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納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 603 師弟対談 ➊

2019年10月02日 | 1985 年 



阪神は見事に復活した。浪花っ子は狂喜した。その興奮が静まってくると何かを忘れていたような気がしてきた。そう、名門・南海のことである。かつては阪神と大阪の人気を二分した人気チームの凋落はあまりにも寂しい限り。南海が復活してこそ本当の大阪の復活があり、パ・リーグの復活がある。来季から指揮を執る杉浦忠新監督とかつて南海の一時代を築いた鶴岡一人氏に名門復活を語り合ってもらった。

金を儲ける為にプロに入った。これが原点なのだ
聞き手…先日のドラフト会議についてから伺いたい
杉 浦…長打力がある打者という事で清原君を指名しましたが縁がありませんでした。西川君(法大)か斉藤君(青学大)の
    二者択一でしたがウチの投手陣は右の本格派が多いので左腕の西川君にしました

鶴 岡…ドラフトを自己採点すると何点?
杉 浦…90点ですかね。左が2人、変則が1人と投手陣はまずまず。手薄な捕手や大砲候補も2人獲れました
鶴 岡…それにしても今年のドラフトは大騒ぎだったなぁ
聞き手…桑田・清原の話題で持ちきりでしたね
杉 浦…南海電鉄のおひざ元の岸和田出身の清原を指名しなかったら何を言われるか。最近は逆指名が流行してますけど
    敢えて指名しました

鶴 岡…抽選はダメで元々。人気のない球団も欲しい選手を指名しなければドラフト制の意味がない
聞き手…ドラフトも終わって今度はトレードですね?
杉 浦…ウチは建前としてトレードはしないとしています。あくまでもこちらから動くことはないと
聞き手…山内孝投手のトレード話も巨人側からがあった?
杉 浦…ええ。山内本人にも話しましたがトレードを申し込まれるという事は相手が評価している証拠。まだまだ老け込む
    歳じゃない。有名税だと考えて来季は発奮しろと激励しました

鶴 岡…それもひとつの見方やな。それに付け加えるなら選手は何の為にプロへ入ったのか、やっぱりお金儲けですよ。
    オールスター戦に出られるような選手になっていい給料を貰う。プロの世界で生き残るには本人の努力しかない。
    そういう選手になれと

聞き手…その昔、鶴岡さんは「グラウンドには銭が落ちとる。拾うてこい」とおっしゃってましたね
鶴 岡…自分が好きな事をやって有名になり若いうちに家を建てて贅沢な生活をする。プロ野球選手にはこれが出来る。
    最近よく耳にするのが「鶴岡さん、今の若い選手は何で上手くなろうと努力せんのでしょうかね?若いうちにお金を
    貰い過ぎでは?」と。これは半分本当やが、もう半分は一般人の僻みだと思うんです。これなんですよ。プロ野球選手は
    一般の人から妬まれるくらいの存在にならなきゃダメなんです



三塁・香川にかつての中西太のイメージが・・・
聞き手…11月4日から秋季練習を行なっていますが手応えはいかがですか?
杉 浦…今まで外から見ていて団結力というか纏まりに欠けていたように思ってましたが、徐々にですけど変わってきました。
    門田などはここ何年も秋季練習には不参加でしたが今年は自ら参加してくれました。練習が始まって5日ぐらい経って、
    もうそろそろ切り上げて構わないよと言ったら「邪魔になるなら帰りますけど(笑)」と練習を続けています。チームの
    士気も上がるしありがたいですね

鶴 岡…それは良い傾向やね。そういう所を若い選手達はちゃんと見てますから
杉 浦…鈴木という若い選手がいるんです。体格に恵まれパワーも申し分ない。だけど今一つ殻を破れない。そこで鈴木に「門田の
    所へ行ってティーバッティングの手伝いをしてこい」と言ったら門田が鈴木にマンツーマンで打撃指導を始めた。勿論、
    打撃コーチ了承の下で。今はチーム全体に一体感が出来つつありますね

聞き手…今の所、来季の目玉は " サード・ドカベン " ではないかと
杉 浦…まだまだ実戦で試せる段階ではないですが面白いですよ
聞き手…中西二世だとか(笑)
杉 浦…まだ強い打球は捕らせてません。捕球する際の足の運びとか内野手としての初歩段階です。でも日々進歩しています
聞き手…ほ~。三塁手・香川は本気なのですね?
杉 浦…しばらく様子を見て判断したいと考えています。僕自身は西鉄時代の中西さんにイメージをだぶらせています。香川本人も
    「高校の時に少しやった事がある。違和感はないです」と言ってやる気満々です。結論を出すのはまだ先ですが

鶴 岡…話題にはなりますわな(苦笑)


良い監督とは相手に嫌がられる事を徹底的にやる男
聞き手…杉浦南海では二軍監督という名称を無くしました。その意図は?
杉 浦…二軍監督の下でリーグ戦をやりますよね、そうすると南海ホークスの選手ではなく " 二軍の選手 " という意識に陥ってしまう。
    二軍で活躍しても意味はないという意識を持ってもらおうと。一応は責任者は配置してますけど

