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納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

#231 1981年 ドラフト候補 ①

2012年08月15日 | 1981 年 



ロッテの三宅スカウト部長が居並ぶ各球団のスカウト達を前に「金村(報徳学園)はウチのものだぜ。どこも手出しは無用だよ」と叫んだという話が瞬く間に広まった。ロッテには他球団が太刀打ち出来ないルートがあると言われている。今年の甲子園大会は金村に始まり金村に終わったと言っても過言ではない。三宅スカウトが何を言おうが各スカウトは金村の話になると語調は強まる。

「スイングの速さはプロ並み(巨人・伊藤スカウト)」「柔らかさと強さを兼ね備えている所は中西太、王貞治以来(中日・田村スカウト)」「原や石毛の高校時代よりも上(大洋・湊谷スカウト)」「今のままでもファームの中軸を打てる(日ハム・三沢スカウト)」・・いやはや中には眉唾ものの評価もあるが、大打者になれる素材である事に間違いないようだ。投げる方はと言えば「ウチの西本のようなタイプになれる(伊藤スカウト)」「投手でもプラスアルファを持っている(広島・木庭スカウト)」との意見がある一方で「入団したら打者一本で行くように説得する(田村スカウト)」など評価は分かれる。家から見上げる小高い丘に阪急・長池コーチの豪邸があり、「プロに入ってあんな家を建てたい」「阪急のエースになるのが夢」と言った話が流れて阪急関係者がニンマリしたと言う。

「投打総合のNo,1」が金村なら「投手のNo,1」は松本(秋田経法付)である。「走者が出てから力強い投球をするなどメリハリがある(近鉄・中島スカウト)」「打者の力量に合わせて投球できるスマートな投手(阪神・田丸スカウト)」「15勝投手になれる素材(三宅スカウト)」等々。懸念は松本本人に社会人志向があり、両親は大学進学を希望するなど指名しても拒否される可能性がある事だ。去年の高山や川村の二の舞はゴメンと各球団は身辺調査に懸命だ。

松本に次ぐのが工藤(名電高)・古溝(福島商)・高木(北陽)の左腕トリオだ。工藤のカーブは即プロで通用するというのが各スカウト異口同音のようだ。スカウト界の長老である丸尾顧問(日ハム)によると上半身の使い方が江夏や鈴木啓にソックリらしい。入札競合が確実な金村を回避して1位指名を目論んでいる球団もある。それに渋い顔なのが地元の中日で、隠し玉のつもりが一気に全国にその名前が広まってしまった。高木も地元の南海・阪神・近鉄が密着マークをするなど上位指名の可能性もある。逆に甲子園での出来が今ひとつだった古溝の評価は下がる一方だが、中には「時間はかかるかもしれないが地肩が強いのが魅力。プロでじっくり鍛えればスピードも増すしキレも出てくる。魅力的な素材ですよ(西武・宮原スカウト)」と認める意見もある。

甲子園不出場組にも光る素材が豊富だ。各スカウトが二重丸を付けるのが槙原(大府)、片瀬(榛原)、西岡(法政二)の3投手だ。「何しろ終速で140㌔を出すのだからスピードだけなら高校No,1じゃないかな」と槙原に関して詳細なデータを得ている伊藤スカウトの巨人は上位指名を考えている。もちろん巨人以外の全球団のスカウトも大府詣でを済ませている。全球団という事では片瀬も同じで常時138㌔を出す柔らかなバネの利いた身体使いが魅力で、唯一の欠点は大舞台での経験が無い事くらい。西岡も一部で伝えられた肩痛も大事には至らず3人とも3位指名までには消えている筈の逸材だ。
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