敗戦を終戦と糊塗してきたこの国は,再び誤った道を歩みかねない状況になりつつある。つまり終戦、終わったー、そして一億総懺悔でくくってしまい,終わったことは忘れてまたみんなで頑張ろう,と言うことになってしまった。1894年、正確には江華島事件を起こし朝鮮に手を伸ばしてから、日清戦争、日露戦争、日英同盟を根拠に第一次大戦に参加、ほぼ十年ごとに戦争で大きな利益を得、この国の経済を発展させた。第一次世界大戦後の人類の叡智、1928年の不戦条約に調印していたこの国は,皮肉なことに、翌’29年アメリカ発の大恐慌に巻き込まれたとき,不景気を打破するためにファシズム体制を構築(軍部、財閥、天皇のトライアングル),中国への戦争を満州事変、上海事変、日華事変と糊塗しつつ推し進め、同じく中国市場を獲得したいアメリカからの圧力(中国に関する9カ国条約の遵守)を跳ね返すべく,欧米帝国主義に対抗し、大東亜共栄圏を作るための正義の戦争として、対米英戦争に突入した。
紛れもない敗戦が1945年の暑い夏であった。負けた原因は何か、なぜ負けたのか,その責任は誰にあったのか,を検証しないと,同じ間違いを犯すことになってしまう。敗戦の責任を負って自決した軍人もいたが,天皇に対しての申し訳なさの自決であったし、皇居前広場で,謝罪し土下座する一般民衆の姿は,いかに戦前の,学校教育、社会教育を通しての民衆のマインドコントロールが徹底していたかの証である。
極東裁判で処刑された人たちに全責任をかぶせ、自らの責任を免訴してもらえたのは,冷戦を発動したアメリカに,全面的な協力を誓ったからだ。現首相が尊敬してやまない祖父の岸信介氏は,東条開戦内閣の閣僚であり,A級戦犯に指定され,巣鴨に収監された経歴の持ち主である。後に総理になり,安保改定問題で国会周辺で反対運動が盛り上がっていたとき、まだ子どもだった孫息子に,反対反対と言っているやつは泥棒より悪いやつだと諭していたとのこと。幼少時の思い込みは消しがたいもので,今の総理の中にしみこんでいることだろう。
お上のやることに異議のあるやつは,厳しく取り締まるべきだと考えるのは,江戸時代の小役人根性だけど,それと大して変わらない感覚をお持ちの方が少なくないようだ。”知らしむべからず”を実現しようとお考えの現首相は,秘密保護法案を今国会中に成立を考えているようだ。そんな内閣を,大メディアのNHKは支持率58%と喜々として発表している。ジャーナリズム精神のかけらでもあれば、危機として伝達すべきなのだが、、、。