医科栄養学・栄養医学ブログ

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統合失調症の陰性症状とグリシン(栄養成分)の効果の可能性について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦   

2022-01-18 15:04:03 | 健康・病気

統合失調症の陰性症状は、抗精神病薬での治療は難しい、と報告されています。諸外国の研究では、アミノ酸の一種のグリシンの高投与が、統合失調症の陰性症状(無為自閉、感情の平板化、興味・関心の低下など)に有効である可能性があるとの研究報告が、出されています。

Psychiatry誌(1 Apr, 2006)に載った研究では、統合失調症の陰性症状の改善が、グリシンを摂取したグループで見られ、プラセボグループでは見られませんでした。このことは、NMDA(N-メチル-D-アスパルテート)レセプター仲介神経伝達物質の促進は、統合失調症の神経弛緩薬抵抗性の陰性症状に対し、効果的治療法であることを示す可能性があることが、示唆されます。

Daniel C, Javitt博士らの研究によると、統合失調症の陰性症状の34%軽減は、グリシン療法の期間中に観察されました。また、Emmanuel Stip博士らの研究によると、グリシンとD-セリンは、統合失調症の陰性症状を改善するが、短期では、それらの患者の認知機能の低下、もしくは全体的な反応は改善は見られませんでした。また、Uriel Heresco-Levy博士らの研究によると、統合失調症の長年にわたる陰性症状の治療に、高投与のグリシンが効果があると報告されています。また、Robert T Harvey博士らの研究によると、統合失調症やアルコール依存症、痛みの新しい治療因子としてグリシントランスポーターに注目しています。

James Myhre博士らの研究によると、グリシンの短期のインパクト は、セロトニン値に関してであり、統合失調症を治療するというより、抗精神病薬での治療患者に有益であり、donzapine やrioperdalなど抗精神病薬のネガテイブな副作用を軽減するように思われます。更なる研究が期待されます。

グリシンは、脳において抑制性の神経伝達物質であり、そのことが、統合失調症の陰性症状の寛解に有益と考えられ、推奨摂取量は3g/日を超えないよう、4g/日より多い持続的摂取は、嘔吐、吐き気、呼吸障害が起こるとの報告もあります。

References

Daniel C .Javitt, et al. Adjunctive high-dose glycine in the treatment of schizophrenia. International Journal of Neuropsy chopharmacology. 2001,4, 385-391

James Myhre, et al. What is Glycine? Verywell health 2020/06/14

Amelioration of negative symptoms in schizophrenia  by glycine. Psychiatry 1 Apr 2006

Emmanuel Stip, et al. Glycine and D-serine improve the negative symptoms of schizophrenia . BMJ Journals. Vol 8 Issue3

Robert J. Harvey. Glycine transporters as novel therapeutic targets in schizophrenia, alcohol dependence and pain. Nature Reviews. 31 Oct 2013

Uriel Heresco-Levy, et al. Efficacy of high-dose glycine in the treatment of enduring negative symptoms of schizophrenia. JAMA Psychiatry. Jan 1999

J Semba . Glycine therapy of schizophrenia. PubMed. gov