聞き手…一軍と二軍の区別を無くすと?
杉 浦…ハイ。例えば一軍から二軍へ落ちた選手の指導は一軍のコーチが行なう。代わりに一軍へ昇格する選手について二軍のコーチが
    当初は行なず、一軍のコーチに引き継ぐ。これは近鉄の投手コーチ時代に感じた違和感から思いついたんです。一軍で抑え役に
    起用する予定の投手を二軍で先発させても意味はないですから

聞き手…これは阪神が安芸キャンプでやった一・二軍合同キャンプみたいなものですか?
鶴 岡…ウ~ン、シーズン中も続けるとなると阪神の上を行く改革やな。僕が監督の時も一・二軍の意思疎通は難しかったからね
杉 浦…チームが強いときは二軍からどんどん選手が育っていた。野村や広瀬など二軍からの叩き上げだった
鶴 岡…それに昔はコーチが手取り足取り教えるなんてなかった。自分の目で先輩から技術を盗んでいた。僕の場合は藤村さんだった。
    今は教え過ぎる。選手だって体は一つなんだから言われた事を全部やっていたら頭が混乱してしまう。取捨選択も大事やね

杉 浦…そうですね。ヒントを貰う感覚で宜しいかと
鶴 岡…辞めてしまったが広岡は良い監督だった。継投策が上手かった。永射が出て来ると相手は早く点を取らないと、と焦る。
    かつて西鉄の稲尾がブルペンで投げ始めるとこっちも焦る。そんな時はウチも杉浦にブルペンへ行けと命じた。これなんか
    三原さんから学んだ策。相手の嫌がる事をやらんと勝てない。それが出来る監督こそ良い監督だ

聞き手…川上さん(元巨人監督)も同じ様な話をしていました
鶴 岡…川上君も常に相手が嫌がる事をやって九連覇を成し遂げた。相手に見破られるような事をやっていたら監督は務まらない


隠れ南海ファンをいかに顕在させるかが課題
聞き手…阪神フィーバーで大盛り上がりの関西ですが、一方で南海の低迷が続いています
鶴 岡…今回、杉浦君が監督に就任して中年以上の人達は喜んでいるね。期待が大きいから頑張って欲しい。頑張れ、と言う以上に
    何が何でも勝って欲しい

聞き手…勝たないとお客さんが球場に来てくれないですし
鶴 岡…勝たないと親御さんが子供たちを連れて球場に来てくれない。ただし同じ勝つのでも学校が休みの春休みや夏休みに地元で
    勝たなイカン。勝って1万人のお客さんが周りに宣伝してくれるのと3万人のお客さんでは影響力が違う。前監督の穴吹君にも
    言ったんだ、君も頑張っているけど子供たちの前で勝たないとダメだと。肝心の夏休み中に最下位ではアカンと

聞き手…毎年、5月のゴールデンウイークの頃までは頑張っているんですけど夏休みまで持続しない
鶴 岡…春先は大阪球場も結構お客さんで埋まってますよ
聞き手…私たちマスコミ関係者の間では人気の目安はテレビの視聴率ですね。昭和40年代までは毎日放送が南海戦を、朝日放送が
    阪神戦を同時間帯に放送していたんですが両社の視聴率に差は殆どありませんでした。ところが今や雲泥の差です

鶴 岡…こういう事を言うたら叱られるかもしれないが近鉄や阪急が勝つより南海が勝つ方がパ・リーグの為にはエエ
聞き手…昔は南海と阪神が関西の人気を二分してましたからね。難波にもう一度火を灯さなければいけない。関西地区だけでなく全国に
     " 隠れ南海ファン " は潜在している。そういった人達を再び呼び戻さないと。今では南海ファンと公言すると笑われてしまう

鶴 岡…大人だけでなく子供たちの世界でもあるそうだ。学校で南海ファンだと言うと馬鹿にされると聞いた
杉 浦…先日、テレビで阪神優勝の特別番組が放送されたんですが、その中で「西武が何じゃい。マイナーやないか」という発言が
    あったんです。これは西武だけでなくパ・リーグ全体をマイナー扱いしている発言で聞いていて悔しかった。阪神もセ・リーグも
    憎くないけどやはりカチンッときました。おこがましいけどパ・リーグを盛り上げるには南海が頑張らなければダメだと思い
    ましたね。微力ではありますがパ・リーグ隆盛の為に一役買いたい。その為には2~3年先ではなく来年すぐに勝ちたい。
    パ・リーグの為にも勝ちたいんです

聞き手…頑張って下さい。期待しています。本日はありがとうございました

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1 コメント

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Unknown (るるる)
2019-11-24 02:00:17
いつも楽しみに拝見しています。
門田が教えたという「鈴木」は「佐々木」、
かの佐々木誠選手ではないでしょうか?
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