自由人

 己を『”親も無し、妻無し、子無し”職も無し、ローンもなければストレスもなし』と詠んで、六無斎清々を僭称。

『株』とは何、、、?

2007年10月01日 09時42分43秒 | 政治・経済
 毎日のニュースの度に決まって株式市況や円相場について報道されるが、経済の動向を示す重要なものなのだろう、、、。かっては時の総理大臣が、野菜の蕪を持ち上げて、『株あがれ、、、』などのパフォーマンスを見せてくれたのだけど、株が上がることが善なのであろうか、、、。確かに株を所有している人は株価が上昇すれば利を得ることになるし、株価が低下すれば損失を受けるのは事実である。小学生の頃、父親から100万円を貰い、株の売買で利を得、大学に入る頃には億の金に増やしたという超秀才児がもてはやされ、書店のベストセラーに株に関する本が上位を占めていたのだが、今は被告人の立場、『金儲け、悪いことですか、、』との名言ならぬ迷言をはいて抵抗しているのだが、、、。大衆株主時代、一億総株主などと煽られて、“虎の子”を吐き出さされないように注意したいものだ、、。

 もともと株を思いついたのは無一文のアメリカの青年だった。市民革命によって実現した経済活動の自由、つまり移動・居住・職業選択の自由、そして誰でも儲ける自由がみとめられる世となった。だが実際に儲けることの出来る人はまとまった資金がないといけない、商売を始めるには商業資本、企業を興すには産業資本が必要となる。さらに資本主義経済は自由競争なので、他の企業より安くて良い製品を供給しないといけないし(ここまでは資本主義の長所)、その自由競争に勝ち残るには拡大再生産が必要となる。その為に資金を自己資本(もうけの部分から補填)で賄うのなら、実態に見合った経済成長が実現するのだが、他人資本の導入による拡大再生産という手っ取り早い手法が、競争原理が支配する中で採用されるようになる。それをサポートするのが銀行というわけである。この実態に目を付けたのがかの無一文の青年であり、確実に利を保証できる企業を設立する自信はあるが、その為に資金がない、銀行がその預金者に支払う利子より、多額の配当を約束すれば多くの資金を集めることが可能だし、まとまった資金が調達できれば念願の会社設立が実現する。株式会社はこうやって生まれ、成長し、一般化した。

 銀行にしても一般投資家にしても、優良企業(人に役立つ商品の製造販売)を育て、支援する融資、投資だと良いのであるが、利を得ることに傾くと、様々な問題点が生まれてくる。第二次世界大戦の引き金となった、ニューヨーク株式市況の大暴落がその教訓である。第一次世界大戦はヨーロッパ諸国を巻き込んだ戦争になり、直接当事者でなかったアメリカの企業は大戦中、好景気を持続した。つまり商品の売れ行きが良く、拡大再生産を持続し、その為の資金を一般投資者から集めることが出来、投資者に莫大な配当を保証した。その為に株価も高騰したが、それでも一般の金利以上の利を投資者に与え続けた。大戦が終わり、ヨーロッパ諸国の生産が回復してくると、アメリカ企業の売れ行きが停滞しだし、それまでの配当を保証できなくなる。高騰した株価は下がりはじめ、不安を感じた投資者は所有する株の売りに走った。株価が大暴落し、企業の倒産が相次ぎ、倒産した企業の株券は紙切れと同じになる。つまり、過剰生産からスタートして、売れ残り、競争に弱い中小企業の倒産、失業者の増大、社会的購買力の低下、さらなる売れ残り、大企業まで倒産、大量の失業者が生まれ、社会不安まで、、、というような資本主義経済の持つ悪のスパイラルが現実のものとなったのが、アメリカからはじまる世界大恐慌であった。

 資本主義の欠陥を根本的に質す経済学を大成したのがマルクスであり、生産力の飛躍的向上という長所を生かし、資本主義に修正を加える経済理論を確立したのがケインズである。世界恐慌に当たって、ケインズの理論を、合衆国憲法違反の判決を受けながらも実践し、資本主義の危機を克服したのがルーズベルト大統領のニューディール政策であるり、資本(お金)の暴走を人為で食い止めることに成功したのである。現在の市場原理主義の立場は、資本(お金)が人間を支配する仕組みに荷担している。

 実体経済にあった市場原理は人類にプラスに作用(生産性の向上、安価でよい製品を供給)し、社会から利を得るが故に、企業の社会的責任を自覚した経営者が多くいた.。資本家と経営者が一体であった時代は遠く去り、株式会社全盛となっては、経営者は金の論理で自らをコントロールされた雇われ人の立場になってきた。敵対的買収には常に脅かされ、ましてグローバリズムの波の押し寄せる昨今、より巨大な金融資本の鬼っ子であるハゲタカファンドは日本の優良企業の買収を、その世界戦略のターゲットにしている。日本最大の利益を上げ、世界的企業にのし上がったトヨタにしても、利をあげ続けなければならぬ、との金の論理に左右されて、自社の社員に対してはサービス残業を強制、社外工にはより過酷な労働を、さらに派遣社員を大幅に活用、下請け企業への圧迫、選別は、地震による部品工場の生産停止が本社工場の操業停止に至るほどのリスクの上に成り立っている。
 消費者主権の一票は、購入する商品がまともな生産者を支援するものとなるし、投資者のそれは、同じく優良企業への支援の一票にしていく必要がある。


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