瑞穂の国での風物詩、野焼き、田起こしが始まった。耕作放棄地が目立ち始めた昨今だが,耕された田畑を見るとほっとした気分になれる。太陽と土と空気と水があらゆる命の源でありその命を長らえる要素である。そして土に挑む産業が農業であり,その農耕を獲得した人類が,万物の霊長としてこの地球を支配しているのだが、生まれた時は岩石だらけの地球を何億年も掛けて土を作り出してくれたミミズの存在に感謝しなければならない。
CULTURE(文明)の語源は耕すと言う意味だが,四大河文明と言われる世界で早く文明化された地域では、肥沃な地が多くの人口を養え,ムラ、国、統一国家へと進んでいった。東アジアでは,中国における,殷、周、秦、漢王朝の歴史はほぼ解明されているが。周の時代の禅譲や”鼓腹撃壌”が失われたので絶望した老子は,81章の人類への警鐘を残していずこかに去ってしまった。秦の時代、小作人であった陳勝は”鳳”の志を持っていて,農民反乱の指導者となり,秦帝国の滅亡をもたらした。欧米においての初の農民一揆はワットタイラーの乱ではその指導者の一人であったジョン、ポールは”アダムが耕し,イヴが紡いでた時誰が領主であったか”と主張したが,この国でも正長の土一揆で立ち上がった農民は,基本的には平等意識によっていたのは,土に挑んでいたものの本能なのだろう。
農耕民族は,一定に期間を待てば食が保障されるし,基本的には平和な生活を望むものである。遊牧民は,農耕民を軽蔑し,困った時の略奪の対象であった。宇宙から確認できる建造物と言われている、万里の長城は,農耕の漢民族と,北方民族の抗争を象徴するである。中国における最初の農民の反乱といわれる前に述べた陳勝の乱にしても、ヨーロッパにおける最初の農民反乱のワットタイラーの乱にしても、この国の正長の土一揆にしても,永く続く戦乱に抵抗し、平穏の生活を取り戻さざるを得なかったからだ。
ヨーロッパにおいて,一時強国であったが,戦いに敗れ、不毛の地と言われていたユットランド半島で,農業中心に国造りをして豊かな国を築き上げたデンマークの例は今後の世界を考える上で参考にする必要がある。ましてこの国は温暖湿潤気候、農業に番向きの条件を備えている。欧米では真理である”蒔かぬ種は生えぬ”は、この国では撒かないのに生えてくる作物で、雑草が目の敵しにされてきたが、農薬も肥料も使わないで済む自然栽培農業は,雑草との共存で実現できる。長年にわたって有機物を投入し,実り豊かな耕地となった田畑はこの国の貴重な財産である。土を疎かにする愚を一匹の老犬から教わることが出来た。
散歩の途中で見かける老犬だが,足腰も弱り、視覚も聴覚、臭覚も衰え、散歩も拒否しているが、痛み止めを飲ませると散歩に出向くとか、飼い主が大切にその終末を看取る段階に来ているのだが,口元に食べ物を置いてやると食欲は十分に発揮するし、生命力は維持している。寒さに対して良かれと寝床に毛布を敷いてやっても,そこには横にならず,地面に直接体を付けて過ごしている。本能的に大地の恵みを知っているのだろう。かって裸足健康法が唱えられたが、一日30分裸足で地面を歩き回ると,健康でいられるという事だっただ。そういえば昔は裸足で校庭を走り回ったものだし、その頃は,アレルギーとかの疾患を持つ子どもはいなかった気がする。体が酸性化すると,いろんな病気に罹りやすくなると言われているし,中和するには,体を地面に接触させることで事足りるのだろう。