H's monologue

動き始めた未来の地図は君の中にある

使命の道に怖れなく どれほどの闇が覆い尽くそうと
信じた道を歩こう

横浜でCPS

2012-09-29 | 臨床研修


 横浜で行われた第5回病院総合診療医学会学術総会で,Clinical Problem SolvingのModulatorをさせていただいた。これは,大船GIMの常連である横浜市立大学総合診療科教授の長谷川修先生が今回の大会長をされることから「大船GIM」の雰囲気を学会の症例検討でも・・というご依頼を受けて実現したもの。症例のプレゼンは,これまた大船GIM常連である有隣病院の小野正博先生にお願いした。

 症例は「2週間発熱が続く,もともとは元気な90歳女性」発熱のfocusがなかなか絞れないなか,末梢血の単球が増加していることから,リンパ系増殖疾患の可能性を指摘した先生がおられたのはさすが。途中で,腹部CTにて急転直下の「急性虫垂炎」を指摘され,腹部所見も疑わしいということで外科に転院。しかし違っていたことが判明し再入院。最終的には骨髄穿刺でびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と診断。高齢であり化学療法は行われず,最後は今まで感謝したことのない嫁に感謝して最期を迎えられたという症例。

 朝9時からの開始で,当初は人数も少ないしフロアの雰囲気も重くてどうなるかと思った。しかし,次第にフロアからも積極的に発言してもらえるようになって最終的にはまあまあの雰囲気で終えることができた。Learning Clinical Reasoningという本で学んだ,臨床医が患者から話を聞き始めてから診断に至までの思考の5ステップ(診断仮説の想起,修整,診断検査,病態生理に基づく推論,検証)を参加者の皆さんが,討論の経過中に意識してもらえたなら我々の意図は成功したことになるが,果たしてどうだったか。

 この症例のポイントは,まず診断を想起する段階で出にくかったこと(triggering error),その後腹部CTで虫垂炎の可能性を放射線科医から指摘されても「事前確率が低い場合,検査が陽性であっても事後確率は非常に高くなるわけでない」という検査の解釈の問題,そして当初から症状としてあった咳嗽が,リンパ腫の症状として合致するのか(verification)という問題。これはフロアから,咳嗽を主訴としたIVLを症例報告された施設の先生からのコメントがあり,まるで打ち合わせてあったかのように見事に解決。もうお一人の先生からも,脾腫を伴う場合には横隔膜下からのリンパ流の関係でリンパ腫でも咳嗽が出現しうるということを学んだ(リンパ腫ではない脾腫ではそれは起こらないとのこと)。これは勉強になった。当初の目的である「皆さんで知識をshareしましょう」という目的も果たせてよかった。

 いつもの大船GIMではまったく相談なしのぶっつけ本番だが,今回はさすがに後ろにプログラムが控えており,時間通りに終わることが絶対条件だったので小野先生と予めしっかり打ち合わせ。その意味では,本来の大船GIMとは違うわけだが,いつものカンファレンスのライブ感の7割くらいは出せたんじゃないかと思う。やれやれほっとした。
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