H's monologue

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甲状腺とヨードについて

2020-07-20 | 臨床研修


甲状腺機能亢進症でメルカゾールで治療中の30代後半の女性患者さん。メルカゾールを漸減して5mgまで減っていました。先日外来再診時のこと。安定しているので更に減量しましょうかと相談しているときに面白いことを教えてくれました。

「実は少し前に,またドキドキしたんです・・・」
「え?治療前みたいになったんですか?」
「そうなんです。実は・・・」

その方は海藻が大好きでしたが(海藻類はいけないって聞いていたので)それまで食べないようにしていたが,ホントはもともと好きだったので我慢できず,しばらく沢山食べちゃたそうです。

「沢山ってどれくらいですか?」
「毎日三食味噌汁にワカメてんこ盛り,海苔なら10枚くらい・・・」とのこと。

なるほど,それは結構な量ですね。それで1週間ほどしたら,心臓がバクバクするようになって「あ,やっぱりダメだ」と思って食べるのを止めたら元にもどったそうです。

これ興味深いですね。甲状腺疾患ではヨード摂取には注意することとなっていましたが,少し調べてみました(といってもUpToDateとネットで検索ですが)。参考にさせていただいたHPは,甲状腺で超有名な伊藤病院,それと琉球大学第二内科のHPも参考になりました。

・甲状腺に基礎疾患があると,ヨード摂取により甲状腺機能に変動をきたすことがある。

・ヨウ素の摂取を制限しないとバセドウ病の薬が効きにくい、バセドウ病が再発しやすくなるなど意見があるが,これが本当科かどうか、またどれぐらい制限したらよいのかなどはまだよく分かっていない。
・ヨウ素欠乏地域ではヨウ素過剰摂取によりヨウ素誘発性機能亢進症を発症することが報告され、バセドウ病の方はヨード過剰摂取を避ける必要があります。しかし日本はヨウ素充足地域であり,通常量なら摂取してもかまわない。

・ヨードは甲状腺ホルモンの材料だが,過剰摂取で甲状腺内のヨード有機化が抑制されて甲状腺ホルモン合成が低下する(Wolff-Chaikoff効果)。しかしこの現象が長く続くことはなく,エスケープと呼ばれる適応現象のため甲状腺機能低下症にはならない。(アルドステロン・エスケープと同じような表現ですね)

・橋本病(慢性甲状腺炎)の患者では,ヨードの過剰摂取により一時的に甲状腺機能低下をきたすことがある。このため甲状腺機能低下症の患者さんをみたときに,すぐに補充療法を開始せずヨードの過剰摂取がないかどうか確認する必要がある。

 

ヨードの過剰摂取では,その患者さんの状況によって甲状腺「機能亢進」も「機能低下」もきたしうるということのようです。非常に興味深いです。

 

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