大統領選挙で選出された反米のマドゥロ大統領、最近の国政選挙で多数を獲得した野党のファン、グアイド氏、大統領制をとっている国では、今のアメリカもそうであるように行政権を保持すする大統領と、立法権を保持する議会の多数派が違った政党が担う場合がが生じてくる。何としても反米のべネゼェラが気に入らないかと言って、経済制裁をしたり、野党党首を大統領にするなどしては越権行為であると思う。何故にマドゥロ大統領、その前のチャベス大統領が反米政策をとったのかの理解がないとアメリカは民主主義の先進国ではなく、パックス、アメリカーナの実現を意図する新帝国主義に他ならないことになる。
南北アメリカ大陸は、15世時以降、ヨーロッパ人が来航するまでは、アジア系の先住民が居住する地域であった。黄金と石の文化と言われたインカ帝国、アステカ帝国、今もって謎の多いナスカの地上図を残した進んだ文化を保持していた地域であった。鉄器の未使用が渡来したヨーロッパ人の征服を許し、初期にラテン民族のスペイン、ポルトガルによって支配された地域がラテンアメリカと呼ばれるようになり,のち北米に移住したアングロ。サクソンに征服された域をアングロアメリカと呼ばれるようになった。
パックス、ブリタニカを引き継ぎ、パックス、アメリカーナを目指しているアメリカは、もとは13のイギリスの植民州であった。本国政府からの課税に対して、”代表権無くば、課税なし”を主張し、パトリック、ヘンリーの言、”自由か、然らずんば死を!”に奮い立ち、イギリスとの間の独立戦争に勝利し、1776年7月4日独立に成功した。最初の国旗、13の星、現在の51の星になるまでのアメリカの発展は驚異であるが、アジア系先住民の淘汰、スペイン、メキシコとの戦争での領土拡大は褒められたものではない。
フランス革命、ナポレオン帝国の出現、宗主国だったスペイン、ポルトガルの勢力減退もあってラテンアメリカをアメリカの裏庭化することとなった。中学校の社会科学習で、ラテンアメリカの国々の共通点として、モノカルチャー(その国の資源が一つに限られている)、人種差別意識が希薄(混血がすすみ、同じ兄弟でも身体的特徴が異なる故)、北の巨人(アメリカ)の影響から抜け出せない、等と学んでいる。
帝国とは巨大化し、多民族や他国を支配するようになった勢力のことだが、古くはペルシャ帝国、ローマ帝国、イスラム帝国、オスマントルコ帝国、モンゴル帝国、等多く存在するが、いずれも歴史の中に埋もれてしまっている。近代となっての、イギリスの3C政策、ドイツの3B政策、ロシアの南下政策は代表的な帝国主義政策だが、いずれ。も経済的支配だけでなく領土的にも支配を意図する政策であった。アメリカが採用した裏庭化は、経済的支配を推し進めるものであり、領土的支配は意図しなかった。実際19世紀初頭に独立を達成したラテンアメリカの国々に対して、経済支援を通して利を得る政策をとり、自国の資源を開発する技術も資金もない国々にとってアメリカは頼りになる兄貴分だった。実際アメリカは裏庭化の過程で、1ドルと投資して2ドルの利を得続けたといわれている。つまりアメリカの資本、現地の労働力、資源(サトウキビ、コーヒー等の農産物、銅、錫、原油、硝石等の鉱産物)を結び付け、利をえる新帝国主義政策を採用した。自国の利を考える政治家が出現すると、軍部のクデターで失脚するのが常態化し、兄貴の意に沿うような生き方がこの地の意思となってしまっていた。
そんなあきらめムードを最初に落ち破ったのが、サトウキビの島キューバである。キューバ革命の指導者カストロにしても彼に協力したアルゼンチン人のチェ、ゲバラにしても、それぞれの国での上流階級に属する知識人だし、資本の横暴に苦しむ一般庶民の状況に、世直しの必要性を感じて立ち上がったのだ。武器庫を襲って失敗して、裁判にかけられたとき、カストロを弁護する人がいなかったので、弁護士の資格を持っていたカストロが自分を弁護することになる。その時の弁論で、”この法廷は私に有罪を宣告するであろうが、歴史は私に無罪を宣告するであろう!”と述べたと言われている。脱獄しほんの少数の蜂起から、大多数の一般民衆に支援され、アメリカの傀儡であったバチスタ政権を打倒することに成功した。
たびたび暗殺の危険性もあったのだが、ソビエトの支援のあり、社会主義キューバが現在も存続する。チェ、ゲバラはキューバの状況を見て、キューバでの大臣の地位を投げ捨て、新たな解放の地を求めて活動したが、ボリビアの地で処刑されたが、今もって革命が必要な国にとって英雄であり続けている。キューバに続こうとして立ち上がったのが、べネゼェラのチャベスである。原油資源が世界一も埋蔵量と言われながら、その開発の技術も資本もアメリカ頼り、アメリカの傀儡政権が続いていたのだが、一般民衆に押されて大統領に選出された。たびたび暗殺、軍部のク、デターに危険性に遭遇しながら、現在のマドゥロ政権に引き継がれている。北アフリカのリビアのカダフィーは自国の豊かな石油を背景にアフリカで通用する通貨を創成しようとして、世界金融資本(ドル体制)につぶされてしまったのだが、その二の舞にならないことを願うものである。