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グローバルネイチャークラブのガイド日記

グローバルネイチャークラブ(旧グローバルスポーツクラブ)のガイド仲間が観察した伊豆大島の自然の情報を中心にお届けします。

4学会合同調査団 報告会(講演編)

2014年05月27日 | 火山・ジオパーク
5月24日 19時~ 表題の報告会が開催されました。

参加人数は 学会18名 島民84名 合計102名でした。

今日は、5つの講演を聞いて、自分なりに理解した内容をまとめました。

講演1
後藤聡氏(山梨大学)「全体説明,崩壊のメカニズム」 

 今回の災害のポイントは“レス”。“レス”とは、噴火の休止期に土埃や火山灰などが風で舞って積った層で、粒子が細かくて水を通しにくい土の層。土砂災害が起きた場所の地面は、細かい土の上に、噴火で降った砂粒サイズの火山灰が乗っている。細かい土と火山灰が斜面に平行している“滑りやすい構造”だ。細かい土は水を通しにくいので、激しく降った雨水はその上の火山灰に溜まってしまう。この状態は、重くなった砂が滑り台の上にあるようなもので、とても流れやすい状態。
 今回の災害で、広範囲に崩れ出して大きな被害をもたらした山側斜面は30~40°の急斜面で、細かい土の上の火山灰が流れ出した。斜面が急にキツくなる場所の上で崩壊が発生しており、このような場所では地震や雨で崩れることが多い。
 1338年(?)の割れ目噴火で、固くて浸食が進まない溶岩流が覆っていて、元町には深い谷が掘れていなかったので、全体に広く土砂が流れた。
 火山砂、レスをとって実験室に持ち帰り、火山灰の密度や強度を調べ、水によって細かい土の上で火山灰が滑ることを、実験室で再現した。

講演2
清水義彦氏(群馬大学) 「流木災害」

 日本では、流木災害はよく発生する。斜面の上部で倒れた樹木は根が50~60cmで浅かった。その下の神達地区の斜面は7°で、普通なら流木が止まっても良い角度のはず。激しく長く続いた豪雨が、斜面の表面に溝を作り、そこに流れ込んだ流木がさらに下まで運ばれ、何回か段階を追って流れ下った。下流の杉の木は、上流からの流木になぎ倒されている。

 流路工は、流木を集めやすい構造にもなってしまう。流木災害は全国で起こっているが、必ず橋で詰まる。橋はかならず引っかかる構造と思っていた方が良いのではないか。

 今後は、雨が地表面を直接伝っていくので、下流に行くほど水量が多くなり、到達時間も早くなる可能性がある。流路工沿いは水が溢れる恐れがあるため、そばに住んでいる人は注意してほしい。

講演3
江頭進治氏(土木研究所) 「土砂災害・砂防」

 災害発生の限界降雨量は、1日降雨量で500ミリや時間100ミリぐらいを越えたら。狩野川台風では、大島で1日400ミリと地域性がある。

 斜面の崩壊だけでは、大島の土砂の量を説明できない。泥流が流下しながら、浸食をしている。勾配がある所で崩壊がおき、勾配がゆるいところで堆積して積ったものが、流木とともに下流に持って行かれた。どう泥流をコントロールするかだ。

 「災害後、沢の水の出方がどうなったかの情報が有効な情報になるので、ぜひ情報を寄せてほしい」。江頭さんは、参加者にそう依頼されていました。

講演4
畑山満則氏(京都大学防災研究所) 「次の災害に備えてソフト対策でできること」

 崩れたら地形が変わるので、次の雨で違うことが起こる。自然現象を知る。地域を良く知る。対策を知ることが大事。被災後、ハード対策はなされているが、(そのハード対策が)現在どのような力を持っているのか、長期的にはどうなのかを知らないと,ソフトでどう補うかがわからない。まずそれらを知ること。そのうえで、ソフト対策で命の危険を回避すること。
 安全安心まちづくりの安全は、科学的根拠のある対策ができていること。安心は個人の印象で、同じ状況でも安心できる人とできない人がいる。災害後、できるだけ円滑に復興するには、コミュニケーションが重要。その努力を続けること。

講演5
東畑郁生氏(東京大学) 「文部科学省科学研究費による調査の中間報告」

 大島では18世紀以降、何度か土石流が起きた証拠がある。極めてまれなことが起こったわけではない。そんな危険な場所だったのかという話になるが、そう思ってほしくない。日本はどこも危険があり、逃げる所はない。今回も、水が噴き出したから崩れたのか,崩れたから水が吹きだしたのかわかっていない。わからないことが多い、雨が強烈すぎたと言うのはわかるが。
 ある程度、頻繁に起こりそうな豪雨にはハードで対応できるようになるだろうが、今回のようなまれに見る大雨の時は、避難しかない。
 現在1つ1つの斜面の怪しそうな場所に観測装置を付け、崩れを予測しようとしている。

講演内容は以上です。

 ところで4学会の合同調査団の研究内容は土木学会のHPでも公開されていますが、今回小冊子もいただきました。

 冊数に限りがあるため町役場、支庁、消防団、各小中高校、仮設住宅集会所、などの他、観光協会、図書館に配布予定です。
 来週はじめに配布されるようなので、閲覧希望の方は図書館や観光協会、町役場の政策推進課などでご覧ください。

もっと詳しい内容のものは、土木学会HPで見ることができます。
http://committees.jsce.or.jp/report/node/68

次回は、質疑応答をまとめたいと思います。

(カナ)
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