横浜で開催された神奈川総合診療研究会に参加。
Clinical problem solving形式による症例提示が1例。眼科に入院中に発熱が見られた80歳の男性といいう症例。バックグラウンドは糖尿病性腎症で15年程透析歴がある。発熱に随伴する症状は頭痛。
高齢者のfocusがはっきりしない発熱と頭痛とくると,側頭動脈炎が即座に思い浮かぶ。あとはそのときセットで考える疾患(リウマチ性多発筋痛症,環軸関節偽痛風,髄膜炎,化膿性脊椎炎など)を思い浮かべた。経過で,シャント部が少し腫れているのと,左膝関節炎があることが判明し,シャント感染→菌血症→化膿性関節炎の可能性も考えたが,最終的には頚椎偽痛風でした。軸椎の周囲に石灰化が証明されなかったので,環軸関節偽痛風(Crowned dens syndrome)ではなかったとのこと。CDSは,高齢者ではそれほど稀でなく経験するように思う。
それと,提示した先生によれば,整形外科にコンサルトしたときに,「偽痛風では発熱や白血球増多,CRP上昇はない」と言われてしまったとのことであった。高齢者をみる機会の多い内科医の間では常識だと思うけどな~と思ったが。
そのあと横浜市大センター病院総合診療科の長谷川修先生による「プライマリケア外来で役立つ神経の診かた」という講演。コンパクトまとめていただいた素晴らしいレクチャーであったが,中でも印象にのこったのが,先生が紹介されたSpasmophilieという概念であった。
もともとはフランス語圏の神経内科にある考え方だそうで,何度も過換気発作でしびれを訴えてくるような若い女性の患者さんをしばしば経験するが,そのような状況をSpasmophilieという表現をするそうである。長谷川先生がスライドで示された臨床的な特徴は
・両手を中心に,正座後のようなジンジンしたしびれ。
・息苦しさ,喉のつまり,のぼせ感,動悸など他の身体症状を伴う。
・過呼吸により症状を出しやすい。
・目の前で3-4分の過呼吸負荷をすると良い(再現性がある)
・Panic disorderとの関係。
このような患者に「精神的なものですから,心配ありません。」説明しても患者の納得が得られないことが多いが,目の前で過換気をさせて,症状が再現することを確認させて「あなたはこのようなスパスム(の発作)を起しやすい体質なんですよ」と説明すると良いのだそうである。これにより患者の納得や安心が得やすいとのことである。なるほど・・・と思ったが,自分には上手く説明できるかなあ,とも思った。