H's monologue

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2:1房室ブロックの心音

2011-07-11 | 身体診察

以下,かなりマニアックなので,興味のある方だけどうぞ。


先日入院となった,80代の女性。以前より2度房室ブロック(Morbitz II型)を指摘されるも高齢のためペースメーカー植え込みを希望されず保存的治療のみで経過を見られていた。軽度の心不全症状があり受診したが,今回もペースメーカー植え込みを外来担当医からすすめられるも希望せず。心不全症状に対して,利尿剤治療目的で入院。

診察したレジデントの先生から「この患者さんの心音はどう理解すればいいんでしょう?」と質問されて,患者を診察。

ギャジアップしたベッドに横たわっている患者さんの頸部を見て「あれ?」と思った。
頸静脈拍動のリズムが不思議。2相性ではなく,もう一つ拍動がある。あれ~?と思って心尖拍動を触れると,nippleよりも外側に偏位しており,sustainedに触れるような気がする。(あとでもう一度触診しなおして,S4が触れるのかな?と思ったが自信なし)

聴診してみると,心音は,タタン・タタ・・・タタン・タタ・・・と聞こえて,最初何だろうと思う。モニター波形を確認すると2:1房室ブロックで,そのタイミングを念頭に心音をもう一度聞き直すとリズム的にはS4が加わっているような気がする(タタン・タ あるいは オトッツァンのリズムである)。しかしタタン・タタの最後のひとつの音が分からない。

心電図モニターのトレースを印刷して,波形をじーっと眺めてもう一度考える。

QRSがつながっていない一拍おきの心房収縮に伴ってS4が聞こえて,そのあとのQRSがないためS1S2がない状態を聴いているのではないか? もし一拍おきのQRSがある,つまりS1の部分で音が2つ聴こえるのが,S1 splitやejection clickだとすると,QRSに繋がらなかったP波のところには音がないはずである。しかし大動脈弁領域で聴診すると,通常のS1S2だけが途中ポーズをもって(一拍おきに)聴こえた。また心尖部でもヘッドを押し付けて聴取するとS1S2以外の音は弱くなった(消えなかったが)。ということは,やはりS4ではないか・・・。

ここまで考えて,さてこれでいいのかな? 自信がない。いろいろ教科書やネットで探しても答えがみつからない。

そこで,困ったときの相談相手の循環器の達人の先生に,頸静脈拍動や心尖拍動の動画なども見て頂けるようにしてメールで相談してみた(便利な世の中である)。 早速御返事をいただいたところによると・・・・

何と,「2:1ブロック症例でQRSなしで4音は聞こえる」そうである!!

この症例では,心室収縮を伴わない心房収縮が、先行する心室収縮の急速流入期に一致しており、いわゆる重合ギャロップ(summation gallop:S3+S4)であろうとのこと。

心房収縮があれば,その後に心室収縮がなくても4音が聞こえる・・・またひとつ賢くなった。
コメント
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