H's monologue

動き始めた未来の地図は君の中にある

使命の道に怖れなく どれほどの闇が覆い尽くそうと
信じた道を歩こう

亀井三博先生の新刊本!

2021-07-28 | 臨床研修

献本いただきました。ありがとうございます。

思い起こせば,亀井先生とはいつからのお付き合いなんだろう。「亀井道場」にお招きいただいたのが最初のような・・。たしかその時にケアネットの方も参加されて「SpPinな身体所見」のテスト撮りをやったので2007年ですね。そうか,もう14年も経つんですね。

 

「その1 外来呼吸器診療の心得」には,おもわず頷いてメモを取りたくなるような文章が沢山でてきます。私が下手な感想を書くよりも,素晴らしいと感じた文章をそのまま紹介したいと思います。詳細は是非,本を直接手にしてくださいね。

・肺がんが怪しいと思ったら,そこで患者さんは,私達のもとを,一旦離れます。その後,患者さん達が,最早,治療の手段がないと言われる時期が訪れ,病院から離れ,最後の時を迎えようとする時に,再び私達の役割がやってくるのは,ほかの悪性腫瘍診療の時と同じです。

・(間質性肺炎について)肺がんと同じく,患者さんが酸素を携えて帰ってきたら,その人生の終焉まで,そっと寄り添うのが私達の役割です。

・病歴を生成するとは,患者さんがどのようにその主訴に苦しめられてきて,私の元にたどり着くに至ったか,その姿が,その過程が,まるで一本のドキュメンタリー映画を観ているかのように,映像化すること,これにつきます。

・その患者さんに,あるいは症状に,興味を持つことが大切です。その人を知りたいと思うと,どうして今悩んでおられるのだろうと,細かいところが気になって,ぼんやりした所をはっきりさせたいと,そのための質問をしたくなります。その気持ちが,キリッとフォーカスの結んだ良い映像を,そして良い病歴を生みます。「神は細部に宿る」です。

・重要なことは,最初の診察の時に,次も又,来よう,治療が効かなくても,また相談に来ようと,思っていただくことです。


どの文章も,初めてお会いした時からずっと変わらない,物静かな亀井先生の語り口が目に浮かぶようです。

 

「その2」からは15症例について,経時的な診療に沿って解説が加えてありますが,すべて初めて患者さんに出会ってから,亀井先生の頭の中をなぞるように思考過程が書かれています。まさに「脳みその中を」見せていただくことになります。自分も同じようなことをやっているので,参考になります。とくに呼吸器内科は得意ではないので,今後少しづつでも拝見して勉強させてもらうつもりです。


イケナイことなんですが,実は私,前から順に読むよりも途中で挟んであるコラムを拾い読みするのが好きなんです。「日々の診療を通して考えること」というタイトルでまとめられたコーナーが楽しいです。

本書を手にして最初にぱっと開いたページが,たまたまここ(「だから,病歴はやめられない」)でした。先生には失礼かと思いますが,私がいつも考えていることと,先生の考え方が不思議なくらいに重なるので,何度も「そうそう!」と思いながら読みすすめます。また「診察室は劇場」というのも上手い表現だと思いました。「おそらく,私は,医師という役割を,意識せず,ずっと演じてきているのだと思います」という言葉からは,以前どこかで聞いた "Act like a doctor." という言葉を思い出しました。

昨年来のCOVID-19の蔓延によって診療内容が大きく変わってしまったことも言及されています。特に,聴診に関しては大きく制限を受ける事になり,自分の耳が鈍ったことを嘆かれているのはほんとに身につまされます。

一見薄くてもこの本は中身がギュッと詰まっています。でも最近よくある若手向きのマニュアルの類とは対極のような本です。「万年研修医」のための本であり,文字通りの研修医のための本ではないと亀井先生はまえがきにも書かれています。ある程度経験を積んだ先生ほど,心に響くと思います。

 

P.S.
イラストが一見シンプルでどこにでもありそうなんだけど,何気に「先生に激似」なのにはちょっと感動しました。

コメント
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