歩お茶室は遠い(3)花器のある風景 in 泉屋博古館
2月28日、娘と待ち合わせて、泉屋博古館で「花器のある風景」展を観覧。
生けられた花や花器が描かれた絵が展示されていると思って出かけたのですが、展示室1から4まで、絵は数点。あとは山のような花器。一輪挿しも水盤も名器ぞろいの宝の山なのに、あいかわらず「これ、今買うならいくら?」という目しかなくて。
泉屋博古館の口上
日本における花器の歴史は、中国より寺院における荘厳の道具として伝来したのがはじまりとされます。室町時代には連歌や茶会、 生花など室内芸能がさかんになり、中国から輸入された唐物と称される書画、調度類や茶道具、文房具を座敷に並び立てる「座敷飾り」が発展します。床の間の飾りには、唐物の花生・香炉・香合・天目などが飾られました。
茶の湯の世界でも、清浄なる空間を演出するものとして、花器は重用されました。唐物の金属製の花器をもとに、日本でも中世以降、陶磁器や竹など様々な素材で花器が作られ、日本独自の美意識が誕生します。住友コレクションには、室町時代の茶人、松本珠報が所持したとされる《砂張舟形釣花入 銘松本船》、江戸時代の茶人、小堀遠州ゆかりの《古銅象耳花入 銘キネナリ》などの花器が伝世します。本展では、住友コレクションから花器と、花器が描かれた絵画を紹介します。
同時開催として、 華道家・大郷理明氏よりご寄贈頂いた花器コレクションも紹介します。あわせてお楽しみください。
茶の湯の世界でも、清浄なる空間を演出するものとして、花器は重用されました。唐物の金属製の花器をもとに、日本でも中世以降、陶磁器や竹など様々な素材で花器が作られ、日本独自の美意識が誕生します。住友コレクションには、室町時代の茶人、松本珠報が所持したとされる《砂張舟形釣花入 銘松本船》、江戸時代の茶人、小堀遠州ゆかりの《古銅象耳花入 銘キネナリ》などの花器が伝世します。本展では、住友コレクションから花器と、花器が描かれた絵画を紹介します。
同時開催として、 華道家・大郷理明氏よりご寄贈頂いた花器コレクションも紹介します。あわせてお楽しみください。
第一室の正面にひときわ大きな花と花器の絵。「春花図」縦2m横2.5mくらいありました。日本画というと床の間に飾る縦長の構図がおおいですし、大作となると巻物。縦横大きい絵はあまり見たことがありません。しまうときは巻き取って箱に収納し、飾るときは上から下げているので、二間幅くらいの幅広の床か仏事の仏前荘厳のために描かれたのか。
原在中(1750~1837)と原在明(1778?~1844)父子が、花が生けられた花器一対を描き、冷泉為泰(1736-1816 )と為章(1752-1822)父子がそれぞれに賛を描いた「春花図」。右が為泰、左が為章の賛です。
富貴を表す牡丹の花を活けている花器は唐物で、在中は花器側面の模様を忠実に写しとっているとのこと。

次に目をひいたのは、「花卉文房花果図巻」。村田香谷(1831-1912 )の作。左右に長いので、途中で切ってUP.
左側

右側

村田は江戸後期に生まれ。明治から大正まで関西南画界の重鎮として活躍しましたが、南画という様式の絵画がすたれてしまい、今ではその名を聞いて作品を思い浮かべる人のほうが少ないと思います。私も南画を見ること少なく、村田もはじめて見た名前でした。
描かれているのは、文人たちが好み楽しんだものを集めた一巻。四季の花々や果物、文房四宝と呼ばれる筆・紙・硯・墨、さらに青銅器や陶磁器、太湖石などが描かれています。金魚鉢に泳ぐ金魚も文人が好んだものとわかりますが、赤い鉢の中に盛られた黄色い果物は何?その右のザクロ左のブドウはわかりますが、見識低い私には、黄色いのは何?その下のかぼちゃや栗、絵のうまさより味のうまさが気にかかる。
見識低い私は、帰宅するとさっそく「今買うならいくら?」チェックを開始。ネットで「真作」「本物保証」などと書かれている村田香谷が一万円~八万円の値段であることを知りました。ネットの「真作」のほとんどは偽物であることを「なんでも鑑定団」見て知っていますから、買いません。というか、一万円あったら、絵よりも食べ物。最近高くて野菜も米も買えないので、かぼちゃのひとつも買います。近所のスーパー、キャベツ小さなひと玉450円。白菜四半分300円。昨年同季に比べ、コメは1.7倍、野菜は1.9倍の価格では、年金暮らしの老婆には、本物保証はどうでもいいから、生活保証をしてほしい。
村田香谷、晩年は悠々の隠遁生活をおくり、傘寿の大往生。うう、四半分300円の白菜に手が出ずスーパーを出る75歳婆は、むなしくあすの夕餉を案ずるのみ。
ずらりと並ぶ花器の中、江戸期金工の面白い花器がありました。柴を運ぶ牛の花入れ。前足を曲げている姿、「ふう、荷物運んでつかれたよう」とぼやいているみたいな。
横河九左衛門「柴銅牛型薄端」(大郷理明コレクション)

華道家・大郷理明氏より寄贈された現代鋳造花器や、江戸後期に出版された華道手本の本、見所がありました。
エントランスホール以外の展示はすべて撮影禁止だったので、上記の画像は借り物です。美術館に所蔵権というものがあり、所蔵者には所蔵者の言い分があるでしょうけれど、著作権が切れていて、写真撮影による劣化の心配はない作品もすべて撮影禁止にするのは、「器が小さい」と感じてしまう心狭き観覧者。住友累代のお宝、大切ではありましょうが、ここはひとつ大きな器となってほしかった。と、お宝を値段で観覧するしか能のない極小うつわに言われても、住友お大尽には痛くもかゆくもないことを承知で言う。住友さん、器が小さい。つうか、三井も三菱も大倉も五島も、お金持ちたちの美術館のほとんどは「器がちいせえ」
<つづく>