夕方の海の写真でも見てください。伊豆諸島の沖の島々です。左側が新島、右側が利島、真ん中にうっすら見えているのが、神津島です。
元町港の辺りから見る沖の島々の配列とは、随分違うはずです。これは、大島の南部の海岸から望んだところです。
こちら↓の噴煙を上げているのは三宅島です。2000年の大噴火以来、煙や有毒な火山ガスを出し続けているそうです。

これ↓は、10日ほど前の同じ海岸でのこと。
ウミガメの産卵から2ヶ月程が経って、子ガメたちが元気に降海(こうかい:海へ旅立つこと)したので、その巣穴を掘り起こして、孵化率などを調べました。
梅雨の末期に大雨が降ったり、強烈な夏の太陽に照らされたりしたので、うまく孵化するか、ちょっと心配でしたが、6割くらいの47匹が夜の間に砂中から脱出して降海したようです。

この発掘作業で、産卵巣の中に取り残されていた子ガメ7匹が生きていたので、暗くなり始めた海へ放流しました。
子ガメは、明るい昼の海では天敵に見つかりやすいので、暗い内に出来るだけ陸から離れられるように、必死に泳いで行きました。
暑い砂の中にいても、広い海へ泳ぎだして行く子ガメたちは、しっかり心の準備ができていたようです!?

でも、それから日本列島には、台風4号が接近・通過して、波浪も高くなりました。
子ガメたちのことは、それぞれの生命力と運にまかせて・・・
残りの産卵巣が流出しないように、波打ち際に近い卵を別の安全な場所へ移植しました。
砂防堤やダムなど、治山のための土木設備が整ってきたことなどで、全国各地で海岸の浜痩せ(やせ)という砂不足問題が起きています。大島の砂浜も同様です。

この↑時点で、すでに死んでいる卵・・・卵殻の中で胚の発生が進んでいるのが、生きている卵です・・・が、判別できる場合は、死んでいる卵を除去します。
鳥類の卵のように、厚い殻で覆われていないウミガメの卵は、死んでしばらくすると変色して生死が分かるのですが、砂の中にあるので、どの時点で死んだものかは、分かりにくいです。
実は、この卵たちは、ほとんど死んでいましたが、無精卵で最初から生きていなかったのか、産卵後の早い時期に水没するなどして・・・窒息死してしまったものなのか、分かりません。

こちら↑は、元気な生きている卵です。きれいな白い色の殻がパンパンに張っていて、見るからに元気そうです(笑)
見ていて嬉しくなります!
もうしばらく砂浜で温められて、孵化の時期を待ちます。
【今日のおまけ】
先週のこと、砂浜を歩いていて、流れ着いた海藻の上に小さなカニを見つけました。

甲羅の幅が18ミリほどの、オキナガレガニです。
丸っこくて、足が平べったい特徴に、まだら模様。
以前、思わぬ所で見つけて驚きました。調べると、もう10年前のことでした。

2000年6月18日に採集し、この時もすでに死んでいましたが、ホルマリンに漬けました。これ↑は、その標本の方のオキナガレガニ。
その「思わぬところ」とは、カメの産卵巣の中だったのです。
産卵の翌朝、すぐに卵を移す移植作業をしていた時、卵塊の中で発見したこの個体は、死んだばかりのように見えました。
流木・軽石・流れ藻などや、ウミガメやクラゲに付着して太平洋を漂流しているカニだそうです。
だから和名が、沖流れ蟹(カニ) なのですね。 翁枯れガニじゃなくて・・・。

きっと、カメの尻尾の辺りに付着していて、産卵中に巣穴の中へ落ちたのでしょう。
アカウミガメの卵の直径は、通常36~43ミリくらいですが、中にはこんなに小さな卵が混ざっていることもあります。卵径10ミリくらい。小卵の多くが卵黄はありません。
この時季、カメネタが多くて、すみません。
(なるせ)